2023年6月号
特集

【解説】規制緩和が農産物流通の構造を変える

花卉の卸売業と仲卸業の役割  2020年6月、卸売市場法と食品流通構造改善促進法が改正された。
その正式名称は、「卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律(平成30年法律第62号)」である。
卸売市場法と食品流通構造改善促進法の改正が一体となって行われた。
従来の卸売市場法が規定する農産物流通が現状と大幅に乖離したため、現状に合わせるために行われた法改正である。
 今回の改正は主に市場流通に関する法律の改正であったことから、メインは卸売市場法の改正となった(以下「卸売市場法」)。
卸売市場法は、青果、精肉、鮮魚、花卉といった農産物を対象にしたもので、卸売市場において適正な取引が行われること、また卸売市場を介した農産物流通の円滑化を促すことを目的に策定されたものである。
これまで何回か改正されてきたが、今回の改正は、従来の花卉流通のしくみを大幅に変更させる可能性のある、大きな意味を持つものであった。
 その詳細な考察を行う前に、まず花卉を取扱う「卸売業」「仲卸業」について整理しておきたい。
 卸売市場法に拠ると、卸売業は、「卸売市場に出荷される生鮮食料品等について、その出荷者から卸売のための販売の委託を受け、又は買い受けて、当該卸売市場において卸売をする業務を行う者」と定義される。
一方、仲卸業は、「卸売市場において卸売を受けた生鮮食料品等を当該卸売市場内の店舗において販売する者」である。
より具体的に記すと、卸売業は、生産者あるいは農協等が出荷した生鮮食料品等を、仲卸業や買参人等に販売する事業者である。
卸売業は卸売市場に常駐し、①セリ取引、②相対取引、を手掛ける。
 花卉卸売業のビジネスモデルは、グローサリー等を取り扱う卸売業とは大きく異なっている。
花卉卸売業は、多くの場合、生産者から花卉を仕入れない。
すなわち「所有権の移転」を伴わない形でビジネスを行っている。
仲卸業や買参人等に販売した額(売上高)に一定の手数料率をかけた委託手数料を、その売上高から徴収する仕組みである(買い取り仕入れの場合を除く)。
 一方、花卉の仲卸業は、卸売業と同様、卸売市場に常駐して、卸売業と小売業を仲介する。
卸売業から入手した商品を、買参権を持たない事業者(小売業等)に対し、小分けして販売する。
仲卸業は卸売業と異なり、生産者が出荷した商品を仕入れ、買い取る。
生産者が有する商品の所有権は、商流上、仲卸業等に移転される(図表1)。
 卸売業と仲卸業が提供する機能を整理すると、図表2のようになる。
卸売業は主として生産者の機能を代替する立場、仲卸業は小売業の機能を代替する立場である。
 2020年6月に施行された改正卸売市場法の主なポイントは、①「第三者販売の原則禁止」の廃止、②「直荷引きの原則禁止」の廃止、③「商物一致の原則」の廃止、④中央卸売市場を民間業者も開設可能になった、の4点である。
このうち花卉仲卸業に直接関係するのは①〜③である。
 まず①「第三者販売の原則禁止」の廃止だが、ここで言う第三者とは、卸売市場内の仲卸業や買参人以外の事業者を指す。
従来の卸売市場法では、卸売業が第三者に販売することは原則禁止とされていたが、それが法改正により出来るようになった。
卸売業が、仲卸業や買参人を中抜きして、直接小売業に販売することが可能になったわけである。
これによって仲卸業は、既存の取引の一部を失うことになるかも知れない。
 ②「直荷引きの原則禁止」の廃止は、①とは逆に、仲卸業による卸売業の中抜きである。
「直荷引き」とは、仲卸業が生産者から、卸売業を通さず商品を仕入れることを言う。
従来の卸売市場法では、仲卸業が商品を仕入れる際は、市場内の卸売業を経由させることが義務付けられていた。
この規定が廃止となり、仲卸業による卸売業の中抜きが可能になった。
仲卸業にとっては、新たなビジネスチャンスの到来になるだろう。
 ③「商物一致の原則」の廃止は、いわゆる「商物分離」の解禁である。
従来は生産者が出荷した花卉は、商流上も物流上も卸売市場(卸売業)を経由させることが義務付けられていた(市場外流通を除く)。
今後は、例えば売買は卸売業が担うが、実際の商品は、生産者から直接仲卸業あるいは小売業に届けることができるようになった。
グローサリー卸売業等では一般的に行われている商物分離が農産物でも可能になったということである。
 なお、花卉卸売業と仲卸業の許認可に関しても変更があった。
改正卸売市場法施行前は、中央卸売市場においては、卸売業は農林水産大臣、仲卸業は市場開設者による許可が必要だった。
地方卸売市場においては、卸売業は県知事、仲卸業は市場開設者の許可が必要だった。
これが改正法下では、中央卸売市場および地方卸売市場の双方において、卸売業および仲卸業に関する定めがなくなった。
卸売業や仲卸業は、より自由度の高い企業経営を行うことが可能になった。
 このように改正卸売市場法の施行により、仲卸業のビジネス環境は大きく様変わりした。
以下のケーススタディでは大手仲卸業が現状をどう捉え、今後の経営戦略をどう描いているかを考察する。
(注)寺嶋正尚「花卉卸売業の提供機能に関する基本的考察」(2022年3月)(商経論叢、神奈川大学経済学会)の一部をベースに執筆した。

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