2023年5月号
特集
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明治 ドライバー不足を予見して10年越しで対策
対象ルートの約4割を中継輸送に
明治が将来のドライバー不足を懸念するようになったのは、2014年ごろだった。
物流子会社の明治ロジテックから「トラックドライバーが集まりにくくなっている。
以前はドライバーの募集を告知すると電話が鳴り響いたが、最近は鳴らない」といった報告が上がり始めた。
明治ロジテックは明治の商品のトラック輸送のうち、長距離幹線輸送と、牛乳やヨーグルトなど消費期限が短く温度管理が必要な商品の配送を手掛けている。
北海道から九州にかけて全国に35拠点を展開し、1日当たり約2300台の車両を運行している。
物流子会社が察知した物流市場の変化を、明治は深刻に受けとめた。
明治の村田信之生産物流プロセス戦略本部物流部部長は、「これは一過性的なものではなく、この先ドライバーが足りなくなっていく予兆ではないかと考えた。
今のうちに対策を進めるべきだというコンセンサスが、社内で形成されていった」と当時を回想する。
それ以来、継続的に手を打ってきた。
グループの明治乳業(当時)では05〜06年ごろから効率化策の一環として、中継輸送を検討していた。
そこにドライバー不足対策という目的が加わったことで、急速に実現へと向かった。
中継地点でトレーラーのヘッドを交換する方式を採用、関東・関西間、関東・東北間、関西・九州間を対象に長距離直送からの切り替えを進めた。
働き方改革関連法の時間外労働上限規制が施行された19年4月時点で既に、対象の10〜15%を中継輸送に切り替えていた。
さらに明治は政府主導の「ホワイト物流推進運動」への参画を表明して、中継輸送へのシフトを加速した。
現在は対象の約4割まで切り替えが進んだ。
今後も中継輸送の比率を上げていく方針だ。
積載率の向上にも取り組んでいる。
牛乳は毎日特約店に届ける必要があるため、エリアごとに特約店をルート配送するコースを設定している。
各コースの積載率は販売先の増減などに影響されて変動する。
そこで定期的にコースの変更や統廃合を行うことで、積載率を維持している。
小型トラックで運んでいたコースをまとめて大型の車両を使用したり、需要が少ない地域では同業他社との共同配送を行っている。
現在はリードタイムの延長にも取り組んでいる。
実現すればさらに積載率を高められると期待している。
納品先におけるドライバー待機時間の削減では、納品先別の待機時間を調べ、長時間の待機が発生している納品先には営業部門を介して協力を求めている。
納品時の棚入れなどの荷役作業もドライバーにさせないよう依頼している。
件数は非公表だが、付帯作業が生じている納品先の数は目に見えて減少しているという。
パレット化も拠点間の製品輸送の9割を対応させた。
2年後には95%まで引き上げる計画だ。
足元では協力運送会社の経営状況に配慮して、燃油サーチャージの見直し頻度を高めている。
21年度は年1回、22年度は半年に1回だったが、23年4月からは毎月1回見直し、燃油価格の変動に合わせた運賃に改定している。
一方、営業部門とは2024年問題に関する社内勉強会を開くなどして、問題意識の共有と、部署の垣根を越えた協力関係の醸成に取り組んでいる。
22年にはクラウドにアップした教材に各自でアクセスして学習するeラーニングも取り入れ、各自のペースで学べるようにした。
物流部物流2グループの外希泰誠氏は「営業部門からの理解は着実に高まっている」と手応えを感じ取っている。
トラックから鉄道へのモーダルシフトも開始した。
従来から同社は北海道から本州に乳原料を輸送するのにフェリーを利用してきた。
コスト対策や災害時のリスクヘッジが狙いだったが、ドライバー不足対策としてのモーダルシフトも、フェリー利用増を主軸としている。
一方、鉄道は、冬季に北海道から本州へとチョコレートや脱脂粉乳を運ぶ際などに使うことはあったが、本格的な利用には至っていなかった。
同社の製品は、温度管理が必要な品目が8割を占めている。
牛乳をはじめ消費期限が短い商品も多い。
鉄道はダイヤが乱れた場合には旅客輸送が優先されて、貨物輸送の再開に時間がかかり、消費期限の短い商品に影響が生じる懸念がある。
災害時等に停電して空調が止まるリスクもある。
そのため「当社製品の輸送には向いていないと考えてきた」と物流部の瀧山敦物流企画グループグループ長はいう。
ところが19年4月にホワイト物流推進運動に参画して以降、鉄道へのモーダルシフトにも本格的に取り組もうとする機運が社内で高まった。
そこで明治、明治ロジテック、JR貨物、全国通運の4社で協議会を立ち上げ、可能性を探ることになった。
常温商品で消費期限も長い粉末プロテイン「ザバス」を対象に検討した。
1980年発売のロングラン商品だが、近年の健康ブームを追い風に需要が伸びている。
現在は全量を2019年に新設した岡山県の倉敷工場で生産し、埼玉県と大阪府にある東西の中核物流センターを経由して全国に輸送している。
このうち倉敷工場〜埼玉物流センター間の幹線輸送の一部を、貨物鉄道に切り替えることにした。
JR貨物の岡山貨物ターミナル駅から埼玉県の越谷貨物ターミナル駅まで約770キロメートルを貨物鉄道で運ぶ。
同ルートのザバス輸送には1週間当たりトラック55台を投入してきた。
オートフロアコンテナを巡回利用 21年9月末から週1回の鉄道輸送を開始している。
これはトラック5台分に相当する。
これに合わせて、オートフロアコンテナを導入した。
荷物が床ごと電動でスライドするので、作業者はコンテナ内に入ることなく積み降ろしができる。
電動床のスライド速度は従来型のパレットローダー(荷台の床にレールを設けてパレットの積み降ろしを省力化する器具)による手動での作業と同程度なので、荷役時間はさほど変わらないが、自動化による作業負荷の軽減効果は大きい。
「ドライバーからは、オートフロアコンテナの導入でずいぶん仕事が楽になったという声を数多く聞いている」と村田部長は言う。
荷役作業の負荷軽減は、これから女性や高齢のドライバーを増強する上での環境整備にも役立つと、同社は捉えている。
オートフロアコンテナを往復利用するために、製粉や食用油製造などを手掛ける昭和産業と新たな共同化のスキームを構築した。
昭和産業は、関東の工場から関西の倉庫への製品輸送で鉄道へのモーダルシフトを検討していた。
越谷貨物ターミナル駅で、明治ロジテックが荷物をトラックに積み替えた後、オートフロアコンテナを東京貨物ターミナル駅に移動、そこで昭和産業船橋工場の荷物を搭載して神戸貨物ターミナル駅まで鉄道輸送する。
さらに神戸貨物ターミナル駅で荷物をトラックに移した後、岡山貨物ターミナル駅へと帰還する。
23年2月に運用を開始した。
昭和産業はこの取り組みで、千葉工場から兵庫県の倉庫に送る物量全体の6%を鉄道輸送にシフトした。
一方、明治も貨物鉄道の利用に伴いトラック輸送時に比べると物流コストは少し増加したが、許容範囲に収まっているという。
「ドライバーは現時点では不足していないが、早めに対策を進めていく」と明治の村田部長。
今後も鉄道を含めた輸送モードの多様化を進めていく方針だ。
物流子会社の明治ロジテックから「トラックドライバーが集まりにくくなっている。
以前はドライバーの募集を告知すると電話が鳴り響いたが、最近は鳴らない」といった報告が上がり始めた。
明治ロジテックは明治の商品のトラック輸送のうち、長距離幹線輸送と、牛乳やヨーグルトなど消費期限が短く温度管理が必要な商品の配送を手掛けている。
北海道から九州にかけて全国に35拠点を展開し、1日当たり約2300台の車両を運行している。
物流子会社が察知した物流市場の変化を、明治は深刻に受けとめた。
明治の村田信之生産物流プロセス戦略本部物流部部長は、「これは一過性的なものではなく、この先ドライバーが足りなくなっていく予兆ではないかと考えた。
今のうちに対策を進めるべきだというコンセンサスが、社内で形成されていった」と当時を回想する。
それ以来、継続的に手を打ってきた。
グループの明治乳業(当時)では05〜06年ごろから効率化策の一環として、中継輸送を検討していた。
そこにドライバー不足対策という目的が加わったことで、急速に実現へと向かった。
中継地点でトレーラーのヘッドを交換する方式を採用、関東・関西間、関東・東北間、関西・九州間を対象に長距離直送からの切り替えを進めた。
働き方改革関連法の時間外労働上限規制が施行された19年4月時点で既に、対象の10〜15%を中継輸送に切り替えていた。
さらに明治は政府主導の「ホワイト物流推進運動」への参画を表明して、中継輸送へのシフトを加速した。
現在は対象の約4割まで切り替えが進んだ。
今後も中継輸送の比率を上げていく方針だ。
積載率の向上にも取り組んでいる。
牛乳は毎日特約店に届ける必要があるため、エリアごとに特約店をルート配送するコースを設定している。
各コースの積載率は販売先の増減などに影響されて変動する。
そこで定期的にコースの変更や統廃合を行うことで、積載率を維持している。
小型トラックで運んでいたコースをまとめて大型の車両を使用したり、需要が少ない地域では同業他社との共同配送を行っている。
現在はリードタイムの延長にも取り組んでいる。
実現すればさらに積載率を高められると期待している。
納品先におけるドライバー待機時間の削減では、納品先別の待機時間を調べ、長時間の待機が発生している納品先には営業部門を介して協力を求めている。
納品時の棚入れなどの荷役作業もドライバーにさせないよう依頼している。
件数は非公表だが、付帯作業が生じている納品先の数は目に見えて減少しているという。
パレット化も拠点間の製品輸送の9割を対応させた。
2年後には95%まで引き上げる計画だ。
足元では協力運送会社の経営状況に配慮して、燃油サーチャージの見直し頻度を高めている。
21年度は年1回、22年度は半年に1回だったが、23年4月からは毎月1回見直し、燃油価格の変動に合わせた運賃に改定している。
一方、営業部門とは2024年問題に関する社内勉強会を開くなどして、問題意識の共有と、部署の垣根を越えた協力関係の醸成に取り組んでいる。
22年にはクラウドにアップした教材に各自でアクセスして学習するeラーニングも取り入れ、各自のペースで学べるようにした。
物流部物流2グループの外希泰誠氏は「営業部門からの理解は着実に高まっている」と手応えを感じ取っている。
トラックから鉄道へのモーダルシフトも開始した。
従来から同社は北海道から本州に乳原料を輸送するのにフェリーを利用してきた。
コスト対策や災害時のリスクヘッジが狙いだったが、ドライバー不足対策としてのモーダルシフトも、フェリー利用増を主軸としている。
一方、鉄道は、冬季に北海道から本州へとチョコレートや脱脂粉乳を運ぶ際などに使うことはあったが、本格的な利用には至っていなかった。
同社の製品は、温度管理が必要な品目が8割を占めている。
牛乳をはじめ消費期限が短い商品も多い。
鉄道はダイヤが乱れた場合には旅客輸送が優先されて、貨物輸送の再開に時間がかかり、消費期限の短い商品に影響が生じる懸念がある。
災害時等に停電して空調が止まるリスクもある。
そのため「当社製品の輸送には向いていないと考えてきた」と物流部の瀧山敦物流企画グループグループ長はいう。
ところが19年4月にホワイト物流推進運動に参画して以降、鉄道へのモーダルシフトにも本格的に取り組もうとする機運が社内で高まった。
そこで明治、明治ロジテック、JR貨物、全国通運の4社で協議会を立ち上げ、可能性を探ることになった。
常温商品で消費期限も長い粉末プロテイン「ザバス」を対象に検討した。
1980年発売のロングラン商品だが、近年の健康ブームを追い風に需要が伸びている。
現在は全量を2019年に新設した岡山県の倉敷工場で生産し、埼玉県と大阪府にある東西の中核物流センターを経由して全国に輸送している。
このうち倉敷工場〜埼玉物流センター間の幹線輸送の一部を、貨物鉄道に切り替えることにした。
JR貨物の岡山貨物ターミナル駅から埼玉県の越谷貨物ターミナル駅まで約770キロメートルを貨物鉄道で運ぶ。
同ルートのザバス輸送には1週間当たりトラック55台を投入してきた。
オートフロアコンテナを巡回利用 21年9月末から週1回の鉄道輸送を開始している。
これはトラック5台分に相当する。
これに合わせて、オートフロアコンテナを導入した。
荷物が床ごと電動でスライドするので、作業者はコンテナ内に入ることなく積み降ろしができる。
電動床のスライド速度は従来型のパレットローダー(荷台の床にレールを設けてパレットの積み降ろしを省力化する器具)による手動での作業と同程度なので、荷役時間はさほど変わらないが、自動化による作業負荷の軽減効果は大きい。
「ドライバーからは、オートフロアコンテナの導入でずいぶん仕事が楽になったという声を数多く聞いている」と村田部長は言う。
荷役作業の負荷軽減は、これから女性や高齢のドライバーを増強する上での環境整備にも役立つと、同社は捉えている。
オートフロアコンテナを往復利用するために、製粉や食用油製造などを手掛ける昭和産業と新たな共同化のスキームを構築した。
昭和産業は、関東の工場から関西の倉庫への製品輸送で鉄道へのモーダルシフトを検討していた。
越谷貨物ターミナル駅で、明治ロジテックが荷物をトラックに積み替えた後、オートフロアコンテナを東京貨物ターミナル駅に移動、そこで昭和産業船橋工場の荷物を搭載して神戸貨物ターミナル駅まで鉄道輸送する。
さらに神戸貨物ターミナル駅で荷物をトラックに移した後、岡山貨物ターミナル駅へと帰還する。
23年2月に運用を開始した。
昭和産業はこの取り組みで、千葉工場から兵庫県の倉庫に送る物量全体の6%を鉄道輸送にシフトした。
一方、明治も貨物鉄道の利用に伴いトラック輸送時に比べると物流コストは少し増加したが、許容範囲に収まっているという。
「ドライバーは現時点では不足していないが、早めに対策を進めていく」と明治の村田部長。
今後も鉄道を含めた輸送モードの多様化を進めていく方針だ。
