2023年6月号
特集

【Interview】霞ヶ関キャピタル 杉本 亮 副社長 「環境にも人にも優しい低温施設を開発する」

「ノンフロン」は譲れない一線 ──冷凍冷蔵施設の開発に参入した理由は?  「当社はもともと東日本大震災で被災した宮城県のショッピングセンターを再生するために2011年9月に合同会社として発足しました。
その後、ショッピングセンターの屋上に太陽光発電設備を導入し売電する自然エネルギー事業や不動産コンサルティング事業に参入しました。
常に社会課題を解決することを重視して事業に取り組んできました」  「冷凍冷蔵倉庫に着目したのも、物流不動産の中でも特に今後のニーズが見込まれる施設であるのと同時に、多くの課題を抱えている分野でもあるからです。
冷凍冷蔵設備の冷媒に用いられるフロンはオゾン層を破壊するため、規制強化で30年までに全廃することが義務付けられています。
しかし、国内はまだまだ切り替えられていない倉庫が多い。
現在は広く使われている代替フロンも二酸化炭素(CO2)の約1万倍の温室効果があると言われていて、問題が大きい。
代替フロンもいずれ規制が強化されることを予想しています」  「今や『SDGs(国連の持続可能な開発目標)』は事業を進める上で避けて通れないテーマですし、われわれが環境負荷の低い自然冷媒を採用したノンフロンの冷凍冷蔵倉庫を供給することには社会的意義があると自負しています。
荷主さんからは代替フロンを使うことなどで建設コストを抑え、賃料を安く設定してほしいとのご要望をいただくことがありますが、われわれとしては、ノンフロンは譲れない一線です」 ──「LOGI FLAG (ロジフラッグ)」ブランドで展開されている物流施設開発のうち、冷凍冷蔵倉庫の進捗状況はいかがでしょうか。
 「これまでに千葉県の市川市と船橋市の2件が竣工し、市川の方はSBSゼンツウさんが1棟全体の利用を決められました。
船橋も引き合いが多く寄せられています。
順調な滑り出しだと思います。
他にも竣工前ですが、京都伏見で三友通商さん、横浜港北で日本ロジテムさんとそれぞれ契約させていただきました」 ──冷凍冷蔵倉庫のマーケットをどのように見ていますか。
 「ニーズは大きいですね。
冷凍食品の利用増加に加え、倉庫設備の更新が進んでいなかったり、冷凍冷蔵倉庫を供給しているプレーヤーの数が限定的だったりすることが背景にあると思います。
ただし、事業を始めてみて気が付いたのですが、テナントの希望されるサイズは大規模なものだけでなく、500坪や1千坪といった小規模のものも結構多い。
“賃貸スペースの小口化”の傾向はドライ倉庫より強いように感じます。
そこにどう取り組んでいくかが次の課題です」 ──最近、デベロッパーの間で最初から特定の顧客を決めないマルチテナント型冷凍冷蔵倉庫の開発を目指す動きが出ています。
そうした新しい手法はテナントが決まらないリスクも抱えていますが、事業を拡大していく上では有効でしょうか。
 「そう思いますね。
弊社でも例えば、福岡県の古賀市でマルチテナント型の冷凍冷蔵倉庫の案件を計画しており、1区画当たり1千坪程度を想定しています。
これまでの経験から確たるテナント候補が必ずしも決まっていなくても、マルチテナント型として冷凍冷蔵倉庫を開発することは可能だと感じています」 ──国内外の投資家からは、賃貸型の冷凍冷蔵倉庫は適正な賃料の相場観が不明確など、マーケットとして十分機能していないため投資しにくいとの声を聞いています。
投資マネーを呼び込んでマーケットを健全に成長させていくには、そうした面でも対応が必要では?  「海外の投資家に話を伺うと、欧米とアジアはともに冷凍冷蔵倉庫の賃料はドライ倉庫のだいたい2倍程度なんだそうです。
実際、冷凍冷蔵倉庫の建築費はドライ倉庫の2倍以上掛かりますから、それくらいの水準で賃料設定しないと現実的に割に合いません。
弊社で開催した物流施設の内覧会の際、来場された方にアンケート調査をしたところ、賃料はドライの2倍程度を想定されている方が多いことが分かりました。
建築コストの高さなどへの理解が広がっていると思います。
今後は2倍というのが一つの基準になるのではないでしょうか」 冷凍倉庫の完全自動化に大きな意義 ──物流施設の需要は旺盛ですが、最近の資材高騰は供給面で大きな障害になっているのでは?  「われわれも苦しんでいます。
ゼネコンさんに工事を一括発注するのではなく、冷凍設備や防熱工事といった領域ごとに分離発注してコストを抑えるなど工夫して何とかしのいでいます。
ただし、鉄鋼などの資材高騰は落ち着いてきましたが、土地代が下がってこない。
最近は開発用地の入札で、デベロッパーからの応札がなく不調に終わるという話も聞くようになってきました。
なかなか事業環境は厳しいのですが、ここは辛抱のしどころです」 ──御社は以前から冷凍冷蔵倉庫の自動化を打ち出しています。
なぜそこに注目されているのでしょうか。
 「人が働く環境として冷凍のマイナス25度は相当に過酷です。
その作業を完全自動化することは労働環境の改善という意味で大きな意義があります。
加えて、倉庫設備を自動化したテナントさんに聞くと、作業時のヒューマンエラーがなくなる。
この点について、荷主や物流企業の皆さんは大きなメリットを感じているようです。
最初に申し上げた通り、自動化はわれわれが目指す社会課題解決につながりますし、人に優しい冷凍冷蔵倉庫はSDGsの考え方にも合致しています」  「当社として自動冷凍冷蔵倉庫は今、埼玉・所沢、青森・八戸、神奈川・川崎で計3件を進めています。
青森・八戸の案件はJA三井リース建物さんと共同で開発する方針を発表しました。
竣工ベースで第1号となるのは24年の夏から秋ごろの完成を予定している所沢の案件になると思います。
合弁を組んでいる三菱HCキャピタルさんやJA三井リース建物さんとは今後も連携していきます」 ──自動化は、具体的には自動倉庫を活用するとともに、AGV(無人搬送ロボット)を入出荷に採用するようなイメージでしょうか。
 「ドライの倉庫で扱う商品は大きさや荷姿が多種多様ですが、冷凍冷蔵の商品は基本的に段ボールのケースに入っているものばかりでパレットとの相性が非常に良いと感じていますので、倉庫部分はパレットで保管するクレーン型の自動倉庫を考えています。
保管以外の入出庫の過程はAGVを使うのか、それともAGF(自動フォークリフト)にするのか、いろいろと可能性がありそうです。
メーカーなどさまざまな方ともお話をしながら決めていきたいですが、荷姿がある程度想定できる冷凍冷蔵の荷物は国や物流業界が推し進める物流容器やオペレーションの標準化がしやすく、庫内作業も自動化に向いていると思います」 ──最近は冷凍冷蔵倉庫に参入するデベロッパーが増えています。
競争はさらに激化していくのでは?  「大手のデベロッパーは皆さん、冷凍冷蔵倉庫開発事業への参入機会を虎視眈々と狙っておられると思います。
霞ヶ関キャピタル1社単独で事業を展開するよりも2社、3社と複数で取り組んだ方が健全なマーケットが形成されていきますから、他のデベロッパーの皆さんとはライバルでありながらも、マーケットを築いていくという点ではパートナーとして、ぜひ一緒になって盛り上げていきたいですね」

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