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2005年2月号
特集

在庫削減はどこまできたか リコー――全世界の在庫を2日後には把握

FEBRUARY 2005 16 まだ在庫は見えないのか? 在庫を減らすためには そのための情報が不可欠だ とりわけグロ バルに活動する企業にと ては 実態の正確な把握がなければ在庫の大幅削減など恐くてできない 九〇年代末のSCMブ ムの際に 自社にその仕組みがないことを改めて思い知 た日本企業は多か た 在庫に対する意識が格段に高ま た現在でも それを実現できている企業はほとんどない その点 リコ には日本の大手メ カ のなかでも有数のシステムがある 現在の同社は 世界各地に散在する在庫の動きを正確に把握しながら 生産活動や物流活動を制御している リコ は九九年三月 経営企画部門から派生させるかたちでSCM推進室を発足した SCM推進室は当初 約四〇〇億円を投じて全社的にERPを導入しようとした 発足から約一年間を費やして練り上げた計画だ たが 正式決定の直前にな て桜井正光社長から待 たがかか た まずは業務の実力を上げるのが先だ というのがその理由だ た 本誌二〇〇四年六月号参照 このときの判断が正しか たことは その後の実績が証明した 最先端のITがなくても在庫は毎年のように減り続け その一方で事業活動の収益性を示す総資産事業利益率 ROA は着実に上昇 欧米流のサプライチ ン改革の目的を教科書通りに実現している 次ペ ジグラフ SCMの定石とされていたERPの導入には背を向けたが 必要な情報を得るための仕組み作りは積極的に進めた その一つが全世界の在庫状況を二日後に閲覧できる グロ バル・インベントリ ・ビ ワ GIV の開発だ た 前述したITの刷新計画とは比較にならないほど低コストで構築したシステムだが サプライチ ンの ビジビリテ 可視化 を確保し 大幅な在庫削減を達成するための強力な武器とな た 全世界の在庫を瞬時に把握できるシステムは かねてリコ のIT部門が構築しようとしながら果たせずにいた懸案事項だ た それがSCMの取り組みと合致して現実のものにな た 二〇〇〇年九月の経営会議の席上 大門一永・現SCM推進室長は まだ在庫は見えないのか? と桜井社長から問われた これに 分かりました 三カ月で作ります と回答 社長の言葉をテコに一気に具体化した 経営ト プと直結したSCM大門室長が三カ月でシステムを作れると確約したのには それなりの裏付けがあ た すでに二〇〇〇年五月くらいからシステムの構築をスタ トしていた そもそもこの話は 元デ タは絶対に社内にあるという前提で始ま ている デ タのある場所も分か ていた 問題は 現場レベルでデ タをきちんと出してくれるかどうかだけだ た リコ が製品などを動かすときには必ず何らかの管理記録を残す 末端の活動を伝票で処理していても 最終的な経理処理はコンピ タで行う ただし現在のようにコンピ タがネ トワ クで接続されていなか た時代の名残で 事業部や現地法人ごとに異なるシステムを利用していた このため在庫に関する情報そのものは世界各地のコンピ タ内にあ ても これを一元的に連動させるのが至難の業だ た 海外現法などによ て業務プロセスに違いがあることもシステムの連携を難しくした 管理レベルもさまざまで 中には製品の移動に関する伝票の入力を何日リコー ――全世界の在庫を2日後には把握1999年3月に経営トップの肝いりでSCM推進室を発足。
キャッシュフローにこだわりながら業務プロセスの見直しを進め、大幅な在庫削減と総資産事業利益率(ROA)の改善を実現した。
世界各地の2日前の在庫情報を見ることのできるシステムが、改革の原動力になった。
(岡山宏之)事例研究 5期連続削減企業のマネジメント 17 FEBRUARY 2005分かまとめてや ているケ スすらあ た だからこそ発足当初のSCM推進室はITの刷新と それを契機とする業務プロセスの標準化を図ろうとしたのだが 最終的にと た手法は当初のアプロ チとはかけ離れたものだ た SCM推進室は 業務プロセスを直してから情報を出すのではなく ありのままの姿を見せてくれればいいと現場を説得して回 た そのままの情報を出してくれれば いい加減な管理をしていることまで全部見える 見えれば 直る 実はアメリカやヨ ロ パのSCMの責任者にと ても こういうデ タこそ欲しい情報だ た 大門室長 ためだ システム整備の実務はIT部門が担 たが 現場からデ タを出してもらうための交渉は全てSCM推進室が担当した ときには 社長が見たいと言えば何でもやるのか! などと喧嘩まがいのやり取りも交わしながら 現地に赴いて説明したり 海外とのテレビ会議を繰り返すなどして とにかく前進させた 情報の精度に自信が持てないと渋る相手には これから半年くらいかけて直せばいい と説得した こうして実現したGIVの情報の把握率は当初は九〇%でしかなか た それでもシステムが稼働したことで 各地の在庫の状況が手にとるように見えるようにな た 社長も参加する社内の月例ミ テ ングでは まず経理部門が棚卸資産の金額について報告する 次にSCM推進室が どこで どのような製品の在庫が増えているのか 理由は何なのかを説明する GIVによ て的確な分析ができるようにな た あとは役員レベルで当該部門に改善の指示をしてもらえばいい リコ のSCM推進室は総勢一八人の小所帯だ 実務をこなすだけのマンパワ は持 ておらず 方向性を定めた後は進捗状況をフ ロ することしかできない にもかかわらず 過去五年間で目覚ましい成果を上げてきたのは 前述したような仕組みと 社長を含む経営陣の後押しがあ たためだ 当社のSCMにと て最大のリスクは社長が情熱を失うこと 大門室長 というほどト プの関心は高い しかもリコ の管理体制の中では 経営レベルの目標と SCMの具体的な活動レベルの目標が理路整然と整理されている それぞれの経営指標の改善に誰が責任を負うのかが明確で SCMを全社横断的な組織でバ クア プする体制もできあが ている 在庫削減の次は物流管理にメスも とも現在 リコ の在庫削減は限界に近づきつつある 次のステ プでは 少ない在庫をいかに効率よく運用するかに課題はシフトしていかざるをえない このため二〇〇五年四月からの新しい中期経営計画の中には SCM推進室が新たに物流管理の高度化に取り組むことが盛り込まれているのだという 従来 リコ グル プでは 物流管理は戦略策定まで含めて物流子会社のリコ ロジステ クスに任せてきた これを今後はSCM推進室も一緒にな て改善していく体制に改める まずは物流コストを透明化することから着手する方針だ 物流関連のコストは 売上高に占める割合が大きいにもかかわらず不透明な部分が多い まずは製造原価の中にある包装材コストなどを全部引 張り出して 何を改善すると どれくらいの効果につながるのかを明確にしたい 我々に求められているミ シ ンは競争力のある物流を実現することだ そのためにも成果を出した人たちが きちんと評価されるようにしていきたい と大門室長の意気込みは大きい 特集 SCM推進室の大門一永室長1998 1999 2000 2001 2002 2003 20041.601.501.401.301.201.101.000.900.800.700.609.008.007.006.005.004.003.00棚卸資産回転期間 カ月  総資産事業利益率 %  図2 在庫とROAのグラフ 6.305.086.147.107.717.528.241.50 1.461.271.25 1.211.060.98回転期間 ROA把握できる システム 1グローバル 拠点ごとに 2品種ごとに 32日前の  4在庫数量が  5出荷数量が 1過去3カ月間の 月別出庫数が 表示される 移動中在庫と 日別出庫数と 棚在庫と 図1 グローバル・インベントリー・ビューワー(GIV) 

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