2023年5月号
特集

キリングループロジスティクス 発地と着地の双方でトラックの滞留時間を削減

バース到着前に出荷準備を開始  キリングループロジスティクスは現在、全国で1日当たり最大約4500台のトラックを運行している。
現業子会社などで200台以上の車両を保有しているが、輸送業務の大半は協力会社のトラックが担っている。
 キリングループロジスティクスの小林信弥常務執行役員物流管理部長兼輸配送戦略部長は「今後もキリングループの商品を運んでいただくためには、設定された時間内で荷物を効率的に運ぶ枠組みを当社側が整えなければいけない。
運送会社の皆さまから選んでもらえる業務を設計することを柱に据えて、各種の取り組みを進めている」と話す。
 その一環として新たに「フォーク誘導タブレット」と「OCR検品システム」を各地のビール工場に導入した。
2020年にキリンビール横浜工場から先行運用を開始して、仙台工場、取手工場、名古屋工場、滋賀工場、神戸工場、岡山工場、福岡工場の計8工場への横展開を済ませた。
 ビール工場での出荷手順は従来、次の通りだった。
まずトラックドライバーは受付後に紙の積み込み製品指示書を受け取り、指定された工場内倉庫のバースにトラックを移動させる。
指定の工場内倉庫に到着したらドライバーはフォークリフトオペレーターに紙の指示書を手渡す。
そしてフォークリフトオペレーターはその指示書を参照して出荷製品を用意するという流れだ。
 ドライバーがフォークリフトオペレーターに紙の指示書を渡してから作業が始まるため、ドライバーは出荷準備が完了するまで待つ必要があった。
 しかも、工場の敷地内には製品別に複数の工場内倉庫が存在する。
製品を積み合わせる場合は、複数の工場内倉庫で待つことになる。
「トラックが工場内倉庫を立ち寄る回数は納品する商品の組み合わせによっても異なるが、多い場合では4ストップや5ストップというケースも存在する」と物流管理部の松井志成物流管理担当部長代理はいう。
 新システムでは、入構したトラックに誘導指示が出されるのと同時に、そのトラックが向かう工場内倉庫のフォークリフトに装着されたタブレットへと積み込み製品情報が送信される。
トラックが工場内倉庫に到着する前にフォークリフトオペレーターが出荷作業をスタートできるようにした。
 一方、OCR検品システムは出荷検品を効率化する仕組みだ。
従来の検品では、荷台に積み込む際にドライバーとフォークリフトオペレーターが紙のリストを読み合わせしながら、積み込む製品の数と種類が正しいかどうかを確認していた。
それをOCR検品システムの導入によってフォークリフトオペレーターだけで検品ができるようにした。
 フォークリフトオペレーターがOCRハンディターミナルで商品コードとロット情報を読み取ると、その内容がフォークリフトに装着しているタブレットに送信され、出荷指示内容との照合を自動で行い、出荷検品を完了させる。
OCRハンディターミナルで読み取った情報と出荷指示内容に違いがあれば、そこでアンマッチと表示され、誤積みを防止できる。
これにより、出荷検品時間の短縮と出荷精度の向上を同時に達成することに成功した。
 「フォーク誘導タブレットとOCR検品システムの合わせ技によって、キリンビール工場から出発するトラックの構内滞留時間を約1割短縮することができた」と松井物流管理担当部長代理は語る。
 さらにトラックが立ち寄る工場内倉庫の数自体を減らす試みも一部で開始した。
トラックが複数の工場内倉庫を回るのではなく、出荷対象製品をあらかじめ設定した「事前荷揃えポイント」に集めることで、トラックが立ち寄る回数を削減する。
それまでは一部の現場でスタッフが人力で設定を調整していた業務を22年にシステム化した。
事前荷揃えポイントの運用は、納品商品の種類が多いトラックを主な対象に実施している。
拠点によってその割合は異なるが、配送トラックのうちの1割程度が現在は対象となっている。
 待機時間削減の取り組みは、ビール工場に続いて今年から飲料の物流拠点でも本格的に開始している。
23年2月に開設したキリンビバレッジ西名古屋物流センターと九州の飲料拠点にトラック予約受付システムを導入した。
 「まずはデータを基に拠点の現状を正確に把握して、具体的な仕組みの整備に結びつけたい」と物流管理部の渡邉良平物流管理担当は説明する。
トラックが集中する時間帯、曜日などを把握することによるバース設定や庫内スタッフ配置の最適化、シフトの改善などを構想している。
着側拠点の待機解消で卸と連携  卸と連携して着地側のトラック待機時間を削減する試みも始めている。
事前出荷情報(ASNデータ)を用いたトラック単位の検品レスだ。
18年に三菱食品と開始した後、21年には日本酒類販売とも始め、現在は東北、首都圏、九州など複数のエリアを対象に展開している。
 この取り組みでは配送先からの注文情報を配送トラック単位でまとめて、前日に発注番号や商品内容、数量、賞味期限情報などをASNデータとして配送先へ送信することで、荷降ろし時の入荷検品を簡素化している。
 従来の仕組みでは、到着したトラックからの荷降ろしと検品によって、荷受け側は配送された商品の情報を確認していた。
荷受け時に現物確認や日付手入力作業などを行うため、トラックはそれらの作業が終わるまで卸のセンターで待機する必要があった。
 それがASNデータの送信によって、荷受け側は発注した商品の到着をトラック単位で事前に把握できるため、到着商品の情報を端末などで読み取って事前に受信した情報と照合することで、素早く荷受けを完了させることができるようになった。
これにより出荷側は納品先でのトラック待機時間を削減でき、卸側もバースの回転率を高めてより効率的に荷受けできるようになった。
 「ASNデータを用いた効率化は発側と着側が同じ目線でトラック待機時間の短縮に取り組める事例の一つだと感じている。
配送トラックの待機時間削減と配送先の作業効率向上という発着双方にとってメリットがある仕組みを整えることで、物流環境の改善に取り組みたい」と物流管理部の川手英史副部長は話す。
 発地と着地でのトラック滞留時間短縮の取り組みと平行して力を入れているのが拠点に来る各種ドライバー向けの改善だ。
これまでも清潔な休憩所やトイレの整備、初めてセンターに来るドライバーに向けた構内説明の仕組み、外国人ドライバー向けの案内文書作成などを実施しており、今後もドライバーが働きやすい環境をトータルで整えていく方針だ。

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