2019年12月号
特集
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海外論文 倉庫業務におけるドローンの活用
概略
ロジスティクス産業においてドローンは大きな可能性を秘めている。
市場規模は20%程度の年平均成長率を今後も持続し、2027年には290億ドルに達するものと予想される。
そしてドローンは倉庫業務にも活用できるという認識が広がってきている。
昨今の視覚ナビゲーションやセンサーなどの技術の進歩により、屋内利用が可能になってきたからである。
そうしたテクノロジーの発展に加えて、グローバルなeコマースの成長に伴って倉庫の規模が巨大化していることも要因の一つである。
ドローンは例えば在庫棚卸やイントラロジスティクス(構内物流)の自動化に活用することができる。
そうした用途にドローンを用いれば、倉庫の責任者は退屈で危険を伴うタスクから解放される。
本稿では倉庫での活用例を12件紹介している(表)。
われわれはドローンの応用分野を在庫管理、屋内のイントラロジスティクス、点検およびパトロールの三つに分類した。
調査の結果、最も有望なアプリケーションは在庫管理であることが判明した。
屋内のイントラロジスティクスは現時点では電源と有効搭載量という面で技術的制約があるため、まだ実用段階には達していない。
また点検およびパトロールという分野にもポテンシャルを持つが、その検証はまだ始まったばかりという段階にある。
倉庫業務へのドローン活用 倉庫内におけるドローン活用がここ数年増え続けている。
巨大倉庫は自動化とロボティクスに多くの資金を投下することで、効率の改善を図っている。
こうした動きは何も今に始まったことではない。
倉庫業務のコストは物流費全体の3割に及ぶ。
その他にも熟練労働者を確保することの難しさ、カスタマーサービスの需要増、eコーマスの隆盛など、何としても倉庫業務の効率性向上を図らなければならない理由は数多ある。
第四次産業革命の影響は倉庫にも及び、まさに“ウェアハウス4・0”ともいうべきデジタル化と“コネクテッド”化がますます進行している。
最新のスキャニング技術、バーコード、QRコード、RFID、人工知能(AI)などが登場し、ドローンを中心とした倉庫の自動化を実現する環境が整った。
ドローンの本格的な運用は、本体側に充分な計算処理能力と効率的なアルゴリズムがあって初めて可能となる。
しかしながら倉庫の在り方は千差万別であり、それがドローンプログラム発展の足かせになっている。
一口に倉庫といっても地理的ロケーション、在庫品の種類、レイアウト(棚、パレット、箱など)、規模、活用技術など、皆それぞれ異なる。
機能面でも例えば配送用の倉庫、クロスドッキング用の倉庫、メーカー向けの原材料や最終製品用の倉庫など各種あり、それぞれの業務内容は一様ではない。
ドローンは倉庫の自動化における中心的役割を担い始めようとしている。
自律的に飛行とホバリングを行い、さまざまなレイアウトの倉庫で障害物を巧みに避けながら屋内を飛び回り、正確に着地する──ドローンの持つそうした能力が評価されるようになってきたのである。
倉庫業務という分野において最も有望なドローン活用法は在庫管理、イントラロジスティクス、点検およびパトロールの三つである。
在庫管理 在庫管理という分野でドローンは次のようなタスクに活躍する。
棚卸資産の監査、在庫管理、循環棚卸、アイテム検索、安全在庫の維持管理、実地棚卸、などである。
実地棚卸とは、倉庫に保管している在庫品の数量を物理的にカウントすることである。
通常は年1回、もしくは会計年度末に行われる。
一方の循環棚卸は、在庫の一部をある程度頻繁に数えることをいう。
この仕事は毎日あるいは毎週、訓練を受けた在庫管理担当の少人数チームによって行われることが多い。
彼らは歩くか、あるいは車両を運転して倉庫内の所定の場所に移動し、アイテムのバーコードをスキャンして個数を数え、そして決められた手順にしたがってまた次のロケーションへと向かう。
この方法によって年1回の在庫棚卸に比べて在庫数を正確に把握できるのは確かだが、いくつかの欠点があることは否定できない。
作業効率が悪く(人手に頼った作業)、労働集約的であり(何名かのスタッフが必要)、危険で(高所作業などを含む)、費用がかさみ(人件費)、そして単調な反復作業であるためにミスが起こりやすい等々である。
ドローンを使うことでこのプロセスを最適化するという付加価値を得られる。
より正確な在庫数の把握、人件費の削減、作業要員の危険性の最小化などである。
これらが在庫管理にドローンを活用する主な目的である。
イントラロジスティクス ドローンは例えば倉庫に保管している部品を工場の作業場へ運ぶなどのイントラロジスティクスにも活用できる。
あらかじめ定められた航跡に沿って物品を運ぶというドローンの能力には、ツールとスペアパーツと機械油を迅速に搬送するといった屋内でのポテンシャルがある。
しかし有効搭載量、品物をつかんでそれを置く動き、ナビゲーションなどの面で制約があり、これらの課題がまだ克服されていない。
点検およびパトロール 現在は人手に頼っている点検とパトロールについても、ドローンは有力な選択肢となり得る。
建設、石油化学、石油およびガス、電力などの産業では既に点検作業に利用されており、屋内の点検に用いるケースも増えている。
倉庫では例えば屋根、ラック、パレット配置、壁、天井などの点検が可能である。
倉庫業務と顧客の要求が増えてきたため、点検は費用と手間のかかる厄介な作業となっている。
屋内での点検には作業に熟練した検査員が必要とされるが、通常業務が優先されるために途中で作業の中止を余儀なくされることもよくある。
こうした危険な場所や高所でのモニタリングや点検という業務に、屋内ドローンは申し分なく適してしている。
また、盗難や不正行為の防止を目的としたパトロールにも活用できる。
有望な用途 倉庫業務のうち最も有望なのは在庫管理用途である。
先の表に掲げたこのカテゴリーに属する12例のうち、七つはテスト段階をほぼ脱している。
イントラロジスティクス向けは今のところ、電源と有効搭載量という面での技術的制約が実現への足かせとなっている。
また、点検とパトロールに関してはまだ十分な検証がされていない。
在庫管理という市場への参入に本腰を入れ始めているドローンソリューションのプロバイダーをいくつか紹介しよう。
米Corvus Robotics社は19年初頭、新しい自律型在庫管理ソリューションを販売すると発表した。
マテハン大手の独Linde Material Handling社は、17年に独シュトゥットガルトで開催されたイントラロジスティクスの見本市LogiMATにおいて、「Flybox」と名付けられた新しい棚卸ソリューションを早ければ18年中にも売り出すと発表した。
またスイスのVerity Studios社は、自社ラボで試作品の検証を行いながら、ドローンを使った在庫管理市場に参入する戦略を練っているという状況である。
ドローン技術はどこまできたか 完全運転自動化(レベル5)に至る発展段階において、ハードルが最も高いのは屋内でのナビゲーションである。
どのようなアプリケーションであっても、ここ数年内にドローンが自律飛行するところまで届りつくことはないだろう。
ナビゲーションの精度不足のためである。
しかし昨今の技術的進歩を鑑みれば、近い将来、高精度のインドアナビゲーションが実現することは確実である。
100%の正確さを達成する見込みの高い技術は視覚アルゴリズムである。
現時点で最も進んだ視覚ベースのSLAM(3次元地図製作技術)アルゴリズムの一つは、誤差が5センチメートルというところまできている。
UWB(超広帯域無線)など他の位置測定技術と比べれば高精度といえる。
フォークリフトやパレットトラックなどのフロアコンベアに使用される無線技術は、それより精度の劣る10〜30センチメートルであり、屋内ドローンの位置測定には適していない。
視覚SLAMの精度を向上させる可能性のある技術も現れてきている。
例えばライダー(LiDAR=light detection and ranging)技術は、屋内ナビゲーションにおいて高いポテンシャルを持つ。
対象にパルスレーザーを照射することで距離を測定する高精度のメソッドである。
スイスのライカジオシステムズ社は中国DJI社と共同で、ライダーセンサーとカメラを組み合わせたドローンを開発した。
「Aibot」と名付けられたこのドローンは、10ヘクタールの範囲で誤差2・5センチメートルという精度を達成している。
ただしドローンの重さがほぼ10キログラムにも達するため、屋内環境での利用には向いていない。
高精度な屋内ナビゲーションの先進技術の一例としては、米Vtrus社のものがある。
可能な限り精度を高めるため、360度カメラに3D深度センサーと3Dスキャナーを搭載する。
この視覚SLAMは、数百万ピクセルの情報処理を毎秒30回もの速さで行って3Dマップを生成し、マップ内のドローンの位置を特定する。
米PINC社、独inventAIRy社、仏eyesee社などの屋内ナビゲーションも、Vtrus社の技術と同様の視覚ベースソリューションである。
PINC社のソリューションでは在庫のカウントだけでなく位置の特定も可能である。
inventAIRy社は、視覚ベースの点検によってパッケージやパレットの状態、在庫の品質劣化の可能性などの情報も取得できるとしている。
倉庫その他の屋内環境へドローンを導入するに当たっては、屋内ナビゲーションが克服すべき課題を事前にしっかりと認識することが成功の鍵となるだろう。
仏Geodis社およびDeltaDrone社、シンガポールInfinium Robotics社は、最上部にキャリブレーションボードを搭載したAGV(無人搬送車)とドローンを組み合わせることにより、位置測定精度のさらなる向上を図っている。
ドローンは地上のAGVと物理的にケーブルで結ばれ、それによってバッテリーの寿命も延びる。
AGVを併用しない技術では飛行時間の限界が約30分ほどであるのに対し(inventAIRy社など)、こうした技術を用いればそれを4時間にまで延伸できる。
しかしドローンをケーブルにつなぐことは、ホバリングおよび機動性という点で性能の低下を招くことになり、倉庫内での統一的運用が難しくなるという側面もある。
今後の展望 ドローンは倉庫の中を“高く飛ぶ”。
倉庫内ドローンの新たな実験や導入が向こう数年間のうちに次々と現れることをわれわれは期待している。
こうした進歩はコストの高い国々の企業が牽引していくものと思われるが、必ずしもそうであるとは限らない。
インドの各メディアは18年12月、4年に及ぶ長い禁止期間を経て、インド民間航空省がドローンの利用を適法化したと発表した。
プライバシーおよび安全面への懸念と、規制する法律がないことから、民間航空省長官は去る14年10月にドローンの利用を禁止していた。
インドの財閥であるマヒンドラ・グループの物流子会社マヒンドラ・ロジスティクスは19年5月19日、在庫管理用途へのドローン利用に先立ち、「屋内利用のさらなる規制緩和を期待している。
インドにおける解禁は屋内ドローンアプリケーションの発展を後押しすることになるだろう」とのコメントを発表した。
屋内のイントラロジスティクスには課題が残る一方、ドイツの大企業2社はこのほど、屋外のイントラロジスティクス用ドローンの飛行実験を行った。
その一つ、ZF社は工場構内でスペアパーツを届ける自動飛行ドローンの使用許可をドイツで最初に取得した企業である。
最初の飛行テストは18年中に成功裏に終わった。
もう一社のティッセンクルップスチール社は19年5月、敷地内で試験サンプルを運ぶドローンを飛ばしたと発表した。
この二つの実験は、欧州におけるイントラロジスティクス向けドローンアプリケーションの画期を成すものと言える。
これらは屋外の実験ではあっても、近い将来の屋内利用のポテンシャルを示唆するものといえるだろう。
Wawrla, L.; Maghazei, O.; Netland, T. (2019) Applications of drones in warehouse operations. Whitepaper. ETH Zurich, D-MTEC, Chair of Production and Operations Management. Downloaded from www.pom.ethz.ch © 2019 Chair of Production and Operations Management Department of Management, Technology and Economics ETH Zurich(翻訳構成 大矢英樹)
市場規模は20%程度の年平均成長率を今後も持続し、2027年には290億ドルに達するものと予想される。
そしてドローンは倉庫業務にも活用できるという認識が広がってきている。
昨今の視覚ナビゲーションやセンサーなどの技術の進歩により、屋内利用が可能になってきたからである。
そうしたテクノロジーの発展に加えて、グローバルなeコマースの成長に伴って倉庫の規模が巨大化していることも要因の一つである。
ドローンは例えば在庫棚卸やイントラロジスティクス(構内物流)の自動化に活用することができる。
そうした用途にドローンを用いれば、倉庫の責任者は退屈で危険を伴うタスクから解放される。
本稿では倉庫での活用例を12件紹介している(表)。
われわれはドローンの応用分野を在庫管理、屋内のイントラロジスティクス、点検およびパトロールの三つに分類した。
調査の結果、最も有望なアプリケーションは在庫管理であることが判明した。
屋内のイントラロジスティクスは現時点では電源と有効搭載量という面で技術的制約があるため、まだ実用段階には達していない。
また点検およびパトロールという分野にもポテンシャルを持つが、その検証はまだ始まったばかりという段階にある。
倉庫業務へのドローン活用 倉庫内におけるドローン活用がここ数年増え続けている。
巨大倉庫は自動化とロボティクスに多くの資金を投下することで、効率の改善を図っている。
こうした動きは何も今に始まったことではない。
倉庫業務のコストは物流費全体の3割に及ぶ。
その他にも熟練労働者を確保することの難しさ、カスタマーサービスの需要増、eコーマスの隆盛など、何としても倉庫業務の効率性向上を図らなければならない理由は数多ある。
第四次産業革命の影響は倉庫にも及び、まさに“ウェアハウス4・0”ともいうべきデジタル化と“コネクテッド”化がますます進行している。
最新のスキャニング技術、バーコード、QRコード、RFID、人工知能(AI)などが登場し、ドローンを中心とした倉庫の自動化を実現する環境が整った。
ドローンの本格的な運用は、本体側に充分な計算処理能力と効率的なアルゴリズムがあって初めて可能となる。
しかしながら倉庫の在り方は千差万別であり、それがドローンプログラム発展の足かせになっている。
一口に倉庫といっても地理的ロケーション、在庫品の種類、レイアウト(棚、パレット、箱など)、規模、活用技術など、皆それぞれ異なる。
機能面でも例えば配送用の倉庫、クロスドッキング用の倉庫、メーカー向けの原材料や最終製品用の倉庫など各種あり、それぞれの業務内容は一様ではない。
ドローンは倉庫の自動化における中心的役割を担い始めようとしている。
自律的に飛行とホバリングを行い、さまざまなレイアウトの倉庫で障害物を巧みに避けながら屋内を飛び回り、正確に着地する──ドローンの持つそうした能力が評価されるようになってきたのである。
倉庫業務という分野において最も有望なドローン活用法は在庫管理、イントラロジスティクス、点検およびパトロールの三つである。
在庫管理 在庫管理という分野でドローンは次のようなタスクに活躍する。
棚卸資産の監査、在庫管理、循環棚卸、アイテム検索、安全在庫の維持管理、実地棚卸、などである。
実地棚卸とは、倉庫に保管している在庫品の数量を物理的にカウントすることである。
通常は年1回、もしくは会計年度末に行われる。
一方の循環棚卸は、在庫の一部をある程度頻繁に数えることをいう。
この仕事は毎日あるいは毎週、訓練を受けた在庫管理担当の少人数チームによって行われることが多い。
彼らは歩くか、あるいは車両を運転して倉庫内の所定の場所に移動し、アイテムのバーコードをスキャンして個数を数え、そして決められた手順にしたがってまた次のロケーションへと向かう。
この方法によって年1回の在庫棚卸に比べて在庫数を正確に把握できるのは確かだが、いくつかの欠点があることは否定できない。
作業効率が悪く(人手に頼った作業)、労働集約的であり(何名かのスタッフが必要)、危険で(高所作業などを含む)、費用がかさみ(人件費)、そして単調な反復作業であるためにミスが起こりやすい等々である。
ドローンを使うことでこのプロセスを最適化するという付加価値を得られる。
より正確な在庫数の把握、人件費の削減、作業要員の危険性の最小化などである。
これらが在庫管理にドローンを活用する主な目的である。
イントラロジスティクス ドローンは例えば倉庫に保管している部品を工場の作業場へ運ぶなどのイントラロジスティクスにも活用できる。
あらかじめ定められた航跡に沿って物品を運ぶというドローンの能力には、ツールとスペアパーツと機械油を迅速に搬送するといった屋内でのポテンシャルがある。
しかし有効搭載量、品物をつかんでそれを置く動き、ナビゲーションなどの面で制約があり、これらの課題がまだ克服されていない。
点検およびパトロール 現在は人手に頼っている点検とパトロールについても、ドローンは有力な選択肢となり得る。
建設、石油化学、石油およびガス、電力などの産業では既に点検作業に利用されており、屋内の点検に用いるケースも増えている。
倉庫では例えば屋根、ラック、パレット配置、壁、天井などの点検が可能である。
倉庫業務と顧客の要求が増えてきたため、点検は費用と手間のかかる厄介な作業となっている。
屋内での点検には作業に熟練した検査員が必要とされるが、通常業務が優先されるために途中で作業の中止を余儀なくされることもよくある。
こうした危険な場所や高所でのモニタリングや点検という業務に、屋内ドローンは申し分なく適してしている。
また、盗難や不正行為の防止を目的としたパトロールにも活用できる。
有望な用途 倉庫業務のうち最も有望なのは在庫管理用途である。
先の表に掲げたこのカテゴリーに属する12例のうち、七つはテスト段階をほぼ脱している。
イントラロジスティクス向けは今のところ、電源と有効搭載量という面での技術的制約が実現への足かせとなっている。
また、点検とパトロールに関してはまだ十分な検証がされていない。
在庫管理という市場への参入に本腰を入れ始めているドローンソリューションのプロバイダーをいくつか紹介しよう。
米Corvus Robotics社は19年初頭、新しい自律型在庫管理ソリューションを販売すると発表した。
マテハン大手の独Linde Material Handling社は、17年に独シュトゥットガルトで開催されたイントラロジスティクスの見本市LogiMATにおいて、「Flybox」と名付けられた新しい棚卸ソリューションを早ければ18年中にも売り出すと発表した。
またスイスのVerity Studios社は、自社ラボで試作品の検証を行いながら、ドローンを使った在庫管理市場に参入する戦略を練っているという状況である。
ドローン技術はどこまできたか 完全運転自動化(レベル5)に至る発展段階において、ハードルが最も高いのは屋内でのナビゲーションである。
どのようなアプリケーションであっても、ここ数年内にドローンが自律飛行するところまで届りつくことはないだろう。
ナビゲーションの精度不足のためである。
しかし昨今の技術的進歩を鑑みれば、近い将来、高精度のインドアナビゲーションが実現することは確実である。
100%の正確さを達成する見込みの高い技術は視覚アルゴリズムである。
現時点で最も進んだ視覚ベースのSLAM(3次元地図製作技術)アルゴリズムの一つは、誤差が5センチメートルというところまできている。
UWB(超広帯域無線)など他の位置測定技術と比べれば高精度といえる。
フォークリフトやパレットトラックなどのフロアコンベアに使用される無線技術は、それより精度の劣る10〜30センチメートルであり、屋内ドローンの位置測定には適していない。
視覚SLAMの精度を向上させる可能性のある技術も現れてきている。
例えばライダー(LiDAR=light detection and ranging)技術は、屋内ナビゲーションにおいて高いポテンシャルを持つ。
対象にパルスレーザーを照射することで距離を測定する高精度のメソッドである。
スイスのライカジオシステムズ社は中国DJI社と共同で、ライダーセンサーとカメラを組み合わせたドローンを開発した。
「Aibot」と名付けられたこのドローンは、10ヘクタールの範囲で誤差2・5センチメートルという精度を達成している。
ただしドローンの重さがほぼ10キログラムにも達するため、屋内環境での利用には向いていない。
高精度な屋内ナビゲーションの先進技術の一例としては、米Vtrus社のものがある。
可能な限り精度を高めるため、360度カメラに3D深度センサーと3Dスキャナーを搭載する。
この視覚SLAMは、数百万ピクセルの情報処理を毎秒30回もの速さで行って3Dマップを生成し、マップ内のドローンの位置を特定する。
米PINC社、独inventAIRy社、仏eyesee社などの屋内ナビゲーションも、Vtrus社の技術と同様の視覚ベースソリューションである。
PINC社のソリューションでは在庫のカウントだけでなく位置の特定も可能である。
inventAIRy社は、視覚ベースの点検によってパッケージやパレットの状態、在庫の品質劣化の可能性などの情報も取得できるとしている。
倉庫その他の屋内環境へドローンを導入するに当たっては、屋内ナビゲーションが克服すべき課題を事前にしっかりと認識することが成功の鍵となるだろう。
仏Geodis社およびDeltaDrone社、シンガポールInfinium Robotics社は、最上部にキャリブレーションボードを搭載したAGV(無人搬送車)とドローンを組み合わせることにより、位置測定精度のさらなる向上を図っている。
ドローンは地上のAGVと物理的にケーブルで結ばれ、それによってバッテリーの寿命も延びる。
AGVを併用しない技術では飛行時間の限界が約30分ほどであるのに対し(inventAIRy社など)、こうした技術を用いればそれを4時間にまで延伸できる。
しかしドローンをケーブルにつなぐことは、ホバリングおよび機動性という点で性能の低下を招くことになり、倉庫内での統一的運用が難しくなるという側面もある。
今後の展望 ドローンは倉庫の中を“高く飛ぶ”。
倉庫内ドローンの新たな実験や導入が向こう数年間のうちに次々と現れることをわれわれは期待している。
こうした進歩はコストの高い国々の企業が牽引していくものと思われるが、必ずしもそうであるとは限らない。
インドの各メディアは18年12月、4年に及ぶ長い禁止期間を経て、インド民間航空省がドローンの利用を適法化したと発表した。
プライバシーおよび安全面への懸念と、規制する法律がないことから、民間航空省長官は去る14年10月にドローンの利用を禁止していた。
インドの財閥であるマヒンドラ・グループの物流子会社マヒンドラ・ロジスティクスは19年5月19日、在庫管理用途へのドローン利用に先立ち、「屋内利用のさらなる規制緩和を期待している。
インドにおける解禁は屋内ドローンアプリケーションの発展を後押しすることになるだろう」とのコメントを発表した。
屋内のイントラロジスティクスには課題が残る一方、ドイツの大企業2社はこのほど、屋外のイントラロジスティクス用ドローンの飛行実験を行った。
その一つ、ZF社は工場構内でスペアパーツを届ける自動飛行ドローンの使用許可をドイツで最初に取得した企業である。
最初の飛行テストは18年中に成功裏に終わった。
もう一社のティッセンクルップスチール社は19年5月、敷地内で試験サンプルを運ぶドローンを飛ばしたと発表した。
この二つの実験は、欧州におけるイントラロジスティクス向けドローンアプリケーションの画期を成すものと言える。
これらは屋外の実験ではあっても、近い将来の屋内利用のポテンシャルを示唆するものといえるだろう。
Wawrla, L.; Maghazei, O.; Netland, T. (2019) Applications of drones in warehouse operations. Whitepaper. ETH Zurich, D-MTEC, Chair of Production and Operations Management. Downloaded from www.pom.ethz.ch © 2019 Chair of Production and Operations Management Department of Management, Technology and Economics ETH Zurich(翻訳構成 大矢英樹)
