2003年3月号
中国SCM
中国SCM
中国ロジスティクス市場の攻略法
MARCH 2003 70
現在の中国には競争力のあるサプ
ライチェーンを発展させる上での課
題もありますが、同時に変化を促す
次の三つの動きが確実に存在してい
ます。
すなわち、?市場の成長と顧 客要求の変化、?政府の自由化政策、 ?中国のWTOへの加盟――です。
そ れぞれについて解説します。
市場の成長と顧客要求の変化 中国の人口(現在十二億人)は、 毎年一五〇〇万人ずつ増加すること が予想されています。
国民総生産(G NP)は、現在八一六〇億米ドルで あり、毎年およそ八〜九%増加して いくものと思われます。
また、世界 トップ五〇〇社のうち四〇〇社が中 国に投資を行っており、九五〜九九 年にかけて二三〇〇億米ドルが投資 されました。
当然ながら、このような状況は消 費財市場の拡大をもたらし、消費者 の購買力や意欲は高まっています。
そ れに対し、業界は統合が進み、近代 的な小売業者が第二階層の市場から、 第三階層の市町村にも浸透し、中国 のサプライチェーンインフラの近代 化を求める声は大きくなっています。
しかし、短期的には、国内の流通 業者は、競争の激化する市場で企業 の求めるサービス・レベルに応える ことができません。
このことが長い 間、進展しなかったロジスティクス 業界の再編成につながると予想され ます。
中国でもカルフールなどの外資チ ェーンに代表される近代的な小売業 者の登場により、効率的で信頼でき るサービスが求められるようになっ ています。
小売業者は仕入れや購買 機能を統合することで十分な力を発揮することようになり、それにより 有利な支払条件、時間通りの納品、 優先サービスやバーコードなどの先 進テクノロジーの活用などこれまで なかったことを手に入れています。
小売業者の要求は、サプライチェ ーンを支援する動きとなって、運送 業者、メーカー、ディストリビュー ターにケイパビリティの向上を求め ています。
たとえば、中国のカルフ ールは、自社の配送センター、倉庫、 輸送車両を持っていませんが、卸売 業者との取引も拒否しています。
そ の代わり同社は、サプライヤーに直 接店舗に納品させています。
こうして小売店や家庭用品市場で 何ができるかが分かってくると、企 業や消費者は、もっと速い変化を求 めるようになります。
業界が開かれ れば開かれるほど、繁栄が広がるこ とは歴史が証明しています。
政府の自由化政策 中国政府は、ロジスティクスや輸 送業界の発展がなければ産業の成長 も妨げられるという認識をもち始め ています。
事実、ロジスティクスや 輸送業界の近代化は、中国の第一〇 次五カ年計画(二〇〇一〜〇五)の 優先課題のトップ3に位置付けられ ています。
中国近代化への青写真に は、道路、鉄道、航空、港湾機能の 充実が、インターモーダル・リンク を含めて明確に示されています。
二〇〇一年三月、中国の商務省は、 「ロジスティクス業界の発展を加速す るための視点」というメモを発表し、 従来の貨物輸送業者に、ロジスティ クスを含めたサービスの充実を求め ています。
さらに、このメモでは、ロ ジスティクス業界の自由化と国内・ 外国企業のジョイント・ベンチャー の設立推進もうたわれています。
中 国の地方自治体は、インフラ整備や、 ロジスティクスセンターやハブ建設 に大きな投資を行って、統合や協業 を促進しています。
インフラ整備のほかにも、政府主 要省庁六機関の共同声明では、以下 のような目標が発表されました。
・サードパーティー・ロジスティクス、 最終回 アクセンチュア ロバート J・イーストン アジア太平洋地域統括パートナー 中国ロジスティクス市場の攻略法 WTO加盟によって中国ビジネスはどう変わるのか。
ことにロジス ティクス、サプライチェーン分野の規制緩和は、どのようなタイム スケジュールで進んでいくのか。
中国ロジスティクス市場の現状と 今後を鋭く分析する。
短期集中連載の最終回。
71 MARCH 2003 それと特に国営企業と地元メーカ ーにおいて近代的情報技術の活用 を促進する ・ロジスティクスに関する教育とト レーニングを実施する ・中国のロジスティクス業界発展を 支援する法的環境を整備する 近代化プロセスを加速させるため に、いくつかの規制緩和が具体化し ています。
たとえば、鉄道省は、外 国企業の鉄道インフラへの投資を促 進するために、法規制の変更を発表 しました。
ごく最近の動きとしては、対外経 済貿易省が「国際貿易と近代的なロ ジスティクス業界の開放と健全な発 展を促進するためには、ロジスティ クス業界に外国からの投資を試験的 に受け入れ、特定地域での活動を許 可していく。
外資系のロジスティク ス企業が、実需要に基づいて、輸送、 倉庫、積載、荷降ろし、加工、梱包、 物流、情報処理、輸出入などの作業 を有機的に統合し、完全なサプライ チェーンを形成すれば、多機能の統 合サービスを提供できるようになる」 と発表しています。
試験的な受け入れは、特定の地域 に限定され、たくさんの条件が付加 されていますが、(たとえ保守的な内 容でも)中国のロジスティクスシス テムの開放を示すものであり、変化 の風が確実に吹き始めたことを示し ています。
中国のWTO加盟 WTO(世界貿易機関)加盟は、 二〇〇一年十二月に認可され、中国 の独自の経済改革プロセスを補足し、 改革への動きを強化しています。
中 国のWTO同意書には、外国企業が ロジスティクスや輸送業界に参入す ることを阻んできた規制を徐々に撤 廃することが明示されています(図 1)。
WTOステータスはまた、経済 を競争市場に開放し、国内・外資企 業間の協業を促進することによって 中国の経済成長を促進させることに なるでしょう。
WTO加盟による規制緩和は数年 にわたって段階的に進められるとは いえ、既に外国企業は中国で製造し た製品を国内で流通させることがで きるようになっており、一年以内に は、輸入製品の販売も許可されるよ うになることは注目に値します。
ま た、一年以内に、外国企業はロジス ティクス・ジョイントベンチャーの過 半数株式を保有でき、三年以内には 制限なしの経営が可能になります。
三〜四年以内には、主要および補 図1 WTO加盟後の規制 ・3―5年に分けて書 籍、化学肥料、原 油、石油製品・ 制 限はほとんどなし ・小売業の制限枠な し 出所:アクセンチュア 2002年まで 2007年まで 2006年まで 2005年まで 2004年まで 2003年まで ・少数株主とジョ イント・ベンチャ (JV)が輸入と 国内製品の卸売 に従事できる ・外国資本企業 (FIE)が中国で 製造した製品を 販売できる 取引制限 出荷・輸送流通 船舶貨物取扱、 通関 鉄道輸送 道路輸送 倉庫・在庫 運送サービス ・ 少数株主/JV ・ 少数株主/JV ・ 少数株主/JV ・ 外資―PRCベン チャーの許可 ・外資大手企業の 地理的、量的制 限の撤廃 ・小売業の地理的 制限の一部 ・過半数株主 ・ 過半数株主 ・ 過半数株主 ・ 過半数株主 ・ 過半数株主 ・すべての規制の撤 廃 ・100%外資の企 業 (WOFE) 設立 ・小売業に関する地 理的制限の完全撤 廃 ・100%子会社 ・100%子会社 ・100%子会社 ・100%子会社 ・100%子会社・ 国 際輸送に外資系企 業の制限なし MARCH 2003 72 完的なロジスティクスサービスの規 制はすべて撤廃されることになりま す。
これは外国企業にとって、倉庫、 冷蔵、運送、道路輸送、レンタルや リース、鉄道、特急便、航空輸送、広 告、テストと分析、製品設置、メン テナンスや修理などのアフターサー ビスまですべてを含めて、一〇〇% 外資の子会社を設立できることを意 味しています。
将来の方向性と ビジネス・チャンス 成長の持続、有効な政府政策、W TOへの加盟は、今後五〜一〇年に わたって中国のサプライチェーン環 境に大きな変化をもたらします。
市 場の拡大や顧客の要求の増加により、 サプライチェーンは差別化のための ひとつの要素となります。
政府や財 界は、中国におけるサプライチェー ンのパフォーマンスギャップの大きさ とその影響を認識しています。
その ギャップに対して初めて何かをする 必要があると考えており、もはや現 状のままのパフォーマンスでは納得 できなくなるでしょう。
中国のWTOへの加盟は、中国経 済に大きな変化をもたらします。
し かし、移行の遅れは避けられません。
どの程度の深刻な遅れ、時間的な遅 れが生じるかは、政府がロジスティ クス業界をどれだけ自由化するか、国 内企業に自由市場への競争環境を開 放していくかにかかっています。
おそ らく、中国はロジスティクス業界の 開放を慎重に扱い、マネジメントや オペレーションに関する専門知識を 国内の企業に最大限引き渡せるよう な方法をとるでしょう。
二〇〇二年六月、対外経済貿易省 は、中国ロジスティクス業界への外 資投入を規定・条件つきで試験的に 行うことを発表し、政府が外国との 競争を慎重に管理する姿勢を見せま した。
政府は、国内のロジスティク ス企業に競争力をつけるための十分 な時間を与え、競争に対処できる状 態を作ろうとしています。
また政府は、外国企業に対して、国 内企業を魅力的な投資対象とみなす ように、競争相手ではなく協力体制 をとるパートナーとして見てもらいた いと考えています。
結果として、外 国投資家は、中国が新しい法律を制 定して、競争をコントロールし、W TOへの移行準備を整えることを期 待しています。
構造的要因による遅れも予想され ています。
まとまりのない市場、複 雑で地域ごとの物流ネットワーク、貧 弱なインフラ整備、限定的なオペレ ーション能力という状態で、サプラ イチェーンを徹底的に見直すことは、 大きな課題となります。
「三つ子の魂 百までも」という言い回しのように、 国家・地域レベルの官僚主義のコン トロールにはかなりの時間が予想さ れます。
そのほとんどは、古いビジネ スのやり方を維持しようとする者た ちとの戦いなのです。
税関の効率化と透明性に向けた改善、通関への要件やオペレーション におけるプロ意識、透明性も拡大し ていくでしょう。
通関時のサービス は効率的なものになります。
厳しい商習慣の現実 コネ社会への挑戦 中国のビジネスや消費社会での急 速な変化は、コネや縁故関係に対す るプレッシャーにもなります。
どの世 界でも強力なネットワークは必要で すが、中国におけるコネクションの 重視は、商取引を犠牲にしている場 合さえあります。
このような習慣も 変わっていくでしょう。
●競争と統合の強化 外国との競争にさらされた多くの 業界では、統合が急速に進みます。
こ れは特に、中国の消費財業界で顕著 であり、すでにかなりの統廃合が家 電製品、テレビ、ビール市場で進め られています。
中国の計画経済では、 もっとも小さいメーカーでも現状で 独自のトラックと倉庫を持っており、 ロジスティクス資産の重複を引き起 こしています。
統廃合により、不要 な資産を処分し、新たな規模や効率 性を作り出すチャンスが生まれます。
マージンの増加、チャネル管理の 強化、中国内陸部への拡大というプ レッシャーのもと、香港を拠点にし た企業が結束しはじめます。
●港湾の効率化 取引量の拡大、競争の激化、船荷 主からのサービス向上の要求、外国 資本の増加により、港湾セクターに も変化が生じます。
中国の港湾の非 効率性は、グローバルレベルの競争 において非常に大きな障害とみなさ れているため、インフラ整備のジョ イントベンチャーに対する外国企業 の投資が期待されています。
WTO ガイドラインのもと、外国企業は、船 舶ジョイントベンチャーの四九%の 株式を所有し、港湾開発プロジェク トに参加できるようになります。
●国営サードパーティーの回避 実際の価値が明白でない限り、企 業は国有の輸出入業者や卸売業者な 73 MARCH 2003 どのサードパーティーを避けるように なります。
その結果、サードパーテ ィー企業は、魅力的なアウトソーシ ング先として生き残れるように、ケ イパビリティの強化を図らざるを得 なくなります。
当然、これにより、不 要な官僚主義的な階層や、付加価値 のない企業は排除されることになり ます。
たとえば、医薬品業界では、物流 業者が多階層になっていますが、将 来はひとつの階層しか残らないでし ょう。
また小売業界の統合もすでに、 メーカーが小売業者に直接販売する 方向に動き始めています。
このよう な流れは、オンラインシステムの導 入に伴って、今後も持続するものと 思われます。
たとえば、デル・コンピュータは、 サプライチェーンの中間業者を排除 することで、外国競合他社よりも一 〇〜二五%も価格を下げることに成 功しました。
デルは、九〜一〇日以 内の納品を実現、そのうち七日が配 送時間であり、中国の三〇〇以上の 都市に製品を納入しています。
流通チャネルの活用 中国のWTO加盟をきっかけに、荷 主企業は今後、独自の流通チャネル や卸売ネットワークを構築するよう になるのでしょうか。
おそらく、否で す。
外国ロジスティクス業者への依 存もしくは社内での流通チャネル構 築による卸売業者の排除は、法外な コストと時間が掛かるからです。
ネ ットワークの構築に掛かる時間は、売 上や市場シェアの損失につながりま す。
物流業者も荷主が独自のネット ワーク構築という試みには批判的な 反応を示すでしょう。
すべてのWTO条項が有効になっ た後でも、独立した全国ネットワー クの構築は、ほとんどの外国企業に とって夢でしかありません。
それに 代わり大多数は、地域のパートナー を活用して、主要都市以外の地域、 小さな町、へき地にもサービスを拡 大していきます。
そのように、賢明な荷主たちは、現 在あるものをうまく活用して、改善 していく方法を見つけ出していくで しょう。
たとえば、現在の多階層か らなる卸売業者の構造から脱却して、 すでに物流ネットワークを運営して いる大手物流業者と長期的な戦略的 関係を築く方法を探りはじめます。
また物流業者との関係は、コスト やサービス要件を満たす取引量の保 証や、売上増加のための金銭的イン センティブによって、さらに強化さ れていきます。
情報の流れも改善さ れ、サプライチェーンへの透明性が 増し、顧客接点が密接なものになり、 サプライチェーンの参加者すべてに 見える形で効率化が進みます。
●さらなる統合、集中、合理化 サプライチェーン機能、資産、イ ンフラ、人材、オペレーションの統 合・集中・合理化がさらに進むこと は確かです。
この傾向は、法規制の撤廃、ワンストップ・サービスに対 する顧客要求の高まり、多大なコス ト削減が見込めるという認識の広が りによって、さらに強まります。
たとえば、国内の家電製品メーカ ーであるハイアールは、それまで数 十カ所の製品センターに分散してい た調達機能、原材料や最終製品の配 送機能の統合や集中化により、コス トや資産を大幅に削減して、サービ スレベルを向上させました。
潜在的 な効果を考えると、外国・国内企業 においてサプライチェーンのシェアー ドサービス組織が近々登場してくる でしょう。
●3PLの成熟と統合 一〇〇%外資の企業(WOFE) がWTO加盟の三年以内に組織され る可能性は大いにあります。
今後五 年間毎年三〇%以上の成長が予測さ れる業界に惹きつけられた外国企業 は、近代的な全国ロジスティクスネ ットワーク構築に必要なインフラプ ロジェクトに喜んで投資します。
一 〇〇%外資の企業となる外資系企業 の参入が、地元物流業者の競争力育 成を促すことになります。
サードパーティー・ロジスティク ス市場の競争は既に激化しています。
従来の中国ロジスティクス企業、新 興ロジスティクス企業、ハイアール のような中国企業の社内ロジスティ クス部門、DHL、FedEx 、 Maersk 、 Excel Logistics などの外国企業が競 争に参入しています。
この競争は、中国のロジスティク スや物流業界全体を、米国やヨーロ ッパのような統合の方向に向かわせ るでしょう。
まったくまとまりのなか った業界が統合される過程では、買 収のチャンスも発生します。
しかし、 大手外国企業の動きは、今後三年間維持される法規制のために、革新的 というよりは徐々に浸透していく形 となります。
国営ロジスティクス企業と 地元企業の再編 WTO加盟は、中国の消費者、顧 客、荷主たちに選択肢を与え、選択 肢がさらに競争を引き起こします。
そ MARCH 2003 74 のため、中国のWTO参加は、中国 の国内企業にとっては、中国を拠点 とする多国籍企業以上に大きな影響 があります。
また鉄道省や国営企業、 地元企業などの組織にとっては、効 率的なケイパビリティ育成の大きな 弾みとなります。
中国は、外国企業 が勢力をつける前に、国内の企業や 業界の再編に三〜四年を掛けるもの と考えられます。
国内企業の多くはすでに準備を進 めています。
たとえば、Sinotrans は、 全国レベルでドア・ツー・ドアのサ ービスを行う総合的な輸送およびロ ジスティクス・ソリューションを提 供する、中国で最初の企業になろう としています。
Sinotrans は三〇〇〇 台のトラック、一六〇カ所の倉庫、七 五隻の船舶、七七カ所の鉄道側線、 一五カ所の鉄道に直結できる港湾タ ーミナルを所有しています。
また、国内には四七の子会社、二 六三のジョイントベンチャーがあり、 海外にも二九九社を展開しています。
最後に、Sinotrans は、積荷追跡と車 両管理(GPS と OmniTracs )ケイパ ビリティの強化を進めており、高度 な倉庫管理システムを、中国の荷主 ニーズに合わせて、MK Logistics な どの企業とともに開発しています。
Sinotrans は、顧客にワンストップ・ サービスを提供するのに優位な位置 につけています。
しかし、競争に意 欲を示している事業体は、Sinotrans ばかりではありません。
◆COSCO、チャイナ・ポストと チャイナ・レールは、付加価値の あるサードパーティー・ロジスティ クスサービス企業に変身しようと しています。
◆中国チェントン・グループは、十 二億米ドルのロジスティクスおよ び金属製品販売会社であり、買収 や提携を推し進めて、中国でトッ プ5のロジスティクスサービス企 業を目指しています。
◆ ST-Anda 、 EAS International Transportation 、 PG Logistics な どの新興企業もまた、付加価値サ ービスの開発を進めています。
こ れらの企業は資産をあまり持って いませんが、サプライチェーン全 体をカバーするソリューションや サービスの提供を重視しています。
多国籍企業をターゲット顧客にし ていますが、これらの企業が通常 求めるトータルソリューションの 提供ができるまでには、まだ時間 が掛かります。
ST-Anda はすでに、 六〇〇都市をカバーする十二カ所 の配送センター・ネットワークを 持ち、七二時間以内に三〇〇を超 える都市に商品を配送できるとし ています。
◆サードパーティー市場への新規参 入企業は、ハイアール・グループ、 チンタオ・ビール・グループ、 Dong Feng トラック・グループ、 オリエント・インターナショナル・ ホールディングスなどの国内メー カーの物流部門からも登場してい ます。
たとえば、ハイアール・ロジステ ィクス・グループは、急成長するサ ードパーティー・ロジスティクス業 界のほうが、家庭用品業界よりも魅 力的だと判断しました。
チャイナ・ ポストと協力して、ハイアールは、ネ スレなどの食品会社向けサードパー ティー・ロジスティクス企業となり ました。
一般的に言って、国営企業や地元 企業は、短期的にみると機能面で劣 っていますが、広範囲なネットワー クや資産、ブランド認知、中国政府 との関係など、外国のサードパーテ ィー・プロバイダ企業にはない利点 があります。
また、中国企業の多く は、地元企業との取引を好むことも 事実です。
アウトソーシングも視野に 人材やサプライチェーン・ケイパ ビリティ不足により、企業はこれら のケイパビリティや専門家を育成す るか、購入するか、借用するかを再 考せざるをえなくなりました。
アウト ソーシングはまだ未開発で、中国で は断片的にしか存在しません。
モルガン・スタンレーによれば、サ ードパーティー・ロジスティクス・サ ービス企業は、現在、中国全体のロ ジスティクスビジネスのたった二% に浸透しているにすぎず、それに比 べて、米国では八%、ヨーロッパで は一〇%となっています。
これは、今 後五〜一〇年で大きく変化していく でしょう。
◆多国籍企業によるオペレーション増加。
サードパーティー・サービ スの需要が増えていきます。
国内 の企業は徐々に、各自のコア・ビ ジネスに集中し、競争力強化のた めにコストやインセンティブの削 減に迫られ、サードパーティー・ ロジスティクス企業を利用するよ うになります。
75 MARCH 2003 ◆中国企業のコスト削減とサービス 強化への圧力。
たとえば、レジェ ンド(中国の大手情報テクノロジ ーおよびサービス会社) やハイア ールは、サードパーティー企業が 現在の自分たちの組織より効果的 にコストを削減、サービスや管理 を改善できるとは考えていません。
しかし、レジェンドでも、在庫日 数を二八日に短縮できただけでし た(デルは六日)。
競合のパフォー マンス・レベルが向上すると、レ ジェンドやハイアールなどの企業 も、アウトソーシングを検討する 必要があるかもしれません。
◆ケイパビリティ習得に資産は必要 ないことを中国企業は認識するこ とになります。
許容できるサービ スレベルを提供するケイパビリテ ィがないために、アウトソーシング はできないという考え方は、急速 に陳腐化しています。
◆ハイブリッドなロジスティクス・シ ステムを開発せざるを得なかった 外国企業(規制とサードパーティ ーのケイパビリティがないため)は、 今ではより高度なケイパビリティ と全国制覇を狙っています。
最近の調査では、より広範囲なア ウトソーシング化が裏付けられてい ます。
すなわち、現在は荷主の一八% が調達分野のロジスティクスをアウ トソースしていますが、三年以内に 四三%がアウトソースすると答えて います(インバウンド・アウトソーシ ングは自動車、IT、通信業界で特 に魅力的なものと思われている)。
販売分野のロジスティクスについ ては、荷主の八〇%が三年以内にア ウトソースを計画しており、現在で は四〇%がすでに実施しています。
(家電製品、自動車、食品・飲料、I T、通信業界はこの領域に特に関心 を示している)。
サードパーティー・ロジスティク ス企業は、市場で求められている広 範なサプライチェーン・ケイパビリ ティのすべてを提供することはでき ません。
米国やヨーロッパの経験に よれば、そのためには提携やジョイ ントベンチャーが必要になり、中国 の優良企業が協力して、競争力のあ るサプライチェーンを構築していく ことになります。
今日、国際的、標準的、市場ベー スのケイパビリティを持つ企業はほ とんど存在していません。
そのため、 まだ多くの企業が、ロジスティクス 資産を持つことを戦略上、重要だと 考えています。
今後五〜一〇年のう ちに、これらのケイパビリティが必ず 実現してきます。
そのときには、資 産ベースではなく、サービスベースの ロジスティクスが発展していくでし ょう。
これは、中国におけるサプラ イチェーンマネジメントの本質を変 えていくことになります。
●資産ではなく情報が第一 他の世界諸国と同様、中国でロジ スティクスを成功させるには、物理 的な車両や積荷の移動よりも情報フ ロー機能が重視されます。
中国の企 業は現在、物理的な資産は所有して いますが(時に多すぎるほど)、情報 や知識が不足しています。
外国企業 の信頼を得て、高品質のサービスを 約束するためには、短・中期的には、 戦略的に資産を持つことが必要にな ります。
しかし長期的には、国内企 業も外国企業も情報や資産を活用し たソリューションを重視していくこ とになります。
●ITはこれまで以上に重要 優れたサプライチェーンが必要な ビジネスにおいては、最善の意思決 定、統合、端から端までの同期性を 確保するために、サプライチェーン・ テクノロジーを習得しなければなり ません。
これらは次第に、導入段階 から実現段階(ビジネス主導でプロ セス重視)へと移行しています。
I DCの予測では、中国IT市場の年 間成長率は、二〇〇一年の二四・ 四%から、二〇〇二年には二八・ 一%に上がります。
変革のとき 変化できない、あるいは変化しな い企業、また変身ではなく修繕で取 り繕おうとする企業は、取り残され て朽ち果てるしかありません。
現在、 中国で起きている変化は、さまざま な改革への前兆であり、これはすべ て、以前には不可能といわれていた サプライチェーン改革の大きなチャ ンスを意味しています。
しかし、そ の過程では、いくつか乗り越えなけ ればならない課題があります。
?法規制の不確実性と変化のテンポ?地域および地方レベルの展開不足 ?スキルある人材の不足 ?人々の意識改革の難しさ ?文化的な考え方や固定化したビジ ネス習慣 ?中国でのベスト・プラクティス適 用の難しさ ?変化に対する確かな投資効果とコ スト構造の理解不足 MARCH 2003 76 ?法規制の不確実性と 変化のテンポ 中国のWTO加盟の影響を高く評 価しすぎることには問題があります。
その理由のひとつは、現行の議定書 には穴が多すぎることです。
たとえば中国は、ジョイントベン チャーの少数株式ステータスを一〇 〇%外資の企業に移行する過程を明 確にしていません。
また企業が中国 に進出するには、いまだにライセン スが必要です。
WTOを納得させる だけのライセンスを発行した後は、政 府がそれ以上の発行を拒否すること もあり得ます。
まさにWTOガイド ラインでもっとも問題になりそうな ことに関して、現在の中国の法律は、 すべての企業に対して何らかの規制 を設けることができるのです。
Maersk は世界最大の貨物輸送会社 ですが、この会社のケースは、今後 起こりうることを示唆しています。
Maersk は、一〇〇%外資の会社とし て中国のライセンスを取得した数少 ない外国企業のひとつとして認めら れています。
しかし、同社は支店開 設に際して政府の規制を受け、全国 サービスの提供が困難になり、結局、 一連の地方企業と協力せざるを得な くなりました。
結論を言えば、現行の規制のなか には変更の予定がないものもありま す。
たとえば、外国企業は今後も、中 国で自社生産していない商品を中国 で流通させる(卸売も小売も)こと ができません。
既存の外資系企業(F IE)がサードパーティーの商品を 輸入あるいは輸出できるようになる かもしれませんが、それを国内で流 通させることはできないでしょう。
ま た外国企業が自社の営業所を通して 販売したり、中国に営業所を設立し たりすることを禁止する法規制は当 分維持するものと思われます。
法規制の不確実性のほかにも、需 要や市場成長率の非現実的な予測に より、需要を見越して過剰に生産能 力を増強するなどビジネス上の意思 決定を間違う危険性があります。
中国のビール業界がその例です。
国 際企業の多くは、市場獲得のために 先を急いで参入し、その結果、膨大 な生産能力を作ってしまいました。
中 国のWTO加盟により一〇億人の人 口すべてが自動的に一〇億人の顧客 になるわけではないことを、多国籍 企業は特に心にとめておく必要があ ります。
最後に、不確実性は中国の通貨に もいえることです。
急激な通貨切り 下げが投資回収に重大が影響を及ぼ し、外国からの投資を激減させて、発 展を妨げることがありえます。
?地域および 地方レベルの展開不足 全国レベルでは変化が進む可能性 がありますが、地方レベルでの同様 の変化にはあまり期待が持てません。
北京では規則が強制的に執行される かもしれませんが、地方自治体、地方都市や町に適用されるころには、次 第にその効力は弱められ、やがては 無視される可能性もあります。
たとえば、地方自治体は、打破す るのが難しい関税および非関税障壁 を確立しています。
有識者の多くは、 市場アクセスルールが確立されて(外 国の審査官による強制が可能になる)、 このような力が弱まることを期待し ています。
長期的には、中央政府の 立場が優勢ですが、戦いは厳しく、長 期間にわたることが予想されます。
?スキルある人材の不足 人材の発掘と維持は、競争力のあ るサプライチェーン構築の大きな課 題となります。
恒常的に海外から専 門家を雇うのはコスト面で高くつく ので、中国内での人材の育成が必要 になります。
しかし、それには時間 が掛かりります。
?人々の意識改革の難しさ テクノロジー、インフラ、その他ケ イパビリティに適切な投資をすべて行 った場合でも、変化を受け入れる「人 の問題」は残ります。
この問題は、こ れまで中国でたくさんのテクノロジー 導入が失敗に終わったことで裏付けら れています。
識者によれば、このよう な取り組みの八〇〜九〇%は、「人の 問題」が原因で失敗しています。
それと関連して、新しいケイパビリ ティ、特により高度な情報テクノロジ ーソリューションを活用するトレーニ ングスタッフの問題があります。
現行 の組織体系や業績評価システムもまた 変更するのが困難です。
たとえば、ほ とんどの運送業者は業務機能ごとに編 成されています。
すなわち、プロセス の成果よりも業務機能を評価する仕組 みがすでに構築されています。
?文化的な考え方や固定化したビジネス習慣 サプライチェーンの効率化を図るに は、組織の文化を変えなければなりま せん。
サプライチェーンの参加者は皆、 信頼とWin ―Winの考え方で密接 な関係を築くことの重要性を学ぶ必要 があります。
77 MARCH 2003 ?中国でのベストプラクティス 適用の難しさ これはどのような状況でも言える ことですが、ベストプラクティス実 現に向けての計画を立案するには、中 国のインフラ、システム、ビジネス 習慣、人にかかわる現実を認識しな ければなりません。
中国の現状とベ ストプラクティスとのギャップはあま りに大きく、西欧のベストプラクテ ィスを短期間で実現するのは難しい と言えます。
中国で失敗する早道は、 他国のマーケットでの経験をすべて そのまま中国に適用しようとするこ とです。
?変化に対する確かな投資効果と コスト構造の理解不足 確固たるファクトベースの投資効 果は、変化に対する強力なきっかけ となります。
しかし、中国のメーカ ーの多くは、自社のベースとなる基 本のサプライチェーンコストを把握 していません。
ごくわずかの地元企 業が、輸送や倉庫のコストを把握し ていますが、彼らですら在庫、オー ダー管理、その他の事務コストにつ いては把握していません。
また、サ プライチェーンコストをトータルでと らえている会社もほとんど存在しま せん。
結論 WTO加盟は、法的な視点から見 れば、中国市場が初めてアクセス可 能な状態になることを示しています。
中国の成長著しい顧客基盤を取り込 もうとしている企業は、全国的なサ プライチェーンケイパビリティを築く 必要があります。
実現するためには、 地理、インフラ、法規制、文化、人 という大きな壁に立ち向かう必要が あります。
このような障害を前に、全国的な サプライチェーンケイパビリティをゼ ロから構築すること、あるいは、基 礎から突然先進的なケイパビリティ に飛びつこうとする試みは、極めて リスクが高いと言えます。
まず小規 模なレベルから開始し、大きな視点 で考え、着実に進めながら、焦点を 絞り込む必要があります。
中国では、「千里の行も足下に始ま る」といいます。
最初の一歩とは、コ ーディネーションであり、コミットメ ントであり、しっかりした戦略なの です。
資産と業務機能のケイパビリティ を確保するほかにも、企業は、ネッ トワークと情報管理のケイパビリテ ィを築き、適切な人材を確保・維持 し、最良のサービスを提供する企業 と提携することが必要でしょう。
簡 単な道のりではありません。
しかし、 それを独力で行うと、災難が待ち受 けています。
地元の企業と協力すれ ば、中国の多くの多国籍企業のよう に努力は報われます。
パートナーシ ップと提携が成功へのカギとなりま す。
結局のところ、コネクションやリレーションシップの価値を過小評価 することはできません。
このような概 念を広げて、国内・国外の優れた企 業との間でケイパビリティのネット ワークを築くことが、中国における 成功への方程式なのです。
非常にチ ャレンジングで、リスキーですが、そ れだけチャンスも大きいのです。
中 国のサプライチェーンは明らかに変 革のときを迎えており、その先には 何かすばらしいものがあるはずです。
中国の表現でいうならば―― 「不可能なことはない、すべては困 難なのである」 ロバートJ. イーストン(Robert J. Easton) アクセンチュアのサプライチェーン・マネジメント=アジ ア太平洋地域統括パートナー。
中国、香港、韓国、台湾のサ プライチェーン・サービスに従事。
サプライチェーン戦略、 プロセス・リエンジニアリング、パフォーマンス管理、シス テム・インテグレーション、チェンジ・マネジメントなどに 20年以上の経験を有し、著書多数。
マッコーリー大学院に てMBA取得、シンガポールのCommand and General Staffカレッジを卒業。
現在、香港を拠点に活動している。
すなわち、?市場の成長と顧 客要求の変化、?政府の自由化政策、 ?中国のWTOへの加盟――です。
そ れぞれについて解説します。
市場の成長と顧客要求の変化 中国の人口(現在十二億人)は、 毎年一五〇〇万人ずつ増加すること が予想されています。
国民総生産(G NP)は、現在八一六〇億米ドルで あり、毎年およそ八〜九%増加して いくものと思われます。
また、世界 トップ五〇〇社のうち四〇〇社が中 国に投資を行っており、九五〜九九 年にかけて二三〇〇億米ドルが投資 されました。
当然ながら、このような状況は消 費財市場の拡大をもたらし、消費者 の購買力や意欲は高まっています。
そ れに対し、業界は統合が進み、近代 的な小売業者が第二階層の市場から、 第三階層の市町村にも浸透し、中国 のサプライチェーンインフラの近代 化を求める声は大きくなっています。
しかし、短期的には、国内の流通 業者は、競争の激化する市場で企業 の求めるサービス・レベルに応える ことができません。
このことが長い 間、進展しなかったロジスティクス 業界の再編成につながると予想され ます。
中国でもカルフールなどの外資チ ェーンに代表される近代的な小売業 者の登場により、効率的で信頼でき るサービスが求められるようになっ ています。
小売業者は仕入れや購買 機能を統合することで十分な力を発揮することようになり、それにより 有利な支払条件、時間通りの納品、 優先サービスやバーコードなどの先 進テクノロジーの活用などこれまで なかったことを手に入れています。
小売業者の要求は、サプライチェ ーンを支援する動きとなって、運送 業者、メーカー、ディストリビュー ターにケイパビリティの向上を求め ています。
たとえば、中国のカルフ ールは、自社の配送センター、倉庫、 輸送車両を持っていませんが、卸売 業者との取引も拒否しています。
そ の代わり同社は、サプライヤーに直 接店舗に納品させています。
こうして小売店や家庭用品市場で 何ができるかが分かってくると、企 業や消費者は、もっと速い変化を求 めるようになります。
業界が開かれ れば開かれるほど、繁栄が広がるこ とは歴史が証明しています。
政府の自由化政策 中国政府は、ロジスティクスや輸 送業界の発展がなければ産業の成長 も妨げられるという認識をもち始め ています。
事実、ロジスティクスや 輸送業界の近代化は、中国の第一〇 次五カ年計画(二〇〇一〜〇五)の 優先課題のトップ3に位置付けられ ています。
中国近代化への青写真に は、道路、鉄道、航空、港湾機能の 充実が、インターモーダル・リンク を含めて明確に示されています。
二〇〇一年三月、中国の商務省は、 「ロジスティクス業界の発展を加速す るための視点」というメモを発表し、 従来の貨物輸送業者に、ロジスティ クスを含めたサービスの充実を求め ています。
さらに、このメモでは、ロ ジスティクス業界の自由化と国内・ 外国企業のジョイント・ベンチャー の設立推進もうたわれています。
中 国の地方自治体は、インフラ整備や、 ロジスティクスセンターやハブ建設 に大きな投資を行って、統合や協業 を促進しています。
インフラ整備のほかにも、政府主 要省庁六機関の共同声明では、以下 のような目標が発表されました。
・サードパーティー・ロジスティクス、 最終回 アクセンチュア ロバート J・イーストン アジア太平洋地域統括パートナー 中国ロジスティクス市場の攻略法 WTO加盟によって中国ビジネスはどう変わるのか。
ことにロジス ティクス、サプライチェーン分野の規制緩和は、どのようなタイム スケジュールで進んでいくのか。
中国ロジスティクス市場の現状と 今後を鋭く分析する。
短期集中連載の最終回。
71 MARCH 2003 それと特に国営企業と地元メーカ ーにおいて近代的情報技術の活用 を促進する ・ロジスティクスに関する教育とト レーニングを実施する ・中国のロジスティクス業界発展を 支援する法的環境を整備する 近代化プロセスを加速させるため に、いくつかの規制緩和が具体化し ています。
たとえば、鉄道省は、外 国企業の鉄道インフラへの投資を促 進するために、法規制の変更を発表 しました。
ごく最近の動きとしては、対外経 済貿易省が「国際貿易と近代的なロ ジスティクス業界の開放と健全な発 展を促進するためには、ロジスティ クス業界に外国からの投資を試験的 に受け入れ、特定地域での活動を許 可していく。
外資系のロジスティク ス企業が、実需要に基づいて、輸送、 倉庫、積載、荷降ろし、加工、梱包、 物流、情報処理、輸出入などの作業 を有機的に統合し、完全なサプライ チェーンを形成すれば、多機能の統 合サービスを提供できるようになる」 と発表しています。
試験的な受け入れは、特定の地域 に限定され、たくさんの条件が付加 されていますが、(たとえ保守的な内 容でも)中国のロジスティクスシス テムの開放を示すものであり、変化 の風が確実に吹き始めたことを示し ています。
中国のWTO加盟 WTO(世界貿易機関)加盟は、 二〇〇一年十二月に認可され、中国 の独自の経済改革プロセスを補足し、 改革への動きを強化しています。
中 国のWTO同意書には、外国企業が ロジスティクスや輸送業界に参入す ることを阻んできた規制を徐々に撤 廃することが明示されています(図 1)。
WTOステータスはまた、経済 を競争市場に開放し、国内・外資企 業間の協業を促進することによって 中国の経済成長を促進させることに なるでしょう。
WTO加盟による規制緩和は数年 にわたって段階的に進められるとは いえ、既に外国企業は中国で製造し た製品を国内で流通させることがで きるようになっており、一年以内に は、輸入製品の販売も許可されるよ うになることは注目に値します。
ま た、一年以内に、外国企業はロジス ティクス・ジョイントベンチャーの過 半数株式を保有でき、三年以内には 制限なしの経営が可能になります。
三〜四年以内には、主要および補 図1 WTO加盟後の規制 ・3―5年に分けて書 籍、化学肥料、原 油、石油製品・ 制 限はほとんどなし ・小売業の制限枠な し 出所:アクセンチュア 2002年まで 2007年まで 2006年まで 2005年まで 2004年まで 2003年まで ・少数株主とジョ イント・ベンチャ (JV)が輸入と 国内製品の卸売 に従事できる ・外国資本企業 (FIE)が中国で 製造した製品を 販売できる 取引制限 出荷・輸送流通 船舶貨物取扱、 通関 鉄道輸送 道路輸送 倉庫・在庫 運送サービス ・ 少数株主/JV ・ 少数株主/JV ・ 少数株主/JV ・ 外資―PRCベン チャーの許可 ・外資大手企業の 地理的、量的制 限の撤廃 ・小売業の地理的 制限の一部 ・過半数株主 ・ 過半数株主 ・ 過半数株主 ・ 過半数株主 ・ 過半数株主 ・すべての規制の撤 廃 ・100%外資の企 業 (WOFE) 設立 ・小売業に関する地 理的制限の完全撤 廃 ・100%子会社 ・100%子会社 ・100%子会社 ・100%子会社 ・100%子会社・ 国 際輸送に外資系企 業の制限なし MARCH 2003 72 完的なロジスティクスサービスの規 制はすべて撤廃されることになりま す。
これは外国企業にとって、倉庫、 冷蔵、運送、道路輸送、レンタルや リース、鉄道、特急便、航空輸送、広 告、テストと分析、製品設置、メン テナンスや修理などのアフターサー ビスまですべてを含めて、一〇〇% 外資の子会社を設立できることを意 味しています。
将来の方向性と ビジネス・チャンス 成長の持続、有効な政府政策、W TOへの加盟は、今後五〜一〇年に わたって中国のサプライチェーン環 境に大きな変化をもたらします。
市 場の拡大や顧客の要求の増加により、 サプライチェーンは差別化のための ひとつの要素となります。
政府や財 界は、中国におけるサプライチェー ンのパフォーマンスギャップの大きさ とその影響を認識しています。
その ギャップに対して初めて何かをする 必要があると考えており、もはや現 状のままのパフォーマンスでは納得 できなくなるでしょう。
中国のWTOへの加盟は、中国経 済に大きな変化をもたらします。
し かし、移行の遅れは避けられません。
どの程度の深刻な遅れ、時間的な遅 れが生じるかは、政府がロジスティ クス業界をどれだけ自由化するか、国 内企業に自由市場への競争環境を開 放していくかにかかっています。
おそ らく、中国はロジスティクス業界の 開放を慎重に扱い、マネジメントや オペレーションに関する専門知識を 国内の企業に最大限引き渡せるよう な方法をとるでしょう。
二〇〇二年六月、対外経済貿易省 は、中国ロジスティクス業界への外 資投入を規定・条件つきで試験的に 行うことを発表し、政府が外国との 競争を慎重に管理する姿勢を見せま した。
政府は、国内のロジスティク ス企業に競争力をつけるための十分 な時間を与え、競争に対処できる状 態を作ろうとしています。
また政府は、外国企業に対して、国 内企業を魅力的な投資対象とみなす ように、競争相手ではなく協力体制 をとるパートナーとして見てもらいた いと考えています。
結果として、外 国投資家は、中国が新しい法律を制 定して、競争をコントロールし、W TOへの移行準備を整えることを期 待しています。
構造的要因による遅れも予想され ています。
まとまりのない市場、複 雑で地域ごとの物流ネットワーク、貧 弱なインフラ整備、限定的なオペレ ーション能力という状態で、サプラ イチェーンを徹底的に見直すことは、 大きな課題となります。
「三つ子の魂 百までも」という言い回しのように、 国家・地域レベルの官僚主義のコン トロールにはかなりの時間が予想さ れます。
そのほとんどは、古いビジネ スのやり方を維持しようとする者た ちとの戦いなのです。
税関の効率化と透明性に向けた改善、通関への要件やオペレーション におけるプロ意識、透明性も拡大し ていくでしょう。
通関時のサービス は効率的なものになります。
厳しい商習慣の現実 コネ社会への挑戦 中国のビジネスや消費社会での急 速な変化は、コネや縁故関係に対す るプレッシャーにもなります。
どの世 界でも強力なネットワークは必要で すが、中国におけるコネクションの 重視は、商取引を犠牲にしている場 合さえあります。
このような習慣も 変わっていくでしょう。
●競争と統合の強化 外国との競争にさらされた多くの 業界では、統合が急速に進みます。
こ れは特に、中国の消費財業界で顕著 であり、すでにかなりの統廃合が家 電製品、テレビ、ビール市場で進め られています。
中国の計画経済では、 もっとも小さいメーカーでも現状で 独自のトラックと倉庫を持っており、 ロジスティクス資産の重複を引き起 こしています。
統廃合により、不要 な資産を処分し、新たな規模や効率 性を作り出すチャンスが生まれます。
マージンの増加、チャネル管理の 強化、中国内陸部への拡大というプ レッシャーのもと、香港を拠点にし た企業が結束しはじめます。
●港湾の効率化 取引量の拡大、競争の激化、船荷 主からのサービス向上の要求、外国 資本の増加により、港湾セクターに も変化が生じます。
中国の港湾の非 効率性は、グローバルレベルの競争 において非常に大きな障害とみなさ れているため、インフラ整備のジョ イントベンチャーに対する外国企業 の投資が期待されています。
WTO ガイドラインのもと、外国企業は、船 舶ジョイントベンチャーの四九%の 株式を所有し、港湾開発プロジェク トに参加できるようになります。
●国営サードパーティーの回避 実際の価値が明白でない限り、企 業は国有の輸出入業者や卸売業者な 73 MARCH 2003 どのサードパーティーを避けるように なります。
その結果、サードパーテ ィー企業は、魅力的なアウトソーシ ング先として生き残れるように、ケ イパビリティの強化を図らざるを得 なくなります。
当然、これにより、不 要な官僚主義的な階層や、付加価値 のない企業は排除されることになり ます。
たとえば、医薬品業界では、物流 業者が多階層になっていますが、将 来はひとつの階層しか残らないでし ょう。
また小売業界の統合もすでに、 メーカーが小売業者に直接販売する 方向に動き始めています。
このよう な流れは、オンラインシステムの導 入に伴って、今後も持続するものと 思われます。
たとえば、デル・コンピュータは、 サプライチェーンの中間業者を排除 することで、外国競合他社よりも一 〇〜二五%も価格を下げることに成 功しました。
デルは、九〜一〇日以 内の納品を実現、そのうち七日が配 送時間であり、中国の三〇〇以上の 都市に製品を納入しています。
流通チャネルの活用 中国のWTO加盟をきっかけに、荷 主企業は今後、独自の流通チャネル や卸売ネットワークを構築するよう になるのでしょうか。
おそらく、否で す。
外国ロジスティクス業者への依 存もしくは社内での流通チャネル構 築による卸売業者の排除は、法外な コストと時間が掛かるからです。
ネ ットワークの構築に掛かる時間は、売 上や市場シェアの損失につながりま す。
物流業者も荷主が独自のネット ワーク構築という試みには批判的な 反応を示すでしょう。
すべてのWTO条項が有効になっ た後でも、独立した全国ネットワー クの構築は、ほとんどの外国企業に とって夢でしかありません。
それに 代わり大多数は、地域のパートナー を活用して、主要都市以外の地域、 小さな町、へき地にもサービスを拡 大していきます。
そのように、賢明な荷主たちは、現 在あるものをうまく活用して、改善 していく方法を見つけ出していくで しょう。
たとえば、現在の多階層か らなる卸売業者の構造から脱却して、 すでに物流ネットワークを運営して いる大手物流業者と長期的な戦略的 関係を築く方法を探りはじめます。
また物流業者との関係は、コスト やサービス要件を満たす取引量の保 証や、売上増加のための金銭的イン センティブによって、さらに強化さ れていきます。
情報の流れも改善さ れ、サプライチェーンへの透明性が 増し、顧客接点が密接なものになり、 サプライチェーンの参加者すべてに 見える形で効率化が進みます。
●さらなる統合、集中、合理化 サプライチェーン機能、資産、イ ンフラ、人材、オペレーションの統 合・集中・合理化がさらに進むこと は確かです。
この傾向は、法規制の撤廃、ワンストップ・サービスに対 する顧客要求の高まり、多大なコス ト削減が見込めるという認識の広が りによって、さらに強まります。
たとえば、国内の家電製品メーカ ーであるハイアールは、それまで数 十カ所の製品センターに分散してい た調達機能、原材料や最終製品の配 送機能の統合や集中化により、コス トや資産を大幅に削減して、サービ スレベルを向上させました。
潜在的 な効果を考えると、外国・国内企業 においてサプライチェーンのシェアー ドサービス組織が近々登場してくる でしょう。
●3PLの成熟と統合 一〇〇%外資の企業(WOFE) がWTO加盟の三年以内に組織され る可能性は大いにあります。
今後五 年間毎年三〇%以上の成長が予測さ れる業界に惹きつけられた外国企業 は、近代的な全国ロジスティクスネ ットワーク構築に必要なインフラプ ロジェクトに喜んで投資します。
一 〇〇%外資の企業となる外資系企業 の参入が、地元物流業者の競争力育 成を促すことになります。
サードパーティー・ロジスティク ス市場の競争は既に激化しています。
従来の中国ロジスティクス企業、新 興ロジスティクス企業、ハイアール のような中国企業の社内ロジスティ クス部門、DHL、FedEx 、 Maersk 、 Excel Logistics などの外国企業が競 争に参入しています。
この競争は、中国のロジスティク スや物流業界全体を、米国やヨーロ ッパのような統合の方向に向かわせ るでしょう。
まったくまとまりのなか った業界が統合される過程では、買 収のチャンスも発生します。
しかし、 大手外国企業の動きは、今後三年間維持される法規制のために、革新的 というよりは徐々に浸透していく形 となります。
国営ロジスティクス企業と 地元企業の再編 WTO加盟は、中国の消費者、顧 客、荷主たちに選択肢を与え、選択 肢がさらに競争を引き起こします。
そ MARCH 2003 74 のため、中国のWTO参加は、中国 の国内企業にとっては、中国を拠点 とする多国籍企業以上に大きな影響 があります。
また鉄道省や国営企業、 地元企業などの組織にとっては、効 率的なケイパビリティ育成の大きな 弾みとなります。
中国は、外国企業 が勢力をつける前に、国内の企業や 業界の再編に三〜四年を掛けるもの と考えられます。
国内企業の多くはすでに準備を進 めています。
たとえば、Sinotrans は、 全国レベルでドア・ツー・ドアのサ ービスを行う総合的な輸送およびロ ジスティクス・ソリューションを提 供する、中国で最初の企業になろう としています。
Sinotrans は三〇〇〇 台のトラック、一六〇カ所の倉庫、七 五隻の船舶、七七カ所の鉄道側線、 一五カ所の鉄道に直結できる港湾タ ーミナルを所有しています。
また、国内には四七の子会社、二 六三のジョイントベンチャーがあり、 海外にも二九九社を展開しています。
最後に、Sinotrans は、積荷追跡と車 両管理(GPS と OmniTracs )ケイパ ビリティの強化を進めており、高度 な倉庫管理システムを、中国の荷主 ニーズに合わせて、MK Logistics な どの企業とともに開発しています。
Sinotrans は、顧客にワンストップ・ サービスを提供するのに優位な位置 につけています。
しかし、競争に意 欲を示している事業体は、Sinotrans ばかりではありません。
◆COSCO、チャイナ・ポストと チャイナ・レールは、付加価値の あるサードパーティー・ロジスティ クスサービス企業に変身しようと しています。
◆中国チェントン・グループは、十 二億米ドルのロジスティクスおよ び金属製品販売会社であり、買収 や提携を推し進めて、中国でトッ プ5のロジスティクスサービス企 業を目指しています。
◆ ST-Anda 、 EAS International Transportation 、 PG Logistics な どの新興企業もまた、付加価値サ ービスの開発を進めています。
こ れらの企業は資産をあまり持って いませんが、サプライチェーン全 体をカバーするソリューションや サービスの提供を重視しています。
多国籍企業をターゲット顧客にし ていますが、これらの企業が通常 求めるトータルソリューションの 提供ができるまでには、まだ時間 が掛かります。
ST-Anda はすでに、 六〇〇都市をカバーする十二カ所 の配送センター・ネットワークを 持ち、七二時間以内に三〇〇を超 える都市に商品を配送できるとし ています。
◆サードパーティー市場への新規参 入企業は、ハイアール・グループ、 チンタオ・ビール・グループ、 Dong Feng トラック・グループ、 オリエント・インターナショナル・ ホールディングスなどの国内メー カーの物流部門からも登場してい ます。
たとえば、ハイアール・ロジステ ィクス・グループは、急成長するサ ードパーティー・ロジスティクス業 界のほうが、家庭用品業界よりも魅 力的だと判断しました。
チャイナ・ ポストと協力して、ハイアールは、ネ スレなどの食品会社向けサードパー ティー・ロジスティクス企業となり ました。
一般的に言って、国営企業や地元 企業は、短期的にみると機能面で劣 っていますが、広範囲なネットワー クや資産、ブランド認知、中国政府 との関係など、外国のサードパーテ ィー・プロバイダ企業にはない利点 があります。
また、中国企業の多く は、地元企業との取引を好むことも 事実です。
アウトソーシングも視野に 人材やサプライチェーン・ケイパ ビリティ不足により、企業はこれら のケイパビリティや専門家を育成す るか、購入するか、借用するかを再 考せざるをえなくなりました。
アウト ソーシングはまだ未開発で、中国で は断片的にしか存在しません。
モルガン・スタンレーによれば、サ ードパーティー・ロジスティクス・サ ービス企業は、現在、中国全体のロ ジスティクスビジネスのたった二% に浸透しているにすぎず、それに比 べて、米国では八%、ヨーロッパで は一〇%となっています。
これは、今 後五〜一〇年で大きく変化していく でしょう。
◆多国籍企業によるオペレーション増加。
サードパーティー・サービ スの需要が増えていきます。
国内 の企業は徐々に、各自のコア・ビ ジネスに集中し、競争力強化のた めにコストやインセンティブの削 減に迫られ、サードパーティー・ ロジスティクス企業を利用するよ うになります。
75 MARCH 2003 ◆中国企業のコスト削減とサービス 強化への圧力。
たとえば、レジェ ンド(中国の大手情報テクノロジ ーおよびサービス会社) やハイア ールは、サードパーティー企業が 現在の自分たちの組織より効果的 にコストを削減、サービスや管理 を改善できるとは考えていません。
しかし、レジェンドでも、在庫日 数を二八日に短縮できただけでし た(デルは六日)。
競合のパフォー マンス・レベルが向上すると、レ ジェンドやハイアールなどの企業 も、アウトソーシングを検討する 必要があるかもしれません。
◆ケイパビリティ習得に資産は必要 ないことを中国企業は認識するこ とになります。
許容できるサービ スレベルを提供するケイパビリテ ィがないために、アウトソーシング はできないという考え方は、急速 に陳腐化しています。
◆ハイブリッドなロジスティクス・シ ステムを開発せざるを得なかった 外国企業(規制とサードパーティ ーのケイパビリティがないため)は、 今ではより高度なケイパビリティ と全国制覇を狙っています。
最近の調査では、より広範囲なア ウトソーシング化が裏付けられてい ます。
すなわち、現在は荷主の一八% が調達分野のロジスティクスをアウ トソースしていますが、三年以内に 四三%がアウトソースすると答えて います(インバウンド・アウトソーシ ングは自動車、IT、通信業界で特 に魅力的なものと思われている)。
販売分野のロジスティクスについ ては、荷主の八〇%が三年以内にア ウトソースを計画しており、現在で は四〇%がすでに実施しています。
(家電製品、自動車、食品・飲料、I T、通信業界はこの領域に特に関心 を示している)。
サードパーティー・ロジスティク ス企業は、市場で求められている広 範なサプライチェーン・ケイパビリ ティのすべてを提供することはでき ません。
米国やヨーロッパの経験に よれば、そのためには提携やジョイ ントベンチャーが必要になり、中国 の優良企業が協力して、競争力のあ るサプライチェーンを構築していく ことになります。
今日、国際的、標準的、市場ベー スのケイパビリティを持つ企業はほ とんど存在していません。
そのため、 まだ多くの企業が、ロジスティクス 資産を持つことを戦略上、重要だと 考えています。
今後五〜一〇年のう ちに、これらのケイパビリティが必ず 実現してきます。
そのときには、資 産ベースではなく、サービスベースの ロジスティクスが発展していくでし ょう。
これは、中国におけるサプラ イチェーンマネジメントの本質を変 えていくことになります。
●資産ではなく情報が第一 他の世界諸国と同様、中国でロジ スティクスを成功させるには、物理 的な車両や積荷の移動よりも情報フ ロー機能が重視されます。
中国の企 業は現在、物理的な資産は所有して いますが(時に多すぎるほど)、情報 や知識が不足しています。
外国企業 の信頼を得て、高品質のサービスを 約束するためには、短・中期的には、 戦略的に資産を持つことが必要にな ります。
しかし長期的には、国内企 業も外国企業も情報や資産を活用し たソリューションを重視していくこ とになります。
●ITはこれまで以上に重要 優れたサプライチェーンが必要な ビジネスにおいては、最善の意思決 定、統合、端から端までの同期性を 確保するために、サプライチェーン・ テクノロジーを習得しなければなり ません。
これらは次第に、導入段階 から実現段階(ビジネス主導でプロ セス重視)へと移行しています。
I DCの予測では、中国IT市場の年 間成長率は、二〇〇一年の二四・ 四%から、二〇〇二年には二八・ 一%に上がります。
変革のとき 変化できない、あるいは変化しな い企業、また変身ではなく修繕で取 り繕おうとする企業は、取り残され て朽ち果てるしかありません。
現在、 中国で起きている変化は、さまざま な改革への前兆であり、これはすべ て、以前には不可能といわれていた サプライチェーン改革の大きなチャ ンスを意味しています。
しかし、そ の過程では、いくつか乗り越えなけ ればならない課題があります。
?法規制の不確実性と変化のテンポ?地域および地方レベルの展開不足 ?スキルある人材の不足 ?人々の意識改革の難しさ ?文化的な考え方や固定化したビジ ネス習慣 ?中国でのベスト・プラクティス適 用の難しさ ?変化に対する確かな投資効果とコ スト構造の理解不足 MARCH 2003 76 ?法規制の不確実性と 変化のテンポ 中国のWTO加盟の影響を高く評 価しすぎることには問題があります。
その理由のひとつは、現行の議定書 には穴が多すぎることです。
たとえば中国は、ジョイントベン チャーの少数株式ステータスを一〇 〇%外資の企業に移行する過程を明 確にしていません。
また企業が中国 に進出するには、いまだにライセン スが必要です。
WTOを納得させる だけのライセンスを発行した後は、政 府がそれ以上の発行を拒否すること もあり得ます。
まさにWTOガイド ラインでもっとも問題になりそうな ことに関して、現在の中国の法律は、 すべての企業に対して何らかの規制 を設けることができるのです。
Maersk は世界最大の貨物輸送会社 ですが、この会社のケースは、今後 起こりうることを示唆しています。
Maersk は、一〇〇%外資の会社とし て中国のライセンスを取得した数少 ない外国企業のひとつとして認めら れています。
しかし、同社は支店開 設に際して政府の規制を受け、全国 サービスの提供が困難になり、結局、 一連の地方企業と協力せざるを得な くなりました。
結論を言えば、現行の規制のなか には変更の予定がないものもありま す。
たとえば、外国企業は今後も、中 国で自社生産していない商品を中国 で流通させる(卸売も小売も)こと ができません。
既存の外資系企業(F IE)がサードパーティーの商品を 輸入あるいは輸出できるようになる かもしれませんが、それを国内で流 通させることはできないでしょう。
ま た外国企業が自社の営業所を通して 販売したり、中国に営業所を設立し たりすることを禁止する法規制は当 分維持するものと思われます。
法規制の不確実性のほかにも、需 要や市場成長率の非現実的な予測に より、需要を見越して過剰に生産能 力を増強するなどビジネス上の意思 決定を間違う危険性があります。
中国のビール業界がその例です。
国 際企業の多くは、市場獲得のために 先を急いで参入し、その結果、膨大 な生産能力を作ってしまいました。
中 国のWTO加盟により一〇億人の人 口すべてが自動的に一〇億人の顧客 になるわけではないことを、多国籍 企業は特に心にとめておく必要があ ります。
最後に、不確実性は中国の通貨に もいえることです。
急激な通貨切り 下げが投資回収に重大が影響を及ぼ し、外国からの投資を激減させて、発 展を妨げることがありえます。
?地域および 地方レベルの展開不足 全国レベルでは変化が進む可能性 がありますが、地方レベルでの同様 の変化にはあまり期待が持てません。
北京では規則が強制的に執行される かもしれませんが、地方自治体、地方都市や町に適用されるころには、次 第にその効力は弱められ、やがては 無視される可能性もあります。
たとえば、地方自治体は、打破す るのが難しい関税および非関税障壁 を確立しています。
有識者の多くは、 市場アクセスルールが確立されて(外 国の審査官による強制が可能になる)、 このような力が弱まることを期待し ています。
長期的には、中央政府の 立場が優勢ですが、戦いは厳しく、長 期間にわたることが予想されます。
?スキルある人材の不足 人材の発掘と維持は、競争力のあ るサプライチェーン構築の大きな課 題となります。
恒常的に海外から専 門家を雇うのはコスト面で高くつく ので、中国内での人材の育成が必要 になります。
しかし、それには時間 が掛かりります。
?人々の意識改革の難しさ テクノロジー、インフラ、その他ケ イパビリティに適切な投資をすべて行 った場合でも、変化を受け入れる「人 の問題」は残ります。
この問題は、こ れまで中国でたくさんのテクノロジー 導入が失敗に終わったことで裏付けら れています。
識者によれば、このよう な取り組みの八〇〜九〇%は、「人の 問題」が原因で失敗しています。
それと関連して、新しいケイパビリ ティ、特により高度な情報テクノロジ ーソリューションを活用するトレーニ ングスタッフの問題があります。
現行 の組織体系や業績評価システムもまた 変更するのが困難です。
たとえば、ほ とんどの運送業者は業務機能ごとに編 成されています。
すなわち、プロセス の成果よりも業務機能を評価する仕組 みがすでに構築されています。
?文化的な考え方や固定化したビジネス習慣 サプライチェーンの効率化を図るに は、組織の文化を変えなければなりま せん。
サプライチェーンの参加者は皆、 信頼とWin ―Winの考え方で密接 な関係を築くことの重要性を学ぶ必要 があります。
77 MARCH 2003 ?中国でのベストプラクティス 適用の難しさ これはどのような状況でも言える ことですが、ベストプラクティス実 現に向けての計画を立案するには、中 国のインフラ、システム、ビジネス 習慣、人にかかわる現実を認識しな ければなりません。
中国の現状とベ ストプラクティスとのギャップはあま りに大きく、西欧のベストプラクテ ィスを短期間で実現するのは難しい と言えます。
中国で失敗する早道は、 他国のマーケットでの経験をすべて そのまま中国に適用しようとするこ とです。
?変化に対する確かな投資効果と コスト構造の理解不足 確固たるファクトベースの投資効 果は、変化に対する強力なきっかけ となります。
しかし、中国のメーカ ーの多くは、自社のベースとなる基 本のサプライチェーンコストを把握 していません。
ごくわずかの地元企 業が、輸送や倉庫のコストを把握し ていますが、彼らですら在庫、オー ダー管理、その他の事務コストにつ いては把握していません。
また、サ プライチェーンコストをトータルでと らえている会社もほとんど存在しま せん。
結論 WTO加盟は、法的な視点から見 れば、中国市場が初めてアクセス可 能な状態になることを示しています。
中国の成長著しい顧客基盤を取り込 もうとしている企業は、全国的なサ プライチェーンケイパビリティを築く 必要があります。
実現するためには、 地理、インフラ、法規制、文化、人 という大きな壁に立ち向かう必要が あります。
このような障害を前に、全国的な サプライチェーンケイパビリティをゼ ロから構築すること、あるいは、基 礎から突然先進的なケイパビリティ に飛びつこうとする試みは、極めて リスクが高いと言えます。
まず小規 模なレベルから開始し、大きな視点 で考え、着実に進めながら、焦点を 絞り込む必要があります。
中国では、「千里の行も足下に始ま る」といいます。
最初の一歩とは、コ ーディネーションであり、コミットメ ントであり、しっかりした戦略なの です。
資産と業務機能のケイパビリティ を確保するほかにも、企業は、ネッ トワークと情報管理のケイパビリテ ィを築き、適切な人材を確保・維持 し、最良のサービスを提供する企業 と提携することが必要でしょう。
簡 単な道のりではありません。
しかし、 それを独力で行うと、災難が待ち受 けています。
地元の企業と協力すれ ば、中国の多くの多国籍企業のよう に努力は報われます。
パートナーシ ップと提携が成功へのカギとなりま す。
結局のところ、コネクションやリレーションシップの価値を過小評価 することはできません。
このような概 念を広げて、国内・国外の優れた企 業との間でケイパビリティのネット ワークを築くことが、中国における 成功への方程式なのです。
非常にチ ャレンジングで、リスキーですが、そ れだけチャンスも大きいのです。
中 国のサプライチェーンは明らかに変 革のときを迎えており、その先には 何かすばらしいものがあるはずです。
中国の表現でいうならば―― 「不可能なことはない、すべては困 難なのである」 ロバートJ. イーストン(Robert J. Easton) アクセンチュアのサプライチェーン・マネジメント=アジ ア太平洋地域統括パートナー。
中国、香港、韓国、台湾のサ プライチェーン・サービスに従事。
サプライチェーン戦略、 プロセス・リエンジニアリング、パフォーマンス管理、シス テム・インテグレーション、チェンジ・マネジメントなどに 20年以上の経験を有し、著書多数。
マッコーリー大学院に てMBA取得、シンガポールのCommand and General Staffカレッジを卒業。
現在、香港を拠点に活動している。
