2023年8月号
特集

東洋製罐グループホールディングス 製缶ラインを小型化して充填施設内に併設

空の金属缶を運ぶムダを解消   製缶事業には二つの大きな環境負荷があった。
一つは、製缶時に大量の洗浄水と廃水が発生すること。
もう一つは、製缶工場からドリンク工場まで、空の状態で缶を輸送しなければならないことだ。
東洋製罐グループホールディングス(東洋製罐GHD)は、独自の製缶技術によって、この二つの問題に対処している。
 このうち、水の問題については「TULC(Toyo Ultimate Can)」と名付けた製法を用いる。
従来型の缶は、製缶工程で潤滑剤を塗布するため、大量の水で洗浄する必要があった。
それに対してTULCは、初期工程で金属素材の表裏両面にポリエステルを熱圧着させ、潤滑剤の代わりとすることで、水による洗浄を不要とした。
1991年に、TULCを用いた最初のスチール缶「sTULC」を開発。
さらに2002年には、TULC技術をアルミ缶に応用した「aTULC(Alminum Toyo Ultimate Can)」を市場投入した。
 この環境負荷低減が評価されてTULCは世界包装機構「ワールドスター賞」(94年)、容器包装3R推進環境大臣賞「製品部門 奨励賞」(07年)および「同優秀賞」(09年)など26件の賞を受賞した。
そのうちaTULCだけでも、日本包装技術協会「木下賞」(03年)や英国Cans of the Year「2ピース飲料缶部門 金賞」(19年)など、計6件の賞を獲得している。
 TULCは、もう一つの環境負荷であるCO2の削減にも結びつくものだった。
これまでスチール缶やアルミ缶は製缶工場で製造されたのち、空のまま飲料メーカーの工場などに輸送されていた。
 飲料メーカーの充填ラインで容器製造まで一貫して行うことができれば、輸送コストやトラックの排気ガスを削減できる。
実際、ペットボトルでは従来から飲料メーカーが生産ラインを購入して充填工場内に併設し、容器製造とワンストップで行う体制ができている。
しかし、金属缶の生産ラインは、洗浄水の配管や廃水処理設備が必要になるため、構造が複雑で規模が大きく、充填工場内に併設することが物理的に困難だった。
それに対してTULCは洗浄水や廃水処理設備が不要。
より少ないスペースと人員で、より簡単に生産できる。
 東洋製罐グループでは、グループ企業やパートナーの製缶業者が使う製缶ラインの構築も手掛けている。
「そうした製缶ラインをコンパクト化し、飲料メーカーが缶を内製化できるようにしようというコンセプトは、新しい試みだった」と、東洋製罐GHDの遠藤宗広サステナビリティ推進部長兼コーポレートコミュニケーショングループリーダーは強調する。
 実現のため、同社はもう一つ新たな試みを取り入れた。
製缶ラインのモジュラー化だ。
 充填ラインに併設するには、省スペース化以外にも、飲料メーカーの負担を軽減するため納期を短く抑えたり、導入コストを明確化する必要がある。
そこで、缶の生産規模に応じて、どういった設備を組み合わせて製缶ラインを構築するかを事前に決めてメニュー化しておくことで、設計の手間を減らし、建設コストも算出しやすくした。
設備の組み合わせも決まっているので、製缶ライン構築のたびに、設備同士が連携して稼働するように調整する作業も省ける。
 大規模な製缶ラインでは、効率良く稼働できるよう設計段階からカスタマイズを行う必要があり、モジュラー化は難しかった。
コンパクト化は、この壁も取り払ったことになる。
 こうして2021年、充填ラインに併設できるaTULC用製缶ライン「aTULCコンパクトライン」の提案を開始した。
スチール缶ではなくアルミ缶で始めたのは、環境負荷の低いアルミ缶の需要が伸びているためだった。
 従来のアルミ缶では年間2〜3億本を生産する場合、面積3200平方メートルの製缶ラインが必要だったが、aTULCコンパクトラインなら800平方メートルで済む。
同社によると、この量の缶を製缶工場からドリンク工場までトラックで100キロ以上輸送すると、目安として約250トンの二酸化炭素排出が生じる。
これを、ほぼ全て削減できることになる。
なお、面積3200平方メートルのaTULCコンパクトラインなら、生産能力は年間5〜7億本になる。
米欧メーカーをターゲットに提案強化  提案開始当初から、米欧をターゲット市場に想定していた。
脱プラスチックの取り組みでアルミ缶の需要が伸びていたためだ。
 特に米国は18年ごろから、新手のアルコール入り炭酸飲料ハードセルツァーや缶入りワインがブームとなり、アルミ缶の利用が急拡大していた。
さらにコロナ禍により自宅での飲酒が増えると、ボトルに比べ輸送コストが安く破損しにくいアルミ缶の需要はさらに増加。
米のビジネスニュースQuartzの21年9月13日付記事によると、18年以前は毎年940億本前後で推移していたアルミ缶出荷量が、19年には970億本を超え、20年には1030億本超へと急拡大している。
 その結果、20年〜21年にかけて全米でアルミ缶不足が発生。
「中小酒造業者の間で、アルミ缶を内製化する話も持ち上がりつつあった」(遠藤部長)。
東洋製罐グループで製缶機械製造を手掛ける米国ストーレ・マシナリーは21年末当時、24年納品分までオーダーが埋まっている状況だった。
 こうした中で、東洋製罐GHDは21年11月、アルミ缶やドリンク充填機の開発・製造を手掛ける米国のAmerican Caningから、aTULCコンパクトラインを受注した。
 American Canningは小規模酒造業者向けに、小ロットでのアルミ缶生産も強みとしている。
東洋製罐GHDとは20年半ばから、aTULCの米国における販売パートナーとなるため接触を始めていた。
缶の内部にポリエステルをコーディングした構造から、aTULCはドリンクの香りなどの保存性に優れ、米国では以前から缶入りワインに用いられている。
その特性にAmerican Canningの開発者たちが注目したことがきっかけだった。
 しかし商談が進む中、米国でのアルミ缶不足の深刻化もあって、製缶ラインごと購入し、製造から販売までワンストップで手掛ける方向へと話が拡大。
世界で最初のaTULCコンパクトライン導入客となった。
生産能力年間3億本ほどの規模で、小ロット需要向けと位置付けている。
22年末に稼働を開始し、23年初頭からアルミ缶の納品を開始した。
 現時点での受注実績はAmerican Canningの1件で、飲料メーカーからの受注はまだない。
だが東洋製罐GHDには米国や欧州の飲料メーカーなどから、aTULCコンパクトラインの引き合いが増えており、これから受注が増えてくるという感触を得ている。

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