2023年6月号
特集
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JALカーゴサービス 成田空港隣接の卸売市場でワンストップ輸出物流
海外へのリードタイムを1日短縮
2018年に関西空港が台風で水没、19年には成田空港が台風の直撃で“陸の孤島”となり、空港周辺の物流機能は大きな打撃を受けた。
JALカーゴサービスの森本義規社長は、「これらの災害をきっかけに当社は、非常時でも止めてはならない生鮮食品と医薬品の物流サービスを、社会貢献も兼ねて強化すると決断した」と語る。
その方向性の一つが、空港外への進出だった。
同社は成田空港で輸出入貨物のハンドリング、仕分けや配送といった物流サービスを手掛けている。
物流の人材や設備は24時間体制で稼働している。
その利点を生かして、通関やフォワーディング、空港と周辺地域を結ぶ陸上物流など、空港外にも事業を広げようというアイデアだ。
成田市は22年1月、成田市街地にあった公設卸売市場を成田空港隣接地に移転し、リニューアルオープンした。
検疫、通関、爆発物検査、原産地証明など各種証明書の交付といった輸出に必要な手続きを、国内で初めて市場内で全て完結できるようにして、以前は4〜6日かかっていた輸出手続きに要する日数を3日に短縮した。
3温度帯の冷蔵冷凍倉庫も備えている。
JALカーゴサービスはこれをビジネスチャンスととらえた。
「空港周辺に事業の場を広げ、生鮮品物流を支える新しい価値を生み出せるのではと考えた。
半年ほどかけて収益性を調査した上で、公設卸売市場への入居を決めた」(森本社長)。
同社の現場スタッフは従来から、直接の取引先であるフォワーダー以外にも、その先にいる仲卸、専門商社、さらには農林水産業者にも訪問して、交流を重ねている。
また、トラックドライバーなど空港外の物流業者とも日ごろから接している。
そのため、「空港から輸出される品々が、どのような経路で空港まで運ばれてくるか、モノの流れを把握している」(同)。
例えば、千葉県や茨城県で水揚げされた魚介類は、翌朝に豊洲市場で専門商社などに競り落とされ、フォワーダーの手配で空港まで陸上輸送されてくる。
成田公設卸売市場内で輸出手続きが完結できるようになれば、“いったん豊洲市場に運ばれ、翌朝の競りまで待つ”というプロセスを省ける。
同社が接している限りでは、千葉県や茨城県の農水産業者は豊洲市場や大田市場を通じて首都圏の市場にアクセスしやすかったため、海外市場が視野に入りにくかった。
また、検疫や通関などの手間を敬遠する声も目立っていた。
だが、空港隣接の市場で輸出手続きを完結できるようになったことで、空港周辺の産地は海外との距離が縮まり、輸出の煩雑さも減り、海外市場に目を向け始める可能性が出てきた。
さらに農家出身のスタッフらが、農水産物の輸出を促進したいとの思いから、新サービスの創出に熱意を持って取り組んだ。
こうして同社は23年2月、高機能物流棟内で2フロアにまたがる総床面積1319平方メートルのスペースに入居し、海外向け生鮮航空貨物のワンストップ物流サービスを開始した。
冷蔵・冷凍にはマイナス60度、マイナス30〜マイナス20度、0〜10度の3温度帯を備えた市場内の施設を借用している。
輸出手続きの終わった生鮮品を、市場内で航空機搭載コンテナに積み込み、成田空港まで保税輸送して、そのまま飛行機に積み込んで輸出する。
同社の入居により、輸出手続きの終わった品を市場内で航空コンテナに積み込めるようになり、市場側の効率も強化された。
入居前は、千葉県の銚子港で採れた水産物を香港に輸出する場合、到着は水揚げ翌日の深夜になっていた。
それを水揚げ当日の深夜にスピードアップできた。
タイのバンコクでも、以前は水揚げの翌日に着いていたが、現在は当日便で到着する。
「アジア太平洋地区で生鮮食品の輸出競争力が高いオーストラリアは、これまで日本に比べ1日リードタイムが短かったと思う。
リードタイムが同等になったことで、日本の生鮮食品に対する需要がさらに喚起される可能性はある」(同)と手応えを感じている。
東南アジアや北米で日本食需要増 同市場において同社が取り扱った輸出貨物は、3月は50トンだった。
その96%は鮮魚で、2〜3%が青果だった。
輸出先の5割を占めたのはバンコクだ。
日本人居住者が5万6232人と海外都市では2番目に多く(外務省「海外在留邦人数調査統計」22年10月1日現在)、現地の富裕層が日本の高級食材を好む傾向にある。
JALグループの商社JALUXがタイ現地法人や日本の仲卸などと共同出資した日本生鮮卸売市場トンロー市場もある。
バンコクに次いでベトナムのハノイやシンガポールへの輸出が多く、香港、ニューヨーク、バンクーバー、ロサンゼルスといった都市が続いている。
4月の輸出量は57トンと成長傾向にある。
千葉県内には牧場が多く、チーズ輸出の引き合いも来ている。
同社ではシャインマスカット、ブドウ、桃、イチゴなど劣化しやすい果物も、リードタイムが1日早くなったことで輸出しやすくなると見込んでいる。
生産者側から輸出に関する相談を受けることもあり、その際はフォワーダーや商社を紹介し、着地側で販路開拓を担うJALUXなども交えて協力している。
今後は、国内向け生鮮食品空輸にも活用していく。
例えば沖縄県ではコールドチェーンが行き渡っていない離島が多く、他地域の生鮮食品の供給が限られている。
5月下旬には、サクランボ、桃、イチゴ、小松菜、ほうれん草を沖縄向けに空輸する実証実験を開始し、状況の改善を目指す。
JALグループは25年度までの中期経営計画で、貨物・郵便領域の事業構造改革の一つに「高単価貨物の取り扱い強化」を掲げている。
生鮮食品のほかに医薬品物流の需要開拓も進めており、22年10月にはJAL初の医薬品専用定温庫を成田空港に開設した。
医薬品流通における国際的な品質基準GDPに準拠させているほか、23年4月にはIATAが策定した医薬品輸送の品質認証CEIV Pharmaを取得した。
関西空港でも同様の取り組みを進めており、23年夏には羽田空港を含めた3空港を医薬品専用の定温トラックで結ぶGDP準拠のコールドチェーン物流も開始する。
森本社長は、「JALは23年度末に、13年ぶりに自社専用貨物機のフライトを復活させる。
とはいえ導入が決まったのは3機で、LCCを除くグループ全体の稼働機数224機から見ればまだまだ数は少ない。
現状は旅客機の貨物室を使った貨物輸送が主流となっており、1便当たりの輸送量は限られるので、高付加価値の貨物にフォーカスしていく必要がある。
空港を拠点に、貨物の付加価値を支える物流サービスをいかに創出していくかが、当社の知恵の見せ所と心得ている」と、意気込みを示している。
JALカーゴサービスの森本義規社長は、「これらの災害をきっかけに当社は、非常時でも止めてはならない生鮮食品と医薬品の物流サービスを、社会貢献も兼ねて強化すると決断した」と語る。
その方向性の一つが、空港外への進出だった。
同社は成田空港で輸出入貨物のハンドリング、仕分けや配送といった物流サービスを手掛けている。
物流の人材や設備は24時間体制で稼働している。
その利点を生かして、通関やフォワーディング、空港と周辺地域を結ぶ陸上物流など、空港外にも事業を広げようというアイデアだ。
成田市は22年1月、成田市街地にあった公設卸売市場を成田空港隣接地に移転し、リニューアルオープンした。
検疫、通関、爆発物検査、原産地証明など各種証明書の交付といった輸出に必要な手続きを、国内で初めて市場内で全て完結できるようにして、以前は4〜6日かかっていた輸出手続きに要する日数を3日に短縮した。
3温度帯の冷蔵冷凍倉庫も備えている。
JALカーゴサービスはこれをビジネスチャンスととらえた。
「空港周辺に事業の場を広げ、生鮮品物流を支える新しい価値を生み出せるのではと考えた。
半年ほどかけて収益性を調査した上で、公設卸売市場への入居を決めた」(森本社長)。
同社の現場スタッフは従来から、直接の取引先であるフォワーダー以外にも、その先にいる仲卸、専門商社、さらには農林水産業者にも訪問して、交流を重ねている。
また、トラックドライバーなど空港外の物流業者とも日ごろから接している。
そのため、「空港から輸出される品々が、どのような経路で空港まで運ばれてくるか、モノの流れを把握している」(同)。
例えば、千葉県や茨城県で水揚げされた魚介類は、翌朝に豊洲市場で専門商社などに競り落とされ、フォワーダーの手配で空港まで陸上輸送されてくる。
成田公設卸売市場内で輸出手続きが完結できるようになれば、“いったん豊洲市場に運ばれ、翌朝の競りまで待つ”というプロセスを省ける。
同社が接している限りでは、千葉県や茨城県の農水産業者は豊洲市場や大田市場を通じて首都圏の市場にアクセスしやすかったため、海外市場が視野に入りにくかった。
また、検疫や通関などの手間を敬遠する声も目立っていた。
だが、空港隣接の市場で輸出手続きを完結できるようになったことで、空港周辺の産地は海外との距離が縮まり、輸出の煩雑さも減り、海外市場に目を向け始める可能性が出てきた。
さらに農家出身のスタッフらが、農水産物の輸出を促進したいとの思いから、新サービスの創出に熱意を持って取り組んだ。
こうして同社は23年2月、高機能物流棟内で2フロアにまたがる総床面積1319平方メートルのスペースに入居し、海外向け生鮮航空貨物のワンストップ物流サービスを開始した。
冷蔵・冷凍にはマイナス60度、マイナス30〜マイナス20度、0〜10度の3温度帯を備えた市場内の施設を借用している。
輸出手続きの終わった生鮮品を、市場内で航空機搭載コンテナに積み込み、成田空港まで保税輸送して、そのまま飛行機に積み込んで輸出する。
同社の入居により、輸出手続きの終わった品を市場内で航空コンテナに積み込めるようになり、市場側の効率も強化された。
入居前は、千葉県の銚子港で採れた水産物を香港に輸出する場合、到着は水揚げ翌日の深夜になっていた。
それを水揚げ当日の深夜にスピードアップできた。
タイのバンコクでも、以前は水揚げの翌日に着いていたが、現在は当日便で到着する。
「アジア太平洋地区で生鮮食品の輸出競争力が高いオーストラリアは、これまで日本に比べ1日リードタイムが短かったと思う。
リードタイムが同等になったことで、日本の生鮮食品に対する需要がさらに喚起される可能性はある」(同)と手応えを感じている。
東南アジアや北米で日本食需要増 同市場において同社が取り扱った輸出貨物は、3月は50トンだった。
その96%は鮮魚で、2〜3%が青果だった。
輸出先の5割を占めたのはバンコクだ。
日本人居住者が5万6232人と海外都市では2番目に多く(外務省「海外在留邦人数調査統計」22年10月1日現在)、現地の富裕層が日本の高級食材を好む傾向にある。
JALグループの商社JALUXがタイ現地法人や日本の仲卸などと共同出資した日本生鮮卸売市場トンロー市場もある。
バンコクに次いでベトナムのハノイやシンガポールへの輸出が多く、香港、ニューヨーク、バンクーバー、ロサンゼルスといった都市が続いている。
4月の輸出量は57トンと成長傾向にある。
千葉県内には牧場が多く、チーズ輸出の引き合いも来ている。
同社ではシャインマスカット、ブドウ、桃、イチゴなど劣化しやすい果物も、リードタイムが1日早くなったことで輸出しやすくなると見込んでいる。
生産者側から輸出に関する相談を受けることもあり、その際はフォワーダーや商社を紹介し、着地側で販路開拓を担うJALUXなども交えて協力している。
今後は、国内向け生鮮食品空輸にも活用していく。
例えば沖縄県ではコールドチェーンが行き渡っていない離島が多く、他地域の生鮮食品の供給が限られている。
5月下旬には、サクランボ、桃、イチゴ、小松菜、ほうれん草を沖縄向けに空輸する実証実験を開始し、状況の改善を目指す。
JALグループは25年度までの中期経営計画で、貨物・郵便領域の事業構造改革の一つに「高単価貨物の取り扱い強化」を掲げている。
生鮮食品のほかに医薬品物流の需要開拓も進めており、22年10月にはJAL初の医薬品専用定温庫を成田空港に開設した。
医薬品流通における国際的な品質基準GDPに準拠させているほか、23年4月にはIATAが策定した医薬品輸送の品質認証CEIV Pharmaを取得した。
関西空港でも同様の取り組みを進めており、23年夏には羽田空港を含めた3空港を医薬品専用の定温トラックで結ぶGDP準拠のコールドチェーン物流も開始する。
森本社長は、「JALは23年度末に、13年ぶりに自社専用貨物機のフライトを復活させる。
とはいえ導入が決まったのは3機で、LCCを除くグループ全体の稼働機数224機から見ればまだまだ数は少ない。
現状は旅客機の貨物室を使った貨物輸送が主流となっており、1便当たりの輸送量は限られるので、高付加価値の貨物にフォーカスしていく必要がある。
空港を拠点に、貨物の付加価値を支える物流サービスをいかに創出していくかが、当社の知恵の見せ所と心得ている」と、意気込みを示している。
