2023年8月号
特集
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ダイキン工業 物流部門主導でフロー改革から生販物連携へ
小売りや卸と在庫拠点を共有
ダイキン工業がメーンとする空調事業は月別の物量の繁閑差が約2倍、日別が約7倍と波動が大きい。
納入先は量販店や卸、販売店、工事現場など多様で、配送条件もそれぞれ異なっている。
しかも、同社は豊富な品揃えを差別化手段の一つにしており、製品数は約5千機種にも及ぶ。
生産ラインは、必要な製品を、必要な時に、必要なだけ生産する“1個流し”の変種変量生産で、工場倉庫でもパレットに満載できない製品が発生する。
荷物のハンドリングもやっかいだ。
製品によって荷姿は大きく異なる。
中量〜重量物が中心なので荷役の自動化・機械化も難しい。
長時間にわたる手荷役を強いられることから、ドライバーには敬遠されてしまう。
そのため物流現場の人手不足は、同社にとってとりわけ深刻な問題だった。
トラック運賃の高騰による物流コストの上昇にも直面していた。
そこで同社物流本部は、2017年の“物流危機”を契機として管理のアプローチを大きくあらためた。
従来は荷役や保管、積載率などの各物流工程における効率化に主眼を置いていた。
そこから「社内外との協業によるフロー改革」に軸足を移した。
その一環で小売りや卸との共同保管による物流拠点網の再編を実施した。
同社の空調事業は、近畿圏の3カ所(堺、淀川、滋賀)に工場を置く他、各消費地に配送センターや保管拠点を多数展開している。
そのため頻繁な横持ち輸送や、複数拠点を積み込みに回る必要が生じるなど、輸送効率や管理工数に課題があった。
これを解決するため販路別に物流拠点を集約した。
量販店以外の一般向けではまず、2017年に大阪に共同倉庫「メガ配送センター」を設置した。
そこにダイキンの近畿圏の在庫を集約すると同時に、卸や販売店などの取引先を荷主として誘致した。
事務所や店のバックヤードに在庫を保管して、自家用トラック等でエンドユーザーに運んでいた取引先に対して、営業部門や販社を通じて商物分離を提案したのだ。
同センターにはダイキン製品だけでなく、他メーカーの在庫も保管できる。
保管料は1立方メートル当たりの従量制で他に配送費がかかる。
それでも同センターを利用することで、取引先はバックヤードのスペースを節約して、在庫管理や配送の手間から解放される。
配送費もダイキンや他の荷主との共配なので割安だ。
一方、ダイキンは取引先の注文に応じて車両を仕立てる必要がなくなる。
工場から同センターに製品在庫をまとめて移せば、後は庫内搬送だけで納品が完結する。
欠品リスクが減り、リードタイムが実質ゼロになるため、取引先の在庫負担も軽くなる。
ダイキンの武田重治物流本部企画部企画部長は「現場の人手不足に悩まされているのは取引先も同じなので、われわれの提案を多くのお客さまが受け入れてくれた」という。
近畿圏の成功を受け、21年には中部にもメガ配送センターを設立。
今後、他のエリアにも広げていく方針だ。
一方、量販店チャネルでは、ダイキンが量販店の物流センターの一部を間借りして、在庫を預ける方法をとった。
その量販店から注文が入った時点で在庫の所有権を移す。
一般ルートと同様に庫内で納品が完結する。
しかも、出荷波動の平準化が実現した。
従来、量販店向けは毎月月末に出荷が集中する傾向にあった。
預け在庫方式に変えたことで、ダイキン側で販売情報を加味して効率良く在庫を補充できるようなった。
このスキームも17年に近畿から開始して、18年に中部、19年に九州、20年に首都圏と対象エリアを広げている。
武田企画部長は「先行して取り組んだ近畿圏では既に取扱量の約8割が新方式に移行している」という。
工場から量販店の物流センターへのパレット輸送にも踏み切った。
従来はトラックの荷台をバラ積みで満載にして運んでいた。
それをパレット化すると積載できる荷物の量は3割近く少なくなる。
それでも、積み下ろし時間は1回当たり約2時間から20分に短縮される。
ドライバーの負担が大きく軽減される。
さらには、1日2回転の運行が可能になった。
協力運送会社の売上増にも貢献できた。
使用するパレットも見直した。
従来、同社の施設では、業務用空調機のサイズに合わせて1・6メートル×1・1メートルの大型パレットを使っていた。
しかし、そのサイズではトラックの荷台に空きができてしまう。
一方で日用品などで使用されているT11型では長さが足りない。
エアコンに適したサイズ・形状のパレットを検討した結果、1・3メートル×1・1メートルが最適と判明した。
厚みが薄く、段積みにも耐えられるプラスチック製・片面3方差しのパレットを開発した。
これによってパレット化による積載量の減少を約3割から約1割に抑制できた。
作り方、売り方まで変える さらに物流本部は現在、「生販物連携によるサプライチェーン改革」を25年をメドとする新たな目標に揚げている。
付加価値作業以外には製品やパレットに触れない「タッチレス」、倉庫におけるトラックの「滞留レス」、配送センター間の「転送レス」を実現する。
そのために物流部門から情報を発信して関連業務を変革する。
計画系では在庫配置の精度向上を図る。
現状は月次の販売計画に基づきSCM部が全社在庫計画を策定。
それを受け物流本部が過去の販売実績などから各センターへの供給量を決定している。
直近の売れ行きをタイムリーに反映できないことが、在庫の過不足や偏在の一因になっている。
そこでこれをプル型の後補充方式に転換する。
まずSCM部が月次計画ではなく、最新の受注情報に基づき、拠点別の在庫計画を策定する。
そして物流本部が最新の受け払い情報を基に、各拠点に必要な供給量を川下から川上・生産に伝えることで、在庫配置と生産量を適正化する。
作り方も変える。
現状の1個流しは、工場倉庫で仕分け作業や混載を発生させる要因となっている。
直近の販売動向が反映されないために転送も生じている。
そこで直近の在庫情報を生産順に反映して、同日中の同一製品の生産は連続して作るように働きかける。
そうすれば製品ごとにまとまってラインから出てくるので、工場倉庫における仕分けや混載のための滞留がなくなる。
そのまま配送センターに出荷できる。
生産完了からトラック積み込みまでの工程の自動化も見えてくる。
配送センター側の滞留もなくす。
現状では車両ステータスと庫内作業が連動していないために待機が発生している。
各車両の入場予定時間に合わせたプル型で庫内作業のスケジュールを組むことでこれを解消する。
そのために庫内作業を標準化する。
受注情報も事前に入手して計画に反映させる。
同社の生地幹物流本部長は「これまで当社の物流は生産の平準化と、販売サイドのランダムな需要という矛盾を人間系の連携と力業で解決してきた。
それが当社の強みでもあった。
しかし今後は地産地消型の強靭なサプライチェーンを構築していく必要がある。
そのために物流から発信して、運び方、造り方、売り方の改革を進めていきたい。
24年問題はそのチャンスととらえている」という。
納入先は量販店や卸、販売店、工事現場など多様で、配送条件もそれぞれ異なっている。
しかも、同社は豊富な品揃えを差別化手段の一つにしており、製品数は約5千機種にも及ぶ。
生産ラインは、必要な製品を、必要な時に、必要なだけ生産する“1個流し”の変種変量生産で、工場倉庫でもパレットに満載できない製品が発生する。
荷物のハンドリングもやっかいだ。
製品によって荷姿は大きく異なる。
中量〜重量物が中心なので荷役の自動化・機械化も難しい。
長時間にわたる手荷役を強いられることから、ドライバーには敬遠されてしまう。
そのため物流現場の人手不足は、同社にとってとりわけ深刻な問題だった。
トラック運賃の高騰による物流コストの上昇にも直面していた。
そこで同社物流本部は、2017年の“物流危機”を契機として管理のアプローチを大きくあらためた。
従来は荷役や保管、積載率などの各物流工程における効率化に主眼を置いていた。
そこから「社内外との協業によるフロー改革」に軸足を移した。
その一環で小売りや卸との共同保管による物流拠点網の再編を実施した。
同社の空調事業は、近畿圏の3カ所(堺、淀川、滋賀)に工場を置く他、各消費地に配送センターや保管拠点を多数展開している。
そのため頻繁な横持ち輸送や、複数拠点を積み込みに回る必要が生じるなど、輸送効率や管理工数に課題があった。
これを解決するため販路別に物流拠点を集約した。
量販店以外の一般向けではまず、2017年に大阪に共同倉庫「メガ配送センター」を設置した。
そこにダイキンの近畿圏の在庫を集約すると同時に、卸や販売店などの取引先を荷主として誘致した。
事務所や店のバックヤードに在庫を保管して、自家用トラック等でエンドユーザーに運んでいた取引先に対して、営業部門や販社を通じて商物分離を提案したのだ。
同センターにはダイキン製品だけでなく、他メーカーの在庫も保管できる。
保管料は1立方メートル当たりの従量制で他に配送費がかかる。
それでも同センターを利用することで、取引先はバックヤードのスペースを節約して、在庫管理や配送の手間から解放される。
配送費もダイキンや他の荷主との共配なので割安だ。
一方、ダイキンは取引先の注文に応じて車両を仕立てる必要がなくなる。
工場から同センターに製品在庫をまとめて移せば、後は庫内搬送だけで納品が完結する。
欠品リスクが減り、リードタイムが実質ゼロになるため、取引先の在庫負担も軽くなる。
ダイキンの武田重治物流本部企画部企画部長は「現場の人手不足に悩まされているのは取引先も同じなので、われわれの提案を多くのお客さまが受け入れてくれた」という。
近畿圏の成功を受け、21年には中部にもメガ配送センターを設立。
今後、他のエリアにも広げていく方針だ。
一方、量販店チャネルでは、ダイキンが量販店の物流センターの一部を間借りして、在庫を預ける方法をとった。
その量販店から注文が入った時点で在庫の所有権を移す。
一般ルートと同様に庫内で納品が完結する。
しかも、出荷波動の平準化が実現した。
従来、量販店向けは毎月月末に出荷が集中する傾向にあった。
預け在庫方式に変えたことで、ダイキン側で販売情報を加味して効率良く在庫を補充できるようなった。
このスキームも17年に近畿から開始して、18年に中部、19年に九州、20年に首都圏と対象エリアを広げている。
武田企画部長は「先行して取り組んだ近畿圏では既に取扱量の約8割が新方式に移行している」という。
工場から量販店の物流センターへのパレット輸送にも踏み切った。
従来はトラックの荷台をバラ積みで満載にして運んでいた。
それをパレット化すると積載できる荷物の量は3割近く少なくなる。
それでも、積み下ろし時間は1回当たり約2時間から20分に短縮される。
ドライバーの負担が大きく軽減される。
さらには、1日2回転の運行が可能になった。
協力運送会社の売上増にも貢献できた。
使用するパレットも見直した。
従来、同社の施設では、業務用空調機のサイズに合わせて1・6メートル×1・1メートルの大型パレットを使っていた。
しかし、そのサイズではトラックの荷台に空きができてしまう。
一方で日用品などで使用されているT11型では長さが足りない。
エアコンに適したサイズ・形状のパレットを検討した結果、1・3メートル×1・1メートルが最適と判明した。
厚みが薄く、段積みにも耐えられるプラスチック製・片面3方差しのパレットを開発した。
これによってパレット化による積載量の減少を約3割から約1割に抑制できた。
作り方、売り方まで変える さらに物流本部は現在、「生販物連携によるサプライチェーン改革」を25年をメドとする新たな目標に揚げている。
付加価値作業以外には製品やパレットに触れない「タッチレス」、倉庫におけるトラックの「滞留レス」、配送センター間の「転送レス」を実現する。
そのために物流部門から情報を発信して関連業務を変革する。
計画系では在庫配置の精度向上を図る。
現状は月次の販売計画に基づきSCM部が全社在庫計画を策定。
それを受け物流本部が過去の販売実績などから各センターへの供給量を決定している。
直近の売れ行きをタイムリーに反映できないことが、在庫の過不足や偏在の一因になっている。
そこでこれをプル型の後補充方式に転換する。
まずSCM部が月次計画ではなく、最新の受注情報に基づき、拠点別の在庫計画を策定する。
そして物流本部が最新の受け払い情報を基に、各拠点に必要な供給量を川下から川上・生産に伝えることで、在庫配置と生産量を適正化する。
作り方も変える。
現状の1個流しは、工場倉庫で仕分け作業や混載を発生させる要因となっている。
直近の販売動向が反映されないために転送も生じている。
そこで直近の在庫情報を生産順に反映して、同日中の同一製品の生産は連続して作るように働きかける。
そうすれば製品ごとにまとまってラインから出てくるので、工場倉庫における仕分けや混載のための滞留がなくなる。
そのまま配送センターに出荷できる。
生産完了からトラック積み込みまでの工程の自動化も見えてくる。
配送センター側の滞留もなくす。
現状では車両ステータスと庫内作業が連動していないために待機が発生している。
各車両の入場予定時間に合わせたプル型で庫内作業のスケジュールを組むことでこれを解消する。
そのために庫内作業を標準化する。
受注情報も事前に入手して計画に反映させる。
同社の生地幹物流本部長は「これまで当社の物流は生産の平準化と、販売サイドのランダムな需要という矛盾を人間系の連携と力業で解決してきた。
それが当社の強みでもあった。
しかし今後は地産地消型の強靭なサプライチェーンを構築していく必要がある。
そのために物流から発信して、運び方、造り方、売り方の改革を進めていきたい。
24年問題はそのチャンスととらえている」という。
