2003年8月号
SCC報告
SCC報告
HP&コンパック統合のSCM
AUGUST 2003 82
六月、東京国際フォーラムで「サプライチ
ェーン経営フォーラム2003」(日本経済新
聞社主催、特別協力SCC日本支部)が開催
された。
これに合わせてSCCの新チェアマ ンであり、米ヒューレット・パッカード社と コンパックの合併でプロセス統合を指揮した ジョセフ・D・フランシス氏が来日した。
そ の講演内容と、ロジスティクス分野の統合に 関して本誌が行ったインタビューを紹介する。
史上最大の合併プロジェクト 我々SCCは「SCOR」というフレーム を使ってビジネス・プロセス・マネジメント (BPM)という変革に打ち勝とうと考えてい る。
少なくともヒューレット・パッカード社 (HP)は、このフレームワークを通じてビジ ネスの変化に対応していかなければ、生き残 ることができないという認識に立っている。
ビ ジネス・プロセスをマスターすることこそが 生き残りの鍵を握っている。
HPとコンパッ クの合併は、まさしくこの教訓が活かされた 事例である。
HPとコンパックの合併は、売上規模で八 二〇億ドル(約一〇兆円)というビジネス史 上最大規模のものだった。
二社を合わせると 八万五〇〇〇のプロダクト・ライン、七〇〇 〇のアプリケーションを持っていた。
合併に 際して第一に我々が注視したのは両社の最高 のバリューを引き出すことだった。
二社のビ ジネス・プロセスは何百ものサプライチェー ンから構成されている。
そうした複雑な状況 の中でのチャンレンジだった。
まず我々はプロセス領域ごとにリーダーシ ップチームを作った。
プランニング、製造、調 達、デリバリーそしてオーダーマネジメント、 ビジネス・ポリシーのセットアップといった プロセス領域だ。
また実行から報告といった様々な分野で、 我々は「クリーンルーム」のようなオープン な組織を作るべきだと考えた。
情報の共有は、 あくまで「クリーンルーム」中でやらなければならないと決め、一人一人がそれに責任を 持たなければならないと考えた。
プロセス統合の方法 我々はBPMのフレームワークとしてSC ORを活用した。
全員がこのフレームワーク を使うことに合意した。
最初の二カ月でモデ ルを作った。
実際に会社がどのようなオペレ ーションをしているのか把握するところから スタートした。
セールス、ビジネス・インフ ラストラクチャーをはじめとした様々な状況 を整理していった。
次に優先順位を明らかに した。
そして結果をきちんと検証していくと いう手順を踏んだ。
HPとコンパックの両社にはカルチャーの 違いの問題があった。
思考の違いの問題もあ HP&コンパック統合のSCM ――SCORを活用したプロセス改革 ジョセフ・D・フランシス サプライチェーン・カウンシル チェアマン 米ヒューレット・パッカード社 Business Process Management Information Technology 83 AUGUST 2003 った。
そして例え同じダイレクト販売でも、両 社のビジネスモデルはプロセスレベルにおい て非常に大きな違いがあった(図1)。
そのた め、「違いを洗い出す」というところから始め なければならなかった。
ヨーロッパでは六チームが二週間、SCO Rを使ってサプライチェーンのアーキテクチ ャーを洗い出す作業を行った。
そして具体的 に、どのサプライチェーンのシステムを残す べきかと検討していった。
合併の場合は、両 社のベストな部分を洗い出すところから始め ることになるわけで、全くのゼロからスター トするということではないというところが重要な鍵を握っていたと思う。
サプライチェーンの能力やトータルコスト など、合併に際しての具体的な問題は以下の 六つの項目に分けた。
「戦略(Strategic Coverage )」、 「プラットフォーム(Platform Coverage )」、「eコマースとのリンク(Link with e-commerce )」、「サプライチェーン能力 ( Supply Chain Capabilities )」、「トータルコ スト(Total Cost of Ownership )」、「移動の 速さ(Migration Agility )」 だ。
これによって詳細に渡っ て指標の判断をすることが できたと考えている(図2)。
サプライチェーン・プロ セスの統合は北米地区から 行った。
そしてヨーロッパ に適用し、最終的に一つの サプライチェーンにするとい う考え方を採用した。
統合 は二年弱で完了した。
私は 今回の合併前までコンパッ クに所属していた。
かつて コンパックがデックを買収 した時には、サプライチェ ーンの統合に三年以上かか った。
これはフレームワーク の違いがどれだけ結果に変 化を与えるかという対照的 な例だと思う。
SCORを利用するメリット なぜ我々がSCMにSCORを使うのか。
その理由を述べたい。
コスト削減、在庫削減、 ビジネス・エンジニアリング・リプロセッシ ングを、SCMの目的としている会社は多い だろう。
しかし当社の狙いは、それだけでは ない。
競争力をつけるためにもSCORを使 っている。
競争力を確保するには、競合相手の状況を プロセスレベルでも十分に把握し理解する必 要がある。
実際、我々は米国市場を念頭に置 いたデル・コンピュータとの競合関係、それ も製品レベルや市場レベル、組織レベルだけ でなく、プロセスレベルでの競争力強化を図った。
そしてプロセス革新のためにプラット フォームを見直したのである。
そんな我々にとって、SCORはビジネス・ プロセスを記述するための枠組みだった。
S CORに基づくBPMのお陰で、我々はビジ ネスを変革するためにコントロールしなけれ ばならない全ての要素を理解することができ た。
すなわちプロセスの統合や簡素化、平板 化などのあらゆる変革や指標の採用が可能に なったのである。
また適正なレベルでプロセスを改革し、革 新性をもたらすことを確実なものするために は、我々の出発点となっているプロセス能力 を、一般的な経営指標につなげていかなけれ ばならない。
すなわち経営資源をどのように 使って顧客に製品を提供するのか、どうやっ EMEA Fusion(HPのモデル) EMEA ESB(コンパックのモデル) Adopt & Go EMEA Fusion platform for ESG and PSG for both Direct and Indirect business models 図2 サプライチェーンの決断 EMEA-Fusion EMEA-ESB Comments / Highlights Strategic Coverage Platform Coverage Link with e-commerce/ CRM SC Capabilities Total Cost of Owner Ship Migration Agility − + + − − + + − + − + − ESB utilizes SAP 4.6c and Siebel 2000 CRM Fusion utilizes SAP 4.5b and Oracle CRM Fusion cover 100% of ESG and PSG EMEA business, ESB cover 5% of PSG EMEA business ESB has a stronger integration to quote / config. layer Fusion has more SC capabilities in Source, Make and Deliver area. ESB SC planning (APO-DP) to be integrated to Fusion Fusion will provide a better TCO through platform sharing between ESG & PSG as well as leverage between Regions. Fusion will provide a quicker and cheaper migration and help accelerate Direct business implementation in EMEA 図1 欧州市場における直接販売のモデル AUGUST 2003 84 てビジネス機会を捉えて利益を上げていくの か。
これを明確にしたうえで、株主価値を最 大化していかなければならない。
株価が貸借 対照表の評価指標、そしてビジネスストラク チャーにどのように関連付けられていくのか 考えていくわけである。
ビジネス・プロセス の枠組みの中でどこに、どこまで変革をもた らすと、望ましい結果がもたらされるのか。
最 終的に株主価値を最大化し、バランスシート を好転させることができるのか。
SCORに よってそれが判断できる。
SCORは八〇年代から九〇年代末までに 実施されたビジネス・プロセス・リエンジニ アリング(BPR)を、非常に強力なメトリ ックス、ベンチマーキングとつなげていく。
様々なパフォーマンスの指標とマネジメント ツールを活用して、その結果を具体的な業務 に落とし込んでいくことを可能にする(図3)。
SCORには組織に対する依存性もない。
したがって、SCORはサプライチェーンを 末端の出発点から最終的な目的地まで全て明 確に記述していくことができる。
ある製紙メ ーカーのスタッフは、原材料の木材から最終 的にテーブルに置かれるナプキンに至るまで、 全てのプロセスを網羅できると話していた。
コ スト、サイクルタイム、在庫レベル、売り上 げ、ありとあらゆるプロセスをカバーすること ができるのだ。
様々な事業分野のプロセス・ストラクチャ ーの責任者が皆、SCOEをベースに適用す ることができた。
同一のフレームワークをベ ースとしているため、ある分野における指標 が別の分野の指標をうまく補完できないという心配がなかった。
SCORで現場と経営層を結ぶ プロセスには複数のレイヤーがある。
例え ばサプライチェーンにおいて、注文管理の担 当者の焦点はオーダーマネジメントプロセス だが、その上司の焦点は納入、物流、あるい はサプライチェーン全体となる。
こうした複 数のレイヤーにもSCORは対応している。
同 一のフレームワークを採用することによって 上級管理職の副社長でさえ、サプライチェー ンのプロセス、あるいはそれにあったメトリッ クスでコミュニケーションすることができる。
そして経営トップに対してはバランスシー トの問題について適切に意見を交換すること ができる。
バランスシート上、何が一番問題 なのか、またどういった事業分野を改善し、革 新すればバランスシートを改善することがで きるのか、それぞれの会社のレベルに合った 形で話をすることができる。
現在、HPでは一年〜三年にわたる中長期 の事業戦略を策定している。
非常に重要なの は、当社のように複数の事業分野で投資をす る場合、プロセス・フレームワークを使うこ とで、投資を行う事業分野に問題はないのか、 あるいはすでに非常に業績がいい事業分野に あまりにも追加投資をしすぎているのではな いかといった問題などに、事業内容に関する 詳細な知識がなくても対応していくことがで きることだ。
会社に充分な能力はあるのか、会社がすで にその分野で業績をあげているのか、またビ ジネス・プロセス、メトリックス、バランス シート、株主価値というレベルで考える際に、 統一されたフレームワークを用いることによ って全てを結びつけて考えていくことができ るわけだ。
HPではこういった関係性を明確にするこ とができたため、経営陣は「確かに言うとお りだ、これは非常にうまくいく」と納得して くれるようになった。
ビジネスにおいてこれは 非常に戦略的なツールであるといえる。
もう一つのSCORのメリットは、プロセ Quantify the operational performance of similar companies and establish internal targets based on “best-in-class”results Characteize the management practices and software solutions that result in“best-inclass” performance Business Process Reengineering Benchmarking Best Practices Analysis Process Reference Model Capture the“as-is”state of a process and derive the desired“to-be”future state Characterize the management practices and software solutions that result in“bestin- class” performance Quantify the operational performance of similar companies and establish internal targets based on “best-inclass” results Capture the“as-is” state of a process and derive the desired“to-be” future state *Supply-Chain Operations Reference-model developed by the Supply-Chain Council 図3 85 AUGUST 2003 をきちんとおさえて、スタンダードをベースに することが非常に重要だ。
ユニバーサルスタ ンダードを使うことで、完全なレベルのビジ ビリティ(可視性)をサポートすることが可 能になる。
会社間で今何が起こっているのか、 きちんと目視できるようになるだろう。
プロセス・フォーカスをきちんと持ってス タンダードをベースにする。
そしてそれをサポ ートするテクノロジーを持つ。
また経営レベ ルが、実際のオペレーションや決定がどのよ うに行われているのかを理解している組織は 成功するだろう。
HP社内における私のチー ムメンバーはプロセス・フレームワークを確 立し、学術的ないい形の仕事をしていると思 っている。
BPMでは何点もの構成要素をつきあわせ、 モデルを構築し、ベンチマークを確立し、い ろいろなものを創り出すことになるが、一番 重要なことを見失ってはいけない。
顧客にフ ォーカスを当てることだ。
ビジネス・プロセスの変革を、顧客にとっ ていい方向に展開していかなければいけない。
企業としてやらなければいけないこと、必然 的なことをやっていかなければいけない。
ビ ジネスを効率的に経営していくことを目的に プロセスを分析し、それを机上の空論で終わ らせてはならない。
ビジネスが生存していく ために革新し、効率性を改善し、企業がより 競争力を身につけて価値を最大化できるよう にしていかなければならない。
それが私たち の究極の目的だ。
スに焦点を当てることによって、誰がどうい った仕事をしているか、誰がどの派閥に属し ているかということを心配せずにビジネスを 考えることができる点だ。
組織の力関係、政 治的な微妙な関係というものを考える必要が ないということだ。
SCORのビジネスモデ ルは時には企業の非効率性を明確にする。
そ れはいいことであり対応していかなければな らないことなのだ。
投資を行う際、我々は数字をもとに考える。
メトリックス、指標を考え、問題のある分野 を明確にし、それをプロセスにつなげ成果を 出そうとする。
ERPのようなシステムをな ぜ導入するのか、ITになぜ投資するのか。
そ れはIT投資が直接結果に結びつくと考え、 また重要な指標だと考えているからだ。
ビジ ネスの評価、そして迅速な実行というものが 重要だ。
私たちは非常に短期間で統合を果たすこと ができた。
それは統一されたフレームワーク を持つことによって内部のシステム知識を充 分活用し、企業にとっての特別な言語、ある いはプロセスマネジメントの概念を明確にす ることができたためだ。
HPとコンパックのサプライチェーンの統 合に際し、我々は六〇〇億ドルの収入の流れ をモデリングするために、一〇人から十二人 のスタッフを投入して四週間を費やした。
コ ンパック出身者がHPについて充分理解でき ていなくてもモデルを構築し、HPとコンパ ックの違いを洗い出し分析することができた。
これは大手のコンサルティング会社が一年以 上かけてもできないことだと思う。
事業の変 革を短時間で行うことは費用対効果を高め、 コストを削減することにつながる。
今や多くの会社にプロセス管理チームが導 入されていて、どのようなプロセスが改善さ れるべきか真剣に検討していることと思う。
使 うべきツールは何なのか検討されていると思 うが、この点に関してはSCORを使うべき だと私は考えている。
ゼロからサプライチェ ーンを構築するというのなら構わないが、既 にあるものの中から最高の能力を抽出するほ うが賢明だと思うからだ。
企業特有のツールを使うケースもあるが、そ のような場合はだいたいにおいて失敗する傾 向にある。
結局、うまく普及しない。
この点 Supply Chain Delivery Performance Perfect Order Fulfillment Fill Rate Fulfillment Lead Time Response time Production Flexibility Total Supply Chain Management Cost Cost of Goods Sold Value-Added Productivity Cash-to-Cash Cycle Time Inventory Days of Supply Asset Turns Domain Performance Attribute Metric Reliability Responsiveness Flexibility Cost Asset Management 図4 サプライチェーンの評価指標 AUGUST 2003 86 3PLパートナーの選択 ――統合に際して、物流のアセットや3PLパ ートナーはどのように見直したのか?. 「3PLの見直しは、時間が限られていたの で非常に難しかった。
まず我々は両社間のビジ ネス・プロセスのメトリックスを作った。
そし て全てのアセットをそのプロセスにはめ込んで いった。
仮に、その時点で両社が計七つのロジ スティクス・プロバイダーと契約を結んでいた とする。
それぞれのプロバイダーの業務内容、 業務プロセスは全て異なっていた。
したがって、 その中から単純に数社を選択することは非常に 危険だと判断した。
選択したプロバイダーが、 当社の必要とする多くのプロセスを提供できな い可能性があるためだ」 「当社の全てのプロセスをカバーするには、い ったい何社の3PLと契約する必要があるのか。
それを注意深く考える必要があった。
特別なプ ロセスを提供する3PLが一社に限られる場 合、その3PLは我々にとってどうしても必要 な存在になる。
同じプロセスを提供する3PL が数社ある場合は、どこがコスト的に見て最善 か選択する必要が出てくる。
また、こうした選 択を行った結果、異なるプロセスを提供する五 社が残ったとする。
そのうちの二社に追加的な サービスの提供を申込み、残りの三社との取引 を止めるという選択もあり得る」 ――実際に、それまで契約を結んでいたロジス ティクス・プロバイダーは何社あったのか? 「非常に多くとしか言えない。
我々のロジステ ィクス部門は『ワン・フット・プリント』と呼 ばれる、ロジスティクス業務を遂行するための プロセス戦略を作った。
合併前のHPとコンパ ックのロジスティクスは非常に異なっていた。
そのため、コスト的に安いからといって例えば コンパックのロジスティクスを全面的に採用し ようということは不可能だった。
そこでプロセ スをセットにまとめ、(セットごとに)数多くの ロジスティクス・プロバイダーに提案した」 ――コンペティションなども行った? 「合併が完了する前はHPとコンパックがそれ ぞれ独自で運営しなければならないため、共同 でコンペを行うことはできなかった。
合併後に 即座にコンペを行った。
同じサービスを提供し ている二社に対して、『我々はより良い価格を 提供する方と取引をする。
さらに加えて、契約 を継続すると決定した会社には取引高が二倍に なる事を考慮して三〇%の値引きを要求する』 と伝えた。
我々は通常契約に関して再交渉する 場合『ベスト・コストを選択し、その会社には 二倍の取引を依頼する』と伝える。
もちろんサ ービスの質や我々のシステムへの統合などが必 要なことは言うに及ばない」 物流拠点の統廃合 ――アセットに関しては。
「まず、モデリングを行い、両社のサプライチ ェーン組織とプロセスについて検証した。
売り 払ったアセットももちろんある。
あるサプライ チェーン・プロセスがあり、その中に複数のウ エアハウスがある場合、どちらがより良いコス ト・パフォーマンスを提供できるのかが判断の 決め手になる」 「合併前のHPとコンパックは同じ製品ベー スに対して同地区に二つのウエアハウスがあっ た。
例えば、一つはルーズフェルドでもう一つ はヒューストン。
プロセスに関してはHPのプロセスを採用すると決まっていたが、どちらの ウエアハウスを取るかはプロセスとは関係がな い。
同じプロセスでウエアハウスだけを変更す ることも簡単だ」 「このケースでは、ヒューストンにウエアハウス を持っていた方が、人件費や税率など、コスト 的に見て得策だった。
もちろん、こうした問題 は非常にセンシティブであるため、我々は計画 段階で『このプロセスを採用するため、このウ エアハウスは何月何日に閉鎖する』と公式にア ナウンスした。
また同時に六カ月後には製造な ど全てのシステムがヒューストンへ移行する旨 を伝えた」 ――どれくらいのアセットを処分した? 「はっきりとした数字は分からないが、約八〇 「合併に伴うロジスティクスの統合」 SCCチェアマン ジョセフ・D・フランシス氏 独占インタビュー 87 AUGUST 2003 のウエアハウスのうち五〇〜六〇を残した。
同 じ地域に同じファンクションを持った二つのウ エアハウスがあって、そのうちの一つを閉鎖す るという決断はとても簡単だ。
コストが選択の 決め手となる。
難しいのはサプライチェーン自 体がなくなったためにウエアハウスを閉鎖する ことだ。
つまり二つの完全に異なったサプライ チェーンを併せた場合だ」 ――日本市場においても同様のアプローチをと ったのか? 「日本市場は他市場とは違った。
まず、HP の日本市場における存在感は、キヤノン販売と の特別な関係によって、コンパックのそれとは 比較にならないほど大きかった。
結果的に全て のHPのストラクチャーがコンパックに適用さ れた。
これは、ただ単にHPの吸引力が大きか ったためだ」 「日本市場では(SCORの)『レベル1』と呼 ばれるモデリングも必要なかった。
『レベル1』 ではビジネス・エリア、コスト、マーケット・ ボリュームなどにおいてモニタリングされるが、 日本市場におけるHPの存在感が非常に大きか ったため、この時点で我々は決断を下すことが できた」「通常は『レベル1』のモデリングを行い、そ こで両社に大差がなければ、『レベル2』でより 詳細な情報を集め、検討し、それでも差が出な い場合は『レベル3』、『レベル4』と進まなけ ればならない。
実際、ヨーロッパ市場はそうし たケースだった。
両社はヨーロッパにおいて酷 似したシステム、ビジネス・エリア、ビジネ ス・ボリューム、また能力などをもっており、 『レベル3』、『レベル4』まで進んでやっと両社 の違いが浮き彫りになった。
もちろん、『レベル 1』で決定した項目も多々あったが、あまりに 似通っていたため決断は難しく、より詳細な情 報が必要だった」 SCORの活用法 ――HPとコンパックの担当者では、SCOR やプロセス改革に対する理解度に差があったの では。
「難しい質問だ。
コンパックのカンパニーは一 つだったがHPには七七のカンパニーがあった。
コンパックはそれまでに何年にもわたり統合を 繰り返していた。
かたやHPは、ビジネスの一 部がある一定のサイズに達したらその部分を切 り離すという経験をしていた。
七七もの違うカ ンパニーとコンパック、併せて七八のカンパニ ーのメンタリティーを移行するのはとても大変 だった。
しかし企業自体の文化を替える必要は なかった」 「結局、良いツールとメソッドを持っているグ ループは生き残った。
そうしたグループは自然と 拡大していった。
我々はSCORへのアクセス を提供しただけで、それぞれのグループが独自の 方法でSCORを使ったまでだ。
中心的なグル ープがあってそこがSCORを動かしていたわ けではない。
SCORを正しく使う唯一の方法 などない。
SCORには幾通りもの正しい使い 方がある。
私はプラットフォームと呼んでいるが、 使い方が多種多様なeメールと同様で、SCO Rはどのようなビジネスの問題をも解決できる 素晴らしいプラットフォームだと認識している」 ――今年の二月から、SCCの会長を務めてい るが、それがあなたのキャリアにとってどういう 意味を持つと考えているか? 「会長という立場は私の目を開かせてくれる。
会長としての役目は、SCORをより効率的に 使う手助けをすることだ。
また、SCORを多 くのビジネスにより一層、近づけることに非常 に興味を持っている。
従って、SCCジャパン のような地域ごとのグループがSCORを使う ことに対してイニシアチブを取って、その地域 のビジネスの発展に貢献することに興味がある。
アメリカのセントラル・グループから他地域に 命令するという形態は必要ない」 「私はSCCの会長として、ビジネス・プロセ スの向上に問題を抱える企業に解決策を提示す る機会に恵まれている。
また、いろいろな情報 を開示し、協働することも可能だ。
とても興味 深いことだと思っている」
これに合わせてSCCの新チェアマ ンであり、米ヒューレット・パッカード社と コンパックの合併でプロセス統合を指揮した ジョセフ・D・フランシス氏が来日した。
そ の講演内容と、ロジスティクス分野の統合に 関して本誌が行ったインタビューを紹介する。
史上最大の合併プロジェクト 我々SCCは「SCOR」というフレーム を使ってビジネス・プロセス・マネジメント (BPM)という変革に打ち勝とうと考えてい る。
少なくともヒューレット・パッカード社 (HP)は、このフレームワークを通じてビジ ネスの変化に対応していかなければ、生き残 ることができないという認識に立っている。
ビ ジネス・プロセスをマスターすることこそが 生き残りの鍵を握っている。
HPとコンパッ クの合併は、まさしくこの教訓が活かされた 事例である。
HPとコンパックの合併は、売上規模で八 二〇億ドル(約一〇兆円)というビジネス史 上最大規模のものだった。
二社を合わせると 八万五〇〇〇のプロダクト・ライン、七〇〇 〇のアプリケーションを持っていた。
合併に 際して第一に我々が注視したのは両社の最高 のバリューを引き出すことだった。
二社のビ ジネス・プロセスは何百ものサプライチェー ンから構成されている。
そうした複雑な状況 の中でのチャンレンジだった。
まず我々はプロセス領域ごとにリーダーシ ップチームを作った。
プランニング、製造、調 達、デリバリーそしてオーダーマネジメント、 ビジネス・ポリシーのセットアップといった プロセス領域だ。
また実行から報告といった様々な分野で、 我々は「クリーンルーム」のようなオープン な組織を作るべきだと考えた。
情報の共有は、 あくまで「クリーンルーム」中でやらなければならないと決め、一人一人がそれに責任を 持たなければならないと考えた。
プロセス統合の方法 我々はBPMのフレームワークとしてSC ORを活用した。
全員がこのフレームワーク を使うことに合意した。
最初の二カ月でモデ ルを作った。
実際に会社がどのようなオペレ ーションをしているのか把握するところから スタートした。
セールス、ビジネス・インフ ラストラクチャーをはじめとした様々な状況 を整理していった。
次に優先順位を明らかに した。
そして結果をきちんと検証していくと いう手順を踏んだ。
HPとコンパックの両社にはカルチャーの 違いの問題があった。
思考の違いの問題もあ HP&コンパック統合のSCM ――SCORを活用したプロセス改革 ジョセフ・D・フランシス サプライチェーン・カウンシル チェアマン 米ヒューレット・パッカード社 Business Process Management Information Technology 83 AUGUST 2003 った。
そして例え同じダイレクト販売でも、両 社のビジネスモデルはプロセスレベルにおい て非常に大きな違いがあった(図1)。
そのた め、「違いを洗い出す」というところから始め なければならなかった。
ヨーロッパでは六チームが二週間、SCO Rを使ってサプライチェーンのアーキテクチ ャーを洗い出す作業を行った。
そして具体的 に、どのサプライチェーンのシステムを残す べきかと検討していった。
合併の場合は、両 社のベストな部分を洗い出すところから始め ることになるわけで、全くのゼロからスター トするということではないというところが重要な鍵を握っていたと思う。
サプライチェーンの能力やトータルコスト など、合併に際しての具体的な問題は以下の 六つの項目に分けた。
「戦略(Strategic Coverage )」、 「プラットフォーム(Platform Coverage )」、「eコマースとのリンク(Link with e-commerce )」、「サプライチェーン能力 ( Supply Chain Capabilities )」、「トータルコ スト(Total Cost of Ownership )」、「移動の 速さ(Migration Agility )」 だ。
これによって詳細に渡っ て指標の判断をすることが できたと考えている(図2)。
サプライチェーン・プロ セスの統合は北米地区から 行った。
そしてヨーロッパ に適用し、最終的に一つの サプライチェーンにするとい う考え方を採用した。
統合 は二年弱で完了した。
私は 今回の合併前までコンパッ クに所属していた。
かつて コンパックがデックを買収 した時には、サプライチェ ーンの統合に三年以上かか った。
これはフレームワーク の違いがどれだけ結果に変 化を与えるかという対照的 な例だと思う。
SCORを利用するメリット なぜ我々がSCMにSCORを使うのか。
その理由を述べたい。
コスト削減、在庫削減、 ビジネス・エンジニアリング・リプロセッシ ングを、SCMの目的としている会社は多い だろう。
しかし当社の狙いは、それだけでは ない。
競争力をつけるためにもSCORを使 っている。
競争力を確保するには、競合相手の状況を プロセスレベルでも十分に把握し理解する必 要がある。
実際、我々は米国市場を念頭に置 いたデル・コンピュータとの競合関係、それ も製品レベルや市場レベル、組織レベルだけ でなく、プロセスレベルでの競争力強化を図った。
そしてプロセス革新のためにプラット フォームを見直したのである。
そんな我々にとって、SCORはビジネス・ プロセスを記述するための枠組みだった。
S CORに基づくBPMのお陰で、我々はビジ ネスを変革するためにコントロールしなけれ ばならない全ての要素を理解することができ た。
すなわちプロセスの統合や簡素化、平板 化などのあらゆる変革や指標の採用が可能に なったのである。
また適正なレベルでプロセスを改革し、革 新性をもたらすことを確実なものするために は、我々の出発点となっているプロセス能力 を、一般的な経営指標につなげていかなけれ ばならない。
すなわち経営資源をどのように 使って顧客に製品を提供するのか、どうやっ EMEA Fusion(HPのモデル) EMEA ESB(コンパックのモデル) Adopt & Go EMEA Fusion platform for ESG and PSG for both Direct and Indirect business models 図2 サプライチェーンの決断 EMEA-Fusion EMEA-ESB Comments / Highlights Strategic Coverage Platform Coverage Link with e-commerce/ CRM SC Capabilities Total Cost of Owner Ship Migration Agility − + + − − + + − + − + − ESB utilizes SAP 4.6c and Siebel 2000 CRM Fusion utilizes SAP 4.5b and Oracle CRM Fusion cover 100% of ESG and PSG EMEA business, ESB cover 5% of PSG EMEA business ESB has a stronger integration to quote / config. layer Fusion has more SC capabilities in Source, Make and Deliver area. ESB SC planning (APO-DP) to be integrated to Fusion Fusion will provide a better TCO through platform sharing between ESG & PSG as well as leverage between Regions. Fusion will provide a quicker and cheaper migration and help accelerate Direct business implementation in EMEA 図1 欧州市場における直接販売のモデル AUGUST 2003 84 てビジネス機会を捉えて利益を上げていくの か。
これを明確にしたうえで、株主価値を最 大化していかなければならない。
株価が貸借 対照表の評価指標、そしてビジネスストラク チャーにどのように関連付けられていくのか 考えていくわけである。
ビジネス・プロセス の枠組みの中でどこに、どこまで変革をもた らすと、望ましい結果がもたらされるのか。
最 終的に株主価値を最大化し、バランスシート を好転させることができるのか。
SCORに よってそれが判断できる。
SCORは八〇年代から九〇年代末までに 実施されたビジネス・プロセス・リエンジニ アリング(BPR)を、非常に強力なメトリ ックス、ベンチマーキングとつなげていく。
様々なパフォーマンスの指標とマネジメント ツールを活用して、その結果を具体的な業務 に落とし込んでいくことを可能にする(図3)。
SCORには組織に対する依存性もない。
したがって、SCORはサプライチェーンを 末端の出発点から最終的な目的地まで全て明 確に記述していくことができる。
ある製紙メ ーカーのスタッフは、原材料の木材から最終 的にテーブルに置かれるナプキンに至るまで、 全てのプロセスを網羅できると話していた。
コ スト、サイクルタイム、在庫レベル、売り上 げ、ありとあらゆるプロセスをカバーすること ができるのだ。
様々な事業分野のプロセス・ストラクチャ ーの責任者が皆、SCOEをベースに適用す ることができた。
同一のフレームワークをベ ースとしているため、ある分野における指標 が別の分野の指標をうまく補完できないという心配がなかった。
SCORで現場と経営層を結ぶ プロセスには複数のレイヤーがある。
例え ばサプライチェーンにおいて、注文管理の担 当者の焦点はオーダーマネジメントプロセス だが、その上司の焦点は納入、物流、あるい はサプライチェーン全体となる。
こうした複 数のレイヤーにもSCORは対応している。
同 一のフレームワークを採用することによって 上級管理職の副社長でさえ、サプライチェー ンのプロセス、あるいはそれにあったメトリッ クスでコミュニケーションすることができる。
そして経営トップに対してはバランスシー トの問題について適切に意見を交換すること ができる。
バランスシート上、何が一番問題 なのか、またどういった事業分野を改善し、革 新すればバランスシートを改善することがで きるのか、それぞれの会社のレベルに合った 形で話をすることができる。
現在、HPでは一年〜三年にわたる中長期 の事業戦略を策定している。
非常に重要なの は、当社のように複数の事業分野で投資をす る場合、プロセス・フレームワークを使うこ とで、投資を行う事業分野に問題はないのか、 あるいはすでに非常に業績がいい事業分野に あまりにも追加投資をしすぎているのではな いかといった問題などに、事業内容に関する 詳細な知識がなくても対応していくことがで きることだ。
会社に充分な能力はあるのか、会社がすで にその分野で業績をあげているのか、またビ ジネス・プロセス、メトリックス、バランス シート、株主価値というレベルで考える際に、 統一されたフレームワークを用いることによ って全てを結びつけて考えていくことができ るわけだ。
HPではこういった関係性を明確にするこ とができたため、経営陣は「確かに言うとお りだ、これは非常にうまくいく」と納得して くれるようになった。
ビジネスにおいてこれは 非常に戦略的なツールであるといえる。
もう一つのSCORのメリットは、プロセ Quantify the operational performance of similar companies and establish internal targets based on “best-in-class”results Characteize the management practices and software solutions that result in“best-inclass” performance Business Process Reengineering Benchmarking Best Practices Analysis Process Reference Model Capture the“as-is”state of a process and derive the desired“to-be”future state Characterize the management practices and software solutions that result in“bestin- class” performance Quantify the operational performance of similar companies and establish internal targets based on “best-inclass” results Capture the“as-is” state of a process and derive the desired“to-be” future state *Supply-Chain Operations Reference-model developed by the Supply-Chain Council 図3 85 AUGUST 2003 をきちんとおさえて、スタンダードをベースに することが非常に重要だ。
ユニバーサルスタ ンダードを使うことで、完全なレベルのビジ ビリティ(可視性)をサポートすることが可 能になる。
会社間で今何が起こっているのか、 きちんと目視できるようになるだろう。
プロセス・フォーカスをきちんと持ってス タンダードをベースにする。
そしてそれをサポ ートするテクノロジーを持つ。
また経営レベ ルが、実際のオペレーションや決定がどのよ うに行われているのかを理解している組織は 成功するだろう。
HP社内における私のチー ムメンバーはプロセス・フレームワークを確 立し、学術的ないい形の仕事をしていると思 っている。
BPMでは何点もの構成要素をつきあわせ、 モデルを構築し、ベンチマークを確立し、い ろいろなものを創り出すことになるが、一番 重要なことを見失ってはいけない。
顧客にフ ォーカスを当てることだ。
ビジネス・プロセスの変革を、顧客にとっ ていい方向に展開していかなければいけない。
企業としてやらなければいけないこと、必然 的なことをやっていかなければいけない。
ビ ジネスを効率的に経営していくことを目的に プロセスを分析し、それを机上の空論で終わ らせてはならない。
ビジネスが生存していく ために革新し、効率性を改善し、企業がより 競争力を身につけて価値を最大化できるよう にしていかなければならない。
それが私たち の究極の目的だ。
スに焦点を当てることによって、誰がどうい った仕事をしているか、誰がどの派閥に属し ているかということを心配せずにビジネスを 考えることができる点だ。
組織の力関係、政 治的な微妙な関係というものを考える必要が ないということだ。
SCORのビジネスモデ ルは時には企業の非効率性を明確にする。
そ れはいいことであり対応していかなければな らないことなのだ。
投資を行う際、我々は数字をもとに考える。
メトリックス、指標を考え、問題のある分野 を明確にし、それをプロセスにつなげ成果を 出そうとする。
ERPのようなシステムをな ぜ導入するのか、ITになぜ投資するのか。
そ れはIT投資が直接結果に結びつくと考え、 また重要な指標だと考えているからだ。
ビジ ネスの評価、そして迅速な実行というものが 重要だ。
私たちは非常に短期間で統合を果たすこと ができた。
それは統一されたフレームワーク を持つことによって内部のシステム知識を充 分活用し、企業にとっての特別な言語、ある いはプロセスマネジメントの概念を明確にす ることができたためだ。
HPとコンパックのサプライチェーンの統 合に際し、我々は六〇〇億ドルの収入の流れ をモデリングするために、一〇人から十二人 のスタッフを投入して四週間を費やした。
コ ンパック出身者がHPについて充分理解でき ていなくてもモデルを構築し、HPとコンパ ックの違いを洗い出し分析することができた。
これは大手のコンサルティング会社が一年以 上かけてもできないことだと思う。
事業の変 革を短時間で行うことは費用対効果を高め、 コストを削減することにつながる。
今や多くの会社にプロセス管理チームが導 入されていて、どのようなプロセスが改善さ れるべきか真剣に検討していることと思う。
使 うべきツールは何なのか検討されていると思 うが、この点に関してはSCORを使うべき だと私は考えている。
ゼロからサプライチェ ーンを構築するというのなら構わないが、既 にあるものの中から最高の能力を抽出するほ うが賢明だと思うからだ。
企業特有のツールを使うケースもあるが、そ のような場合はだいたいにおいて失敗する傾 向にある。
結局、うまく普及しない。
この点 Supply Chain Delivery Performance Perfect Order Fulfillment Fill Rate Fulfillment Lead Time Response time Production Flexibility Total Supply Chain Management Cost Cost of Goods Sold Value-Added Productivity Cash-to-Cash Cycle Time Inventory Days of Supply Asset Turns Domain Performance Attribute Metric Reliability Responsiveness Flexibility Cost Asset Management 図4 サプライチェーンの評価指標 AUGUST 2003 86 3PLパートナーの選択 ――統合に際して、物流のアセットや3PLパ ートナーはどのように見直したのか?. 「3PLの見直しは、時間が限られていたの で非常に難しかった。
まず我々は両社間のビジ ネス・プロセスのメトリックスを作った。
そし て全てのアセットをそのプロセスにはめ込んで いった。
仮に、その時点で両社が計七つのロジ スティクス・プロバイダーと契約を結んでいた とする。
それぞれのプロバイダーの業務内容、 業務プロセスは全て異なっていた。
したがって、 その中から単純に数社を選択することは非常に 危険だと判断した。
選択したプロバイダーが、 当社の必要とする多くのプロセスを提供できな い可能性があるためだ」 「当社の全てのプロセスをカバーするには、い ったい何社の3PLと契約する必要があるのか。
それを注意深く考える必要があった。
特別なプ ロセスを提供する3PLが一社に限られる場 合、その3PLは我々にとってどうしても必要 な存在になる。
同じプロセスを提供する3PL が数社ある場合は、どこがコスト的に見て最善 か選択する必要が出てくる。
また、こうした選 択を行った結果、異なるプロセスを提供する五 社が残ったとする。
そのうちの二社に追加的な サービスの提供を申込み、残りの三社との取引 を止めるという選択もあり得る」 ――実際に、それまで契約を結んでいたロジス ティクス・プロバイダーは何社あったのか? 「非常に多くとしか言えない。
我々のロジステ ィクス部門は『ワン・フット・プリント』と呼 ばれる、ロジスティクス業務を遂行するための プロセス戦略を作った。
合併前のHPとコンパ ックのロジスティクスは非常に異なっていた。
そのため、コスト的に安いからといって例えば コンパックのロジスティクスを全面的に採用し ようということは不可能だった。
そこでプロセ スをセットにまとめ、(セットごとに)数多くの ロジスティクス・プロバイダーに提案した」 ――コンペティションなども行った? 「合併が完了する前はHPとコンパックがそれ ぞれ独自で運営しなければならないため、共同 でコンペを行うことはできなかった。
合併後に 即座にコンペを行った。
同じサービスを提供し ている二社に対して、『我々はより良い価格を 提供する方と取引をする。
さらに加えて、契約 を継続すると決定した会社には取引高が二倍に なる事を考慮して三〇%の値引きを要求する』 と伝えた。
我々は通常契約に関して再交渉する 場合『ベスト・コストを選択し、その会社には 二倍の取引を依頼する』と伝える。
もちろんサ ービスの質や我々のシステムへの統合などが必 要なことは言うに及ばない」 物流拠点の統廃合 ――アセットに関しては。
「まず、モデリングを行い、両社のサプライチ ェーン組織とプロセスについて検証した。
売り 払ったアセットももちろんある。
あるサプライ チェーン・プロセスがあり、その中に複数のウ エアハウスがある場合、どちらがより良いコス ト・パフォーマンスを提供できるのかが判断の 決め手になる」 「合併前のHPとコンパックは同じ製品ベー スに対して同地区に二つのウエアハウスがあっ た。
例えば、一つはルーズフェルドでもう一つ はヒューストン。
プロセスに関してはHPのプロセスを採用すると決まっていたが、どちらの ウエアハウスを取るかはプロセスとは関係がな い。
同じプロセスでウエアハウスだけを変更す ることも簡単だ」 「このケースでは、ヒューストンにウエアハウス を持っていた方が、人件費や税率など、コスト 的に見て得策だった。
もちろん、こうした問題 は非常にセンシティブであるため、我々は計画 段階で『このプロセスを採用するため、このウ エアハウスは何月何日に閉鎖する』と公式にア ナウンスした。
また同時に六カ月後には製造な ど全てのシステムがヒューストンへ移行する旨 を伝えた」 ――どれくらいのアセットを処分した? 「はっきりとした数字は分からないが、約八〇 「合併に伴うロジスティクスの統合」 SCCチェアマン ジョセフ・D・フランシス氏 独占インタビュー 87 AUGUST 2003 のウエアハウスのうち五〇〜六〇を残した。
同 じ地域に同じファンクションを持った二つのウ エアハウスがあって、そのうちの一つを閉鎖す るという決断はとても簡単だ。
コストが選択の 決め手となる。
難しいのはサプライチェーン自 体がなくなったためにウエアハウスを閉鎖する ことだ。
つまり二つの完全に異なったサプライ チェーンを併せた場合だ」 ――日本市場においても同様のアプローチをと ったのか? 「日本市場は他市場とは違った。
まず、HP の日本市場における存在感は、キヤノン販売と の特別な関係によって、コンパックのそれとは 比較にならないほど大きかった。
結果的に全て のHPのストラクチャーがコンパックに適用さ れた。
これは、ただ単にHPの吸引力が大きか ったためだ」 「日本市場では(SCORの)『レベル1』と呼 ばれるモデリングも必要なかった。
『レベル1』 ではビジネス・エリア、コスト、マーケット・ ボリュームなどにおいてモニタリングされるが、 日本市場におけるHPの存在感が非常に大きか ったため、この時点で我々は決断を下すことが できた」「通常は『レベル1』のモデリングを行い、そ こで両社に大差がなければ、『レベル2』でより 詳細な情報を集め、検討し、それでも差が出な い場合は『レベル3』、『レベル4』と進まなけ ればならない。
実際、ヨーロッパ市場はそうし たケースだった。
両社はヨーロッパにおいて酷 似したシステム、ビジネス・エリア、ビジネ ス・ボリューム、また能力などをもっており、 『レベル3』、『レベル4』まで進んでやっと両社 の違いが浮き彫りになった。
もちろん、『レベル 1』で決定した項目も多々あったが、あまりに 似通っていたため決断は難しく、より詳細な情 報が必要だった」 SCORの活用法 ――HPとコンパックの担当者では、SCOR やプロセス改革に対する理解度に差があったの では。
「難しい質問だ。
コンパックのカンパニーは一 つだったがHPには七七のカンパニーがあった。
コンパックはそれまでに何年にもわたり統合を 繰り返していた。
かたやHPは、ビジネスの一 部がある一定のサイズに達したらその部分を切 り離すという経験をしていた。
七七もの違うカ ンパニーとコンパック、併せて七八のカンパニ ーのメンタリティーを移行するのはとても大変 だった。
しかし企業自体の文化を替える必要は なかった」 「結局、良いツールとメソッドを持っているグ ループは生き残った。
そうしたグループは自然と 拡大していった。
我々はSCORへのアクセス を提供しただけで、それぞれのグループが独自の 方法でSCORを使ったまでだ。
中心的なグル ープがあってそこがSCORを動かしていたわ けではない。
SCORを正しく使う唯一の方法 などない。
SCORには幾通りもの正しい使い 方がある。
私はプラットフォームと呼んでいるが、 使い方が多種多様なeメールと同様で、SCO Rはどのようなビジネスの問題をも解決できる 素晴らしいプラットフォームだと認識している」 ――今年の二月から、SCCの会長を務めてい るが、それがあなたのキャリアにとってどういう 意味を持つと考えているか? 「会長という立場は私の目を開かせてくれる。
会長としての役目は、SCORをより効率的に 使う手助けをすることだ。
また、SCORを多 くのビジネスにより一層、近づけることに非常 に興味を持っている。
従って、SCCジャパン のような地域ごとのグループがSCORを使う ことに対してイニシアチブを取って、その地域 のビジネスの発展に貢献することに興味がある。
アメリカのセントラル・グループから他地域に 命令するという形態は必要ない」 「私はSCCの会長として、ビジネス・プロセ スの向上に問題を抱える企業に解決策を提示す る機会に恵まれている。
また、いろいろな情報 を開示し、協働することも可能だ。
とても興味 深いことだと思っている」
