2023年6月号
特集

ケーススタディ:大手仲卸の対応と経営展開

みづき 流通加工を武器に量販店向けを拡大  みづきは、秋田県秋田市の中央卸売市場に本社を置く仲卸業である。
同市場には、卸売業の秋田生花があるが、みづきは売上高において秋田生花を凌駕している。
こうした事例は、全国に数例しかない。
 画像1は、同社が市場内に2015年に竣工した低温物流センターである。
日々の業務で、他市場等に転送する際に用いている。
物日(祭りや祝い事などが行われる日)に商品が増える際などは、保管スペースとしても使用している。
冷蔵機能を兼ね備えている。
 本記事を執筆するにあたり、秋田市中央卸売市場にみづきの大沢重己社長を訪ねた(画像2)。
同氏をインタビューして感じたのは、強いリーダーシップ、意思決定の潔さ、そして何より人を惹きつけて止まない人柄である。
同社の魅力は社長その人に起因しているということだろう。
 同社の2022年3月期の売上高(取扱高)は約23億円、従業員数は約60人(正社員・パート合計)である。
青果の仲卸業である松紀が親会社であり、みづきの株式を100%保有している。
創業は1991年11月。
まずは、それ以前の大沢社長のキャリアと会社設立の経緯について尋ねた。
 「私は大学を卒業後、アパレル関連の企業に勤めておりました。
服が好きだったものですから。
当時、私の父は松紀の専務をやっておりました。
1994年に、秋田市中央卸売市場に『花の市場』が出来るということになりました。
洋服と花と言うのはね、ある意味関連性があります。
色とかデザインとか。
それで松紀の社長に、『花をやってみないか?』と言われましてね。
『みづき』を設立し、現在に至ります」  秋田市中央卸売市場における同社のシェアは平均すると65%程度、秋田県内の生花店における同社のシェアは80%超とのことである。
ただし、同社はセリに参加していない。
その理由については次のようなコメントがあった。
 「今は先取りと前注文のみです。
言い方が悪いかも知れませんが、セリには“余りもの”しかかからない。
前はセリにも参加していました。
けれどね、お客さまである花屋さんとセリで競合して花を買うのもおかしいなって言う話になりまして」 量販店向けビジネスの強化  同社はこれまで、総合量販、ホームセンター、スーパーマーケットなどのチェーンストア向けビジネス(量販向け)を強化してきた。
売上構成比は「量販店向けと生花店向けは、55:45くらいの比率」であり、「秋田県の量販店向け花卉の95%はウチからだと思います」とのことであった。
 さらに「弊社の全体の売上高に占める、秋田県以外での売上高は全体の3〜4割」「県外は量販店向けしか手掛けていない」とのことであった。
生花店向けは、秋田県内でしか行っていないことになる。
 同社が量販店向けを強化してきた背景には、親会社である青果の仲卸業・松紀の経営方針が大きく絡んでいる。
 「弊社は従来、生花店さんとの取引をメインに、ビジネスを行ってまいりました。
しかし、親会社の松紀は、八百屋さんが淘汰されていくのを見て、量販店向けビジネスに着手したんです。
ナショナルチェーン中心ですが、それ以外にも、秋田県のローカルスーパーさん向けビジネスを強化した。
そして花に関しても、『いずれ花も生花店さんじゃなくて、量販店で売る時代が来るだろう』と。
そうしたこともあり、松紀グループ全体で量販店向けビジネスを強化してきました」  筆者が「量販向けの比率は年々伸びているのですか」と尋ねると、「そうですね。
まだまだ量販店向けは伸ばせるんですけれど、今の施設を前提としますと、これ以上増やすのはキャパオーバーなんです。
なので、秋田県外・県内を問わず、拠点を新設することも視野に入れ、検討しています」とのことであった。
 従来の重要な顧客である生花店向けビジネスに対する配慮から、量販店向けビジネスの強化には二の足を踏む仲卸業も少なくない。
しかし同社は後述するように、生花店にも十二分に配慮する形で、量販店ビジネスを拡大させている。
花束加工機能の強化  みづきは2008年7月、花束加工業務に特化した「ブーケティング低温センター」を設立・稼働させた(画像3)。
 「当時、松紀の社長と2人で、まぁ、設計屋さんも一緒に同行してもらって、全国の花束加工をやっているところを見に行ったんです。
ところが参考になるところがない。
やっていても色々不具合があったりしましてね。
それでも何カ所か見たなかから良いとこどりをして、自分たちで図面を引いて、そして完成させたのがブーケティングセンターです」  花束加工業務の特徴について尋ねると、「花束加工はね、中途半端だと儲からないんです。
販売先の店舗数が一定規模に達しないと、加工をやっていてもね、儲からないんです。
薄利多売ですから」とのことであった。
 ブーケティングセンターの稼働率については、「今、弊社のブーケティングセンターはフル稼働しています。
特に物日は大変です。
1日に4万5千束くらい作っています。
1日2交代制で人は入れ替わりますが、機械は24時間稼働させています」とのことであった。
 花束加工センターを設立・稼働させるにあたり、従来の取引先である生花店からの反発はなかったか尋ねた。
 「最初はね、このブーケティングセンターをやった時は、花屋さんからすごいバッシングがあった。
『みづきは花屋の邪魔をするのか』と。
まぁ、われわれも仲卸業をやっていますからね。
花屋さんからそういうクレームがありますと、これは何とかしなきゃなって。
確かに量販店が花束を販売するようになりますと、花屋さんの売り上げは下がります」  「そこで考えましたのがね、花屋さんへの業務委託です。
今われわれは、加工場にね、機械(ライン)が7台あります。
ただ1000円以上の大きな花束だと、機械に入らないんです。
束が太くなってしまう。
機械にかけられないので、手作業になっちゃう。
その手作業の部分やアレンジの部分、これを花屋さんに作ってもらうことにしました」  筆者が「でも本当は、御社でもできるんじゃないですか」と尋ねたところ、次のような返答があった。
 「まぁ、やれますけれどね。
でも、われわれ素人がやるのと、技術を持っている花屋さんがやるのとでは、やっぱり出来栄えが違いますよ。
アレンジをお任せする花屋さんもいるし、1000円以上の大きなブーケをお任せする花屋さんもいる。
大きな仏花をお願いするところもある。
委託する内容はね。
花屋さんごとに分けているんです。
そうするとわれわれと花屋さんはね、お互いWin-Winでいられる」  「ウチばっかり儲かると言うのではなく、これまでお付き合いのあった花屋さんと共存共栄していかなきゃならない。
じゃあ、どうしたら良いのか、常に考えてまいりました。
委託している花屋さんには、花材(資材)から、アレンジを入れる段ボールまで、全部ウチが供給しています。
技術料だけをお支払いするシステムです。
そういう形ですと、花屋さんの経営上のリスクはないですしね」  同社は、量販店向けビジネスを強化・拡大させながら、従来の取引先である生花店にも利益をもたらす仕組みを構築した。
同社が総合商社的な機能を果たすことで、秋田県における花卉市場全体の振興に努めてきたと言えるだろう。
関連資材の取り扱いを開始  同社の本社の隣には、花卉に関する資材(花器、リボン、ペーパー等)を販売する店舗がある(画像4)。
セリのある毎週月・水・木・金だけ、朝の9時から夕方5時まで営業している。
同社が競争入札で手に入れたスペースだという。
 「元々その場所に、資材を扱う資材メーカーさんがいらしたんです。
パートさん1人置いているだけで、申し上げにくいけれど、品揃えもあまり良くなかった。
業績があがらないから、出て行かれたんでしょうね。
そこが空いたんです。
で、その場所に出店しました。
(お客さまは)市場に花を買いに来られた方だとか、あとはセリには来ないで遠方からいらっしゃる方だとか。
家賃も安いし、人件費はパートさんくらいなので、儲かっています」  秋田市中央卸売市場に花卉を買いに来た人が、関連商品をワンストップで揃えられるように配慮したわけである。
きめ細かな顧客サービスと言えるだろう。
改正卸売市場法施行による影響  最後に、改正卸売市場法の施行が、同社の経営にどのような影響を与えたか、また今後の方針をどのように描いているかを尋ねた。
「今回、卸売市場法が改正になり、『直荷引きの原則禁止』の廃止が決定しましたが、御社の場合、秋田生花さんを通さない形での取引については、どうお考えですか」と質問した。
 「荷受けさん(秋田生花)を通さない形は、あんまりやっていないです。
まぁ、生花さんを通すメリットがありますしね。
弊社の場合、配送費などの物流費が結構高いんです。
われわれが自社で物流をやるより、生花さんを通してやった方が安くなる。
ウチはブーケを扱う部署(ブーケティングセンター)がここ(秋田市中央卸売市場)から15分くらい離れているんですが、そこへの配送をやってもらっています。
あとは生花さんは、納品する時に部門別にきちんと陳列してくれる。
そういうメンテナンスもしっかりやって頂けるものですから、生花さんを通すメリットは大きい」  さらに「社長ご自身は、今回の市場法の改正について、どのようなお考えをお持ちですか?」と尋ねた。
 「あまり気にしていないですね。
ルールはルールで、われわれはそれをしっかり守りながら、そのなかで最適な戦略をとろうと思っています。
秋田生花さんにしましてもね。
やっぱり産地さんやJAさんと直結しているっていうのは、卸さんならではだと思います。
われわれ仲卸っていうのはね、今でこそ産地さんやJAさんとも取引ができますけれど、やっぱり荷受けさんが連結してくれていたので、われわれも産地さんやJAさんと取引ができたんですよね。
今後に関しても、荷受けさんと仲卸業が共同体としてね、一緒になって取り組んでいくのが良いんだろうと思います」  大沢社長は秋田生花の元社長をはじめさまざまな市場関係者との人間関係を重視してきた。
「私は運が良かったと思うんです。
秋田生花さんの前任の社長さんね、苗字が大沢っていうんですよ。
私と同じ苗字。
良く親子に間違えられました。
すごくお世話になりましてね。
なので、なんで秋田生花さんを通さなきゃならないんだって話になると、やっぱり義理人情でね、私はあの大沢社長にここまで育ててもらったっていう思いがあります」  「ウチが秋田生花さんを通さないと、秋田生花さんは、売り上げが激減しちゃう。
そういうことはしたくないんです。
やっぱり付き合いっていうか、共存共栄しながら、お互いWin-Winの関係でね。
弊社だけ独り勝ちするなんていうことではなく、やっぱり業界全体を盛り上げていかないと。
花屋さんも含めて。
そうじゃないと、秋田なんてそもそも人口減少が進んでいますしね」  単に経済合理性を追求するのではなく、秋田県全体の花卉市場の振興を念頭に、花卉卸売業である秋田生花との良好な関係性の中で現在そして今後のビジネスを描いていることが分かった。
 以上、みづきの事例を考察した。
花束加工業務を早急に同社の強みに育て上げ、それを武器に量販店向けビジネスを少しずつ拡大させていった経営展開は、他社にとっても大いに参考になるだろう。
人手のかかる、つまりはコストのかかる流通加工機能に注目し、そこで利益が出せるビジネスモデルを確立したのである。
 その過程において、同一市場にいる花卉卸売業の秋田生花との付き合いを重視し、その帳合いを大事にしていること、また従来の取引先である生花店に関しても、引き続きつながりを重視している点など、地元全体で花卉ビジネスを盛り立てて行こうとする考えを伺うことができた。
地方における仲卸業のあり方として一石を投じるものであり、優れた先進事例と言えるだろう。
フローレツエンティワン 新たな価値を提案して需要を創造  フローレツエンティワン(フローレ21)は、東京の世田谷中央卸売市場に本社を置いている。
同社の小池雅也社長に面会するため、大田区の大田市場内にある事務所を訪ねた(画像5)。
続いて静岡県御前崎市にある同社傘下の武農園まで車で社長とご一緒して、その道中を含め、終日話を伺う機会を得た。
 同社は、従来の花卉卸売業や花卉仲卸業の概念を遥かに超えたビジネスを展開している。
ヨーロッパの花屋等における社長の個人的な経験をもとに、ヨーロッパの花文化を日本に伝える「美の伝道者」として、小売店や消費者に花を販売することを通じて「美」を提供することを追求している。
 これを実現したのは社長の強いリーダーシップと、研ぎ澄まされた美的感覚に拠るところが大きい。
また、武農園までの道中、そして武農園において、同社の社員の方々に多数お目にかかった。
小池社長が社員と家族や友人のように接して、ざっくばらんに意見交換する姿が印象的であった。
そうしたフランクさも社長の魅力の1つであろう。
 同社は総合商社である丸紅の資本参加を受ける形で1989年12月に設立した。
ただし、その前身となった株式会社フローレは1985年3月に東京都渋谷区幡ヶ谷の地で産声をあげている。
さらに実際の創業は1968年、現社長の実父の小池潔氏が、東京都府中市に「花よし」という小売り兼仲卸業を設立したことに端を発する。
 現社長の雅也氏は次のように説明した。
「現在でも、多摩霊園とか小平霊園とかでは、トラックにいっぱい花束を積んで売り歩いています。
これを『引き売り』と言いますが、これは弊社の創業時のビジネススタイルです。
花は、花束に加工して販売しておりました」  「花よし」は現在も府中の地で花屋として営まれている。
同社の戦略に合致した、洗練されたスタイリッシュな店舗である(画像6)。
複数市場で買参権を取得  同社の沿革で特筆すべき事項の1つは、1994年4月に新宿区原町にあった地方卸売市場「飯田橋生花市場」の経営権を取得したことであろう。
 「当時、弊社は既に渥美、大分、沖縄などの花卉を、直荷と言うんでしょうか、産地のものを扱い始めておりました。
それから当時は、丸紅と一緒に、直接海外から商品の買付けを開始した時期でもありました。
そういう時期でしたので、直荷がかなり膨らみまして、それだったらその分を飯田橋市場(の帳合い)に付けようと。
そういうことで、卸売市場の経営もやっていけるんじゃないかと考えました」  その後、丸紅との資本提携は2005年に解消したが、飯田橋生花市場の経営は2010年まで続けた。
そこで培った市場運営の経験は、フローレ21の現在の幅広い事業展開の礎になっている。
 同社の2022年3月期の売上高(取扱高)は約50億円。
従業員数は正社員約60人・パート約70人の計約130人である。
売上構成比は、ウェディングや葬儀関連が約4割、小売向けが約4割、加工業務が約2割であり、いずれのカテゴリーも売り上げは伸びているという。
 現在、同社は大田市場、世田谷市場、葛西市場、板橋市場の4つの市場に仲卸業として支店を出している。
既に多くの卸売業から仕入れる体制を整えており、改正卸売市場法が施行されたことのメリットはさほど大きくないと思われる。
その点を尋ねた。
 「弊社が出店しているのは4市場ですが、それも含めて現在14市場との取引があります。
なにわ、鶴見、名港、南関東、川崎北部、大田、FAJ、世田谷、葛西、東日本、多摩生花、第一花きなどです。
弊社はこれまでも多くの市場から買ってまいりました。
今回、許可されたことは、ほとんどやってきました。
改正市場法施行の影響はあまりありません」  今回の改正卸売市場法の施行により、仲卸業は場内卸売業を中抜きして、産地から直接花卉を仕入れることが可能になった。
しかし同社は、直荷引きが原則禁止とされていた時代から、複数市場で買参権を取ることで実質的に自由に取引を行ってきた。
まさに先見の明のある取り組みであったと言える。
カタログを使ったプロモーション  同社のビジネスの基本理念は、「ヨーロッパの花文化の伝承」である。
これは社長が若い時分に、ドイツ、イギリス、スペイン等の花屋に勤務した経験に基づいている。
 「ヨーロッパは私にとって原点と言うか、バイブルみたいなものです。
ヨーロッパの色々な国に行き、色々な国の花屋さんで働いてきました。
西ヨーロッパはほとんど全て行きました。
オランダ、ベルギー、イタリア、オランダ、スペイン、デンマーク、フランス、オーストリア、スイス、ハンガリー、ポーランド…。
少なくとも50回は行っています。
やはりヨーロッパは、花の先進国だと思うんです。
花に関する文化が育っている」  さらに続けた。
「花は、最終的には『美』だと思うんです。
その『美』で需要を高める以外にない。
美とデザインしかない。
仏壇がどんどんご家庭からなくなっていっているわけですから、これまでのように仏花に頼っているわけにはいかない。
高度成長期は、花の需要は仏壇と葬儀に支えられてきましたが、これからの花屋さんは、美やデザインをきちんと訴求していかないとダメだと思うんです」  こうしたなか同社が手掛けているのが、2012年に開始したブランド展開「東京植物図譜」である。
当初はカタログを使ったBtoB向けのプロモーションとして開始したが、現在はオンラインショップを開設、B2Cも手掛けている。
インスタグラムも毎日更新している。
 「最初は紙ベースで、ひと月に3産地ずつ、品種やデザインの紹介をしておりました。
それを6年くらいやりました。
最近はウェブ上のショップで、一般の消費者に対しても販売し始めました。
これが結構、売れているんですよ」とのことであった。
 さらに現在は、「Recommended Plant」「Recommended Flowers」「Recommended Items」というタイトルを付けた生花店向けパンフレットを制作・配布している(画像7)。
年2回、1回当たり5000部印刷している。
冊子の裏には、写真で扱われた花の名前、生産者の名前、花器等が記されている。
 「色々な産地の花を花屋さんに提案する冊子ですが、デザインは、ヨーロッパの花屋さんのイメージです。
これを全部無料で配布しています。
私は仲卸業に入ってから、ひたすら花屋さんにこれ(ヨーロッパ風のパンフレット)を配って、美やデザインを投げかけてきました。
花屋さんや一般の人たちに対して、強烈なインパクトを与えていかないといけないと思っています」  近年は輸入品も取り扱っている。
「私が元々ヨーロッパにいたこともあり、ヨーロッパから色々なものを直輸入しています。
これは(写真を指さして)、オランダ、ベルギー、ドイツから、弊社が直接コンテナで仕入れたものです。
私が定期的にヨーロッパに直接買付けに行っています。
最近も40フィートコンテナ4本分を仕入れました。
ヨーロッパからの輸入に関しては、花瓶などの資材も扱っています。
そのうち数社は弊社で直接ライセンスを取り、日本ではウチでしか販売を行えないようにしています」  同社は従来の仲卸業のように、生花店からの注文を待つだけではなく、「美やデザイン」を提供して、花のある生活を提案することで、日本になかった市場を開拓して新たな需要を創出している。
これまでの仲卸業の概念を打ち破る、画期的なアプローチであることを実感した。
生産事業への進出  同社は、これまで切り花の取り扱い比率が高かったが、近年は鉢物の取り扱いにも力を入れている。
前述の生花店に配布するパンフレットで紹介されていたのも、その多くは鉢物であった。
 鉢物の強化にあたり、社長自ら2017年頃から全国の産地を回った。
そしてハウスに置きっ放しにしてされていた観葉植物にビジネスチャンスを見出した。
「現地に100鉢置きっ放しにされていたとしたら、そのうち2~3鉢は、誰も見たことのないものであり、商材として魅力に溢れたものでした」という。
 東京から約400キロ圏内の千葉、茨城、群馬、栃木、山梨、長野、静岡、三重、岐阜、愛知をターゲットに定め、そこにある産地を定期的に回るようになった。
本来、産地を積極的に回るのは、主として集荷機能を提供する卸売業の業務であるが、それを仲卸業が行ったわけである。
 そうしたなか2019年に、アジアンタム等のシダ植物の産地として全国に知られる静岡県御前崎市の武農園から事業譲渡を受けた。
当時、武農園は社長の逝去を受けて事業を畳むことを発表していた。
 小池社長は同農園および亡くなった社長と生前から深い親交があった。
その廃業を耳にして事業継続と再建に手を挙げた。
それからわずか数年で見事に同農園の経営を再び軌道に乗せた。
近年は生産設備も増設して全国から注文を集めている(画像8)。
 こうした生産事業への進出は、仲卸業はもちろん卸売業でも、あまり例がない。
生産から販売までサプライチェーン全体を傘下に収め、トータルで花の提供を行っている同社の事業展開は、仲卸業界だけでなく花卉業界全体にとって注目すべき先進事例と言えるだろう。
 以上、フローレ21の取り組みを考察した。
通常の仲卸業は特定市場に支店を出し、その場内仲卸業として事業を行っている。
原則として、同一市場内にある卸売業から商品を仕入れ、それに小分け等の機能を付与して、生花店等に販売している。
 しかし、フローレ21はそうした基本的な枠組みを大きく踏み出して、花を取り扱う総合商社のようにさまざまなビジネスを展開している。
改正卸売市場法施行前から法律の規制を受けない形でのビジネスを考案して自由に経営してきた。
そのため法律が変わったところで、それが制約条件になったり、逆風になったりすることはない。
むしろようやく時代が同社の戦略に追いついたということなのかも知れない。
(注)みづきとフローレ21のケーススタディは、寺嶋正尚「改正卸売市場法施行後の花卉仲卸業の経営戦略に関する一考察」(2023年5月)(商経論叢、神奈川大学経済学会)の一部をベースに執筆した。

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