2005年4月号
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WU・YUE 北京物資学院 物流学部学部長
1 APRIL 2005KEYPERSON自家物流は今後も続く これまで販売代理店任せにしてきた中国の国内市場に 日本のメ カ が直接アクセスし始めました 日本企業はまず 中国の物流市場が二重構造にな ていることを認識しなければなりません これには中国の産業構造が密接に関係しています 二〇〇三年の中国の輸出入額は約八〇〇〇億米ドルでした これが二〇〇四年には一兆二〇〇〇億ドルに拡大しました しかし その半分以上は外資系メ カ が製品や素材を中国に輸入し それを再加工して輸出したものです つまり輸出入の外資系企業の内部で循環しているに過ぎません そして 外資系荷主企業の物流はイヤ 側がやる場合が五三%で メ カ 自身がやるのが二五% 物流企業への委託率は二二%に過ぎません 一方の完成品の販売物流もメ カ の自家物流が三九% 部分的に物流会社を使 ているケ スが四四% 純粋な物流会社への委託はわずか一七%です しかし それも近く変わ ていくのでは そうとは言い切れません こうした傾向は今後も当分は続く見通しです 現代中国物流発展報告 のアンケ ト結果によると 物流業務をアウトソ シングしようと考えているメ カ は現在も四〇%程度に過ぎず 残りの約六〇%は今後もアウトソ シングするつもりはないと答えています むしろ海爾集団 ハイア ル や聯想集団 Lenovo 美的 Media など大手メ カ には物流子会社を設立し3PL事業に進出しようとする動きが目立 ています 中国市場の 水屋 たち 中国の国内物流市場の構造は我々には は きりとつかめません それは国内の流通構造自体が不透明だからでし う 中国では流通もまた二重のネ トワ クにな ています これは中国人なら誰でも知 ていることですが 中国には商品別の卸売市場が各地にあります 例えば江 せ こう 省には雑貨品の有名な卸売市場があり そこには全国の小売り業者や卸業者が買い付けに来る 日本の生鮮品の卸売市場のようなものですね そうです そうした市場が生鮮品だけでなく 建築材料や服飾 雑貨品とい た商品別に 各地に自然発生的にできているのです 通常は朝六時から始ま て卸売りは午前中 午後からは一般客が来て小売りもします 基本的に現金販売で 商物一体 なので 朝八時ともなると納品や買い付けに来たトラ クで周囲の道路は大変な混雑です トラ クに帰り荷を斡旋する運送仲介業者 日本でい中国でも外資系の物流企業が担 ています それに対して国内メ カ と国内物流企業は全く別のネ トワ ク 全く別の物流市場を作 ています 同じ国内に二つのネ トワ クがあるわけです その国内メ カ にしても 物流を自社でや ているところがいまだに多いようです その通りです 一つは計画経済時代の生産方式の影響です 中国語では 大而全 小而全 と言います 規模が大きくても 小さくても全面的に活動する という意味です つまりメ カ は生産だけでなく 調達から販売まで全て自分でやる 物流も例外ではありません 中国の保管・倉庫協会の調べによると メ カ の調達物流はサプラ躍 北京物資学院 物流学部学部長THEME 国内市場の二重構造を見極めろ 中国市場は外資系企業と国内企業がそれぞれ別の流通ネ トワ クを形成する二重構造にな ている 流通経路から物流企業の顔ぶれ 商慣習に至るまで 二つのネ トワ クは全く異なる特性を持つ 複雑で不透明な国内の中間流通は 参入を図る外資系企業にと て大きな壁になる 聞き手・大矢昌浩 APRIL 2005 2う 水屋 もいて 物流面でも一つの市場を形成しています ただし こうした市場には外資系メ カ の商品は全くない 国内メ カ でもナシ ナルブランドの商品は少ない 外資メ カ の商品はそうした市場を経由せずに 香港系の販売代理店や中国本土の輸入貿易代理店が流通を担 てきました 国内のナシ ナルブランドもメ カ が直接流通を手掛けている つまり流通も二重のネ トワ クにな ている それが物流市場の二重構造とも密接に関係しているのです 二つの物流市場がいずれ一つに統合される可能性はありませんか あります しかし それは中国にと ては残念なことなのですが 中国の物流企業が外資系荷主を取り込むのではなく 外資系物流企業が国内の荷主企業をと ていく形になる可能性が大きい 実際 フ デ クスやUPS DHLなどの国際インテグレ タ は今 盛んに現地物流企業に買収攻勢をかけています 彼らは現地企業が持 ている国内荷主の仕事が欲しいわけです そうや て上のネ トワ クから下へは行くけれども 下から上にはなかなか行かない それでも国内資本の有力な民間物流企業は倍々ゲ ムで売上規模を伸ばしています それは経済自体が伸びているからです 物流サ ビスの実力があるから伸びているとは言えません また彼らが公表しているほど 実際に売上げが伸びているのか 本当のところは分かりません 外資系物流企業が買収攻勢をかけているにも関わらず そうした民間企業の買収がなかなか実現しないのは 数字の実態をオ プンにできないからなのかも知れません 結局 こうした二重のネ トワ ク構造が解消されていくのは 恐らく二〇〇八年の北京オリンピ クや二〇一〇年の上海万博が終わ てからになると見ています 国内民間物流企業の現状 外資系メ カ が現地企業を使うケ スも増えていますが 確かに例えば宝供物流は 韓国のLGグル プの物流を担 ている しかし彼らが委託を受けているのは幹線輸送だけ 倉庫も貸しているが 運営はLGのスタ フが直接コントロ ルしている つまり宝供が付加価値のあるサ ビスを提供できているわけではありません そのため外資系荷主向けのビジネスは 国内の物流企業にと て売り上げにはな ても利益にはあまりな ていない 他にも宅急送や宝供物流 遠成集団など 民間企業の物流専業者で元気な会社がいくつかあります 宅急送の場合は末端の集配に強みがあるものの幹線輸送が弱い そのため大手メ カ に対する3PLとしては難しい 逆に宝供は幹線や倉庫が強いので大手メ カ を主要顧客にしていますが 小口輸送や集配は得意ではありません ただし いずれも通運事業は好調です 現在 運送事業のなかでは通運事業が最も利益率が高い 同じように遠成集団も通運事業を強みにしています 達成は資金力もあるので 末端の集配だけでなく鉄道輸送の専用貨物列車を全国に張り巡らしている しかし中国の鉄道輸送は国策物資が優先されるため 民間物資はいつ到着するのか分からない 使い勝手が悪いという話を聞きます 確かにかつてはそうでした 中国では旅行客の手荷物を輸送するための列車が旅客列車に繋がれていて 以前はそれを民間物資の輸送に使 ていました これは確かに遅れました しかし 五定列車 発着駅 路線 運行番号 時間 運賃が固定している貨物専用列車 や 現在の民間企業による専用貨物列車はそれほど遅れません トラ クと比較すれば多少料金は高いものの ドア・ツ ・ドアのリ ドタイムは短い 実際 需要は旺盛で 供給が足りない状態です ある調査によると鉄道貨物輸送の需要に対して現在は六〇%しか運べていない そのためトラ クや他の輸送モ ドを使うしかないという状態です そのトラ ク運賃も高騰しているとか その通りです この三月に行われ●中国の商品取引市場の仕組み(数字は2002年度) 資料:中国市場統計年鑑 商品取引市場 消費財取引市場 生産財取引市場 消費品小売市場 消費品卸売市場 工業製品卸売市場 農産物卸売市場 総合卸売市場 34772億元 8796。
3億元 25975。
3億元 15592。
2億元 10383。
5億元 KEYPERSON3 APRIL 2005た全国人民大会でも エネルギ 不足 物価の高騰と並んでトラ ク運賃の高騰が問題視されたくらいです 昨年の中国の対GDP物流コストは二一・四%で欧米先進国の二倍だという調査結果も出ています それについては多少 異論があります もちろん中国の物流効率が欧米と比較して良くないのは事実ですが 二倍もの開きがあるとは思わない それよりも欧米先進国の輸送貨物が軽薄短小化しているのに対し 中国で輸送されているのは圧倒的に素材です 物流コストが高くなるのも当然でし う 欧米とは単純に比較はできない メ カ は儲からない 流通ネ トワ クの方の統合は? それもしばらくは無理です WHO加盟によ て規制緩和による外資への開放が進んでいるようでも この中間流通だけはまだまだ規制に縛られている 例えばカルフ ルやウ ルマ トは中国で小売業を行うだけでなく 本当は卸売をしたいと考えている 欧米の商品を輸入して中国の小売業者に卸販売するわけです 実際 彼らは他の市場ではそうしたビジネスを手掛けている しかし中国では今のところ全く卸売市場には参入できないでいる 物流分野と比べて中間流通の規制は格段に厳しい これは単に外資に対してだけでなく 国内企業でも同様です そのため中間流通の分野には大手企業がなかなか登場しない 流通の実態が不透明で分かりにくくな ているのです それだけに 中間流通には効率化の余地も大きいのでは? その通りです だから現在 中国の大手メ カ は自社資本で物流を含めた流通事業の開拓に躍起にな ているのです 中国企業の物流アウトソ シングの比率が低いのは 伝統的に自社物流でや てきたという理由だけではありません 生産するだけでは儲からないことも大きな要因にな ている 今 中国国内で儲か ているのはメ カ ではなく小売業者です しかし中国の産業界では 小売りよりも大手メ カ が依然として力を持 ているように見えます 違います 例えば家電市場では現在 大中 国美 蘇寧の三つの量販店が圧倒的な力を持 ています 実際 国美のオ ナ は去年 国内の長者番付で一番になりました これまではメ カ や金融 不動産などのオ ナ 経営者がト プに名を連ねていたのが昨年 変わりました 象徴的な出来事だと思います 中国の小売りが伸びてきたのは最近の話なのですか ここ一〇年から一五年の話です 急激に力を付けている そのためメ カ も川下に降りてきているのです かつて日本で松下電器産業がナシ ナルシ プを全国展開したように ハイア ルや美的とい た大手メ カ は自分の販売網を作ることに懸命にな ています 中間流通で儲けたいと考えている そのために物流もアウトソ シングしないわけです も とも 大手メ カ が物流をアウトソ シングしないのは全国規模の物流企業が存在しないということもあります 地方別に物流企業を使い分ければ コントロ ルが難しい上に規模のメリ トが活かせないのでコストも下がらない それに対して自前で物流ネ トワ クを持てば 自社の物流だけでなく3PLとして他社の物流も取り込み事業化できる 大手メ カ は皆 そう考えています こうした物流子会社のなかから 中国資本の本格的な3PLが生まれる可能性はあります 今のところ中国メ カ の物流子会社が 親会社以外向けの3PL事業で伸びているという話はあまり聞きません それでも近い将来 必ずそうした会社が出てきます 大手メ カ の物流子会社は今後 中国の物流市場でメ ンプレ ヤ の一角を占めるようになるでし う 躍(WU・YUE)1957年、北京生まれ。
首都経済貿易大学卒。
日本流通経済大学博士課程修了。
96年、北京物資学院管理学部部長。
2000年、同大物流学部部長、現在に至る。
2003年11月〜2004年5月までアジア経済研究所海外客員研究員として日中の物流業の比較研究を行う。
主な著書・論文に「中国企業物流管理及び実務」(中国社会出版社)、「わが国の物流業の現状および展望」(新華文摘)などがある。
3億元 25975。
3億元 15592。
2億元 10383。
5億元 KEYPERSON3 APRIL 2005た全国人民大会でも エネルギ 不足 物価の高騰と並んでトラ ク運賃の高騰が問題視されたくらいです 昨年の中国の対GDP物流コストは二一・四%で欧米先進国の二倍だという調査結果も出ています それについては多少 異論があります もちろん中国の物流効率が欧米と比較して良くないのは事実ですが 二倍もの開きがあるとは思わない それよりも欧米先進国の輸送貨物が軽薄短小化しているのに対し 中国で輸送されているのは圧倒的に素材です 物流コストが高くなるのも当然でし う 欧米とは単純に比較はできない メ カ は儲からない 流通ネ トワ クの方の統合は? それもしばらくは無理です WHO加盟によ て規制緩和による外資への開放が進んでいるようでも この中間流通だけはまだまだ規制に縛られている 例えばカルフ ルやウ ルマ トは中国で小売業を行うだけでなく 本当は卸売をしたいと考えている 欧米の商品を輸入して中国の小売業者に卸販売するわけです 実際 彼らは他の市場ではそうしたビジネスを手掛けている しかし中国では今のところ全く卸売市場には参入できないでいる 物流分野と比べて中間流通の規制は格段に厳しい これは単に外資に対してだけでなく 国内企業でも同様です そのため中間流通の分野には大手企業がなかなか登場しない 流通の実態が不透明で分かりにくくな ているのです それだけに 中間流通には効率化の余地も大きいのでは? その通りです だから現在 中国の大手メ カ は自社資本で物流を含めた流通事業の開拓に躍起にな ているのです 中国企業の物流アウトソ シングの比率が低いのは 伝統的に自社物流でや てきたという理由だけではありません 生産するだけでは儲からないことも大きな要因にな ている 今 中国国内で儲か ているのはメ カ ではなく小売業者です しかし中国の産業界では 小売りよりも大手メ カ が依然として力を持 ているように見えます 違います 例えば家電市場では現在 大中 国美 蘇寧の三つの量販店が圧倒的な力を持 ています 実際 国美のオ ナ は去年 国内の長者番付で一番になりました これまではメ カ や金融 不動産などのオ ナ 経営者がト プに名を連ねていたのが昨年 変わりました 象徴的な出来事だと思います 中国の小売りが伸びてきたのは最近の話なのですか ここ一〇年から一五年の話です 急激に力を付けている そのためメ カ も川下に降りてきているのです かつて日本で松下電器産業がナシ ナルシ プを全国展開したように ハイア ルや美的とい た大手メ カ は自分の販売網を作ることに懸命にな ています 中間流通で儲けたいと考えている そのために物流もアウトソ シングしないわけです も とも 大手メ カ が物流をアウトソ シングしないのは全国規模の物流企業が存在しないということもあります 地方別に物流企業を使い分ければ コントロ ルが難しい上に規模のメリ トが活かせないのでコストも下がらない それに対して自前で物流ネ トワ クを持てば 自社の物流だけでなく3PLとして他社の物流も取り込み事業化できる 大手メ カ は皆 そう考えています こうした物流子会社のなかから 中国資本の本格的な3PLが生まれる可能性はあります 今のところ中国メ カ の物流子会社が 親会社以外向けの3PL事業で伸びているという話はあまり聞きません それでも近い将来 必ずそうした会社が出てきます 大手メ カ の物流子会社は今後 中国の物流市場でメ ンプレ ヤ の一角を占めるようになるでし う 躍(WU・YUE)1957年、北京生まれ。
首都経済貿易大学卒。
日本流通経済大学博士課程修了。
96年、北京物資学院管理学部部長。
2000年、同大物流学部部長、現在に至る。
2003年11月〜2004年5月までアジア経済研究所海外客員研究員として日中の物流業の比較研究を行う。
主な著書・論文に「中国企業物流管理及び実務」(中国社会出版社)、「わが国の物流業の現状および展望」(新華文摘)などがある。
