2005年3月号
現場改善
現場改善
地域卸の生き残りをかけたセンター開発
事例で学ぶ 現場改善 日本ロジファクトリー 代表 青木正一 MARCH 2005 70中規模卸の物流戦略食品卸のN社は北関東を地盤とする地域卸だ 年商約四〇億円 従業員数七五人という規模で 外食チ ンや加工食品ベンダ などに納品する業務用食品の扱いをメ ンとしている そんなN社が 新たに物流センタ を建設するに当た て 専門家を探している と ある情報システム会社から紹介を受けた 我々NLFがN社を訪問すると M社長とS常務が揃 て出迎えてくれた センタ 開発の狙いも社長の口から直接聞くことができた 言うまでもなく経営ト プの関与は改善・改革の成否を大きく左右する N社の対応には好印象を受けた 経営ト プがいかに物流を重要視しているかが感じ取れたからだ も とも それも当然と言えるのかも知れない 物流機能の向上は中小卸にと て生き残りに不可欠な課題である 一般に食品卸は年商一五〇億円規模が生き残りの一つの目安とされる 実際 旧知の大手食品メ カ の営業本部長は 販売先の与信管理で二〇〇億円以下の卸は信用度が低いとしてCランクに設定し 売り を控えているという ただし 業務用卸となると生き残りラインはぐ と下がり 年商三〇億円クラスとなる N社は規模的にはギリギリのラインだ た また物流面では 大手卸はアウトソ シング 中小卸は自社配送という構図が大半とな ている 二〇〇億円 五〇〇億円の中堅規模では商物分離を行 て失敗するケ スが多い 得意先との関係 いわゆる業者選定の理由が何であるかをよく把握していないためである 中小卸の経営では営業マンによる自社配送が最大のコミ ニケ シ ンツ ルとな ている場合が多い 得意先へのきめ細かな対応や 即時納品 時には自営業者の話し相手になることが 卸としての存在価値とな ているのである したが て 商物分離は得策ではない 品揃え 価格 リ ドタイム 営業マンの対応 支払いサイト など 卸の機能は多岐に渡る そして得意先の業者選定は 多岐にわたる機能の 掛け算 で決まる 得意先ごとのニ ズを見極め 合致する得意先だけ商物分離するという判断は成り立 ても 全てを対象にしてしまえばマイナスになるケ スが多くなる これが年商一〇〇〇億円クラスともなると話は違 てくる 教育された提案営業とシステム化された商取引ツ ルが前提となるため 商物分離の成功率も高ま てくる 要するに卸の物流は ヒト 重視の関係であれば商物一体 会社 重視の関係であれば商物分離と大半できる N社の場合 物流戦略の舵取りが最も難しい規模にあると言えた 実態としては業務用卸と第26回手狭にな たセンタ にところ狭しと商品が置かれている 通路で作業員がすれ違うのもままならない 出荷作業が滞るのも当然だ た 経営環境は厳しい 資金的な余裕があるわけでもない しかし卸にと て物流機能は生命線だ 経営ト プは生き残りをかけて新センタ の建設を決意した 地域卸の生き残りをかけたセンタ 開発71 MARCH 2005が訪問した時点では 稼働を三カ月後に控えながらも センタ 内の作業設計については全く白紙の状態であ た M社長の説明を聞いて すぐにセンタ 開発プロジ クトをスタ トさせた ハ ド面での条件は既に決ま ていた 自社センタ とい ても土地は坪三五〇〇円の賃借 建物もそれまでその土地で物流会社が使用していた施設を居抜きで買い取り 最低限の改修を行 たものだ イニシ ルコストをできるだけ下げようという配慮だ たが オペレ シ ンを設計する上では大きな制約とな た とりわけ入荷スペ ス 出荷スペ スなどのゾ ニングには頭を痛めた 実際に施設を見学するまで 我々はトラ クからの積み下ろしを行うド クシ ルを二基から三基設置するこという性格上 中規模ながら 会社 の関係を重要視した営業スタイルをと ていた そのため物流業務も全車両の九割を協力物流会社にアウトソ シングしていた それだけに物流品質の管理が経営上の大きな課題だ た M社長の説明によると それまでN社は本社に隣接する約五〇〇坪の施設を物流センタ として使用してきた しかし近年の売上規模の拡大に伴い スペ スは手狭にな ていた さらには得意先から物流品質の向上を強く要請されていた そのため従来のセンタ から約三キロの距離に新センタ を建設することを決断したという 新センタ の規模は建物面積約九〇〇坪 平屋建てながらドライ・保冷・冷凍・チルドの全温度帯に対応する機能を持つ も とも 当社をイメ ジしていたが 荷付けヤ ドを手当できない 通過型のクロスド キングのオペレ シ ンも人海戦術で処理しなければなか た 出荷特性からロケ シ ン設定新センタ の内部のオペレ シ ンを設計するためにまず旧センタ を見学した 約九〇〇〇アイテムの商品がところ狭しと並び 通路の確保もままならない 温度帯別に区分けされてはいてもバラとケ スが同じ場所に保管され そのままでは実棚の勘定もできないという状態であ た スペ ス的に限界が来ているのは明らかだ た ピ キング作業にも多くの時間を費やしていた 1作業スペ スが狭いこと 2ロケ シ ンの不備 3棚番地の設定などが曖昧であ たMARCH 2005 72化した 簡単にいえば 出荷頻度別に四分類したものを さらにランク別に仕分け 下記の 図1 のように棚を 仮設定 した ピ キング用の棚には四段棚を用いることが多い このうち一番下の段からのピ キングは腰を曲げ持ち上げることになるため負荷が大きい そこで一番下の段はスト クスペ スとした 最もピ キングがしやすい二段目と三段目には出荷頻度の高い商品 そして最上段にはC商品を置いた なお最上段にスペ スが確保できる場合には ここを空き箱置きなどとして活用することもできる これを 仮設定 と称したのは 実際に稼動させた後でロケ シ ンを修正することになるからだ 出荷頻度だけでロケ シ ンを決定すると 結果的に類似商品が隣接して置かれるケ スが出てくる これがピ キングミスの原因になる そのため形状や商品名が類似したものは間を空けて保管するか あるいは色のついた仕切りを入れるなどさらに工夫を行う必要が出てくる なおN社の現場では 缶や瓶などの比較的重量のある商品が全体の七〇%以上を占めていた そのため棚に平均五%の角度をつけ 取り出しやすいように設定した これが菓子などの軽量物の場合には一〇%程度の角度になるが 重量物では箱がつぶれてしま たり 補充時に商品の重さで落下してしまうことがあるため角度設定にさじ加減が必要になる またN社の場合 Aランク商品に袋物 缶物が多か た このエリアではラ クや什器は使用せず パレ ト上で保管する ただし そのことなどが原因だ た 入庫から検品 出庫までの作業に時間がかかることで 温度維持にも問題が生じる それが得意先からの返品 クレ ム 遅配を発生させていた 新センタ への移設によ て1作業スペ ス面での課題はクリアできる しかし 2ロケ シ ンの不備と3棚番地の設定をクリアする必要があ た まず レイアウト の見直しに着手した 商品の出荷頻度別ABC分析を行うため必要なデ タの提出を依頼したが 案の定 デ タベ スが整理されていない やむを得ず過去六カ月の納品書の控えをダンボ ル箱にもらい 我々NLFの事務所に持ち帰 て 一枚ずつ入力してい た ちなみに同じ食品分野でも一般商品を取り扱 ている場合には商品のライフサイクルが短く 改廃が激しいため 六カ月分もの実績デ タを分析してもムダになることが多い しかしN社の場合 主力取扱品が粉物と油物などの原料品であるためサイクルが長か た こうして出荷頻度別ABC分析を行い 商品のランク付けを行 た 結果は約九〇〇〇アイテムのうち上位約一八〇〇アイテム つまり上位二〇%のアイテムで売上高全体の八〇%を占めるというパレ トの法則 2:8の原理 通りの状況であ た この結果から 商品を1頻繁に出荷する商品 2比較的よく出荷する商品 3ときどき出荷する商品 4たまにしか出荷しない商品の四つに区分し 作業スペ スを充分に確保することを念頭に入れて 新センタ のロケ シ ンを設定した それを 棚割り の段階でさらに細分時に さらにパレ トを一段重ねて ピ キングの上下運動を短縮するという工夫を施した 6つの ない こうしたピ キングなどの 人員オペレ シ ン はセンタ 開発・改善で最も重要な要因と言える その基本となる 6つの ない を頭に入れて欲しい 1。
持たせない2。
書かせない3。
歩かせない4。
待たせない5。
考えさせない6。
探させないこのうちN社では 1。
持たせない 3。
歩B−C商品 B−A商品 B−B商品 ストックスペース 図1 商品の棚割り 73 MARCH 2005かせない 5。
考えさせない 6。
探させない に重点を置いた 持たせない は前述の通り 重量物の持ち上げ作業をできるだけ削減した またピ キングカ トは台車にコンテナを載せたものを使用し Aランク商品はそのまま台車部分へ B・Cランク商品はコンテナに入れるというピ キングスタイルにした 歩かせない では 出荷頻度別ABC分析によるロケ シ ンの設定に力を注いだ 三カ月に一度の頻度でロケ シ ンのメンテナンスを行 ている 考えさせない と 探させない は連動していた N社の現場では納品伝票の控えをそのまま出荷伝票して使用し それを基にピ キングを行 ていた これを改め 保管ロケ シ ンを分かりやすく明記したピ キングリストを新たに策定した この時に商品名と棚番地の照合作業に配慮した 棚番地の番号を人間が記憶しやすいと言われている三桁の数字に統一した また出荷頻度別の区分けをは きり認識できるようにAランクの棚番地は赤色 Bランクは青色 Cランクは最も集中できる色とされている黄色を用いた これによ て物流現場の風景が いくらか華やかにな た 店舗に近づいたと言 ていい 一般に物流センタ は店舗と違 て何よりロ コスト化が追求されるため 暗く無機質で殺伐としたイメ ジがある しかし物流品質を向上しようとすれば スム ズな作業の流れをつくることと同時に 作業環境にも配慮が必要にな てくる これまでのセンタ 運営は熟練者によるカンと経験が財産であ た しかし昨今ではパ ト・アルバイトによるセンタ 運営が主体とな ている 新入りのパ ト・アルバイトでも今日 明日からある程度の業務をこなせる環境を作るには スム ズなオペレ シ ンと同時に解り易さが不可欠である 良いセンタ は店舗に似るそこでは心理学やマ ケテ ングに基づいた店舗設計・運営のノウハウ いわゆる商品を買 てもらう 買わせる工夫が大いに参考になる 実際 店舗の売場表示は棚番地の表示に使える 二人がすれ違うことのできる通路の確保はセンタ のレイアウト設計に 売場の陳列はピ キングの棚割に 買い物のカ トはピ キングカ トに応用できる 今後 物流センタ の風景は店舗に近づいていくだろう イメ ジの問題ではない それによ て物流センタ の作業効率をア プさせ ピ キングミス 出荷ミスを削減できるようになるのである 実際 ある家電メ カ の物流子会社では女性メンバ が中心とな て上記のような改善を行 た結果 作業効率 生産性 が昨年対比一三〇%となり ピ キングミスを五〇%削減することに成功している N社でもこうした作業環境への配慮が大きな成果を発揮した 新センタ への移設から六カ月が経過した段階で 得意先からの返品 クレ ムは月間一件あるかないかというレベルにな た 過去のデ タがないため効果を数字で比較することはできないが N社の営業部長は 明らかにトラブルが減 た と結果を高く評価している もちろん稼働当初は多少の混乱もあ た とりわけセンタ 長はパ ト アルバイトの人繰りと管理に苦労していた 作業スピ ド 生産性のア プが進まない 最近は物流現場にフリ タ などを派遣する人材派遣会社も台頭し 二〇〇人規模の現場であれば管理者を常勤で派遣することも可能にな てきているというが N社の場合は自社管理が必要だ た そこでパ ト・アルバイト一人ひとりのピ キングミス 商品の破損 出勤率などを管理する簡易的な評価制度を作 た 処理能力や勤務状況が時給に反映される仕組みだ 導入時には現場の一部から不満の声もあが たが今ではそれも落ち着き 活気あるセンタ とな ている 今後の課題は物流業務のデ タ化だ 適切な物流指標を作成し それに基づいて課題を解決するという循環によ て継続的に品質を向上していく それが実現した時 N社は 問屋不要論 とは無縁の存在にな ているはずだ あおき・しょういち 1964年生まれ。
京都産業大学経済学部卒業。
大手運送業者のセールスドライバーを経て、89年に船井総合研究所入社。
物流開発チーム・トラックチームチーフを務める。
96年、独立。
日本ロジファクトリーを設立し代表に就任。
現在に至る。
HP:http://www。
nlf。
co。
jp/ e‐mail:info@nlf。
co。
jp
持たせない2。
書かせない3。
歩かせない4。
待たせない5。
考えさせない6。
探させないこのうちN社では 1。
持たせない 3。
歩B−C商品 B−A商品 B−B商品 ストックスペース 図1 商品の棚割り 73 MARCH 2005かせない 5。
考えさせない 6。
探させない に重点を置いた 持たせない は前述の通り 重量物の持ち上げ作業をできるだけ削減した またピ キングカ トは台車にコンテナを載せたものを使用し Aランク商品はそのまま台車部分へ B・Cランク商品はコンテナに入れるというピ キングスタイルにした 歩かせない では 出荷頻度別ABC分析によるロケ シ ンの設定に力を注いだ 三カ月に一度の頻度でロケ シ ンのメンテナンスを行 ている 考えさせない と 探させない は連動していた N社の現場では納品伝票の控えをそのまま出荷伝票して使用し それを基にピ キングを行 ていた これを改め 保管ロケ シ ンを分かりやすく明記したピ キングリストを新たに策定した この時に商品名と棚番地の照合作業に配慮した 棚番地の番号を人間が記憶しやすいと言われている三桁の数字に統一した また出荷頻度別の区分けをは きり認識できるようにAランクの棚番地は赤色 Bランクは青色 Cランクは最も集中できる色とされている黄色を用いた これによ て物流現場の風景が いくらか華やかにな た 店舗に近づいたと言 ていい 一般に物流センタ は店舗と違 て何よりロ コスト化が追求されるため 暗く無機質で殺伐としたイメ ジがある しかし物流品質を向上しようとすれば スム ズな作業の流れをつくることと同時に 作業環境にも配慮が必要にな てくる これまでのセンタ 運営は熟練者によるカンと経験が財産であ た しかし昨今ではパ ト・アルバイトによるセンタ 運営が主体とな ている 新入りのパ ト・アルバイトでも今日 明日からある程度の業務をこなせる環境を作るには スム ズなオペレ シ ンと同時に解り易さが不可欠である 良いセンタ は店舗に似るそこでは心理学やマ ケテ ングに基づいた店舗設計・運営のノウハウ いわゆる商品を買 てもらう 買わせる工夫が大いに参考になる 実際 店舗の売場表示は棚番地の表示に使える 二人がすれ違うことのできる通路の確保はセンタ のレイアウト設計に 売場の陳列はピ キングの棚割に 買い物のカ トはピ キングカ トに応用できる 今後 物流センタ の風景は店舗に近づいていくだろう イメ ジの問題ではない それによ て物流センタ の作業効率をア プさせ ピ キングミス 出荷ミスを削減できるようになるのである 実際 ある家電メ カ の物流子会社では女性メンバ が中心とな て上記のような改善を行 た結果 作業効率 生産性 が昨年対比一三〇%となり ピ キングミスを五〇%削減することに成功している N社でもこうした作業環境への配慮が大きな成果を発揮した 新センタ への移設から六カ月が経過した段階で 得意先からの返品 クレ ムは月間一件あるかないかというレベルにな た 過去のデ タがないため効果を数字で比較することはできないが N社の営業部長は 明らかにトラブルが減 た と結果を高く評価している もちろん稼働当初は多少の混乱もあ た とりわけセンタ 長はパ ト アルバイトの人繰りと管理に苦労していた 作業スピ ド 生産性のア プが進まない 最近は物流現場にフリ タ などを派遣する人材派遣会社も台頭し 二〇〇人規模の現場であれば管理者を常勤で派遣することも可能にな てきているというが N社の場合は自社管理が必要だ た そこでパ ト・アルバイト一人ひとりのピ キングミス 商品の破損 出勤率などを管理する簡易的な評価制度を作 た 処理能力や勤務状況が時給に反映される仕組みだ 導入時には現場の一部から不満の声もあが たが今ではそれも落ち着き 活気あるセンタ とな ている 今後の課題は物流業務のデ タ化だ 適切な物流指標を作成し それに基づいて課題を解決するという循環によ て継続的に品質を向上していく それが実現した時 N社は 問屋不要論 とは無縁の存在にな ているはずだ あおき・しょういち 1964年生まれ。
京都産業大学経済学部卒業。
大手運送業者のセールスドライバーを経て、89年に船井総合研究所入社。
物流開発チーム・トラックチームチーフを務める。
96年、独立。
日本ロジファクトリーを設立し代表に就任。
現在に至る。
HP:http://www。
nlf。
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jp/ e‐mail:info@nlf。
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