2019年12月号
特集

アスクル 「AVC関西」――もう庫内スタッフを歩かせはしない

ワンフロアに甲子園球場が収まる  アスクルが大阪府吹田市に構える同社最大規模の最新鋭物流センターのASKUL Value Center 関西(AVC関西)は「人が歩かない物流センター」をコンセプトとしている。
定点作業を軸に設計しており、ピッキング時などに庫内スタッフはセンター内を歩き回る必要がない。
自動倉庫や3D搬送ロボットといったGTP(Goods To Person)対応のマテハンを大規模導入し、商品在庫効率や庫内作業生産性を高めている。
 AVC関西はグローバル・ロジスティック・プロパティーズ(GLP)が手掛けた敷地面積約7万5千平方メートル、延べ床面積約16万5千平方メートル、地上4階建て、免震構造の先進物流施設を全棟賃借し、2018年2月から本格稼働している。
19年10月末時点では約12万SKUを取り扱う。
BtoBとBtoC通販「LOHACO(ロハコ)」双方の物流を担う基幹拠点で、センター運営は子会社のASKUL LOGISTが担当している。
 AVC関西は大阪中心部から直線距離で約9キロメートル、名神高速道路の吹田ICから約6キロメートルに位置する都市型センターとなる。
JR東海道本線の岸辺駅と阪急京都線の正雀駅から徒歩圏内にあるため、スタッフは電車での通勤が可能だ。
4階建ての建屋には各階に甲子園球場が丸々収まるほどの面積があり、都市型物流拠点としては異例ともいえる規模となる。
 センター内には厨房設備があり、カフェテリアを設置している。
毎日複数メニューが提供され、庫内スタッフは無料で食事ができる。
これは福利厚生的な側面に加え、庫内スタッフの当日欠勤率を抑えるというセンター運営上のメリットも生んでいる。
 AVC関西では入荷、棚入れ、ピッキング、荷合わせ、梱包、仕分けといった一連の業務で機械化を進めている。
導入設備の運用を含めて説明していく。
入荷でパレット搬送AGVを導入  4階建てランプウェイ方式のAVC関西では入荷の9割は4階の入荷場にて行われる。
例外的にメディカル品は1階、大型の一部商品などは3階と1階でも入荷を行う。
入庫車両については今年の春からバース予約システムを本格的に導入した。
Hacobuが展開する物流情報プラットフォーム「MOVO」のバース管理ソリューションだ。
予約システムの導入前は繁忙期などに入庫車両が中央車路で順番待ちする場合もあったが、予約システムを本格採用したことによって、トラックの平均の待ち時間は10分程度に減少し、1時間以上の待機はほぼなくなった。
 AVC関西の1日当たりの平均入庫車両は約250台。
同センターに初めて来るトラックの一部が予約システムを利用していないものの、入庫車両の95%以上が予約を利用しているため、全体のコントロールによって車両待機をほぼなくすことに成功している。
 荷降ろし後の入荷検品が完了した商品をケース自動倉庫へとパレット搬送するオペレーションは19年9月にパレット搬送用ロボット(パレット搬送AGV)を導入することで省人化した。
従来まで1日当たり6人前後で行っていたハンドリフトによるパレット搬送作業をAGVに置き換えたもので、検品が終わったパレットをパレット搬送AGVのゲートに置けば10台のAGVが自動倉庫のゲートまで搬送してくれる。
1台で1トンまで搬送可能で、AGVのゲートには1度に3枚までのパレットを置くことができる。
大量に入荷がある場合でも連続配置しての自動搬送が可能なため、入荷検品が完了した商品が滞留して入荷場付近が混雑することを防止できる。
パレット搬送AGVが稼働するエリア内は人の立ち入り禁止区域として設定しているが、センサーで動作しているため、仮に人が入った場合でもAGVは安全に停止してくれる。
 パレット搬送AGVによって入荷場から運ばれた商品はデパレタイズされケース自動倉庫へと収容される。
入荷商品は基本的には一度全てケース自動倉庫に収容されるが、AVC関西における棚入れはこのケース自動倉庫への収容に加えてもうひとつある。
同センターで「バラ化」と呼んでいるバケット式の自動倉庫のオリコンへのピース単位での収容だ。
ケース自動倉庫から補充する形で3D搬送ロボットタイプの自動倉庫へと収容される。
 このバラ化の作業ではケース自動倉庫からコンベヤによって庫内スタッフの作業ステーションへとケースが搬送されてくる。
庫内スタッフは手元に搬送されてきたケースを開梱し、画面に表示された指示に従って指定数量をオリコンに入れて反対側の搬送ラインに置く。
すると、ケースから小分けした商品が入ったオリコンが自動倉庫へと格納されていく。
軽中量ラックへの棚入れのように庫内スタッフが棚の間口まで歩いて行く必要はなく、定点作業ができるよう設計している。
また、開梱を伴うこの工程が最もダンボール廃棄が多いため、ダンボール箱の廃棄設備も近接した場所に設置している。
 ただし、トイレットペーパーなどの売れ筋の大型商品についてはオリコンへの収容は非効率なため、小分けにした商品をカゴ車で在庫している。
 次は出荷の流れだ。
ケースで注文が入った場合はケース自動倉庫からそのまま商品が出荷エリア方面へと搬送される。
ピース単位の注文については引き当てられた商品が収容されているオリコンが自動倉庫からコンベヤでピッキング作業ステーションへと搬送されてくる。
スタッフは画面の指示に従って、オリコンから指定の数をピッキングし、反対側の搬送ラインにあるオリコンへと入れる。
一般的なカートを使ったピッキングでは庫内スタッフがラックまで商品を取りに行く。
しかしAVC関西はGTP、つまり定点作業を軸としたセンター設計を採用しているため、庫内スタッフはピッキングでも歩く必要はない。
人がラックまで歩いて行くのではなく、ラックの間口に相当するオリコンの方が人のいる作業ステーションへと来てくれる。
 ピッキングにおける作業動作の内訳を分析すると、ラックに保管された商品を探す時間とそこまで行く際の歩行時間が全体の3分の2を占め、ピッキング作業そのものは3分の1程度といわれる。
定点ピッキングの実現によって、この歩行時間がほぼなくなる。
そのため、従来型のピッキングと比較すると生産性は5倍近く改善される。
 これらの一連のGTP型のマテハン設備はトーヨーカネツのマルチシャトルを核として構築されている。
ピッキングロボットを2台稼働  ピースピッキング工程では19年10月からピッキングロボットを新たに2台導入した。
MUJINのロボットコントローラーを活用し、共同で開発を進めている。
AVC関西におけるピースピッキング作業は自動倉庫から搬送されてきたオリコンから商品をピッキングし、反対側のオリコンへと移し替える作業となる。
この商品を保持して反対側に置くというピースピッキング作業をロボットアームで行う。
19年10月末時点でAVC関西で取り扱っている約12万SKUのうちの約1200SKUをピッキング可能だという。
ピッキング可能な商品の組み合わせが引き当てられた場合にはロボットピッキングステーションへとオリコンが搬送され、アーム型ロボットがピッキングを行う。
 産業用アーム型ロボットはハードウエアであるロボットアームとロボットを制御する頭脳に相当するソフトウエア部分のコントローラーによって構成されている。
AVC関西で導入されているコントローラーではロボットが自律的に動作する。
画像情報に基づいて対象物を認識し、どのようにアームを動かせばピッキングできるかをAIが割り出すのだ。
制御システムの開発スタート時にはカメラによる三辺計測がやりやすい箱型形状のピッキングから始まったが、開発が進むことで円筒形やボトル状、パウチなどあるいはフィルム包装の商品などさまざまな形状の商品がピッキング可能となり、実際の物流センターでの運用ができるまでになった。
1時間当たりのピッキング可能個数は開発開始当初から大きく向上し、追い積みも実現している。
AVC関西は定点作業を軸にセンターを設計しているため、今後の改良によってピッキングロボットの能力が向上すれば、さらなるラインへの追加導入も可能だ。
 自動倉庫から搬送されたオリコンからのピッキング作業は複数ステーションで行われる。
ワンオーダーワンオリコンではなく、ワンオーダー複数オリコンの場合は最終的に同じ顧客の注文商品が入った複数オリコンを組み合わせる必要がある。
この荷合わせ作業もAVC関西では機械化している。
異なる場所にある複数ステーションでピッキングされたオリコンが大型の荷合わせシャトルの中でパズルのように前後に並べ替えられ、顧客別に組み合わされて梱包場へと搬送される。
高度自動化でコストを低減  梱包場には前工程の荷合わせシャトルでまとめられた複数のオリコンが順番にセットで流れてくる。
その際、ディスプレイにはダンボールに詰めるべきオリコンの数と内容が表示される。
各商品の大きさなどは商品マスターに登録されているため、複数あるダンボール箱のサイズの中から最適な大きさが自動で指定される。
ダンボールの組み立てなどは機械化されているため、庫内スタッフは指定された完成ダンボールへとオリコンの中の商品と緩衝材を入れる作業となる。
注文商品を入れたダンボールを出荷場に向かうコンベヤに乗せると搬送が始まり、自動梱包機による荷札の貼付などが行われ、出荷ソーターで方面別に仕分けされて1階もしくは2階の出荷エリアへと搬送される。
最後は出荷場にて配送車両に積み込みを行い、出荷される。
 アスクルでは手作業の増加などによって庫内業務の生産性が悪化し、18年5月期の第1四半期ごろに売上高業務委託費比率がピークに達した。
しかし、高度自動化拠点のAVC関西が本格稼働したことなどで生産性が改善。
高度自動化とロボット化によって庫内の作業コストは中長期的にはさらに低減する見通しだ。
今後はAVC関西で磨き上げた自動化ノウハウを他拠点にも水平展開することで、さらなる物流コスト低減に結びつけていくもようだ。

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