2023年8月号
特集
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ビーイングホールディングス 3PLの限界を超えて流通構造を変革する
経営ビジョンは「運ばない物流」
──2020年12月の株式公開に伴い業績を開示した18年12月期以降、増収増益が続いています。
今期も前期比8・5%増の250億円の売上高を見込んでいる。
「3PLとしては、計画した通りに順調に成長しています。
ただし、われわれは必ずしも3PL企業として大きくなりたいわけではありません。
当社は生活物資のライフラインを支えるプラットフォームを目指しています。
それには年間100億円程度を投資できるだけの体力がいる。
少なくとも2千億円の売り上げが必要です。
本当は蝶になりたいのに、今はまだ芋虫なんです」 ──生活物資のプラットフォームというビジョンは、いつから意識されていたのですか。
「もう20年以上も前に『データネットワークセンター構想』という将来ビジョンのようなものを策定しました。
物流や流通に関するデータを一カ所に集めて分析して、そのデータを必要とするサプライヤーに供給することでロスのない生産ができる。
それによってムダのない物流計画も作れるし、できるだけモノを運ばないで済む物流体制にできる」 ──まさしく現在の物流情報プラットフォームです。
「そのために当社で人工衛星も打ち上げたいと当時社内で話していました。
それ以前からウォルマートは自社の人工衛星を利用して世界中の店舗のデータを瞬時に集めて全体の仕組みを動かしていた。
それに刺激を受けたんです」 ──プラットフォーム事業者と3PLの違いは? 「3PLはお客さまの経営戦略に合わせて物流の計画を作って実行するのが仕事です。
それはそれで面白いし、われわれは3PLとして個別のお客さまにコミットしているわけですが、それだけではダイナミックな流通の変革はなかなか起こせません。
われわれのノウハウを使えば流通のかたちさえ変えていけると考えています。
個別の企業の最適化を超えて、一人一人の消費者にとって、もっと安全で便利で、社会的な負担の少ない物流網を作ることができる」 ──ビーイングHDは21年に「運ばない物流」というコピーを商標登録しました。
それも今のビジョンと関わっているのですか。
「『運ばない物流』はわれわれのビジョンそのものです。
もちろん商品は運ばないといけない。
しかし、ムダな移動は徹底して省く。
ムダな管理も省く。
そうなると、在庫はすべて必要な分だけ消費地に持つことになります。
少なくとも生活品の消費量は地域人口によって決まっているわけですから、それをベースにBCPの観点も反映した在庫モデルを作る。
そして各消費地のストックセンターの情報をメーカーと共有する。
メーカーはその情報を基に作って、最適なロットでストックセンターまで届ければいい。
その結果、小ロットでモノが動くのは地域内だけになり、トータル物流コストが最小化されます」 ──ビーイングHDは従来から製配販3層の物流センターを同じ施設内に同居させる「SCMセンター」を提唱しています。
これは「運ばない物流」の具体化ですか。
「ただし、初期のSCMセンターは在庫型ではありませんでした。
現在、北陸3県にあるドラッグチェーンの物流センターの大半は当社が立ち上げたものです。
そのため北陸の卸とはどこも付き合いが深かった。
その信頼関係ができあがっていたところに、クスリのアオキホールディングス様から在庫型でやりたいという話をもらい長年の構想が実現しました」 ──小売りの在庫型センターがなぜ「運ばない物流」なのですか。
「現在の『運ばない物流』のセンターにある在庫は小売りの在庫ではなくて、全てベンダーの〝預け在庫〟です。
しかも、ベンダーはなるべくコストをかけないようにするため、ベンダーの倉庫経由ではなく、メーカーから直接入れてくる」 ──帳合い上はセンターに納品した時点で、元請け卸が2次ベンダーからの仕入れを確定する。
そのため小売りのセンターであると同時に、元請け卸の出先倉でもある、と。
「ヒントにしたのは菱食(現・三菱食品)時代の『RDC-FDC』(在庫型のRDCと通過型のFDCを組み合わせた汎用物流網)です。
卸のセンターで小売りの物流センター運営を受託すれば、その卸はセンター納品の輸送費がかからない」 従来の業種区分は既に無効化している ──しかし、他の卸にすれば、一部の小売りのセンターが在庫型になっても、他の小売りは通過型であったり、店舗納品だったりするので、既存の倉庫をなくせない。
むしろ倉庫のスペースが空いて、トラックの積載率も悪化してしまう。
「小売りのセンターが在庫型になっていけば、卸が倉庫や配送網を持つ必要性は減っていきます。
大手から順に卸の倉庫から抜けていき、規模の小さな取引先ばかりが残る。
採算が合わないので残った取引を打ち切るケースも出てきました。
しかし、そう簡単に割り切れるものでもないので、ベンダー側はどこも苦しんでいる」 「流通革命という言葉がありますが、これは小売りの規模が大きくなって、従来はメーカーの力が強かったものが逆転した。
その結果、『プロダクトイン・マーケットアウト』から『マーケットイン』に変わり、欧米では小売りがサプライチェーン全体をコントロールするようになった、という話です。
実際、欧米では小売りがメーカーと一緒に生産計画を立てたりしている。
ところが日本はそうなっていない。
小売りはセンターフィーを取るようになったけれど、後はベンダー側で考えてくれ、と。
そのため卸とメーカーがずっと右往左往している」 ──いびつな状態です。
「プラットフォームがあれば乗り越えられます。
それが当社のやりたいことです」 ──日本にはウォルマートのような巨人が存在しません。
最大手のセブン&アイホールディングスでも、市場占有率は一桁台にとどまっている。
「その代わり大手卸が小売りとメーカーの双方の情報を持っています。
大手卸の情報を共有すれば、ほとんど市場が見える。
しかし、それは卸の存在意義を脅かすことにもなりかねない。
メーカーにしても卸というバッファーを失えば大手小売りの下請けのような存在になってしまう。
実際、家電メーカーは量販店の要請に応じているうち、委託工場のようになって全く儲からなくなった。
メーカー系列店も衰退して顧客との接点を失った」 ──メーカーと小売りの小規模分散は日本の流通の特徴で、それは品揃えの豊かさも生んでいます。
「その良いところを維持していくためにもプラットフォームが必要なんです。
その一方、市場は今や顧客接点の獲得競争になっています。
しかし、卸が消費者と直接つながろうとすれば、小売りの縄張りに手を出すことになってしまう。
そのため顧客接点をより多く集めたところが卸を利用するかたちになる」 ──アマゾンが卸を利用して日本市場を根こそぎ持っていかれることになりかねない。
「アマゾンは既に小売業の枠を超えています。
ウォルマートもそうです。
消費者にあらゆる生活基盤を提供している。
何々業という従来の業種区分ではもはや彼らをとらえきれません。
物流業も同じだと思います」
今期も前期比8・5%増の250億円の売上高を見込んでいる。
「3PLとしては、計画した通りに順調に成長しています。
ただし、われわれは必ずしも3PL企業として大きくなりたいわけではありません。
当社は生活物資のライフラインを支えるプラットフォームを目指しています。
それには年間100億円程度を投資できるだけの体力がいる。
少なくとも2千億円の売り上げが必要です。
本当は蝶になりたいのに、今はまだ芋虫なんです」 ──生活物資のプラットフォームというビジョンは、いつから意識されていたのですか。
「もう20年以上も前に『データネットワークセンター構想』という将来ビジョンのようなものを策定しました。
物流や流通に関するデータを一カ所に集めて分析して、そのデータを必要とするサプライヤーに供給することでロスのない生産ができる。
それによってムダのない物流計画も作れるし、できるだけモノを運ばないで済む物流体制にできる」 ──まさしく現在の物流情報プラットフォームです。
「そのために当社で人工衛星も打ち上げたいと当時社内で話していました。
それ以前からウォルマートは自社の人工衛星を利用して世界中の店舗のデータを瞬時に集めて全体の仕組みを動かしていた。
それに刺激を受けたんです」 ──プラットフォーム事業者と3PLの違いは? 「3PLはお客さまの経営戦略に合わせて物流の計画を作って実行するのが仕事です。
それはそれで面白いし、われわれは3PLとして個別のお客さまにコミットしているわけですが、それだけではダイナミックな流通の変革はなかなか起こせません。
われわれのノウハウを使えば流通のかたちさえ変えていけると考えています。
個別の企業の最適化を超えて、一人一人の消費者にとって、もっと安全で便利で、社会的な負担の少ない物流網を作ることができる」 ──ビーイングHDは21年に「運ばない物流」というコピーを商標登録しました。
それも今のビジョンと関わっているのですか。
「『運ばない物流』はわれわれのビジョンそのものです。
もちろん商品は運ばないといけない。
しかし、ムダな移動は徹底して省く。
ムダな管理も省く。
そうなると、在庫はすべて必要な分だけ消費地に持つことになります。
少なくとも生活品の消費量は地域人口によって決まっているわけですから、それをベースにBCPの観点も反映した在庫モデルを作る。
そして各消費地のストックセンターの情報をメーカーと共有する。
メーカーはその情報を基に作って、最適なロットでストックセンターまで届ければいい。
その結果、小ロットでモノが動くのは地域内だけになり、トータル物流コストが最小化されます」 ──ビーイングHDは従来から製配販3層の物流センターを同じ施設内に同居させる「SCMセンター」を提唱しています。
これは「運ばない物流」の具体化ですか。
「ただし、初期のSCMセンターは在庫型ではありませんでした。
現在、北陸3県にあるドラッグチェーンの物流センターの大半は当社が立ち上げたものです。
そのため北陸の卸とはどこも付き合いが深かった。
その信頼関係ができあがっていたところに、クスリのアオキホールディングス様から在庫型でやりたいという話をもらい長年の構想が実現しました」 ──小売りの在庫型センターがなぜ「運ばない物流」なのですか。
「現在の『運ばない物流』のセンターにある在庫は小売りの在庫ではなくて、全てベンダーの〝預け在庫〟です。
しかも、ベンダーはなるべくコストをかけないようにするため、ベンダーの倉庫経由ではなく、メーカーから直接入れてくる」 ──帳合い上はセンターに納品した時点で、元請け卸が2次ベンダーからの仕入れを確定する。
そのため小売りのセンターであると同時に、元請け卸の出先倉でもある、と。
「ヒントにしたのは菱食(現・三菱食品)時代の『RDC-FDC』(在庫型のRDCと通過型のFDCを組み合わせた汎用物流網)です。
卸のセンターで小売りの物流センター運営を受託すれば、その卸はセンター納品の輸送費がかからない」 従来の業種区分は既に無効化している ──しかし、他の卸にすれば、一部の小売りのセンターが在庫型になっても、他の小売りは通過型であったり、店舗納品だったりするので、既存の倉庫をなくせない。
むしろ倉庫のスペースが空いて、トラックの積載率も悪化してしまう。
「小売りのセンターが在庫型になっていけば、卸が倉庫や配送網を持つ必要性は減っていきます。
大手から順に卸の倉庫から抜けていき、規模の小さな取引先ばかりが残る。
採算が合わないので残った取引を打ち切るケースも出てきました。
しかし、そう簡単に割り切れるものでもないので、ベンダー側はどこも苦しんでいる」 「流通革命という言葉がありますが、これは小売りの規模が大きくなって、従来はメーカーの力が強かったものが逆転した。
その結果、『プロダクトイン・マーケットアウト』から『マーケットイン』に変わり、欧米では小売りがサプライチェーン全体をコントロールするようになった、という話です。
実際、欧米では小売りがメーカーと一緒に生産計画を立てたりしている。
ところが日本はそうなっていない。
小売りはセンターフィーを取るようになったけれど、後はベンダー側で考えてくれ、と。
そのため卸とメーカーがずっと右往左往している」 ──いびつな状態です。
「プラットフォームがあれば乗り越えられます。
それが当社のやりたいことです」 ──日本にはウォルマートのような巨人が存在しません。
最大手のセブン&アイホールディングスでも、市場占有率は一桁台にとどまっている。
「その代わり大手卸が小売りとメーカーの双方の情報を持っています。
大手卸の情報を共有すれば、ほとんど市場が見える。
しかし、それは卸の存在意義を脅かすことにもなりかねない。
メーカーにしても卸というバッファーを失えば大手小売りの下請けのような存在になってしまう。
実際、家電メーカーは量販店の要請に応じているうち、委託工場のようになって全く儲からなくなった。
メーカー系列店も衰退して顧客との接点を失った」 ──メーカーと小売りの小規模分散は日本の流通の特徴で、それは品揃えの豊かさも生んでいます。
「その良いところを維持していくためにもプラットフォームが必要なんです。
その一方、市場は今や顧客接点の獲得競争になっています。
しかし、卸が消費者と直接つながろうとすれば、小売りの縄張りに手を出すことになってしまう。
そのため顧客接点をより多く集めたところが卸を利用するかたちになる」 ──アマゾンが卸を利用して日本市場を根こそぎ持っていかれることになりかねない。
「アマゾンは既に小売業の枠を超えています。
ウォルマートもそうです。
消費者にあらゆる生活基盤を提供している。
何々業という従来の業種区分ではもはや彼らをとらえきれません。
物流業も同じだと思います」
