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2005年3月号
特集

物流資産は誰が持つ 物流企業の減損会計攻略法

MARCH 2005 14老舗物流企業の含み損リスク二〇〇六年三月期から減損会計の適用が義務付けられる 減損会計とは 企業が保有する固定資産のうち 経済環境の変化などに伴う収益性の悪化で投下した資金の回収が困難にな た部分 つまり固定資産の価値が低下した部分を損失として計上する というル ルだ 企業は資産価値の低下を損失として処理する場合 固定資産の帳簿価額を回収可能価額 資産を処分して得られるキ シ フロ もしくは資産を使用し続けることで得られるキ シ フロ のいずれか高いほうの金額 まで減額する必要がある 日本の会計制度ではこれまで固定資産を簿価 取得価額 で計上することが認められてきた その結果 企業は取得した土地が値下がりしていても その分の損失を表面化させずに済んだ これに対して減損会計は企業に固定資産の含み損の清算を迫る 収益力の回復が見込めない固定資産を抱えている企業は二〇〇六年三月期の決算で多額の減損損失の計上を余儀なくされる バブル期に土地や建物を高値掴みした企業は少なくない それだけに今回の会計制度見直しが企業の業績に与える影響は甚大だ 野村證券金融経済研究所の調査によると 減損会計の早期適用初年度とな た二〇〇四年三月期に NOMURA400 日本の株式市場を代表する四〇〇銘柄 の構成企業のうち四一社が減損処理を実施 損失額は合計で八六二九億円に達した 続く二〇〇五年三月期上期には九〇社が処理に踏み切り 合計で七〇九七億円の損失を計上 すでに二年間の累計で減損損失は約一兆五七〇〇億円に上 ている 二〇〇六年三月期には 損失額がこの二倍 三倍に膨れ上がると目されている 物流企業の減損会計攻略法4月にスタートする新年度から減損会計が強制適用される。
土地や物流センターなどの固定資産を抱える物流企業は大きなダメージを受けることが予想されていた。
ところが、「資産のグルーピング」という会計処理方法が認められたことで抜け道ができてしまった。
含み損の表面化は先送りされた。
(刈屋大輔)これまでの実績を業種別に見ていくと 電力やガスなどの 公益 鉄鋼・非鉄 や 化学 とい たセクタ に属する企業がとりわけ多額の損失を計上している いずれも土地や建物を多く使用する装置産業だ 同じようにトラ クタ ミナルや倉庫とい た土地や建物をベ スにビジネスを展開している物流企業にも大きな影響が出ている 三菱倉庫は二〇〇五年三月期上期に土地や建物を対象に約一〇七億円の損失を計上した このほかにも山九 三井倉庫 日立物流などが減損処理に踏み切 ている 次ペ ジ図参照 も とも 物流企業の場合 減損会計の導入が決ま た当初に想定されていたよりも 最終的なダメ ジがはるかに小さくて済む公算が大きい 野村證券金融経済研究所の尾坂拓也アナリストは 土地や建物とい た固定資産を数多く抱えている物流企業は大手で一社当たり数百億円規模の損失計上を強いられ その結果 経営が行き詰ま てしまう企業も出てくるのではないかとも囁かれていた ところが蓋を開けてみると 物流企業は減損会計で大きなダメ ジを受けないことが分か た 減損会計の影響は大手でも一社当たり数十億円程度にとどまる と指摘する 物流企業の損失額が当初の試算よりも大幅に軽減される見通しとな たのは 資産のグル ピング 化が容認されたためだ 複数の固定資産を一つにまとめ その資産の塊が収益を上げているかどうかを判断し 収益が上が ていない場合にのみ減損処理を行うという方法だ 投下資金の回収見込みがない多額の含み損を抱えた固定資産Aと 大幅な収益を上げている固定資産Bがあるとしよう 固定資産Aと固定資産Bをグル ピングし ト タルで収益が上が ている状態であれば 固定資産Aは減損の対象には含まれない 第2部 物流資産は誰が持つ 特集 15 MARCH 2005 資産のグル ピング は本来 キ シ フロ を生む最小単位で資産をグル ピングすること が義務付けられている ただし ネ トワ ク型のビジネスを展開する企業 例えば鉄道会社は駅と駅の間に線路を敷き その間に鉄道を走らせることではじめて収益が上がる構造にな ている 一つの駅 では事業が成り立たない このような場合には グル ピングの範囲を拡げることが可能だ 実はこのル ルが多くの企業にと て減損損失を軽減するための 裏技 になる 実際 鉄道会社は含み損が発生している駅を複数抱えているにもかかわらず 鉄道はネ トワ ク全体で収益を上げる構造にな ている ことを理由に 鉄道ネ トワ ク全体を一つの資産としてグル ピングしている そうすることで個々の駅の含み損が表面化することを回避しているのだ グル ピングという裏技鉄道ビジネスの論理はそのまま物流ビジネスにも当てはまる 例えば 特別積み合わせ事業は拠点 タ ミナル 間にトラ クを走らせて荷物を運ぶことによ て収益が上がる仕組みにな ている 鉄道にと ての駅と同じように 特別積み合わせ業者にと てのタ ミナルは タ ミナルそのものでは収益を上げられない固定資産である と解釈できる 実際 西濃運輸や福山通運とい た大手特積み会社はすでに輸配送ネ トワ ク全体を一つの資産としてグル ピングする方針を打ち出している その結果 特積み会社にと て減損処理の対象となるのは社宅や遊休地とい たごく僅かな資産だけとなりそうだ バブル期に購入した本業で使用している土地や建物の含み損は吐き出されずにそのまま残 てしまう 多額の損失を計上できる体力が残 ている特積み会社は限られている 特積み会社の大半は 資産のグル ピング の論理によ て救われる格好になるだろう 減損会計で特積み会社が抱える負の部分はきれいになるはずだ たが 幸か不幸か その機会は先送りされることにな た と尾坂アナリストは説明する 本来のあるべき姿で減損を処理していくのは当面 特積みではヤマト運輸くらいになりそうだ 二〇〇五年三月期上期に 同社はネ トワ ク全体をグル ピングせずに 全国七一カ所の主管支店ごとに減損処理を実施した 主管支店と その傘下にある六 七人規模で構成される センタ と呼ばれる営業所五〇 一五〇カ所を一つの資産としてグル ピングして減損の兆候を調査 収益性が低く 投資した資本を回収できそうにない計六カ所の主管支店 埼京主管支店ほか五拠点 について減損損失を計上した 損失額は合計で四五億九七〇〇万円だ た グル ピングの範囲を主管支店単位にした理由について ヤマトの庄司義人財務課長は ネ トワ ク全体でグル ピングしていると いつまで経 ても固定資産の含み損を処理できない 業績が好調に推移し体力のあるうちに含み損を解消して資産の透明性を高めておきたか た と説明する 同社では今後も主管支店単位で減損処理を実施していく方針だという 減損会計の制度化は国際競争社会を見据えて進められてきた会計ビ グバンの総仕上げという位置付けだ そしてその目的は企業の資産状況の透明性と健全性を高めることにある しかし 残念なことに制度そのものに抜け道が用意されてしま た 物流企業の真の実力を把握するためには 二〇〇六年三月期の決算で各社がどういうスタンスで減損処理に対応するのかをきちんとウ チする必要があるだろう ■減損会計を早期適用した主な物流企業と減損の内訳 企業名  実施時期  減損損失額  減損対象 ヤマタネ  2004。
3月期  21億1700万円  営業倉庫、賃貸ビル、美術品 宇徳運輸  2004。
3月期  25億1466万円  物流センター、土地 郵船航空サービス  2004。
3月期  9億200万円  土地 山九  2005。
3月期上期  26億2000万円  土地、建物 三井倉庫  2005。
3月期上期  8800万円  土地 三菱倉庫  2005。
3月期上期  107億1600万円  土地、建物 日立物流  2005。
3月期上期  11億6900万円  物流センター、土地 ヤマト運輸  2005。
3月期上期  45億9700万円  土地、建物 ヤマト運輸はネットワーク全体ではなく、主管支店単位で減損処理を実施している(写真は2月に稼働した三重主管支店)

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