2023年7月号
特集

清長 4段階の可視化でパートの早期退職率を半減

物流現場を荷主にも見える化  清長は1978年に内装材の卸売事業者として設立した。
創業者から代替わりした2006年に事業を転換、EC物流に特化したアウトソーシングサービスを開始した。
さらに18年に同サービスを「ロジプレミアム」と命名して、ブランディングを強化した。
 現在は千葉県柏市と野田市、茨城県つくばみらい市の9カ所に計1万坪の物流センターを展開している。
社員60人強、パートスタッフ350人で年間500万件以上の出荷を処理している(22年度実績)。
クライアント数はアパレル、コスメ、家電、雑貨など約90社。
契約継続率は95%という。
 ロジプレミアムで重視しているのが、現場業務の可視化だ。
荷主の個別ニーズに合わせて業務フローをデザイン、「何が正常か」「どんなルールで運用するのか」を契約段階で定義する。
その上で実際の運用とのギャップを把握して荷主と共有することで、荷主から物流が見えなくなる“ブラックボックス化”を回避している。
 同社の社内でも、部署や拠点の垣根を越えて、作業手順、作業時間の計画値と実績値などを相互に可視化することで、改善活動や業務内容の標準化、イレギュラー対応力の強化などに役立てている。
 こうした取り組みを本格化したのは、物流アウトソーシングサービスを「ロジプレミアム」と命名したのとほぼ同じ18年だった。
 EC物流事業の成長には、庫内作業員の確保・育成・定着が欠かせない。
しかし、パートスタッフの多くを占める主婦層は、育児などの事情で働ける曜日や時間に制約がある。
また、現場リーダーによってそれぞれ作業の教え方が違うため、初心者が混乱したり、戦力として自信を持てるようになるまでに時間がかかることが、早期離職の要因となっていた。
 人手不足対策や初心者でも担える現場づくりとして自動化が注目されているが、同社の岩井銀太物流事業本部オペレーション部部長は、同業他社のオペレーションなども研究してきた結果を踏まえ、「巨大倉庫を運営し、荷主に対して自分たちのルールに合わせることを要求できる物流超大手でもない限り、自動化の効果は限られる。
物流現場には、やはり人間の力が欠かせないと判断した」と強調する。
 そこで、初心者が作業を覚えやすい環境を整えて、多様で柔軟な就労パターンを可能にするため、各作業の所要時間や実際の進捗、作業手順などの可視化に乗り出した。
4段階のステップを踏んだ。
 第1段階では、現場の作業計画表をリニューアルした。
翌日の作業計画表は以前からあったが、各作業の所要時間や実際の進捗状況の把握は、現場責任者の感覚頼みとなっていた。
 そこで岩井部長と各ブロック長が現場に入り作業スタッフと一緒になって、どの作業をどのような手順で行っているのか、その理由は何か、どの作業でイレギュラーが生じているのか──現場の声を聞きながら現状を整理した。
工程別に、各作業員の時間当たり処理能力も測定した。
 続いて作業別に所要時間の計画値を算出した。
さらに「どの時間帯に、誰がどの作業を担当するか」「計画値通りに進捗した場合、次の作業は何か」「進捗状況を把握できるチェックポイントは何か」まで作業計画表に明記して、計画と実績の差を数値で把握できるようにした。
 取り組み開始当初は、現場から「本当に効果があるのか」「数字や細かいことは苦手だ」といった声も上がった。
岩井部長は「会社から押しつけるのではなく、現場に伴走することを心掛けた。
実際に効果があることを実感してもらうと、現場からの協力も得られやすくなっていった」と振り返る。
 第2段階では、この作業計画表と作業手順を全物流センターで共有した。
同社は各物流センターに担当荷主別の作業グループを平均3グループほど配置している。
各グループはグループ長の社員1〜2人で管理して、グループ長をセンター長が束ねる体制だ。
 グループ長や作業スタッフは、他のグループの作業計画や作業手順を把握していないため、作業の遅延等が発生してもグループ間でカバーし合うことが難しかった。
全センターで情報を共有することで、この問題を解消した。
 第3段階では、計画値と実績値の差と原因を分析した。
以前から毎日終礼時にセンター長とグループ長で反省会を開いていた。
その席で「この出荷件数なら20時間で処理できたはずだが、超過した原因は何か」「作業ルールからどのような逸脱があったのか、その理由は何か」など検討するようにした。
 第4段階では、フィードバック体制を整えた。
第3段階で実現した分析を、各センター長が地域を統括するブロック長に報告する。
一方、作業スタッフにも必要な改善点などを伝達する。
物流センターごとに初期レベルも達成速度にもばらつきはあったものの、1年半から2年で、全センターが第4段階まで達成した。
多様で柔軟な就労スタイルを可能に  20年には活動対象を荷主にも広げた。
契約段階で荷主別に業務フローをデザインして、運用ルールなどを定義する取り決めがそれだ。
 検品や梱包などは特に、荷主ごとに要求内容の違いが大きい。
そうした作業項目一つ一つを各荷主の担当社員が確認してマニュアルを作成している。
マニュアルの作成業務を支援するITツールも全拠点に導入した。
 運用開始後も担当社員が週に1回、マニュアル通りの運用となっているか、問題は発生していないか、現場を巡回して確認している。
どの週にどの作業項目をチェックするのか、1・5〜2カ月先まで計画している。
荷主別マニュアルによって作業ミスの発生時にも、原因を特定して予防策を講じやすくなった。
予防策が実行されているかのチェック精度も向上した。
 マニュアル自体も、現場の可視化で得られた知見を基に改善している。
可視化する以前は、荷主から求められた物流作業のルールに対して提案したい改善があっても、感覚的な話になりがちで協議が進みにくかった。
今は具体的な数値をもとに提案できるので、荷主の協力を得やすくなった。
 現場業務を可視化・標準化したことは、自動化による現場負荷の軽減にも寄与した。
自動倉庫、自動搬送機、自動仕分け機、自動製函機、自動梱包機などによる作業の自動化に加え、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用による事務作業の自動化も進んだ。
 一連の可視化の取り組みで、狙い通り就労パターンの多様化が進んだ。
現在同社では、パートスタッフの有給休暇取得率は100%近い実績を維持しており、週2日、1日3時間からでも勤務できる。
パートスタッフは5年間で100人以上増え350人になった。
その約8割は主婦が占めている。
人員の増強によって、18年の300万件から7割以上増えた年間出荷量にも対応できている。
 定着率も高まった。
勤続10年以上のパートスタッフが全体の10%以上を占めている。
朝比奈大輔取締役兼物流事業本部本部長は、「データ取得はこれから行う予定だが、採用1年以内に離職するスタッフの割合は、5年間で半減したことは確実だ」と手応えを感じ取っている。

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