2004年9月号
経営講義
経営講義
サプライチェーンからマネーチェーンへ
多摩大学大学院CLOコース
SEPTEMBER 2004 64
流通業界における
サプライチェーン
サプライチェーン・マネジメント
(SCM)の目的は、企業間で連携し
て、生産、物流の効率化を実現し、自
社および取引先の在庫回転率を向上
させると共に、在庫を圧縮して経営
の効率化を図ることにある。
SCM は、いまや企業の競争力の要となり つつある。
流通業界においても、今 まで以上にメーカーと卸売業、ある いは他の小売業との連携強化が重要 となっている。
流通業におけるSCMは、EDI (企業間電子商取引)を用いて、生産 し、配送し、納品し、消費者に販売 するまでの全体のリードタイムを短縮 し、生配販三層の各段階で在庫回転 率を向上させながら在庫削減を実現 することを目指す。
メーカー段階にお ける各生産工程の仕掛品の削減、ま たPOSデータを基にしたメーカーと 小売業の連携による生産および物流 の効率化、そして大手小売業に見ら れる物流センターの集約など、日々 努力が重ねられている。
この過程の中で、イオンあるいは 米ウォルマートの傘下に入った西友 のように、特に大手小売業では自社 のビジネスモデルを根底から見直し、 商品メーカーとの直取引に踏み切っ た企業もある。
こうした動きにより日 用雑貨品、加工食品等の各業界にお いても卸売業界の淘汰・集約が進み、 有力な地方卸は、その大部分が大手 卸売業に統合されつつある。
流通業 界全体が大手小売業と商品メーカー の直取引、大手卸売業と中小小売業 の連合という米国型の流通構造に移 行しつつある段階といえよう。
SCMの限界と マネーチェーンの必要性 以上のように、流通業界において SCMはEDI(電子商取引)を用 いて広く普及し、具体的な在庫削減 と在庫回転率の向上を実現し始めて いる。
しかしながら、企業経営の最 も重要な企業財務の視点から見ると、 従来のSCMには決定的な問題点が ある。
それは、在庫削減がなされて在庫 回転率が向上しても、取引先の支払いサイトが長ければ、売掛金が増大 するだけであり、企業財務上最も重 要なキャッシュフローが改善しないこ とである。
その分、金融機関に対す る依存度が大きくなり、場合によっ ては金融機関の経営状況に大きく左 右される不安定な状況となる。
極端 な場合には、企業経営が行き詰まる 大きな原因ともなる。
日本企業が運転資金をいつまでも サプライチェーンからマネーチェーンへ サプライチェーン・マネジメントの取り組みが進展してきたこ とに伴い、その限界も明らかになってきた。
いくら在庫回転率を 向上させても、支払いサイトが長いままでは肝心のキャッシュフ ローは改善しない。
サプライチェーンと連動したマネーチェーン の構築が新たな課題となっている。
●●● 古川久夫 多摩大学大学院 客員教授 65 SEPTEMBER 2004 大手小売業の一部には、「納品時即時 払い」を全面的に打ち出し、商品メ ーカーとの取引条件の改善に役立て る企業も現れている。
しかし、こうし た企業は今のところ例外的で、マネ ーチェーンシステムの構築は、サプラ イチェーンの次の企業効率化の重要 な課題となっている。
マネーチェーンマネジメントの 構築と効果「Money Chain Management (以 下MCMという)」は、企業財務の合 理化・効率化を図るための金融シス テムであり、以下の要素から成り立 っている。
?部品・原材料から生産・物流・販 売に至るすべての関連企業間決済 を、納品時の即時現金決済とする ことで、すべての関連企業間決済 の頻度を上げて、関連企業全体の キャッシュフロー回転率の向上を 図る 日本の商慣行として、現金決済で も商品を納品してから実際に現金が 振り込まれるまでには約一カ月から 一カ月半はかかっている。
これを納 品時即時現金払いにすれば、納品す る側の企業だけでなく、支払い側の 企業も、決済時の決済金額が小額化 され、双方の企業にとって資金効率 が良くなる。
同時に、納品企業の納 品価格の改善によるコストダウンも 可能になる。
さらに、部品・原材料から生産・ 物流・販売に至るサプライチェーン 全体で現金即時払いのマネーチェー ンを形成すれば、一層の資金回転率 の向上による各企業経営の強化を図 ることが可能になる。
?必要な資金を必要なときに必要な 額だけ即時に調達する直接資本調 達市場を創る 企業が資金回転率の向上を図る重 要な手段は、売掛債権の即時流動化・ 現金化である。
従来の金融機関のサ ービスは、企業融資や手形の割引等 においては、面談と手作業による「原 始的な」サービスが主だった。
また、 その際には金融機関から拘束預金な どの抱き合わせ融資など、一般企業 側に不利で資金効率が低下する取引 を強いられることもある。
このような、スピードが遅く、原始 的な金融サービスでは、企業の資金 回転率は低下するばかりである。
こ 銀行に依存にしなければならない理 由の一つは、日本の古い商慣行とな っている、納品から支払いまでの期 間が長いことにある。
この支払いサイ トが長いことが、SCMにおける企 業経営効率化にとっても大きな妨げ となっている。
サプライチェーンにおける物の流れ の効率化に、支払い代金というお金 の流れが連動して、はじめて企業間 商取引における全体効率は達成され る。
即ち、サプライチェーンに連動し てキャッシュフローを伴ったマネーチ ェーンが形成されることにより達成さ れるのである。
流通業界においてもサプライチェ ーンにマネーチェーンを連動させ、企 業のキャッシュフローが改善すれば、 納品価格の引き下げが可能になり、生 配販各層で企業財務の改善強化が大 幅に図られることになる。
既にウォルマート傘下の西友など ?ファクタ リング情報 ?振込通知 ?納品情報 ?納品確定情報 安全性・信頼性の 高いIP 通信網 B社 A銀行 決済 センター B銀行 A社 ?代金振込情報 図1 MCMの基礎ファクタリングサービス ?B社からA社へEDIで納品情報を送信し、商品を納品 ?A社はB社からの納品を検品確定し、決済センターへ 納品確定情報を送信 ?決済センターは、A社の立替払をファクタリング情報 としてA銀行に送信 ?A銀行はB銀行に代金振込情報を送信 ?B銀行はB社に振込通知情報を送信 ロジスティクス経営講義 SEPTEMBER 2004 66 れを改め、電子商取引を活用し、サプ ライチェーンと連動し、通信ネットワ ークと自動審査システムを組み合わせ ることで資金調達を自動的に行ったり、 売掛債権を現金化して、企業が必要 なときに、即時に必要な金額だけ資金 を調達することにより、資金回転率 の向上とキャッシュフローの改善を図 る仕組みがMCMシステム(Money Chain Management System )であ る。
?MCMの第一歩は、電子商取引で 行うファクタリングサービス 図1は、MCMの第一歩となる電 子商取引を用いたファクタリングサ ービスのスキームである。
A社とB社 間でEDIを用いて商取引を行う際 に、第三者の決済センターを介して、 第三者の決済センターがファクタリ ングを行い、A社に代わってB社に 対し、チャージを引いて現金即時払 いを行う。
この場合、決済の与信はA社の信 用において行うため、納入業者であ るB社が例え零細企業であっても、A 社が信用力のある大手企業であれば 問題は無い。
また決済センターは、金融機関が 担うことも可能であるが、例えばA 社が大手小売業であれば、自社のカ ード会社等の金融子会社を活用する ことにより、大きな利益を生み出す ことも期待できる。
商品メーカーにお いても材料メーカーとの取引において、 自社の金融子会社を活用することが 可能である。
このように、サプライチェーンの次 の企業効率化の重要なテーマは、サ プライチェーンと連動したマネーチェ ーンを構築することによる「キャッシ ュフロー」の改善と資金効率の改善 であり、それを可能にする技術が「電 子商取引」である。
また、マネーチェーンシステムが各 産業界に普及すれば金融業界にも大 きな影響を与える。
その過程で金融 業界以外の流通企業あるいは商品メ ーカーが自社の金融子会社を活用し て企業間決済資金の流れを大きく担 うことも想定される。
このように、電 子商取引の活用戦略は、企業経営の 巧拙を分ける重要なテーマとなりつ つあるのである。
古川久夫(ふるかわ・ひさお) 東京農工大学工学部電気工学科卒業。
シャープ等で、 LSI設計、プログラム開発、POSシステム設計、EOS システム設計を経験。
その後(財)流通システム開発 センターに入所。
EDIシステム設計、UN/EDIFACT メッセージ開発・標準化、流通業界電子商取引標準化、 各種カードシステム開発、JCA-H(X.400)手順開 発、統合IP網開発、共通線信号方式IP電話開発、IP マルチキャスト通信システム開発等を手掛ける。
現在、 OBN情報センター次長。
近著に「EDIの知識」(日経 文庫、日本経済新聞社)がある。
PROFILE 筆者は多摩大学大学院ロジスティクス経 営コースで、今年の四月から電子商取引論 を機軸とした「流通情報システム論」の講 座を担当している。
同講座の概要を以下に 紹介する。
流通システム論(電子商取引論) 産業界は、個別企業の枠を越えて、生産、 流通、販売の三位一体の合理化を行い、国 内のみならず海外企業を含めたグローバル な競争が行われる段階に至っている。
当然、企業経営の神経組織である企業情報システ ムにおいても、個別企業における情報シス テムの優劣のみならず、EDI(企業間電 子商取引)を用いて自社システムと取引先 企業の情報システムとの効果的な連携の優 劣が企業の優劣を決する大きな要素となり つつある。
なかでも流通業界は、生産、物流、販売 のいわゆる「生、配、販の三層」の流通構 造が激変し、流通チャネルの主導権も川上 から川下に大きく激変しつつある。
こうし た産業構造の変化は当然、個別企業におけ る企業情報システムに大きな影響を与え始 めている。
さらには、コンビニエンススト アの各種金融サービスに見られるごとく、 金融業界などの他産業にも大きな影響を与 えている。
その影響力の源泉が流通情報シ ステムである。
そこで流通業界における情報システムの 戦略的な変遷とIT技術の変遷を縦軸に、 企業間電子商取引を横軸に、コンビニエン ス業界の事例等を交えながら流通情報シス テムとサプライチェーン、流通情報システ ムとマーケッティング、流通情報システム と電子決済、流通情報システムと電子金融 などを講義すると共に、IT技術の最新動 向について、今後の通信ネットワークの要 である次世代IP通信ネットワーク、電子 タグ等の技術解説を行い、その戦略的方向 CLOコース担当講座 を含めた流通情報システム全般に対する理 解を深めることを狙いとして、事例をでき るだけ交えながら、二〇〇四年度の講義を 行った。
二〇〇五年度は「流通情報システム論」 を踏まえながら「電子商取引論」を主軸に する予定である。
即ち企業経営における電 子商取引の重要性が従来以上に高まり、企 業戦略において「電子商取引を基軸にどの ようなビジネスモデルを構築するか」が大 きな課題となっている。
そこで電子商取引 とサプライチェーン、電子商取引とマーケ ッティング、電子商取引と電子決済、電子 商取引と電子金融などを中心に講義すると 共に、IP通信ネットワーク、電子タグ等 の電子商取引関連情報技術の解説を行い、 電子商取引全般に対する理解を深めること を狙いとした講座内容にする予定である。
SCM は、いまや企業の競争力の要となり つつある。
流通業界においても、今 まで以上にメーカーと卸売業、ある いは他の小売業との連携強化が重要 となっている。
流通業におけるSCMは、EDI (企業間電子商取引)を用いて、生産 し、配送し、納品し、消費者に販売 するまでの全体のリードタイムを短縮 し、生配販三層の各段階で在庫回転 率を向上させながら在庫削減を実現 することを目指す。
メーカー段階にお ける各生産工程の仕掛品の削減、ま たPOSデータを基にしたメーカーと 小売業の連携による生産および物流 の効率化、そして大手小売業に見ら れる物流センターの集約など、日々 努力が重ねられている。
この過程の中で、イオンあるいは 米ウォルマートの傘下に入った西友 のように、特に大手小売業では自社 のビジネスモデルを根底から見直し、 商品メーカーとの直取引に踏み切っ た企業もある。
こうした動きにより日 用雑貨品、加工食品等の各業界にお いても卸売業界の淘汰・集約が進み、 有力な地方卸は、その大部分が大手 卸売業に統合されつつある。
流通業 界全体が大手小売業と商品メーカー の直取引、大手卸売業と中小小売業 の連合という米国型の流通構造に移 行しつつある段階といえよう。
SCMの限界と マネーチェーンの必要性 以上のように、流通業界において SCMはEDI(電子商取引)を用 いて広く普及し、具体的な在庫削減 と在庫回転率の向上を実現し始めて いる。
しかしながら、企業経営の最 も重要な企業財務の視点から見ると、 従来のSCMには決定的な問題点が ある。
それは、在庫削減がなされて在庫 回転率が向上しても、取引先の支払いサイトが長ければ、売掛金が増大 するだけであり、企業財務上最も重 要なキャッシュフローが改善しないこ とである。
その分、金融機関に対す る依存度が大きくなり、場合によっ ては金融機関の経営状況に大きく左 右される不安定な状況となる。
極端 な場合には、企業経営が行き詰まる 大きな原因ともなる。
日本企業が運転資金をいつまでも サプライチェーンからマネーチェーンへ サプライチェーン・マネジメントの取り組みが進展してきたこ とに伴い、その限界も明らかになってきた。
いくら在庫回転率を 向上させても、支払いサイトが長いままでは肝心のキャッシュフ ローは改善しない。
サプライチェーンと連動したマネーチェーン の構築が新たな課題となっている。
●●● 古川久夫 多摩大学大学院 客員教授 65 SEPTEMBER 2004 大手小売業の一部には、「納品時即時 払い」を全面的に打ち出し、商品メ ーカーとの取引条件の改善に役立て る企業も現れている。
しかし、こうし た企業は今のところ例外的で、マネ ーチェーンシステムの構築は、サプラ イチェーンの次の企業効率化の重要 な課題となっている。
マネーチェーンマネジメントの 構築と効果「Money Chain Management (以 下MCMという)」は、企業財務の合 理化・効率化を図るための金融シス テムであり、以下の要素から成り立 っている。
?部品・原材料から生産・物流・販 売に至るすべての関連企業間決済 を、納品時の即時現金決済とする ことで、すべての関連企業間決済 の頻度を上げて、関連企業全体の キャッシュフロー回転率の向上を 図る 日本の商慣行として、現金決済で も商品を納品してから実際に現金が 振り込まれるまでには約一カ月から 一カ月半はかかっている。
これを納 品時即時現金払いにすれば、納品す る側の企業だけでなく、支払い側の 企業も、決済時の決済金額が小額化 され、双方の企業にとって資金効率 が良くなる。
同時に、納品企業の納 品価格の改善によるコストダウンも 可能になる。
さらに、部品・原材料から生産・ 物流・販売に至るサプライチェーン 全体で現金即時払いのマネーチェー ンを形成すれば、一層の資金回転率 の向上による各企業経営の強化を図 ることが可能になる。
?必要な資金を必要なときに必要な 額だけ即時に調達する直接資本調 達市場を創る 企業が資金回転率の向上を図る重 要な手段は、売掛債権の即時流動化・ 現金化である。
従来の金融機関のサ ービスは、企業融資や手形の割引等 においては、面談と手作業による「原 始的な」サービスが主だった。
また、 その際には金融機関から拘束預金な どの抱き合わせ融資など、一般企業 側に不利で資金効率が低下する取引 を強いられることもある。
このような、スピードが遅く、原始 的な金融サービスでは、企業の資金 回転率は低下するばかりである。
こ 銀行に依存にしなければならない理 由の一つは、日本の古い商慣行とな っている、納品から支払いまでの期 間が長いことにある。
この支払いサイ トが長いことが、SCMにおける企 業経営効率化にとっても大きな妨げ となっている。
サプライチェーンにおける物の流れ の効率化に、支払い代金というお金 の流れが連動して、はじめて企業間 商取引における全体効率は達成され る。
即ち、サプライチェーンに連動し てキャッシュフローを伴ったマネーチ ェーンが形成されることにより達成さ れるのである。
流通業界においてもサプライチェ ーンにマネーチェーンを連動させ、企 業のキャッシュフローが改善すれば、 納品価格の引き下げが可能になり、生 配販各層で企業財務の改善強化が大 幅に図られることになる。
既にウォルマート傘下の西友など ?ファクタ リング情報 ?振込通知 ?納品情報 ?納品確定情報 安全性・信頼性の 高いIP 通信網 B社 A銀行 決済 センター B銀行 A社 ?代金振込情報 図1 MCMの基礎ファクタリングサービス ?B社からA社へEDIで納品情報を送信し、商品を納品 ?A社はB社からの納品を検品確定し、決済センターへ 納品確定情報を送信 ?決済センターは、A社の立替払をファクタリング情報 としてA銀行に送信 ?A銀行はB銀行に代金振込情報を送信 ?B銀行はB社に振込通知情報を送信 ロジスティクス経営講義 SEPTEMBER 2004 66 れを改め、電子商取引を活用し、サプ ライチェーンと連動し、通信ネットワ ークと自動審査システムを組み合わせ ることで資金調達を自動的に行ったり、 売掛債権を現金化して、企業が必要 なときに、即時に必要な金額だけ資金 を調達することにより、資金回転率 の向上とキャッシュフローの改善を図 る仕組みがMCMシステム(Money Chain Management System )であ る。
?MCMの第一歩は、電子商取引で 行うファクタリングサービス 図1は、MCMの第一歩となる電 子商取引を用いたファクタリングサ ービスのスキームである。
A社とB社 間でEDIを用いて商取引を行う際 に、第三者の決済センターを介して、 第三者の決済センターがファクタリ ングを行い、A社に代わってB社に 対し、チャージを引いて現金即時払 いを行う。
この場合、決済の与信はA社の信 用において行うため、納入業者であ るB社が例え零細企業であっても、A 社が信用力のある大手企業であれば 問題は無い。
また決済センターは、金融機関が 担うことも可能であるが、例えばA 社が大手小売業であれば、自社のカ ード会社等の金融子会社を活用する ことにより、大きな利益を生み出す ことも期待できる。
商品メーカーにお いても材料メーカーとの取引において、 自社の金融子会社を活用することが 可能である。
このように、サプライチェーンの次 の企業効率化の重要なテーマは、サ プライチェーンと連動したマネーチェ ーンを構築することによる「キャッシ ュフロー」の改善と資金効率の改善 であり、それを可能にする技術が「電 子商取引」である。
また、マネーチェーンシステムが各 産業界に普及すれば金融業界にも大 きな影響を与える。
その過程で金融 業界以外の流通企業あるいは商品メ ーカーが自社の金融子会社を活用し て企業間決済資金の流れを大きく担 うことも想定される。
このように、電 子商取引の活用戦略は、企業経営の 巧拙を分ける重要なテーマとなりつ つあるのである。
古川久夫(ふるかわ・ひさお) 東京農工大学工学部電気工学科卒業。
シャープ等で、 LSI設計、プログラム開発、POSシステム設計、EOS システム設計を経験。
その後(財)流通システム開発 センターに入所。
EDIシステム設計、UN/EDIFACT メッセージ開発・標準化、流通業界電子商取引標準化、 各種カードシステム開発、JCA-H(X.400)手順開 発、統合IP網開発、共通線信号方式IP電話開発、IP マルチキャスト通信システム開発等を手掛ける。
現在、 OBN情報センター次長。
近著に「EDIの知識」(日経 文庫、日本経済新聞社)がある。
PROFILE 筆者は多摩大学大学院ロジスティクス経 営コースで、今年の四月から電子商取引論 を機軸とした「流通情報システム論」の講 座を担当している。
同講座の概要を以下に 紹介する。
流通システム論(電子商取引論) 産業界は、個別企業の枠を越えて、生産、 流通、販売の三位一体の合理化を行い、国 内のみならず海外企業を含めたグローバル な競争が行われる段階に至っている。
当然、企業経営の神経組織である企業情報システ ムにおいても、個別企業における情報シス テムの優劣のみならず、EDI(企業間電 子商取引)を用いて自社システムと取引先 企業の情報システムとの効果的な連携の優 劣が企業の優劣を決する大きな要素となり つつある。
なかでも流通業界は、生産、物流、販売 のいわゆる「生、配、販の三層」の流通構 造が激変し、流通チャネルの主導権も川上 から川下に大きく激変しつつある。
こうし た産業構造の変化は当然、個別企業におけ る企業情報システムに大きな影響を与え始 めている。
さらには、コンビニエンススト アの各種金融サービスに見られるごとく、 金融業界などの他産業にも大きな影響を与 えている。
その影響力の源泉が流通情報シ ステムである。
そこで流通業界における情報システムの 戦略的な変遷とIT技術の変遷を縦軸に、 企業間電子商取引を横軸に、コンビニエン ス業界の事例等を交えながら流通情報シス テムとサプライチェーン、流通情報システ ムとマーケッティング、流通情報システム と電子決済、流通情報システムと電子金融 などを講義すると共に、IT技術の最新動 向について、今後の通信ネットワークの要 である次世代IP通信ネットワーク、電子 タグ等の技術解説を行い、その戦略的方向 CLOコース担当講座 を含めた流通情報システム全般に対する理 解を深めることを狙いとして、事例をでき るだけ交えながら、二〇〇四年度の講義を 行った。
二〇〇五年度は「流通情報システム論」 を踏まえながら「電子商取引論」を主軸に する予定である。
即ち企業経営における電 子商取引の重要性が従来以上に高まり、企 業戦略において「電子商取引を基軸にどの ようなビジネスモデルを構築するか」が大 きな課題となっている。
そこで電子商取引 とサプライチェーン、電子商取引とマーケ ッティング、電子商取引と電子決済、電子 商取引と電子金融などを中心に講義すると 共に、IP通信ネットワーク、電子タグ等 の電子商取引関連情報技術の解説を行い、 電子商取引全般に対する理解を深めること を狙いとした講座内容にする予定である。
