2019年12月号
特集

トラスコ中山「プラネット埼玉」――「ロジスティクスワンダーランド」稼働

KPIは在庫ヒット率  機械工具卸大手のトラスコ中山は同社最大規模の最新鋭物流センター「プラネット埼玉」を2018年10月から本格稼働させている。
多彩なマテハン機器を導入し、高密度収納と高効率出荷を実現する「ロジスティクスワンダーランド」だ。
本格稼働から1年を経た19年10月には新たな設備としてAutoStore(オートストア)とButler(バトラー)を導入した。
 プラネット埼玉は敷地面積4万7261平方メートル、延べ床面積4万2692平方メートル、地上4階建てで免震構造を採用。
場所は圏央道幸手IC至近に位置する。
建設に当たっての投資総額は土地や建物、設備を含めて約200億円。
センター内には厨房設備があり、正社員調理師と栄養士が在籍する社員食堂や正社員の保育士が常駐する託児所なども備えている。
稼働当初の在庫数は32万SKUだったが、稼働から1年余りが経った現在は38万SKUにまで拡大している。
23年には52万SKUを在庫する計画だ。
同拠点の配送エリアは自社専用便によって埼玉県と茨城県、群馬県の一部をカバーするほか、東日本エリアのユーザー直送も担当している。
1日当たりの能力は出荷が最大5万件で入荷は1万件。
これを約90人の庫内スタッフで運用している。
 トラスコ中山は物流を他人資本に依存しない自前主義をとっている。
物流センターを自社保有し、スタッフも正規雇用している。
「プラネット」と呼ぶフルラインの物流センターを全国17カ所、PB商品や海外メーカー仕入れ品など数カ月分をまとめて調達する商品を保管するためのストックセンターを9カ所に配置。
プラネット物流センターを中核とした即納体制を実現する配送網を全国規模で構築している。
 在庫の持ち方についても特色がある。
「一般的には売れない在庫は物流センターに置かない方が効率的だとされている。
しかし、当社では『必要とされる商品の在庫がセンターにあるからこそ、商品が売れる』と考える。
顧客が望む商品を即納する体制こそが問屋にとって最大のサービスだと捉えているからだ。
そのため在庫回転率は重視していない。
KPIは自社在庫の中からどれだけお客さまに出荷できたかを示す『在庫ヒット率』だ。
現在の在庫ヒット率は90%を超えている。
幅広い品ぞろえと在庫こそが事業の成長に結び付く」と今川裕章執行役員ファクトリー営業部兼物流部首都圏部長は説明する。
 機械工具や工業用副資材といったアイテム数が非常に多い分野において高い在庫ヒット率を実現するには、各物流拠点で膨大な在庫を保有・管理する必要が出てくる。
現在、トラスコ中山では一つの物流センターでの在庫50万SKUを目標に新規拠点の建設や既存拠点の改修を進めている。
この目標の実現に向けたモデルセンターの一つとなるのがプラネット埼玉だ。
フリーロケーション管理を初採用  プラネット埼玉はトラスコ中山の物流センターでは初となる住所不定在庫管理システム(フリーロケーション)を本格的に採用している。
1商品1ロケーションが割り当てられる固定ロケーション方式に対して、フリーロケーションではシステムが棚の空間と商品サイズを容積管理し、在庫が減って空いたスペースに別の入荷商品を格納し、出荷時の引き当ても行う。
マテハンもフリーロケーション管理を軸に多様な機器を導入している。
 「当センターの主力保管区である軽中量棚エリアを例にとるとフリーロケーション管理のメリットは大きく三つある。
一つは高密度収納の実現。
商品容積と什器容積をシステムに登録することでコンピューターが最適な格納箇所を指示してくれる。
二つ目は格納作業自体の高速化。
軽中量棚への棚入れの場合、庫内スタッフは棚の中の空いている間口を探す必要がなくなり、素早い作業が可能になった。
三つ目は最適在庫配置による出荷作業の効率化だ」と永井秀典プラネット埼玉係長心得は語る。
 プラネット埼玉の業務プロセスフローは上図の通りとなる。
着荷した後の入荷検品時に、システムはマスターに登録されたデータを基に入荷商品の容積と重量を把握。
この商品容積に対して最適な格納ロケーションをシステムが割り出す。
ただし、プラネット埼玉に初めて入荷してくる商品に関しては容積と重量のデータがない。
その場合、入荷検品エリアに隣接して設置されているパーツスキャン機で三辺計測することでマスターに商品の容積と重量が新たに登録される。
 小物商品の保管ゾーンは大きく分けて、3階全フロアと2階西側を占める軽中量棚、2階東側のバトラー、4階のオートストア、1階のバケット自動倉庫の4ゾーンとなる。
個々の入荷商品をどのゾーンに格納するかをシステムが判断する際の主な基準は商品サイズと出荷頻度だ。
 最も高頻度で出荷される小型から中型サイズ商品は軽中量棚へと格納される。
バトラーとオートストアには主に中型サイズで中頻度出荷の商品、バケット自動倉庫はネジのような小型でSKUも多く、まとめて保管するとある程度の重量になる出荷頻度が高い製品が格納対象となる。
 システムが軽中量棚やバケット自動倉庫、オートストア、バトラーといった保管ゾーンの振り分けを決めた後の仕分け作業にはゲート式仕分けシステム(GAS)を活用している。
GASは商品仕分け用のマテハン機器で、箱のフラップが開いて商品の投入場所を示す仕組みのため、仕分け時のミスが少ない。
仕分け精度も高く、スピードも早い。
1時間当たりの最大仕分け能力は2800件。
プラネット埼玉には15間口の作業ステーションが14カ所設置されている。
 GASの作業ステーションに搬送されてきた入荷商品は、軽中量棚ゾーンやバケット自動倉庫ゾーンなどといった異なる行き先であっても一つのパレットに乗せられている。
庫内スタッフが商品をスキャンすると、GASのフラップが開き、何個入れるかが指示されるので、指定の数を入れる。
例えばGASの間口Aは軽中量棚ゾーン行き、間口Bはバケット自動倉庫行きといったやり方で仕分けされ、規定の数がGASの各間口のオリコンに入った時点でコンベヤに乗せれば、指定された保管ゾーンへと搬送されていく。
 GAS仕分けされた入庫商品の行き先のうち、最も広い在庫スペースを持つ主力の保管エリアが3階全フロアと2階の半分に相当する軽中量棚ゾーンだ。
トラスコ中山のこれまでの物流センターはこうした軽中量棚は全て固定ロケーションで管理していたが、プラネット埼玉ではフリーロケーション方式に基づいた管理が行われている。
同センターにおける軽中量棚の特徴はその収納率の高さだ。
一つの棚の間口が細かく分けられており、それぞれぎっしりと商品が格納されている。
 「まるでパズルのように格納されているが、18年10月の稼働当初はここまで細かく間口を分けて格納できていたわけではなかった。
本格稼働から1年余りの期間で商品データやそれを収める収納スペースの情報が充実し、フリーロケーション運用がこなれてきた結果、ここまでぎっしりと詰められるようになってきた」と今川裕章執行役員は話す。
 軽中量棚の高さは2・4メートル。
庫内スタッフの移動距離が短くなるコンベヤ周辺の棚に最も高頻度で出荷される商品を格納するようシステムが指示をする。
棚の中では中段に最も出荷頻度が高い商品が格納され、低頻度品は最上部、重量物は最下部に格納する。
保管場所の移動や集約などもシステム側が提案してくる。
軽中量棚での保管なのでピッキングはカートで行うが、システムによって配置が最適化されているためカートを運ぶ庫内スタッフの歩行距離は既存拠点よりも大幅に短縮化されている。
バトラーとオートストアを10月から稼働  GAS仕分けの二つ目の行き先であるバトラーは19年10月に2階東側の区画に導入した。
バトラーは商品が入った棚の下部にロボットが入り込んで棚を持ち上げ、作業ステーションまで棚を搬送することで、スタッフは庫内を歩き回らずに棚入れやピッキングができる仕組みだ。
プラネット埼玉のバトラー区画には専用棚を1380台、棚搬送ロボット73台を導入し、作業ステーションは6カ所配置。
 棚入れ時は作業ステーション背後にある仮置き棚から商品を取り出してラベルをスキャンするとロボットが棚をステーションまで搬送してくるので、指定された間口に指定の数を棚入れする。
出荷時もロボットが棚を作業ステーションまで搬送してくるので、指定された間口から商品をピッキングする。
これによりスタッフは棚入れとピッキングを定点作業で行える。
棚の配置はシステムが最適化する。
 三つ目の行き先であるオートストアも19年10月から4階で稼働している。
オートストアはビンと呼ばれる専用コンテナをロボットが出し入れする高密度立体収納システム。
プラネット埼玉では10段、合計7930のビンを16台のロボットで入搬出する。
オペレーション自体はシンプルだ。
棚入れの際は庫内スタッフがオートストアの作業ステーションで専用リーダーを使って商品の入庫ラベルをスキャンすると、ロボットがビンを作業ステーションまで運搬してくる。
間仕切りされたビンのどの区画にいくつ収容するかが指示されるので、指定通りに商品を入れると、ビンは再び立体保管区にロボットが搬送していく。
出荷時も商品が入ったビンがステーションまでやってくるので、こちらも定点作業が可能だ。
基本的には出荷頻度の高い商品ほど作業ステーションに近い立体保管区下部に自動で最適保管される仕組みとなっている。
プラネット埼玉におけるオートストアの在庫は最大1万2千SKUほどで、この量を通常2〜3人で処理する。
 「オートストアは既存設備の軽中量棚と入れ替える形での導入が比較的やりやすい点も大きなメリットだ。
スペースさえあれば後からでも設置できる。
他拠点でのさらなる採用も検討している。
オートストア対応のピースピッキングロボットの開発も進めている。
つかむ動作と吸着の両方が可能で、現時点では4千SKUほどがピック可能だ。
オートストアとピースピッキングロボットの組み合わせは来年くらいにはある程度形にしたいと考えている」と今川裕章執行役員は明かす。
 GAS仕分けでの四つ目の行き先が1階のバケット自動倉庫だ。
こちらには主に出荷頻度が高い小型商品の格納で使用されている。
小バケットを八つに間仕切りし、その中に収まるネジや穴の内側にネジを刻むタップといった小型の工具類が主に格納される。
バケット自動倉庫には2万3295のバケットがあり、その中に16万SKUが格納されている。
こちらも棚入れや出荷作業は定点作業で行うことができる。
 なお、大物商品については入荷後に保管用パレットへの積み替えを行った上で1階エリアに6台導入しているAGVなどでパレット荷姿のまま、センター4階のパレット自動倉庫、もしくは電動式移動パレットラックへと格納される。
このパレット保管のみは例外的に固定ロケーション管理を行っている。
50万SKU超の即納体制  出荷では軽中量棚、バトラー、オートストア、バケット自動倉庫などに在庫された商品が各フロアでピッキングされた後、商品が入ったオリコンは1階のシステマストリーマー(SAS)で荷合わせのため一時保管される。
その後、各フロアでトータルピッキングされた商品が入ったオリコンはGASの作業ステーションまで搬送され、仕分けが行われる。
 GASの作業スタッフは入庫での運用と同様、行き先がどこかなどは特に意識することなく、フラップが空いた箇所に商品を入れていくだけで出荷仕分けが完了する。
仕分けが終わったら、そのまま出荷場までAGVなどで搬送される。
 機械工具商や溶接材料商といった販売店への配達は通い箱納品だが、エンドユーザー直送などの場合はGAS仕分け後にダンボール箱への梱包作業を行う。
将来的に東日本のユーザー直送をプラネット埼玉に集約する構想があるため、梱包用の自動化設備も複数導入している。
大物梱包用にはジャストフィットボックスと呼ばれる商品の寸法をスキャンするだけで商品にあった箱を素早く作成する機械を導入。
小物商品の梱包については納品書の挿入や荷札の貼り付けといった一連の作業を自動化するI-Pack(アイパック)を導入した。
これにより、小口出荷の梱包業務は人間が全て行っていた時と比較すると生産性が8倍近く向上したという。
 トラスコ中山では現在、各物流センターの能力拡充を目指した物流投資を積極的に進めている。
プラネット埼玉を皮切りにプラネット北関東やプラネット東北の増築、プラネット南関東の建て替えなどで在庫50万SKUを可能とする設備の整備が行われている。
今後はプラネット埼玉で初導入したフリーロケーションでの在庫管理と最新鋭マテハン機器を組み合わせた運用手法を磨き上げ、そのノウハウを各物流センターに水平展開することで、50万SKU超の即納体制の構築を推し進めていく方針だ。

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