2023年7月号
特集
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NX総合研究所「ろじたん」――汎用センターの荷主別採算を管理する
荷主別損益の基本的な考え方
同一倉庫で複数の荷主を取り扱っている汎用拠点の売り上げは、当然ながら各荷主の売り上げの合計である。
一方で汎用拠点の費用は保管費、荷役費といった費目別に構成されているのが一般的である。
営業倉庫の売り上げと費用の関係は式に示すと以下の通りになる。
倉庫の損益=倉庫の売上―倉庫の費用 倉庫の売上=荷主Aの売上+荷主Bの売上+… 倉庫の費用=変動費(外注費)+固定費(社内費) それでは荷主別の損益はどうだろう。
荷主Aの損益=荷主Aの売上―荷主Aの費用 荷主Aの費用=荷主A分の変動費(外注費)+ 荷主A分の固定費(社内費) 式にするのは簡単だが、実際にこれを算出しようとすると一筋縄ではいかないことが多い。
例えば3PL事業者A社のB支店では汎用倉庫の全ての荷役作業を請負会社に一任しており、荷役費の請求は荷主別ではなく一括であった。
そのため荷主別損益を厳密に集計・管理することができずにいた。
実はこれは過去に筆者が物流拠点の経営改善担当者として直面した課題であった。
この問題に筆者がどのように取り組み、荷主別の損益を集計・管理していったのか、試行錯誤や当時の現場の様子も交じえながら以下に述べていく。
費目の洗い出しと分類 まず初めに行ったのが費目の洗い出しと整理である。
図表1はその例である。
経理上の費用は勘定科目に合わせて分類するが、倉庫内の物流業務に関わる全ての費用を漏れなく捕捉するには、物流の機能別に費用を整理した方がいいと判断した。
費目の洗い出しの際に特に見落としそうになったのが、「システム費用」や「その他費用」である。
その他費用の中には温湿度管理のための計測器の校正費用などめったに発生しない費目もあった。
なお図表1には参考までに筆者が感じた費用を按分する難易度も添えた。
「易」と表記しているものは、そもそも請求が荷主別になっていたものである。
「包装資材費」や「その他費用」も「易」としたが、設備のリース費用などを倉庫でまとめて発注している場合には按分の難易度は上がる。
しかし、全体から見れば金額インパクトは限られるため、後述する「用力費」(事業所における水道光熱費)等と同様に機械的に按分しても大きな問題はないであろう。
費目別の荷主別分類 各費目を荷主別に仕分ける作業はそれぞれ以下のように進めた。
(1)輸送費 輸送費は元々荷主別に請求・支払いを行っていたため、改めて分類する必要はなかった。
ただし、これは日々の現場業務において、荷主別にきちんと輸送費を管理していることが大前提である。
チャーター便の手配や路線便の送り状番号を日々荷主別に管理して、荷主への請求に繋げているかということである。
また、本事例では共配の取り扱いはなかったが、共配便を運行している場合は、荷主別の出荷量をベースに按分することになるだろう。
(2)保管費 当初は各荷主への請求書に記載している保管面積を元に保管費を計算すればいいと考えていた。
しかし、実際に試みたところ、これが上手くいかなかった。
荷主に請求している面積が実際の使用面積と一致しなかったからである。
もちろん本来は一致しているべきなのだが、現実には倉庫の空いたスペースを作業に利用しているにもかかわらず、その分を請求できていなかったりした。
保管面積ではなく、パレット枚数で保管費を請求しているケースもあった。
つまり荷主によって保管費の課金のしかたがバラバラだったのである。
そこで実際の倉庫の使用面積をベースに改めて集計することにした。
倉庫のレイアウト図を「Microsoft Officeシリーズ」のVisioで作成して、荷主別の倉庫使用面積をVisioの機能で自動計算。
その面積に平米単価を掛け算して荷主別の保管費を算出した(図表2)。
坪単価6000円/月の倉庫であれば、荷主Aの保管費は6000÷3・3×532=96・7万円/月となる。
(3)荷役費 荷役費を荷主別に分類するのは非常に難しかった。
荷主別損益管理のカギになる費目であった。
同支店では先述の通り請負会社に荷役を一任しており、請負会社からの請求は1本に集約されている。
この費用を荷主別に分類するためにまず、請負会社にヒアリングを行い、各荷主向けに投入している作業員の人数を確認した。
ところが「荷主Aは毎日作業があるわけではないため、荷主Bの担当者が手空きの際に作業させている」「荷主Fは月末の波動が大きく荷主Cの担当者に手伝ってもらっている」というように、倉庫内の応援が日常的に行われていた。
回答を整理すると図表3の通りだった。
これでは、すんなりとは費用を分けられない。
そこで作業時間を実測することで荷主別の荷役費を測定することにした。
それに利用したのが、NX総合研究所が提供しているスマホアプリ(Android)を使った作業計測ツール「ろじたん」(https://www.logitan.jp/)である。
ろじたんは、作業単位を自由に設定して必要な粒度で作業を計測できる。
今回はあくまで荷主別の負荷が見たかっただけなので、かなりシンプルな設計にした(図表4)。
計測期間は月末月初の波動をみるために1カ月間とした。
計測の結果、例えば荷主Aは、請負会社へのヒアリングでは毎日作業があるわけではないので、荷主Bの手空き時間に対応しているという話であったが、実際に計測してみると荷主A向けの作業に予想以上の工数がかかっていた(図表5)。
このデータを荷主Aに提示して、荷役費の請求額に反映する了承を取り付けた。
ろじたんを使わなくても、平均的な荷主別の業務の割合を作業者からヒアリングしたり、特定日にワークサンプリングを行うなど、簡易的な方法で荷主別業務負荷を測定することはできる。
しかし、その精度は不明であるため、調査結果を荷主への請求に繋げようとするのであれば、1ヵ月等の短期間であっても実測が必要であろう。
(4)包装資材費と雑費 包装資材は、外装箱などに関しては荷主指定のケースが多いため、輸送費と同様に荷主別に分類しやすい。
ただし、荷主指定ではない資材は、雑費も含めてどの荷主のために購入したものか、日々管理する必要がある。
複数の荷主分を一括購入している場合は、やはり売上高の比率で按分すれば良いだろう。
(5)用力費 用力費の仕分けにも、保管費の比率を適用した。
ただし、フロアによって温度管理の指定等が異なる場合や、流通加工に使用する設備に関わる費用等は別途計算を行う必要がある。
(6)固定費 社員の人件費、システム費用、その他費用などの固定費は各社によって扱いが異なる。
荷主別の費用とは別に、共通費として配賦しているケースが多い。
これも金額が小さく、実績値の計測が難しい場合には売上高比率で按分するのが現実的であろう。
しかし、同事例では固定費に関しても下記の通り荷主別に分類した。
◦人件費(社員費):担当社員の費用を担当荷主売上高比率で按分 ※管理職は全荷主の売上高比率で按分 ◦システム費用:利用しているシステム別に荷主の売上高比率で按分 ◦その他費用:荷主別売上高比率で按分 荷主別損益を管理する こうして荷主別の費用を全て算出すれば、売上高との差し引きで荷主別損益=利益を確認できる。
同事例の結果が図表6である(金額はダミー値)。
ここから次のことが分かる。
◦荷主Eは「その他固定費」を含めると赤字 ◦荷主Cは業務負荷割合が多いにもかかわらず利益が3万円に満たない。
◦荷主Dが支店全体の損益を支えている。
同支店の事業継続にとって、荷主Dが最も重要であることが一目瞭然となった。
この結果を受けた3PL事業者としての正しいアクションは、荷主Cおよび荷主Eに対する値上げ交渉、もしくは業務の引き上げを検討することであり、採算の合う荷主への営業活動を行うことである。
ここまで、倉庫の費用を荷主別に分類する方法を説明してきたが、さらに細かく損益を分析する場合には、その荷主に対する請求費目との比較が必要になる。
図表7は請求費目の一例である。
請求書のフォーマットは荷主側で決めている場合が多い。
そのため、請求費目は荷主によってバラバラである。
費目の定義や名称も事業者側とは、かなり異なる。
図表7の場合、輸送費と荷役費は「業務委託費」に含まれており、保管費は「管理費」の「フロア費」として請求している。
さらに、荷主への請求(上払い)と協力輸送会社や業務請負会社への支払い(下払い)の費目がズレていると、費目別の評価は一段と難しくなる。
荷主から業務を受託する際に、上払いと下払いの費目を揃えておくことで管理がしやすくなる。
正しい価格設定ができているか容易に精査できるようになる。
このような費用の見える化は、通常業務とは異なる様々な下準備を必要とする。
しかし、いったん腰を据えて対応すれば、その後の倉庫事業運営に多大なメリットをもたらす。
最初っから全ての費目をカバーするのはハードルが高ければ、費用全体に占める割合の大きい費目から手を付けていくというやり方でも、十分に効果を期待できるだろう。
一方で汎用拠点の費用は保管費、荷役費といった費目別に構成されているのが一般的である。
営業倉庫の売り上げと費用の関係は式に示すと以下の通りになる。
倉庫の損益=倉庫の売上―倉庫の費用 倉庫の売上=荷主Aの売上+荷主Bの売上+… 倉庫の費用=変動費(外注費)+固定費(社内費) それでは荷主別の損益はどうだろう。
荷主Aの損益=荷主Aの売上―荷主Aの費用 荷主Aの費用=荷主A分の変動費(外注費)+ 荷主A分の固定費(社内費) 式にするのは簡単だが、実際にこれを算出しようとすると一筋縄ではいかないことが多い。
例えば3PL事業者A社のB支店では汎用倉庫の全ての荷役作業を請負会社に一任しており、荷役費の請求は荷主別ではなく一括であった。
そのため荷主別損益を厳密に集計・管理することができずにいた。
実はこれは過去に筆者が物流拠点の経営改善担当者として直面した課題であった。
この問題に筆者がどのように取り組み、荷主別の損益を集計・管理していったのか、試行錯誤や当時の現場の様子も交じえながら以下に述べていく。
費目の洗い出しと分類 まず初めに行ったのが費目の洗い出しと整理である。
図表1はその例である。
経理上の費用は勘定科目に合わせて分類するが、倉庫内の物流業務に関わる全ての費用を漏れなく捕捉するには、物流の機能別に費用を整理した方がいいと判断した。
費目の洗い出しの際に特に見落としそうになったのが、「システム費用」や「その他費用」である。
その他費用の中には温湿度管理のための計測器の校正費用などめったに発生しない費目もあった。
なお図表1には参考までに筆者が感じた費用を按分する難易度も添えた。
「易」と表記しているものは、そもそも請求が荷主別になっていたものである。
「包装資材費」や「その他費用」も「易」としたが、設備のリース費用などを倉庫でまとめて発注している場合には按分の難易度は上がる。
しかし、全体から見れば金額インパクトは限られるため、後述する「用力費」(事業所における水道光熱費)等と同様に機械的に按分しても大きな問題はないであろう。
費目別の荷主別分類 各費目を荷主別に仕分ける作業はそれぞれ以下のように進めた。
(1)輸送費 輸送費は元々荷主別に請求・支払いを行っていたため、改めて分類する必要はなかった。
ただし、これは日々の現場業務において、荷主別にきちんと輸送費を管理していることが大前提である。
チャーター便の手配や路線便の送り状番号を日々荷主別に管理して、荷主への請求に繋げているかということである。
また、本事例では共配の取り扱いはなかったが、共配便を運行している場合は、荷主別の出荷量をベースに按分することになるだろう。
(2)保管費 当初は各荷主への請求書に記載している保管面積を元に保管費を計算すればいいと考えていた。
しかし、実際に試みたところ、これが上手くいかなかった。
荷主に請求している面積が実際の使用面積と一致しなかったからである。
もちろん本来は一致しているべきなのだが、現実には倉庫の空いたスペースを作業に利用しているにもかかわらず、その分を請求できていなかったりした。
保管面積ではなく、パレット枚数で保管費を請求しているケースもあった。
つまり荷主によって保管費の課金のしかたがバラバラだったのである。
そこで実際の倉庫の使用面積をベースに改めて集計することにした。
倉庫のレイアウト図を「Microsoft Officeシリーズ」のVisioで作成して、荷主別の倉庫使用面積をVisioの機能で自動計算。
その面積に平米単価を掛け算して荷主別の保管費を算出した(図表2)。
坪単価6000円/月の倉庫であれば、荷主Aの保管費は6000÷3・3×532=96・7万円/月となる。
(3)荷役費 荷役費を荷主別に分類するのは非常に難しかった。
荷主別損益管理のカギになる費目であった。
同支店では先述の通り請負会社に荷役を一任しており、請負会社からの請求は1本に集約されている。
この費用を荷主別に分類するためにまず、請負会社にヒアリングを行い、各荷主向けに投入している作業員の人数を確認した。
ところが「荷主Aは毎日作業があるわけではないため、荷主Bの担当者が手空きの際に作業させている」「荷主Fは月末の波動が大きく荷主Cの担当者に手伝ってもらっている」というように、倉庫内の応援が日常的に行われていた。
回答を整理すると図表3の通りだった。
これでは、すんなりとは費用を分けられない。
そこで作業時間を実測することで荷主別の荷役費を測定することにした。
それに利用したのが、NX総合研究所が提供しているスマホアプリ(Android)を使った作業計測ツール「ろじたん」(https://www.logitan.jp/)である。
ろじたんは、作業単位を自由に設定して必要な粒度で作業を計測できる。
今回はあくまで荷主別の負荷が見たかっただけなので、かなりシンプルな設計にした(図表4)。
計測期間は月末月初の波動をみるために1カ月間とした。
計測の結果、例えば荷主Aは、請負会社へのヒアリングでは毎日作業があるわけではないので、荷主Bの手空き時間に対応しているという話であったが、実際に計測してみると荷主A向けの作業に予想以上の工数がかかっていた(図表5)。
このデータを荷主Aに提示して、荷役費の請求額に反映する了承を取り付けた。
ろじたんを使わなくても、平均的な荷主別の業務の割合を作業者からヒアリングしたり、特定日にワークサンプリングを行うなど、簡易的な方法で荷主別業務負荷を測定することはできる。
しかし、その精度は不明であるため、調査結果を荷主への請求に繋げようとするのであれば、1ヵ月等の短期間であっても実測が必要であろう。
(4)包装資材費と雑費 包装資材は、外装箱などに関しては荷主指定のケースが多いため、輸送費と同様に荷主別に分類しやすい。
ただし、荷主指定ではない資材は、雑費も含めてどの荷主のために購入したものか、日々管理する必要がある。
複数の荷主分を一括購入している場合は、やはり売上高の比率で按分すれば良いだろう。
(5)用力費 用力費の仕分けにも、保管費の比率を適用した。
ただし、フロアによって温度管理の指定等が異なる場合や、流通加工に使用する設備に関わる費用等は別途計算を行う必要がある。
(6)固定費 社員の人件費、システム費用、その他費用などの固定費は各社によって扱いが異なる。
荷主別の費用とは別に、共通費として配賦しているケースが多い。
これも金額が小さく、実績値の計測が難しい場合には売上高比率で按分するのが現実的であろう。
しかし、同事例では固定費に関しても下記の通り荷主別に分類した。
◦人件費(社員費):担当社員の費用を担当荷主売上高比率で按分 ※管理職は全荷主の売上高比率で按分 ◦システム費用:利用しているシステム別に荷主の売上高比率で按分 ◦その他費用:荷主別売上高比率で按分 荷主別損益を管理する こうして荷主別の費用を全て算出すれば、売上高との差し引きで荷主別損益=利益を確認できる。
同事例の結果が図表6である(金額はダミー値)。
ここから次のことが分かる。
◦荷主Eは「その他固定費」を含めると赤字 ◦荷主Cは業務負荷割合が多いにもかかわらず利益が3万円に満たない。
◦荷主Dが支店全体の損益を支えている。
同支店の事業継続にとって、荷主Dが最も重要であることが一目瞭然となった。
この結果を受けた3PL事業者としての正しいアクションは、荷主Cおよび荷主Eに対する値上げ交渉、もしくは業務の引き上げを検討することであり、採算の合う荷主への営業活動を行うことである。
ここまで、倉庫の費用を荷主別に分類する方法を説明してきたが、さらに細かく損益を分析する場合には、その荷主に対する請求費目との比較が必要になる。
図表7は請求費目の一例である。
請求書のフォーマットは荷主側で決めている場合が多い。
そのため、請求費目は荷主によってバラバラである。
費目の定義や名称も事業者側とは、かなり異なる。
図表7の場合、輸送費と荷役費は「業務委託費」に含まれており、保管費は「管理費」の「フロア費」として請求している。
さらに、荷主への請求(上払い)と協力輸送会社や業務請負会社への支払い(下払い)の費目がズレていると、費目別の評価は一段と難しくなる。
荷主から業務を受託する際に、上払いと下払いの費目を揃えておくことで管理がしやすくなる。
正しい価格設定ができているか容易に精査できるようになる。
このような費用の見える化は、通常業務とは異なる様々な下準備を必要とする。
しかし、いったん腰を据えて対応すれば、その後の倉庫事業運営に多大なメリットをもたらす。
最初っから全ての費目をカバーするのはハードルが高ければ、費用全体に占める割合の大きい費目から手を付けていくというやり方でも、十分に効果を期待できるだろう。
