2005年2月号
特集
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在庫削減はどこまできたか 富士通――預託在庫方式で調達を改革
FEBRUARY 2005 14富士通――預託在庫方式で調達を改革富士通はこの5年間でパソコン関連の棚卸資産を半減させた。
生産計画のサイクルを短くし、製品の作りすぎを防止。
さらに全国5カ所に設けていた倉庫を全廃し、製品を工場から直送する体制に切り替えた。
(刈屋大輔) ジ ストインタイム適用率 で管理富士通は九九年にパソコンを対象にしたサプライチ ン改革をスタ トした その結果 この五年間でパソコンに関連する資材や部品 製品在庫とい た棚卸資産を半減させることに成功した 同社のビジネス全体に占めるパソコン事業の割合はさほど大きくない そのため全社的な棚卸資産の水準を大きく引き下げるまでのインパクトにはな ていないものの その成功体験は現在SCMに取り組んでいる他部門にと て良いお手本とな ている 富士通のパソコン部隊は九九年以降 1プランニング 2調達 3製造 4物流 という大きく四つのフ ズに分けてSCMを進めてきた まず1プランニングでは従来一カ月単位だ た生産計画を一週間単位に切り替えた 市場での売れ行きに応じて生産計画を立案することで パソコンの作りすぎを防ぐのが目的だ た 生産計画の立案作業そのもののスピ ド化を図るため 新たに米マニ ジステ クス社のプランニングソフトも導入した コンシ マ 向けパソコンは 販売店ごとの週末時点での実売・在庫デ タを見ながら 翌週の生産計画に修正を加えていくかたちで最終的な製造台数を決定することにした パソコンの生産は 売れた分だけ作る を基本スタンスとしたが 受注生産への移行には踏み切らなか た 受注生産には注文 納品までのリ ドタイムが長くな てしまうという弊害があるためだ 計画ベ スでの生産を維持する代わりに 生産計画をより実需に近いものにすることで 無駄な在庫を発生させないようにしている 2調達では必要な資材や部品を必要なタイミングで調達できる体制を構築した 具体的にはベンダ 各社に協力を要請し 工場内に資材や部品の 預託在庫 を置いてもら ている 預託在庫とはベンダ 側に所有権のある在庫で 工場は組み立てで使用した分だけベンダ に費用を支払うという仕組みである これによ てパソコン用の資材や部品の在庫は限りなくゼロに近づいた 調達改革に乗り出して以降 富士通では調達の ジ ストインタイム適用率 という数値を測定している 工場からのオ ダ に対して ベンダ が一週間以内に納品を済ませた場合を ジ ストインタイムの達成 とし 一週間以上掛か た場合を 未達成 としている 九九年下期の時点でジ ストインタイム適用率は調達全体のわずか二割程度にすぎなか た 二割程度にとどま ていたということはその分 当社が資材や部品の在庫をたくさん抱えていたことを意味する とパ ソナルビジネス本部の板東陽一サプライチ ン統括部長は説明する しかし預託在庫方式の導入後はその割合が次第に高ま ていき 現在では全体の九割を超えているという 預託在庫方式の導入をめぐる各ベンダ との交渉は一筋縄にはいかなか た 富士通では 当社がどういうタイミングで部品を使用しているのか 工場の生の情報を提供する 各ベンダ はその情報をもとに部品の生産を調整できる 板東部長 と ベンダ 側にもたらされるメリ トを説明して理解を求めたが 当初はこの方針に反発するベンダ も少なくなか た 使 た分だけ費用を支払うというル ルがパソコン業界の常識となりつつあ たことが富士通にと ては追い風とな た 当時 すでに複数のパソコンメ カ が同様の仕組みを構築 運用していた 富士通では先行するメ カ の取り組みに対応しているベンダ 事例研究 5期連続削減企業のマネジメント15 FEBRUARY 2005を順次 口説き落としていき 預託在庫方式の対象企業を徐々に拡大してい た 今後の課題は店頭在庫3製造では生産拠点を集約した これまで同社では四社六拠点でパソコンを生産してきたが これを二社二拠点に絞り込んだ 現在では島根の工場 島根富士通 がノ ト型パソコンを 福島の工場 富士通アイソテ ク がデスクト プ型パソコンの生産を担当している 同時に両工場では生産革新運動をスタ トさせた 現場の小集団活動などを通じて 従来の生産工程をゼロベ スで見直し パソコン一台当たりの製造リ ドタイムを短縮しようという試みである 取り組みの結果 一台当たり一九時間掛か ていたノ ト型パソコンの組み立てリ ドタイムを五・六時間に 一五時間掛か ていたデスクト プ型パソコンを五・〇時間にそれぞれ短縮することができたという 製品在庫の削減に大きく寄与したのは4物流の見直しだ た 同社では九一年の段階でコンシ マ 向けパソコン用の倉庫を全国に一〇カ所用意 ここで工場から送られてくる製品を在庫し 注文に応じて販売店に供給していた 九七年にはこのうち五カ所を閉鎖し 札幌 東京 名古屋 大阪 福岡の五カ所の倉庫から出荷する体制に切り替えたが 製品在庫の削減は思うように進まなか た そこで二〇〇一年に改めて物流体制の抜本改革に乗り出した 全国五カ所の倉庫をすべて廃止 二工場から製品を直接 販売店へ配送する体制を敷いた それによ て全国に点在していた製品在庫を二工場に集約 工場 販売店間の製品在庫を大幅に削減したほか 翌日納品が可能なエリアを全体の八〇%にまで拡大することに成功した 富士通では1 4までの取り組みを通じて 冒頭で触れたとおり 棚卸資産を半減させた しかしSCMによる成果はそれだけではなか た コストダウン効果も絶大で 例えばパソコン一台当たりの製造コストは現在 二〇〇〇年度を一〇〇とすると六〇の水準 一台当たりの物流コストも五〇の水準まで落ちてきている さらに 企業向けパソコンでは受注から納品までの最短リ ドタイムは二日と 業界ト プの納期を実現している 板東部長 という 引き続き棚卸資産の削減を目指していく富士通にと て今後 不可欠なのは販売店とのコラボレ シ ンだ 預託在庫方式で資材や部品の在庫が極小化している調達 生産の領域ではこれ以上の在庫の削減は望めそうにない 余地が残 ているのは工場 販売店の部分で とりわけ販売店の店頭で滞留している製品在庫をどうや て圧縮していくかがポイントとなりそうだ 販売店は販売機会ロスを恐れて在庫を余計に抱えがちだ 特にパソコンのようなライフサイクルの短い商品に関してはその傾向が強い 本来 注文の翌日に商品が納品される体制であれば それほど店頭で在庫を持つ必要はないはずである これまでメ カ 側はそのことを強くアピ ルしてきたが それでも店頭の在庫は一向に減 ていかないというのが実情だ しかし最近では 販売店さんの在庫に対する意識も少しずつ変わりつつある SCMとはそもそも社内改革だけでなく サプライチ ン上のすべてのプレ ヤ を巻き込んで展開していくべきものだ 販売店さんも含めた全体最適を実現できれば 当社の棚卸資産はもう少し減 ていくはずだ と板東部長は期待している 特集 富士通パーソナルビジネス本部の板東陽一サプライチェーン統括部長 00年度 01年度 02年度 03年度 04年度 (目標) ※2000年度=100100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0棚卸資産保有日数の推移(パソコン)
生産計画のサイクルを短くし、製品の作りすぎを防止。
さらに全国5カ所に設けていた倉庫を全廃し、製品を工場から直送する体制に切り替えた。
(刈屋大輔) ジ ストインタイム適用率 で管理富士通は九九年にパソコンを対象にしたサプライチ ン改革をスタ トした その結果 この五年間でパソコンに関連する資材や部品 製品在庫とい た棚卸資産を半減させることに成功した 同社のビジネス全体に占めるパソコン事業の割合はさほど大きくない そのため全社的な棚卸資産の水準を大きく引き下げるまでのインパクトにはな ていないものの その成功体験は現在SCMに取り組んでいる他部門にと て良いお手本とな ている 富士通のパソコン部隊は九九年以降 1プランニング 2調達 3製造 4物流 という大きく四つのフ ズに分けてSCMを進めてきた まず1プランニングでは従来一カ月単位だ た生産計画を一週間単位に切り替えた 市場での売れ行きに応じて生産計画を立案することで パソコンの作りすぎを防ぐのが目的だ た 生産計画の立案作業そのもののスピ ド化を図るため 新たに米マニ ジステ クス社のプランニングソフトも導入した コンシ マ 向けパソコンは 販売店ごとの週末時点での実売・在庫デ タを見ながら 翌週の生産計画に修正を加えていくかたちで最終的な製造台数を決定することにした パソコンの生産は 売れた分だけ作る を基本スタンスとしたが 受注生産への移行には踏み切らなか た 受注生産には注文 納品までのリ ドタイムが長くな てしまうという弊害があるためだ 計画ベ スでの生産を維持する代わりに 生産計画をより実需に近いものにすることで 無駄な在庫を発生させないようにしている 2調達では必要な資材や部品を必要なタイミングで調達できる体制を構築した 具体的にはベンダ 各社に協力を要請し 工場内に資材や部品の 預託在庫 を置いてもら ている 預託在庫とはベンダ 側に所有権のある在庫で 工場は組み立てで使用した分だけベンダ に費用を支払うという仕組みである これによ てパソコン用の資材や部品の在庫は限りなくゼロに近づいた 調達改革に乗り出して以降 富士通では調達の ジ ストインタイム適用率 という数値を測定している 工場からのオ ダ に対して ベンダ が一週間以内に納品を済ませた場合を ジ ストインタイムの達成 とし 一週間以上掛か た場合を 未達成 としている 九九年下期の時点でジ ストインタイム適用率は調達全体のわずか二割程度にすぎなか た 二割程度にとどま ていたということはその分 当社が資材や部品の在庫をたくさん抱えていたことを意味する とパ ソナルビジネス本部の板東陽一サプライチ ン統括部長は説明する しかし預託在庫方式の導入後はその割合が次第に高ま ていき 現在では全体の九割を超えているという 預託在庫方式の導入をめぐる各ベンダ との交渉は一筋縄にはいかなか た 富士通では 当社がどういうタイミングで部品を使用しているのか 工場の生の情報を提供する 各ベンダ はその情報をもとに部品の生産を調整できる 板東部長 と ベンダ 側にもたらされるメリ トを説明して理解を求めたが 当初はこの方針に反発するベンダ も少なくなか た 使 た分だけ費用を支払うというル ルがパソコン業界の常識となりつつあ たことが富士通にと ては追い風とな た 当時 すでに複数のパソコンメ カ が同様の仕組みを構築 運用していた 富士通では先行するメ カ の取り組みに対応しているベンダ 事例研究 5期連続削減企業のマネジメント15 FEBRUARY 2005を順次 口説き落としていき 預託在庫方式の対象企業を徐々に拡大してい た 今後の課題は店頭在庫3製造では生産拠点を集約した これまで同社では四社六拠点でパソコンを生産してきたが これを二社二拠点に絞り込んだ 現在では島根の工場 島根富士通 がノ ト型パソコンを 福島の工場 富士通アイソテ ク がデスクト プ型パソコンの生産を担当している 同時に両工場では生産革新運動をスタ トさせた 現場の小集団活動などを通じて 従来の生産工程をゼロベ スで見直し パソコン一台当たりの製造リ ドタイムを短縮しようという試みである 取り組みの結果 一台当たり一九時間掛か ていたノ ト型パソコンの組み立てリ ドタイムを五・六時間に 一五時間掛か ていたデスクト プ型パソコンを五・〇時間にそれぞれ短縮することができたという 製品在庫の削減に大きく寄与したのは4物流の見直しだ た 同社では九一年の段階でコンシ マ 向けパソコン用の倉庫を全国に一〇カ所用意 ここで工場から送られてくる製品を在庫し 注文に応じて販売店に供給していた 九七年にはこのうち五カ所を閉鎖し 札幌 東京 名古屋 大阪 福岡の五カ所の倉庫から出荷する体制に切り替えたが 製品在庫の削減は思うように進まなか た そこで二〇〇一年に改めて物流体制の抜本改革に乗り出した 全国五カ所の倉庫をすべて廃止 二工場から製品を直接 販売店へ配送する体制を敷いた それによ て全国に点在していた製品在庫を二工場に集約 工場 販売店間の製品在庫を大幅に削減したほか 翌日納品が可能なエリアを全体の八〇%にまで拡大することに成功した 富士通では1 4までの取り組みを通じて 冒頭で触れたとおり 棚卸資産を半減させた しかしSCMによる成果はそれだけではなか た コストダウン効果も絶大で 例えばパソコン一台当たりの製造コストは現在 二〇〇〇年度を一〇〇とすると六〇の水準 一台当たりの物流コストも五〇の水準まで落ちてきている さらに 企業向けパソコンでは受注から納品までの最短リ ドタイムは二日と 業界ト プの納期を実現している 板東部長 という 引き続き棚卸資産の削減を目指していく富士通にと て今後 不可欠なのは販売店とのコラボレ シ ンだ 預託在庫方式で資材や部品の在庫が極小化している調達 生産の領域ではこれ以上の在庫の削減は望めそうにない 余地が残 ているのは工場 販売店の部分で とりわけ販売店の店頭で滞留している製品在庫をどうや て圧縮していくかがポイントとなりそうだ 販売店は販売機会ロスを恐れて在庫を余計に抱えがちだ 特にパソコンのようなライフサイクルの短い商品に関してはその傾向が強い 本来 注文の翌日に商品が納品される体制であれば それほど店頭で在庫を持つ必要はないはずである これまでメ カ 側はそのことを強くアピ ルしてきたが それでも店頭の在庫は一向に減 ていかないというのが実情だ しかし最近では 販売店さんの在庫に対する意識も少しずつ変わりつつある SCMとはそもそも社内改革だけでなく サプライチ ン上のすべてのプレ ヤ を巻き込んで展開していくべきものだ 販売店さんも含めた全体最適を実現できれば 当社の棚卸資産はもう少し減 ていくはずだ と板東部長は期待している 特集 富士通パーソナルビジネス本部の板東陽一サプライチェーン統括部長 00年度 01年度 02年度 03年度 04年度 (目標) ※2000年度=100100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0棚卸資産保有日数の推移(パソコン)
