2004年11月号
ロジスティクス経営講義
ロジスティクス経営講義
SCMに必要な国際標準のマネジメント
多摩大学大学院CLOコース
NOVEMBER 2004 70
SCMの意義
近年、消費者の嗜好やニーズを満
たしつつ、すなわち消費者価値を高
めながら、サプライヤー、メーカー、
卸売業、小売業などのサプライチェ
ーンを構成する企業が協働して全体
の効率化をはかることをサプライチェ
ーン・マネジメント(Supply Chain
Management:
SCM)と呼ぶよう
になっている。
SCMは個別企業レベルから業界 レベル、さらには一国全体のマクロレ ベルに至るまで、様々な階層で検討が 進められている。
例えば、米国でグロ ーサリーと呼ばれる加工食品や日用雑 貨品の業界においては、サプライチェ ーン全体の効率化を目指したECR ( Efficient Consumer Response: 効 率的消費者対応)と呼ばれる運動と して展開されている。
SCMの定義には研究者や団体に よって様々なものがある。
ロジスティ クス研究で評価の高い米国ロジスティ クス管理協議会(Council of Logistics Management: CLM)が現在、ホ ームページに掲載している最新の定 義は次の通りである。
「SCMとは、経営資源確保、調達、 加工及び全ロジスティクス管理活動 に含まれる全ての活動を計画し管理 するものであって、サプライヤー、中 間流通企業、サードパーティ・サー ビス提供企業および顧客などのチャ ネル構成者の調整と協働を行うこと も含むものである。
すなわち、サプラ イチェーン・マネジメントとは、企業 内と企業間の供給管理と需要管理を 統合するものである」 さらに同協議会は、サプライチェ ーン・マネジメントには、企業内およ び企業間の主要なビジネス機能やビ ジネスプロセスを最適かつ効果的な ビジネスモデルに結びつけるための重 大な責任と機能を統合することも含 まれるとしている。
また、ロジスティクス・マネジメン トも、「SCMの一部であり、顧客要 求事項に対処するため、物財、サー ビス及び当該関連情報を、発地点か ら消費地点まで能率的かつ効率的に 移動・返送させ保管することを計画 し、実施し、統制することをいう」と 定義されている。
ロジスティクス・マネジメントをSCMの一部として明 確に位置付けているのである。
このようなロジスティクス・マネジ メントを含むSCMの近年の特徴と して、次のような事項が指摘できる。
?消費者起点のSCMの推進 当初よりSCMは消費者価値を高 めるための流通の効率化を目指した SCMに必要な国際標準のマネジメント 複数の企業にまたがる活動を扱うSCMにおいては、コスト把 握の手法にも標準化が不可欠だ。
しかし我が国では、自社の業務 の独自性を主張するあまり、グローバル標準手法や評価手法の採 用が欧米に比べて遅れがちだ。
結果として努力がムダになってい ることも珍しくない。
●●● 中 光政 多摩大学大学院 客員教授 71 NOVEMBER 2004 ものであったが、近年、さらに消費 者のニーズや嗜好の変化を的確に捉 え る た め の C R M ( C u s t o m e r Relationship Management: 顧客関 係管理)や、消費者に関連するナレ ッジマネジメントなどが重視されるよ うになっている。
SCMにおいてもこ のような積極的な需要創造が一層重 要になってきている。
?インターネット技術の活用 一九九〇年代後半以降、インター ネットが積極的にビジネスに利用さ れるようになってきた。
とくに、SC Mにおいても既存の流通VAN ( Value Added Network: 付加価値 通信網)や流通EDI(Electronic Data Interchange: 電子データ交換) に加えて、WEB、XMLを利用し た資材や商品の調達、商談、取引な どが重要になっている。
?SCMにおける手法の精緻化 S C M で は 当 初 よ り C R P ( Continuous Replenishment Pro gram: 連結補充方式)やVMI ( Vendor Managed Inventory: ベン ダー主導型在庫管理)のようなベン ダーによる在庫管理が重視されてき たが、これらの手法の持つ問題点を 解 決 す る 手 法 と し て C P F R ( Collaborative Planning Forcasting and Replenishment )のような小売 業とベンダーが協働して需要予測を 行い、それに基づき在庫管理するよ うな一層精緻化した手法が導入され るようになっている。
?パートナーシップと協働の重視 SCMにおいて取引企業間の協力 が必要なのは当然のことであるが、小 売業のPOS情報などの情報共有化 を一段と進めることなどによって、従 来の取引関係の枠を越えてパートナ ーシップや企業間の協働の実現とそ の客観的な評価が求められている。
このような高度なSCMを推進し ていくためには、具体的には、次のよ うな事項を実施していくことが必要 になってくる。
1 . 原材料・部品の調達、生産、製品 の消費・利用にいたる物的財のフ ローを調整し効率的に行うこと。
2 . サプライチェーンに参加している パートナー企業の枠を超えて、製 品の供給プロセスを統合すること。
3 . サプライチェーンの往路供給およ び復路供給を効率化して、製品や 資源の再利用を図ること。
4 . 各企業や各担当者の見解の相違を 克服して、サプライチェーン活動 を改善していくこと。
5 . 共通の理念や手法や技術を活用していくこと。
しかし、SCMは米国を中心とす る欧米から紹介・導入されたもので あり、欧米の法制度や商慣行や文化 を前提としている。
そのため我が国で SCMを普及させるためには、企業 認識の変革や利害関係者のコスト負 担などが必ずしも明確でない商慣行 の改善など解決しなければならないこ とも多い。
従って、我が国では、?、?、? に加えて、?と?の共通の理念や手 法を活用し、サプライチェーン構成 企業や業界全体でその効率を客観的 に継続して評価改善していく点が重 要と考えられる。
特に、競争企業との競争優位を確 保するためインターネットを中心とし た情報技術を活用したビジネスモデ ル特許などの重要性が指摘されるあ まり、SCMにおける共通の理念や 手法を活用し、サプライチェーン構 成企業や業界全体でその効率を客観 的に継続して評価改善していく点の 重要性は見落とされがちである。
我が国企業の場合、自社の業務の 独自性を主張するあまり、グローバ ル標準手法や評価手法の採用が欧米 企業に比べて遅れる場合が多く、サ プライチェーン全体の効率化の観点 からみた場合にも、個別企業の効率 化の観点からみた場合にも不要な努 力を行っている場合が多い。
特に、五番目の共通の理念や手法 や技術のうち、SCMを推進するの に不可欠な技術や手法としては、情 報技術(IT)とコストの把握手法 としての活動基準原価計算(Activity Based Costing: ABC)や顧客価値 の測定などがあげられる。
情報技術面では、インターネット 技術を中心としたIT技術を活用す ることがSCMにおいても重要とな っている。
例えば、SCMの推進に おいて関連のあるIT関連テーマと しては、GDS(グローバル・マス タ・データ同期化)、CPFR、XM L、RFID(無線タグ)などをあ NOVEMBER 2004 72 げることができる。
一方、SCMでは、SCMに参加 している企業間で当該製商品やサー ビスとの関連で顧客価値の増減とそ れに関わるコストを個別企業独自の 手法ではなく標準化された共通の測 定方法を使用することが不可欠にな っている。
従来、コストの計算手法や管理手 法は、財務会計(法制度会計)とは 異なって、管理会計や原価計算など により一応の指針は示されているも のの、基本的には各企業の状況に応 じて自由な手法をとることができた。
しかし、SCMでは、取引企業間で 企業活動別や販売チャネル別や顧客 別のコスト分析を行うことが不可欠 になっている。
そこで、以下にSC Mの参加企業間の共通のコスト測定 手法となっている活動基準原価計算 をみてみよう。
SCMにおける 活動基準原価計算 SCMの中心的な活動である物流 活動などは、製造活動に比べれば、労 働集約的で、機械化・自動化の遅れ ている活動である。
しかし、多頻度 小口配送の進展、物流サービスの高 度化、物流コストの上昇など、企業 をとりまく物流環境は、非常に厳し くなっている。
特にコスト計算との関 係では、次のような事項がSCM、特 にロジスティクス管理上重要な問題 となっている。
?多頻度小口配送の進展 消費者ニーズの多様化や企業の在 庫削減等により、多品種少量多頻度 配送が荷主企業に要求されるように なっている。
このような傾向は部品の JIT納品を要求するメーカーの増 加や小売業のバックヤード等の在庫 の圧縮などにより、今後も続くもの と考えられる。
?サービス水準の上昇とサービス内 容の高度化 SCMの進展により企業の要求す る物流サービス水準が上昇している。
特に「ノー検品」などの実施にとも ない物流センター内におけるピッキン グ、仕分け等の庫内作業の作業品質 の向上が必要不可欠になっている。
?物流コストの上昇とその負担 多頻度小口納品等により物流コス 図1 ABCによるピッキングコストの把握 コスト視点(ABC的視点) プロセス視点(ABM的視点) 人、時間、行 工数/件(時間帯別) ※※円 ※※円/分 ※※円/分 ※※円 /ケース ピッキング業績評価 製品 ケース パレット 労務費、材料費 経費 ピッキング (ピッキング費) A取引先 (荷主別ピッキング費) 作業人数・作業時間 伝票行数 参考)Turney, Peter B.B.,Common Cents, Cost Technology, 1991.の116頁 ロジスティクス経営講義 73 NOVEMBER 2004 トは急上昇している。
しかし的確な 原価計算を実施し物流コストを正確 に把握して、納品先にサービス内容 に応じて適切なコスト負担を要求し ている企業は非常に少ない。
このような最近のロジスティクス管 理上の問題を検討するためには、S CM参加企業がコスト把握の手法と して活動基準原価計算に基づいてコ ストを把握することが必要である。
米 国管理会計人協会(IMA)の定義 によれば活動基準原価計算は、次の 通りである。
「活動基準原価計算とは、企業のS CM上重要な活動を識別し、当該活 動と関連づけてコストを集計し、こ の活動費を各種コストドライバーを 使用して物流サービスなど(例えば、 物流アウトプット、物流成果など)別 に計算するSCMコスト管理の一手 法である」 従来の原価計算では、先ず輸送費 や保管費等のコストを機能別に把握 していたが、SCM活動基準原価計 算では、最初に、物流管理を行う上 で重要な物流活動を識別し、それを コストセンターとする。
したがって、 コストセンターが管理上の区分と一 致しSCMコスト管理が的確に実施 できる。
活動基準原価計算と 活動基準管理 また、最近では、活動基準原価計 算を広く原価管理や経営管理に活用 した活動基準管理(Activity-Based Management: ABM)も提唱され るようになっている。
活動基準管理 についてCAM ―I(Consortium for Advanced Manufacturing-Interna tional )は、次のように定義している。
「活動基準管理とは、顧客が受取る 価値と当該価値の提供から得られる 利益を増加するために、活動を日常 的に管理することに焦点を向けた学 問領域である」 そして、活動基準管理には、主に 活動基準原価計算より得られるデー タによるコストドライバー分析、活動 分析および業績評価等が含まれると している。
このような主要な物流活動を中心 に物流プロセスの評価や管理を行う 活動基準管理と活動基準原価計算と の概念的な関係を、具体的に物流セ ンター内のピッキング活動について双 方の関係を図示したものが図1であ る。
SCMの重要な領域であるロジス ティクスや物流に関わる活動基準原 価計算については最近、論文や書籍 でも取り上げられ、また中小企業庁 から昨年、指針も公表されている。
し かし、実際に実施を検討するとコス トドライバーの把握が容易でなかった り、必要なデータが的確にとれない 場合も多い。
SCMの本来の趣旨か らすれば、精緻化やカスタマイズで対 応するばかりではなくグローバルな標 準手法で対応できるよう活動や業務を簡素化するといった発想の転換も 必要であろう。
中 光政(なか・みつまさ) 埼玉県所沢市生まれ。
早稲田大学商学部卒業、同大学大学院商学 研究科博士課程修了。
商学博士。
日本物流学会理事。
大学院修了後、朝日大学経営学部講師、助教授、東京経済大学 経営学助教授を経て、現在、東京経済大学経営学部流通マーケティ ング学科、同大学院経営学研究科教授。
行政などの各種委員会や研 究会の委員として多数のプロジェクトに参画。
大学では、物流論、流通情報システム論などを担当。
専門分野は、 ロジスティクス管理、流通情報システム、物流会計情報システムな ど。
特に、流通(ロジスティクスを含む)と情報技術と会計にまた がる学際的領域を中心に研究している。
昨今は、物流顧客価値、商 慣行、SCMにも取り組んでいる。
PROFILE ロジスティクスの基本概念について、 荷主企業と物流専業企業の双方に関わ るビジネスを踏まえて総合的な講義が 行われる。
具体的には、日米の文献レ ビュー、実態調査などを通して、企業 における近年のロジスティクスの特徴 を明確にするためのプログラムである。
特に、経営戦略、顧客価値、競争戦略 との関連からロジスティクスの意義に ついて多面的な考察が試みられる。
ま た、効率評価、顧客価値、コスト管理、 商慣行などのマネジメントの主要なテ ーマの基本理論をロジスティクスとの 関連から詳細に検討を加える予定であ る。
また、サプライチェーンマネジメ ント(SCM)についてもロジスティ クスの観点から詳細な考察が加えられ る。
ビジネスロジスティクス理論/ 先進ロジスティクス理論への理解 CLOコース担当講座
SCMは個別企業レベルから業界 レベル、さらには一国全体のマクロレ ベルに至るまで、様々な階層で検討が 進められている。
例えば、米国でグロ ーサリーと呼ばれる加工食品や日用雑 貨品の業界においては、サプライチェ ーン全体の効率化を目指したECR ( Efficient Consumer Response: 効 率的消費者対応)と呼ばれる運動と して展開されている。
SCMの定義には研究者や団体に よって様々なものがある。
ロジスティ クス研究で評価の高い米国ロジスティ クス管理協議会(Council of Logistics Management: CLM)が現在、ホ ームページに掲載している最新の定 義は次の通りである。
「SCMとは、経営資源確保、調達、 加工及び全ロジスティクス管理活動 に含まれる全ての活動を計画し管理 するものであって、サプライヤー、中 間流通企業、サードパーティ・サー ビス提供企業および顧客などのチャ ネル構成者の調整と協働を行うこと も含むものである。
すなわち、サプラ イチェーン・マネジメントとは、企業 内と企業間の供給管理と需要管理を 統合するものである」 さらに同協議会は、サプライチェ ーン・マネジメントには、企業内およ び企業間の主要なビジネス機能やビ ジネスプロセスを最適かつ効果的な ビジネスモデルに結びつけるための重 大な責任と機能を統合することも含 まれるとしている。
また、ロジスティクス・マネジメン トも、「SCMの一部であり、顧客要 求事項に対処するため、物財、サー ビス及び当該関連情報を、発地点か ら消費地点まで能率的かつ効率的に 移動・返送させ保管することを計画 し、実施し、統制することをいう」と 定義されている。
ロジスティクス・マネジメントをSCMの一部として明 確に位置付けているのである。
このようなロジスティクス・マネジ メントを含むSCMの近年の特徴と して、次のような事項が指摘できる。
?消費者起点のSCMの推進 当初よりSCMは消費者価値を高 めるための流通の効率化を目指した SCMに必要な国際標準のマネジメント 複数の企業にまたがる活動を扱うSCMにおいては、コスト把 握の手法にも標準化が不可欠だ。
しかし我が国では、自社の業務 の独自性を主張するあまり、グローバル標準手法や評価手法の採 用が欧米に比べて遅れがちだ。
結果として努力がムダになってい ることも珍しくない。
●●● 中 光政 多摩大学大学院 客員教授 71 NOVEMBER 2004 ものであったが、近年、さらに消費 者のニーズや嗜好の変化を的確に捉 え る た め の C R M ( C u s t o m e r Relationship Management: 顧客関 係管理)や、消費者に関連するナレ ッジマネジメントなどが重視されるよ うになっている。
SCMにおいてもこ のような積極的な需要創造が一層重 要になってきている。
?インターネット技術の活用 一九九〇年代後半以降、インター ネットが積極的にビジネスに利用さ れるようになってきた。
とくに、SC Mにおいても既存の流通VAN ( Value Added Network: 付加価値 通信網)や流通EDI(Electronic Data Interchange: 電子データ交換) に加えて、WEB、XMLを利用し た資材や商品の調達、商談、取引な どが重要になっている。
?SCMにおける手法の精緻化 S C M で は 当 初 よ り C R P ( Continuous Replenishment Pro gram: 連結補充方式)やVMI ( Vendor Managed Inventory: ベン ダー主導型在庫管理)のようなベン ダーによる在庫管理が重視されてき たが、これらの手法の持つ問題点を 解 決 す る 手 法 と し て C P F R ( Collaborative Planning Forcasting and Replenishment )のような小売 業とベンダーが協働して需要予測を 行い、それに基づき在庫管理するよ うな一層精緻化した手法が導入され るようになっている。
?パートナーシップと協働の重視 SCMにおいて取引企業間の協力 が必要なのは当然のことであるが、小 売業のPOS情報などの情報共有化 を一段と進めることなどによって、従 来の取引関係の枠を越えてパートナ ーシップや企業間の協働の実現とそ の客観的な評価が求められている。
このような高度なSCMを推進し ていくためには、具体的には、次のよ うな事項を実施していくことが必要 になってくる。
1 . 原材料・部品の調達、生産、製品 の消費・利用にいたる物的財のフ ローを調整し効率的に行うこと。
2 . サプライチェーンに参加している パートナー企業の枠を超えて、製 品の供給プロセスを統合すること。
3 . サプライチェーンの往路供給およ び復路供給を効率化して、製品や 資源の再利用を図ること。
4 . 各企業や各担当者の見解の相違を 克服して、サプライチェーン活動 を改善していくこと。
5 . 共通の理念や手法や技術を活用していくこと。
しかし、SCMは米国を中心とす る欧米から紹介・導入されたもので あり、欧米の法制度や商慣行や文化 を前提としている。
そのため我が国で SCMを普及させるためには、企業 認識の変革や利害関係者のコスト負 担などが必ずしも明確でない商慣行 の改善など解決しなければならないこ とも多い。
従って、我が国では、?、?、? に加えて、?と?の共通の理念や手 法を活用し、サプライチェーン構成 企業や業界全体でその効率を客観的 に継続して評価改善していく点が重 要と考えられる。
特に、競争企業との競争優位を確 保するためインターネットを中心とし た情報技術を活用したビジネスモデ ル特許などの重要性が指摘されるあ まり、SCMにおける共通の理念や 手法を活用し、サプライチェーン構 成企業や業界全体でその効率を客観 的に継続して評価改善していく点の 重要性は見落とされがちである。
我が国企業の場合、自社の業務の 独自性を主張するあまり、グローバ ル標準手法や評価手法の採用が欧米 企業に比べて遅れる場合が多く、サ プライチェーン全体の効率化の観点 からみた場合にも、個別企業の効率 化の観点からみた場合にも不要な努 力を行っている場合が多い。
特に、五番目の共通の理念や手法 や技術のうち、SCMを推進するの に不可欠な技術や手法としては、情 報技術(IT)とコストの把握手法 としての活動基準原価計算(Activity Based Costing: ABC)や顧客価値 の測定などがあげられる。
情報技術面では、インターネット 技術を中心としたIT技術を活用す ることがSCMにおいても重要とな っている。
例えば、SCMの推進に おいて関連のあるIT関連テーマと しては、GDS(グローバル・マス タ・データ同期化)、CPFR、XM L、RFID(無線タグ)などをあ NOVEMBER 2004 72 げることができる。
一方、SCMでは、SCMに参加 している企業間で当該製商品やサー ビスとの関連で顧客価値の増減とそ れに関わるコストを個別企業独自の 手法ではなく標準化された共通の測 定方法を使用することが不可欠にな っている。
従来、コストの計算手法や管理手 法は、財務会計(法制度会計)とは 異なって、管理会計や原価計算など により一応の指針は示されているも のの、基本的には各企業の状況に応 じて自由な手法をとることができた。
しかし、SCMでは、取引企業間で 企業活動別や販売チャネル別や顧客 別のコスト分析を行うことが不可欠 になっている。
そこで、以下にSC Mの参加企業間の共通のコスト測定 手法となっている活動基準原価計算 をみてみよう。
SCMにおける 活動基準原価計算 SCMの中心的な活動である物流 活動などは、製造活動に比べれば、労 働集約的で、機械化・自動化の遅れ ている活動である。
しかし、多頻度 小口配送の進展、物流サービスの高 度化、物流コストの上昇など、企業 をとりまく物流環境は、非常に厳し くなっている。
特にコスト計算との関 係では、次のような事項がSCM、特 にロジスティクス管理上重要な問題 となっている。
?多頻度小口配送の進展 消費者ニーズの多様化や企業の在 庫削減等により、多品種少量多頻度 配送が荷主企業に要求されるように なっている。
このような傾向は部品の JIT納品を要求するメーカーの増 加や小売業のバックヤード等の在庫 の圧縮などにより、今後も続くもの と考えられる。
?サービス水準の上昇とサービス内 容の高度化 SCMの進展により企業の要求す る物流サービス水準が上昇している。
特に「ノー検品」などの実施にとも ない物流センター内におけるピッキン グ、仕分け等の庫内作業の作業品質 の向上が必要不可欠になっている。
?物流コストの上昇とその負担 多頻度小口納品等により物流コス 図1 ABCによるピッキングコストの把握 コスト視点(ABC的視点) プロセス視点(ABM的視点) 人、時間、行 工数/件(時間帯別) ※※円 ※※円/分 ※※円/分 ※※円 /ケース ピッキング業績評価 製品 ケース パレット 労務費、材料費 経費 ピッキング (ピッキング費) A取引先 (荷主別ピッキング費) 作業人数・作業時間 伝票行数 参考)Turney, Peter B.B.,Common Cents, Cost Technology, 1991.の116頁 ロジスティクス経営講義 73 NOVEMBER 2004 トは急上昇している。
しかし的確な 原価計算を実施し物流コストを正確 に把握して、納品先にサービス内容 に応じて適切なコスト負担を要求し ている企業は非常に少ない。
このような最近のロジスティクス管 理上の問題を検討するためには、S CM参加企業がコスト把握の手法と して活動基準原価計算に基づいてコ ストを把握することが必要である。
米 国管理会計人協会(IMA)の定義 によれば活動基準原価計算は、次の 通りである。
「活動基準原価計算とは、企業のS CM上重要な活動を識別し、当該活 動と関連づけてコストを集計し、こ の活動費を各種コストドライバーを 使用して物流サービスなど(例えば、 物流アウトプット、物流成果など)別 に計算するSCMコスト管理の一手 法である」 従来の原価計算では、先ず輸送費 や保管費等のコストを機能別に把握 していたが、SCM活動基準原価計 算では、最初に、物流管理を行う上 で重要な物流活動を識別し、それを コストセンターとする。
したがって、 コストセンターが管理上の区分と一 致しSCMコスト管理が的確に実施 できる。
活動基準原価計算と 活動基準管理 また、最近では、活動基準原価計 算を広く原価管理や経営管理に活用 した活動基準管理(Activity-Based Management: ABM)も提唱され るようになっている。
活動基準管理 についてCAM ―I(Consortium for Advanced Manufacturing-Interna tional )は、次のように定義している。
「活動基準管理とは、顧客が受取る 価値と当該価値の提供から得られる 利益を増加するために、活動を日常 的に管理することに焦点を向けた学 問領域である」 そして、活動基準管理には、主に 活動基準原価計算より得られるデー タによるコストドライバー分析、活動 分析および業績評価等が含まれると している。
このような主要な物流活動を中心 に物流プロセスの評価や管理を行う 活動基準管理と活動基準原価計算と の概念的な関係を、具体的に物流セ ンター内のピッキング活動について双 方の関係を図示したものが図1であ る。
SCMの重要な領域であるロジス ティクスや物流に関わる活動基準原 価計算については最近、論文や書籍 でも取り上げられ、また中小企業庁 から昨年、指針も公表されている。
し かし、実際に実施を検討するとコス トドライバーの把握が容易でなかった り、必要なデータが的確にとれない 場合も多い。
SCMの本来の趣旨か らすれば、精緻化やカスタマイズで対 応するばかりではなくグローバルな標 準手法で対応できるよう活動や業務を簡素化するといった発想の転換も 必要であろう。
中 光政(なか・みつまさ) 埼玉県所沢市生まれ。
早稲田大学商学部卒業、同大学大学院商学 研究科博士課程修了。
商学博士。
日本物流学会理事。
大学院修了後、朝日大学経営学部講師、助教授、東京経済大学 経営学助教授を経て、現在、東京経済大学経営学部流通マーケティ ング学科、同大学院経営学研究科教授。
行政などの各種委員会や研 究会の委員として多数のプロジェクトに参画。
大学では、物流論、流通情報システム論などを担当。
専門分野は、 ロジスティクス管理、流通情報システム、物流会計情報システムな ど。
特に、流通(ロジスティクスを含む)と情報技術と会計にまた がる学際的領域を中心に研究している。
昨今は、物流顧客価値、商 慣行、SCMにも取り組んでいる。
PROFILE ロジスティクスの基本概念について、 荷主企業と物流専業企業の双方に関わ るビジネスを踏まえて総合的な講義が 行われる。
具体的には、日米の文献レ ビュー、実態調査などを通して、企業 における近年のロジスティクスの特徴 を明確にするためのプログラムである。
特に、経営戦略、顧客価値、競争戦略 との関連からロジスティクスの意義に ついて多面的な考察が試みられる。
ま た、効率評価、顧客価値、コスト管理、 商慣行などのマネジメントの主要なテ ーマの基本理論をロジスティクスとの 関連から詳細に検討を加える予定であ る。
また、サプライチェーンマネジメ ント(SCM)についてもロジスティ クスの観点から詳細な考察が加えられ る。
ビジネスロジスティクス理論/ 先進ロジスティクス理論への理解 CLOコース担当講座
