2023年8月号
特集
特集
花王 垂直統合からフィジカルインターネットに転換
次世代型の無人化センターを竣工
花王は今年3月27日、「豊橋工場 次世代新倉庫」の竣工式を開催した。
同倉庫は化粧品を製造する豊橋工場に隣接し、出荷バースの目の前には、花王グループの中間流通施設「豊橋LC(ロジスティクスセンター)」がある。
工場とメーカー物流、卸物流を物理的に一体化して“運ばない”物流を実現した。
パレットには全てRFIDタグを装着した。
工場の出荷から新倉庫を経由してLCに入庫するまでのステータスをリアルタイムに把握して、生産とメーカー物流、卸物流の3層の計画を連携させる。
将来は花王以外の製品をLCで取り扱うことも想定している。
庫内にはパレット自動倉庫、パレタイズ/デパレタイズロボット、無人搬送車(AGV)、有軌道台車を導入して、入庫から出荷までのオペレーションを完全に自動化した。
従来の運営方法であれば30人程度の作業員が必要な業務を無人化した。
遠隔管理による24時間稼働を視野に置いている。
出庫ラインからフォークリフトで貨物を取り出し、トラックの荷台に積み付ける作業も自動化する。
豊田自動織機の技術支援を受け、自動運転フォークリフトの運用実験を続けている。
これまで問題なく運用できているという。
これが本稼働すれば人手による現場作業が完全になくなる。
全てのセンター業務がデジタル化されて、物流計画の立案と実行の自動化まで見えてくる。
2024年問題を意識して、バース予約システムも導入した。
トラックの入場ゲートに装着したカメラが車両ナンバーを自動認証、大型のデジタルサイネージに出荷口の番号と構内マップに経路を表示してドライバーに行き先を指示する。
バース予約システムの車両受け付け情報は、そのまま倉庫制御システムに送信されてパレット自動倉庫が即座に出庫を開始、車両が入場してからわずか数分で最初のパレットが出荷口に自動で届く。
ドライバーの荷待ちをほぼ完全に解消した。
竣工式に出席した花王の田端修常務執行役員SCM部門統括は、豊橋工場の次世代新倉庫を同社のモデル拠点と位置付け、「現時点で計画が固まっているわけではなないが、個人的には今後2〜3年をめどに同様の機能を持った新倉庫を全国に展開したい」と抱負を述べた。
花王は1966年に販社制度を導入して卸流通と決別して以来、中間流通を自社運営して小売業と直接取引してきた。
現在も販売会社の花王グループカスタマーマーケティングが、全国31カ所(家庭品24カ所・化粧品7カ所)にLCを置いて小売りに直接納品している。
各地のLCの拠点運営は物流子会社の花王ロジスティクスが担っている。
花王は垂直統合を、市場コントロールを容易にして、中間マージンやトータル物流コストの削減を可能にする差別化手段としてきた。
しかし、2019年に同社はESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」を発表してESG経営に大きく舵を切った。
これを機にサプライチェーン戦略も転換した。
ライバルとも物流で協働 物流管理においても、CO2排出量や廃棄物削減などのESGの指標が、最も優先度の高いKPIに位置づけられた。
19年6月には「ホワイト物流」推進運動への賛同を表明。
さらに20年12月には、内閣府が主導する戦略的イノベーションプログラム(SIP)「スマート物流サービス」を通じて、長年のライバルライオンとの共同物流に踏み切った。
花王は現在、工場から各地のLCへの1次輸送に1日当たり約500台の大型車両を投入している。
工場とLCを統合管理しているため、その積載率は満載に近い。
しかし、帰り荷の確保には課題があった。
そこでライオンと首都圏〜四国間の双方の1次輸送を相互に組み合わる往復輸送を成立させた。
通常、同業同士の共同化は物量のある最大手が二の足を踏む。
競合にベースカーゴを提供して“敵に塩を送る”ことになるからだ。
しかし、花王の山下太SCM部門ロジスティクスセンターセンター長は「物流危機という社会課題の解決に向けて取引先はもちろん、他のメーカーや卸とも協働していきたい。
相手方のメリットの方が大きかったとしても全体最適に資するのであれば当社はまったく構わない」と意に介さない。
それだけ物流の持続可能性に対して強い危機感を抱いている。
花王のLCから小売業への2次輸送は年々積載率が低下する傾向にある。
とりわけ地方の店舗配送は市場の空洞化が進んでいるにもかかわらず、小売りの時間指定は厳しくなる傾向にあり、積載率が落ちている。
花王グループを含めた日用品業界全体の2次輸送の積載率は現状50%程度と花王では推定している。
この問題を解決するため、エリアごとに小売りや卸、他メーカーと物流拠点を共有することで、2次配送の積載率を2030年までに80%に引き上げることを構想している。
各地のLCで花王以外の商品も取り扱うと同時に、取引先や卸のセンターでも花王製品をハンドリングしてもらう。
そして商品や物量、納品場所に合わせて、最適な物流フローを柔軟に選択できるようにする。
各社の物流リソースを社会的に共有するフィジカルインターネット型のネットワークだ。
現状の「工場→LC(卸倉庫)→小売り物流センター→店舗」という固定的なフローの階層を減らすことができる。
ただし、その実現にはサプライチェーン情報をステークホルダー間で共有する必要がある。
山下センター長は「当社が見えている在庫に関しては、現状でも効率良く運ぶことができている。
しかし、小売りの店頭やセンターの在庫まで見えるようになれば、全体の積載率をもっと上げられる。
トータル在庫を減らすこともできる。
将来はそこまで取り組みを広げていきたい」と展望している。
同倉庫は化粧品を製造する豊橋工場に隣接し、出荷バースの目の前には、花王グループの中間流通施設「豊橋LC(ロジスティクスセンター)」がある。
工場とメーカー物流、卸物流を物理的に一体化して“運ばない”物流を実現した。
パレットには全てRFIDタグを装着した。
工場の出荷から新倉庫を経由してLCに入庫するまでのステータスをリアルタイムに把握して、生産とメーカー物流、卸物流の3層の計画を連携させる。
将来は花王以外の製品をLCで取り扱うことも想定している。
庫内にはパレット自動倉庫、パレタイズ/デパレタイズロボット、無人搬送車(AGV)、有軌道台車を導入して、入庫から出荷までのオペレーションを完全に自動化した。
従来の運営方法であれば30人程度の作業員が必要な業務を無人化した。
遠隔管理による24時間稼働を視野に置いている。
出庫ラインからフォークリフトで貨物を取り出し、トラックの荷台に積み付ける作業も自動化する。
豊田自動織機の技術支援を受け、自動運転フォークリフトの運用実験を続けている。
これまで問題なく運用できているという。
これが本稼働すれば人手による現場作業が完全になくなる。
全てのセンター業務がデジタル化されて、物流計画の立案と実行の自動化まで見えてくる。
2024年問題を意識して、バース予約システムも導入した。
トラックの入場ゲートに装着したカメラが車両ナンバーを自動認証、大型のデジタルサイネージに出荷口の番号と構内マップに経路を表示してドライバーに行き先を指示する。
バース予約システムの車両受け付け情報は、そのまま倉庫制御システムに送信されてパレット自動倉庫が即座に出庫を開始、車両が入場してからわずか数分で最初のパレットが出荷口に自動で届く。
ドライバーの荷待ちをほぼ完全に解消した。
竣工式に出席した花王の田端修常務執行役員SCM部門統括は、豊橋工場の次世代新倉庫を同社のモデル拠点と位置付け、「現時点で計画が固まっているわけではなないが、個人的には今後2〜3年をめどに同様の機能を持った新倉庫を全国に展開したい」と抱負を述べた。
花王は1966年に販社制度を導入して卸流通と決別して以来、中間流通を自社運営して小売業と直接取引してきた。
現在も販売会社の花王グループカスタマーマーケティングが、全国31カ所(家庭品24カ所・化粧品7カ所)にLCを置いて小売りに直接納品している。
各地のLCの拠点運営は物流子会社の花王ロジスティクスが担っている。
花王は垂直統合を、市場コントロールを容易にして、中間マージンやトータル物流コストの削減を可能にする差別化手段としてきた。
しかし、2019年に同社はESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」を発表してESG経営に大きく舵を切った。
これを機にサプライチェーン戦略も転換した。
ライバルとも物流で協働 物流管理においても、CO2排出量や廃棄物削減などのESGの指標が、最も優先度の高いKPIに位置づけられた。
19年6月には「ホワイト物流」推進運動への賛同を表明。
さらに20年12月には、内閣府が主導する戦略的イノベーションプログラム(SIP)「スマート物流サービス」を通じて、長年のライバルライオンとの共同物流に踏み切った。
花王は現在、工場から各地のLCへの1次輸送に1日当たり約500台の大型車両を投入している。
工場とLCを統合管理しているため、その積載率は満載に近い。
しかし、帰り荷の確保には課題があった。
そこでライオンと首都圏〜四国間の双方の1次輸送を相互に組み合わる往復輸送を成立させた。
通常、同業同士の共同化は物量のある最大手が二の足を踏む。
競合にベースカーゴを提供して“敵に塩を送る”ことになるからだ。
しかし、花王の山下太SCM部門ロジスティクスセンターセンター長は「物流危機という社会課題の解決に向けて取引先はもちろん、他のメーカーや卸とも協働していきたい。
相手方のメリットの方が大きかったとしても全体最適に資するのであれば当社はまったく構わない」と意に介さない。
それだけ物流の持続可能性に対して強い危機感を抱いている。
花王のLCから小売業への2次輸送は年々積載率が低下する傾向にある。
とりわけ地方の店舗配送は市場の空洞化が進んでいるにもかかわらず、小売りの時間指定は厳しくなる傾向にあり、積載率が落ちている。
花王グループを含めた日用品業界全体の2次輸送の積載率は現状50%程度と花王では推定している。
この問題を解決するため、エリアごとに小売りや卸、他メーカーと物流拠点を共有することで、2次配送の積載率を2030年までに80%に引き上げることを構想している。
各地のLCで花王以外の商品も取り扱うと同時に、取引先や卸のセンターでも花王製品をハンドリングしてもらう。
そして商品や物量、納品場所に合わせて、最適な物流フローを柔軟に選択できるようにする。
各社の物流リソースを社会的に共有するフィジカルインターネット型のネットワークだ。
現状の「工場→LC(卸倉庫)→小売り物流センター→店舗」という固定的なフローの階層を減らすことができる。
ただし、その実現にはサプライチェーン情報をステークホルダー間で共有する必要がある。
山下センター長は「当社が見えている在庫に関しては、現状でも効率良く運ぶことができている。
しかし、小売りの店頭やセンターの在庫まで見えるようになれば、全体の積載率をもっと上げられる。
トータル在庫を減らすこともできる。
将来はそこまで取り組みを広げていきたい」と展望している。
