2023年6月号
特集

低温物流の市場規模とカテゴリー別動向

23年度の市場規模は1兆8千億円に  2020年度の低温物流市場規模は、日系低温物流事業者の国内外における販売高ベースで、前年度比98・3%の1兆7500億円となった。
19年度まで好調に推移してきたが、20年度は減少に転じた(図1)。
主な要因は、コロナ禍で外食産業が大きく低迷したことを受け、飲食店等向けの業務用冷凍食品の需要が減少したことである。
巣ごもり需要により家庭用冷凍食品の需要は増加したものの、業務用の減少分をカバーできなかった。
 しかし、21年度は前年度比100・6%の1兆7600億円、22年度は同100・6%の1兆7700億円、23年度は同101・7%の1兆8000億円と予測する。
短・中期的に市場が拡大する要因としては、大きく次の三つが挙げられる。
①低温食品通販の利用率上昇 コロナ禍を背景に、低温度帯も含めた食品通販の利用率が高まった。
コロナの収束に伴い伸び率は鈍化するとしても、食品通販の利用拡大は今後も継続することが予想される。
②業務領域の拡大 一般消費者の食に対するニーズの変化や小売店等の人員不足により、近年、低温食品に対する流通加工等の付帯サービスの需要が拡大している。
低温物流事業者はサービスに付加価値をつけることによって利益率が高まることもあり、今後も付帯サービスの拡大=業容の拡大は進むとみられる。
③物流コストの増加 原油高や電力不足、人件費の高騰は避けられない脅威であり、物流コストの増加につながる要素である。
物流コストの増加分(物流価格への転嫁分)が、市場規模を底上げすると考えられる。
 一方、市場規模の拡大を阻害する要因としては、輸送の効率化による物流費の削減(効率化)が考えられる。
前向きな取り組みではあるが、運送事業者の売り上げにはマイナスに働く。
 なお、本稿における低温物流とは、5℃~18℃の定温度帯、10℃~マイナス18℃の冷蔵温度帯、マイナス18℃以下の冷凍温度帯といった設定温度帯で、主に食品などの温度管理が必要な商品を生産地から消費地まで連続して輸配送する物流の仕組みである。
 また、本調査における低温物流市場は、日系低温物流事業者(大手低温物流事業者、冷蔵倉庫事業者、低温系路線便事業者および宅配便事業者、地域の有力低温物流事業者など)の販売高ベース(国内および海外における運賃、保管料、荷役料、関連サービス料等を含む)で算出している。
大手商社や生鮮専門卸、大手食品卸、業務用卸売事業者などの販売高および、主に輸送を受託(庸車)する中小低温物流事業者・個人事業主は除外している。
物流事業者の業務領域拡大が進む  低温物流事業者は、従来はメーカーや小売・卸が自ら手掛けていた流通加工分野にも積極的に進出している。
食品スーパー等では消費者側の加工ニーズが高まっている。
しかし、自社プロセスセンターで対応できる小売事業者は限られており、店のバックヤードのスペースや人手も不足している。
それを低温物流事業者が代行している。
 食に対するニーズの変化も、流通加工業務の増加に影響を与えている。
単身世帯や共働き世帯の増加により、簡単に調理して食べられる食品の需要が高まった。
例えば、精肉や鮮魚に下味をつけた「生鮮惣菜」、レシピと必要な分量の食材がセットになった「ミールキット」、洗う・切る手間がかからない「カット野菜」などである。
これらの商品需要は、コロナ禍で外食する機会が減ることでさらに増加した。
それが低温物流事業者の、新たなビジネスチャンスとなっている。
 低温物流事業者のカテゴリーと、20年度における動向はそれぞれ次の通りである。
●大手低温物流事業者(低温物流事業の売上高が500億円以上の事業者。
食品メーカー系低温物流子会社や、幹線輸送に強みを持つ独立系低温物流事業者が該当)  コロナ禍の影響を受けた20年度においても、売上規模を維持した事業者が多く、着実に低温物流サービスを展開している。
●中堅低温物流事業者・特別積合せ貨物運送事業者・宅配便事業者(低温物流事業の売上高が200億~500億円未満の事業者のほか、特積み事業者や宅配便事業者が該当)  低温度帯の宅配便(クール宅急便、飛脚クール便、チルドゆうパック等)は、ふるさと納税や食品通販の需要拡大に伴い増加傾向にある。
●地場低温物流事業者(低温物流事業の売上高が10億~300億円程度の事業者。
単独では低温物流事業の全国ネットワークを有さず、エリアを限定して事業を展開)  エリア限定の事業展開ながら大手・中堅低温物流事業者と比べてもサービス品質は遜色なく高いレベルを提供している。
●冷蔵倉庫事業者(冷蔵倉庫による保管・流通事業を中心に展開する事業者)  冷凍食品の需要増加に伴い、冷蔵倉庫の需要も増加している。
冷凍食品の保管には畜産物の2・5倍程度の容積が必要であり、かつ長期間保管されるケースが多く、冷凍食品の増加は倉庫容積の圧迫要因になる。
 いずれのカテゴリーも、事業者によって増収・減収はまちまちだが、コストコントロール等の取り組みもあり、大幅に減収している事業者はみられない。
今後は、コロナの収束による業務用需要の復活や家庭用低温食品における新たな需要への対応がカギになると考えられる。
 一方、荷主事業者(食品小売系)における20年度の動向をみると、以下の通りスーパーマーケット、ドラッグストア、通信販売で低温物流の需要が伸びた。
その一方、コンビニエンスストアは、コロナ禍に入って低迷した。
●スーパーマーケット 家庭用低温食品の需要拡大により好調。
ネットスーパーに注力する企業も増加している。
●コンビニエンスストア これまで低温物流の主要流通チャネルであったが、コロナの影響で低迷。
●ドラッグストア 複数のチェーン店において、低温食品を主要アイテムとして取扱規模を拡大する動きが拡大。
●通信販売(低温食品) コロナをきっかけに、低温食品の通信販売需要が拡大傾向。
低温物流市場の新たな展開  歴史をさかのぼると、低温物流市場はこれまで、消費者の食文化の変化、コンビニや食品スーパー等の興隆、宅配便のクールサービスの成長などに支えられ、景気動向に大きく左右されない安定市場として堅調に推移してきた。
コロナ禍には大きな影響を受けたものの、今後も長期的には成長が続くと考えられる。
 新たな動きも始まっている。
例えば、品質管理意識の高まりに伴う低温度帯で取り扱う食品の拡大、流通加工など低温物流事業者による業務領域の拡大、低温技術の進化を背景にこれまで低温物流を取り扱っていなかった物流事業者による低温物流事業領域への参入、家庭用冷凍食品の需要増加などである。
 これらの市場環境の変化を受けて、低温物流事業者がどのようにビジネスを展開していくのか、今後の動向に注目したい。

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