2005年2月号
特集
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在庫削減はどこまできたか NEC――トヨタ生産方式を全分野に導入
FEBRUARY 2005 12NEC――トヨタ生産方式を全分野に導入NECは約10年かけて棚卸資産を半分に減らした。
トヨタ生産方式の導入や物流ネットワークの再構築といった取り組みが奏功した格好だ。
パソコンや通信機器で培ったノウハウを半導体など他製品に横展開することで、さらなる在庫削減を目指している。
(刈屋大輔)かんばん方式で調達在庫を削減NECの棚卸資産が減り続けている 九六年の時点で同社の棚卸資産は一兆円を超えていたが この一 二年は五〇〇〇億円台で推移している 棚卸資産回転期間も直近の数字で一・三七カ月と こちらも九六年と比較すると二分の一の水準にまで改善されている 同社は九三年に生産革新運動をスタ トした グル プ会社であるNEC長野を皮切りに 全国各地の工場で改善活動を展開 セル生産への移行などに取り組んだ しかし一連の活動は大きな成果を上げるまでには至らなか た 実際 同社の棚卸資産の総額は生産革新運動を開始して以降 しばらくの間 横這いの状態が続いた 同社では棚卸資産が思うように減らなか たのは改善活動の対象を工場内に限定していたためだと分析している プロセス改革推進本部の五十嵐賢一生産プロセス推進部長は 結局 工場という個別部門の最適化には限界があ た 部材の調達から生産 販売までのサプライチ ン全体の見直しに着手しないと全社的な在庫は一向に減 ていかないということが分か た と述懐する 同社が従来の生産革新運動を SCM生産革新 という呼称に改め サプライチ ンの全体最適に向けた動きを本格化させたのは二〇〇〇年だ た 過去の反省を踏まえ 今回は調達 生産 販売 物流までを含めた業務プロセス全体の再構築に乗り出した その際に手本にしたのはトヨタ自動車だ た トヨタ生産方式に詳しいコンサルタントをアドバイザ として招聘 専門家の指導の下 トヨタ流のモノづくりの思想や現場改善のノウハウなどを社内 そしてグル プ全体に浸透させてい た まず取り掛か たのは生産の現場に かんばん方式 を導入することだ た かんばん方式とは生産で使用した部品がどれだけあるのか その情報を かんばん に載せて前工程に戻し 補充させる仕組みである トヨタは資材や部品を生産ラインに多頻度で納入することで 工場内に滞留する資材や部品の在庫をミニマム化することに成功している NECが最初にかんばん方式の対象にしたのはパソコンなどコンピ タ製品の生産を担当する工場だ た 工場ではそれまで資材や部品の調達を週単位で行 ていたが かんばん方式の導入に伴いデイリ 日次 に切り替えた 従来はベンダ 主導だ た調達物流をNEC主導にするなどベンダ 各社との取引形態を見直すことで トヨタと同様 必要な量だけを調達する体制に改めた その結果 工場では資材や部品の在庫を従来の五分の一に減らすことができたという コンピ タ系の生産拠点でかんばん方式の効力を確認したNECはその後 他分野への横展開を進めてい た ル タ などLAN製品を扱う通信系の工場を経て 最終的には半導体の生産拠点でもかんばん方式の採用に踏み切 ている 当初 半導体の工場はかんばん方式に難色を示していた 半導体は コンピ タや通信機器のような組み立て型ではなく 生産システムが自動化されている装置型のビジネスである そのため大量一括で生産したほうが生産効率が高い 少量ずつ売れた分だけ生産することを原則とするかんばん方式は半導体には馴染まない という意見が根強か た しかし現場サイドを粘り強く説得し続けた結果 二〇〇二年にかんばん方式に移行させることができた 現在も半導体ではかんばん方式の運用方法をめぐ て試行錯誤を繰り返しているものの 徐々に軌道に乗事例研究 5期連続削減企業のマネジメント13 FEBRUARY 2005りつつある 効果も出始めてきている 五十嵐部長 という 物流網整備で製品在庫を一元管理一方 製品在庫の削減で大きく貢献したのはデリバリ 改革だ た もともと同社では在庫機能を持 た販売物流用の拠点を全国各地に用意していたが これを 在庫を持つ 拠点と 在庫を持たない 拠点に機能別に整理した 錯綜していた工場 得意先までのモノの流れを再構築して 拠点数そのものを削減すると同時に 製品在庫の集約化を図 た まず 在庫を持つ 拠点として東西二カ所にDOC デリバリ ・オペレ シ ン・センタ を設置した そしてここではコンシ マ 向けのパソコンや ソフトウ アなど 繰り返し生産品 の在庫を一元管理した DOCには各製品について必要最小限の量だけ在庫を置いておく DOCから製品が出荷されると かんばんが各工場に戻 て生産がスタ ト その後 必要な分だけDOCに在庫を補充するという仕組みだ 続いて 在庫を持たない 拠点として全国の主要都市に合計十数カ所のタ ミナルを用意した こちらにはDOCから供給される製品を納品先別 配送ル トのエリア別に仕分けて配送したり 企業向けパソコンなど各工場から直接送られてくる受注生産品を繰り返し生産品とクロスド キングする機能を持たせた 従来 NECの販売物流ネ トワ クはメ シ 状にな ていた 製品別にネ トワ クを形成していたため 同じ方面に出荷する貨物であ ても混載せずにバラバラで輸送するなど非効率な体制だ た それがデリバリ 改革によ て工場→DOC→タ ミナル→販売店というす きりとしたかたちに整理された その結果 DOC タ ミナル間 タ ミナル 販売店間の輸送効率が高ま たほか 倉庫面積が九九年三月末時点に比べ約五〇%減 た さらに全国各地に点在していた在庫をDOCに集約したことで サプライチ ン上の製品在庫を大幅に削減した 例えばパソコンのようにライフサイクルの短い製品は在庫ロスになりやすい 全国に分散して在庫を持つよりも東西二カ所で一元管理したほうが在庫ロスのリスクを小さくできる 物流ネ トワ クの再構築が製品在庫の削減に与えたインパクトはとても大きか た と五十嵐部長は説明する 二〇〇〇年以降 NECではかんばん方式の導入とデリバリ 改革という二本柱で全社的な在庫削減に取り組んできた そして実際に成果も上げた 同社はSCM生産革新をスタ トした二〇〇一年三月期の時点で約八〇〇〇億円の棚卸資産を抱えていた これを二〇〇三年三月期には約五〇〇〇億円と およそ三年間で約三〇〇〇億円の削減に成功した 昨年四月 同社はプロセス改革推進本部を新設した このセクシ ンは各ビジネスユニ トにおけるSCM生産革新の進捗状況をチ クする役割を担 ている ユニ トごとに月次で棚卸資産額の目標値などを設定 その数字を上回 た場合にはアラ ム 警告 を発して問題点を抽出し 必要に応じて関係部署に改善を促している NECでは棚卸資産の現行水準に決して満足していない 五十嵐部長は 手本にしているトヨタと比較すると 当社はまだ小学生や中学生とい たレベル 生産や物流などあらゆる面でまだまだ改善の余地が残されている 前述した通り 半導体部門の生産革新は道半ばだ プロセス改革が会社全体に浸透していけば 棚卸資産はさらに減 ていくはずだ と見ている 特集 NECプロセス改革推進本部の五十嵐賢一生産プロセス推進部長BTO品 BTO品 BTO品 BTO品 NECの販売物流体制 工 場 工 場 工 場 工 場 工 場 工 場 工 場 工 場 物流拠点 (在庫型) 物流拠点 (在庫型) 物流拠点 (在庫型) 物流拠点 (在庫型) ターミナル (XD機能) ターミナル (XD機能) ターミナル (XD機能) ターミナル (XD機能) 得意先 得意先 得意先 得意先 得意先 得意先 得意先 得意先 従 来 DOC (在庫型) DOC (在庫型) 現 行 現 行
トヨタ生産方式の導入や物流ネットワークの再構築といった取り組みが奏功した格好だ。
パソコンや通信機器で培ったノウハウを半導体など他製品に横展開することで、さらなる在庫削減を目指している。
(刈屋大輔)かんばん方式で調達在庫を削減NECの棚卸資産が減り続けている 九六年の時点で同社の棚卸資産は一兆円を超えていたが この一 二年は五〇〇〇億円台で推移している 棚卸資産回転期間も直近の数字で一・三七カ月と こちらも九六年と比較すると二分の一の水準にまで改善されている 同社は九三年に生産革新運動をスタ トした グル プ会社であるNEC長野を皮切りに 全国各地の工場で改善活動を展開 セル生産への移行などに取り組んだ しかし一連の活動は大きな成果を上げるまでには至らなか た 実際 同社の棚卸資産の総額は生産革新運動を開始して以降 しばらくの間 横這いの状態が続いた 同社では棚卸資産が思うように減らなか たのは改善活動の対象を工場内に限定していたためだと分析している プロセス改革推進本部の五十嵐賢一生産プロセス推進部長は 結局 工場という個別部門の最適化には限界があ た 部材の調達から生産 販売までのサプライチ ン全体の見直しに着手しないと全社的な在庫は一向に減 ていかないということが分か た と述懐する 同社が従来の生産革新運動を SCM生産革新 という呼称に改め サプライチ ンの全体最適に向けた動きを本格化させたのは二〇〇〇年だ た 過去の反省を踏まえ 今回は調達 生産 販売 物流までを含めた業務プロセス全体の再構築に乗り出した その際に手本にしたのはトヨタ自動車だ た トヨタ生産方式に詳しいコンサルタントをアドバイザ として招聘 専門家の指導の下 トヨタ流のモノづくりの思想や現場改善のノウハウなどを社内 そしてグル プ全体に浸透させてい た まず取り掛か たのは生産の現場に かんばん方式 を導入することだ た かんばん方式とは生産で使用した部品がどれだけあるのか その情報を かんばん に載せて前工程に戻し 補充させる仕組みである トヨタは資材や部品を生産ラインに多頻度で納入することで 工場内に滞留する資材や部品の在庫をミニマム化することに成功している NECが最初にかんばん方式の対象にしたのはパソコンなどコンピ タ製品の生産を担当する工場だ た 工場ではそれまで資材や部品の調達を週単位で行 ていたが かんばん方式の導入に伴いデイリ 日次 に切り替えた 従来はベンダ 主導だ た調達物流をNEC主導にするなどベンダ 各社との取引形態を見直すことで トヨタと同様 必要な量だけを調達する体制に改めた その結果 工場では資材や部品の在庫を従来の五分の一に減らすことができたという コンピ タ系の生産拠点でかんばん方式の効力を確認したNECはその後 他分野への横展開を進めてい た ル タ などLAN製品を扱う通信系の工場を経て 最終的には半導体の生産拠点でもかんばん方式の採用に踏み切 ている 当初 半導体の工場はかんばん方式に難色を示していた 半導体は コンピ タや通信機器のような組み立て型ではなく 生産システムが自動化されている装置型のビジネスである そのため大量一括で生産したほうが生産効率が高い 少量ずつ売れた分だけ生産することを原則とするかんばん方式は半導体には馴染まない という意見が根強か た しかし現場サイドを粘り強く説得し続けた結果 二〇〇二年にかんばん方式に移行させることができた 現在も半導体ではかんばん方式の運用方法をめぐ て試行錯誤を繰り返しているものの 徐々に軌道に乗事例研究 5期連続削減企業のマネジメント13 FEBRUARY 2005りつつある 効果も出始めてきている 五十嵐部長 という 物流網整備で製品在庫を一元管理一方 製品在庫の削減で大きく貢献したのはデリバリ 改革だ た もともと同社では在庫機能を持 た販売物流用の拠点を全国各地に用意していたが これを 在庫を持つ 拠点と 在庫を持たない 拠点に機能別に整理した 錯綜していた工場 得意先までのモノの流れを再構築して 拠点数そのものを削減すると同時に 製品在庫の集約化を図 た まず 在庫を持つ 拠点として東西二カ所にDOC デリバリ ・オペレ シ ン・センタ を設置した そしてここではコンシ マ 向けのパソコンや ソフトウ アなど 繰り返し生産品 の在庫を一元管理した DOCには各製品について必要最小限の量だけ在庫を置いておく DOCから製品が出荷されると かんばんが各工場に戻 て生産がスタ ト その後 必要な分だけDOCに在庫を補充するという仕組みだ 続いて 在庫を持たない 拠点として全国の主要都市に合計十数カ所のタ ミナルを用意した こちらにはDOCから供給される製品を納品先別 配送ル トのエリア別に仕分けて配送したり 企業向けパソコンなど各工場から直接送られてくる受注生産品を繰り返し生産品とクロスド キングする機能を持たせた 従来 NECの販売物流ネ トワ クはメ シ 状にな ていた 製品別にネ トワ クを形成していたため 同じ方面に出荷する貨物であ ても混載せずにバラバラで輸送するなど非効率な体制だ た それがデリバリ 改革によ て工場→DOC→タ ミナル→販売店というす きりとしたかたちに整理された その結果 DOC タ ミナル間 タ ミナル 販売店間の輸送効率が高ま たほか 倉庫面積が九九年三月末時点に比べ約五〇%減 た さらに全国各地に点在していた在庫をDOCに集約したことで サプライチ ン上の製品在庫を大幅に削減した 例えばパソコンのようにライフサイクルの短い製品は在庫ロスになりやすい 全国に分散して在庫を持つよりも東西二カ所で一元管理したほうが在庫ロスのリスクを小さくできる 物流ネ トワ クの再構築が製品在庫の削減に与えたインパクトはとても大きか た と五十嵐部長は説明する 二〇〇〇年以降 NECではかんばん方式の導入とデリバリ 改革という二本柱で全社的な在庫削減に取り組んできた そして実際に成果も上げた 同社はSCM生産革新をスタ トした二〇〇一年三月期の時点で約八〇〇〇億円の棚卸資産を抱えていた これを二〇〇三年三月期には約五〇〇〇億円と およそ三年間で約三〇〇〇億円の削減に成功した 昨年四月 同社はプロセス改革推進本部を新設した このセクシ ンは各ビジネスユニ トにおけるSCM生産革新の進捗状況をチ クする役割を担 ている ユニ トごとに月次で棚卸資産額の目標値などを設定 その数字を上回 た場合にはアラ ム 警告 を発して問題点を抽出し 必要に応じて関係部署に改善を促している NECでは棚卸資産の現行水準に決して満足していない 五十嵐部長は 手本にしているトヨタと比較すると 当社はまだ小学生や中学生とい たレベル 生産や物流などあらゆる面でまだまだ改善の余地が残されている 前述した通り 半導体部門の生産革新は道半ばだ プロセス改革が会社全体に浸透していけば 棚卸資産はさらに減 ていくはずだ と見ている 特集 NECプロセス改革推進本部の五十嵐賢一生産プロセス推進部長BTO品 BTO品 BTO品 BTO品 NECの販売物流体制 工 場 工 場 工 場 工 場 工 場 工 場 工 場 工 場 物流拠点 (在庫型) 物流拠点 (在庫型) 物流拠点 (在庫型) 物流拠点 (在庫型) ターミナル (XD機能) ターミナル (XD機能) ターミナル (XD機能) ターミナル (XD機能) 得意先 得意先 得意先 得意先 得意先 得意先 得意先 得意先 従 来 DOC (在庫型) DOC (在庫型) 現 行 現 行
