2019年8月号
特集

《倉庫》アマゾンに挑む世界の物流起業家たち

KIVA買収が起業家魂に火を付けた  こんにちは。
GROUNDの宮田です。
われわれは決してアマゾンと戦うつもりで物流をやっているわけではないのですが、今日は大矢編集長から無茶ぶりされた「アマゾンと戦う世界の物流起業家たち」という内容を含め、海外の私の友人たちの奮闘ぶりについて、私なりに解説したいと思います。
 一人目が米ボストンのクワイエット・ロジスティクス(Quiet Logisitics)の創業者、ブルース・ウェルティです。
今年で62歳になります。
私は2010年に彼と知り合いました。
当時の私は楽天の物流担当者で、クワイエットはパートナー候補として名前の上がった会社の一つでした。
 クワイエットはアマゾンに買収される前の初期型のKIVAを用いて省人化オペレーションを実現して、複数のEC事業者に対してシェアリング型のフルフィルメントサービスを提供していました。
われわれ楽天チームはそれを日本に持ち込もうと考えたのですが、ご承知の通りKIVAは2012年3月にアマゾンに約800億円で買収されてしまいます。
 それでわれわれは諦めるしかなかったわけですが、クワイエットに対しては個人的に非常に強い想いが残りました。
2015年に私がGROUNDを立ち上げた時も念頭にはクワイエットのことがありました。
彼らのように省人化・合理化されたオペレーションを徹底的に追求していく会社にしようと。
彼、ブルースについては、今日後からもう一度、触れることになります。
 二人目はロバート・ハシモトです。
カナダのトロント出身の日系3世です。
トロントで3PLのシンク・ロジスティクス(Think Logistics)を経営しています。
シンクもやはりKIVAを使っています。
 KIVAは創業から2012年にアマゾンに買収されるまでの間に21社にロボットを提供しています。
そのうち3PLは2社だけで、一つが先ほどのクワイエット、そしてもうひとつがシンクでした。
シンクがKIVAを導入したのは2011年末。
つまりKIVAが買収される直前にロボットを購入してホームデポのeコマースのフルフィルメントを開始しました。
 年が明けて間もなくシンクはアマゾンがKIVAを買収するという衝撃の事実に直面します。
これからどうなるんだろうと案じていたところ、アマゾンのスタッフがロバートの元を訪れ、KIVAとの契約を破棄してもらいたいと伝えられたそうです。
もちろん違約金は支払うと。
 しかし、ロバートはそれを固辞しました。
「われわれのビジネスは将来大きく化けるんだ。
われわれはeコマース物流のスタンダードになるんだ」ということで、違約金を突き返して50台のロボットを使い続けた。
それだけの気概をもって物流サービスを展開しているわけです。
 その後2013年にアマゾンからシンクに再び連絡が入り、5年後の2018年にはソフトウエアの供給をストップすると通達を受けます。
そのため今はシンクはKIVAを運用できない事態に陥っている。
そこでロバートはわれわれGROUNDの開発したロボットを導入してヨーロッパに事業を広げていこうとしています。
われわれと一緒にいろいろな取り組みを進めているところです。
 3人目はカール・バーズ。
アメリカ人です。
年は私より一つ上の49歳。
2015年にソフト・ロボティクス(Soft Robotics)を創業して、ピッキングロボット「SuperPick」を製品化しています。
 ソフト・ロボティクスはケミカルサイエンスの権威として知られるハーバード大学のジョージ・ホワイト・サイズ教授の開発した特殊素材を、ロボットが商品(あるいは物)をつかむ部分、グリッパーに利用しています。
その素材とAIをうまく組み合わせて、非常に精巧なピッキングロボットを開発することに成功しました。
 多種多様な形状のモノをつかむことができます。
庫内作業の完全自動化を実現するための最後のピースを埋める技術として注目されています。
日本ではわれわれGROUNDがソフト・ロボティクスと販売代理店契約を結び製品を提供しています。
ローカス・ロボティクスの挑戦  次に紹介するのがローカス・ロボティクス(Locus Robotics)です。
2016年にアメリカのボストンで創業したベンチャーで、いわゆる自律型協働ロボットを開発している。
実はその創業者の一人が、冒頭のクワイエット・ロジスティクスを創業したブルース・ウェルティなんです。
 先ほどのシンク・ロジスティクスと同様にクワイエットも2012年5月にアマゾンから通達を受けてロボットの供給を止めると宣告されました。
クワイエットはその当時既に200台を導入してオペレーションしていました。
そのため現在のKIVAのロボットは初期型よりもかなり薄型になっているのですが、クワイエットはごく最近まで厚みのある初期型をずっと使い続けていた。
 しかし、2018年にはそのソフトウエアの供給も止められてしまいます。
そこでブルースには会社を畳むという選択肢もあったわけですが、そうしなかった。
「われわれはKIVAを使い倒した実績を持っている。
ロボットを使ったオペレーションを誰よりも熟知している」という自負があったからです。
そこで逆にKIVAを上回るロボットを開発しようと考えた。
それでローカス・ロボティクスを立ち上げたわけです。
 その話を聞いてさすがに私も驚きました。
それは私だけではないようで、アマゾンがKIVAを独占するようになった後、クワイエットはどのような選択・決断をすることになったのか。
それがハーバードビジネススクールのケーススタディにもなっています。
その講義を私自身も聞きに行きました。
 私の手元には、ローカスを立ち上げることを決意した当時のブルースからのメールが今も残っています。
「自分は新しい会社を立ち上げる。
それはKIVAのコンセプトとは全く違うものだ。
同じタイミングであなたがGROUNDを立ち上げることを嬉しく思っている」といったことが書いてあります。
 その翌月にボストンでブルースと再会しました。
ローカスが開発している協働ロボットはKIVA型よりも小型で、既存の物流施設を活用しながら手軽にオペレーションを始めることができる。
これから恐らく普及していくはずです。
日本向け自律型協働ロボットを開発  昨年3月にはブルースが来日して、ローカスのロボットを日本で展開する手立てをわれわれと一緒に検討したのですが、最終的には見送りました。
理由の一つはロボットの大きさです。
ローカスは1・5メートル以上の通路幅がないと双方向の通行ができません。
米国では問題なくても、日本の狭い物流現場だとそれが制約になってくる。
 二つ目はプライスです。
ローカスは世界同一価格で展開していく方針です。
しかしアメリカの庫内作業員の人件費は日本の約1・5倍です。
同じ価格で日本に導入すると投資対効果が厳しい。
 これから協働型ロボットが普及していくのは間違いないと考えているところなので、ローカスの取り扱いを断念するのはわれわれGROUNDにとっても苦渋の決断でした。
そこで仕切り直して、今は中国No.1ロボットメーカーのHRGと提携して日本市場で展開できる協働型ロボットを共同開発しています。
 大きさとしてはローカスの3分の2程度、横幅を抑えて日本の狭い通路でも双方向で往来できるサイズにする。
HRGと原価低減を徹底的に進めてプライスも抑える。
導入した企業が3年から5年という短期間で投資を回収できるようなコストパフォーマンスの高いロボットの開発を進めています。
今秋には新製品を市場に投入する予定です。
 それと並行してGROUNDでソフトウエアを開発しています。
自律型協働ロボットはその特徴の一つがモビリティです。
つまり持ち運びができる。
同じ施設内はもちろん、近隣の物流施設間でロボットのアロケーションを柔軟にコントロールすることで、ロボットをシェアリングする。
クワイエット・ロジスティクスの先を行くシェアリングモデルを実現していきたい。
 ということで今日は時間の制約もあって、世界の物流起業家たちを3人しかご紹介できませんでしたが、そのうちカールは49歳でブルースは61歳、決して若くない。
しかも、ブルースが起業するのはローカスで3社目です。
そのあたりにアメリカの起業家スピリッツというか、懐の深さを感じます。
日本の物流業界に足りないところだと思います。
 私自身は48歳で今日の登壇者の中では最年長に近いと思うのですが、あまり年齢のことは考えずに世界に目を向けて、新しい市場を開拓していきたいと考えています。
いろんなことに躊躇なくチャレンジしていきたい。
そうしないと日本は時代に取り残されてしまう。
 われわれの活動にご興味を持っていただけた方がいればいつでもご連絡をお待ちしています。

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