ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2003年8号
特集
ICタグ狂想曲 技術屋は実務を分かっていない

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

AUGUST 2003 18 米軍の在庫二兆円削減計画 ――米国でトレーサビリティの必要性が叫ばれるよう になったきっかけは。
「遡れば九一年のソビエト連邦崩壊に端を発してい ます。
冷戦の終結で米国では防衛費の削減が大きなテ ーマとなった。
これを受けて、米国防総省は防衛費削 減の手段の一つとしてロジスティクスの近代化を選び ました。
米軍が全世界に抱えている在庫、戦車から兵 士が使用するシャンプーまでを指しますが、それを大 幅に削減してコストダウンを図ろうとしたのです。
具 体的には九七年当時、米軍が全世界で抱えていた三 六日分の在庫を、二〇〇五年までに五日分にして、コ ストを約二兆円削減するという目標を掲げました」 「在庫削減に向けてまず米国防総省は一〇〇〇億円を 投じて新たに受発注システムを構築しました。
欧州や アジアに駐留する米軍がおのおの必要な商品を現地で 調達するのではなく、本部が一括で発注する世界調達 を展開するためです。
国防総省は全世界の在庫を本 部が管理する体制に改めることで、軍の在庫を圧縮し ようと考えたわけです。
その際、国防総省は受発注の やり取りで使用するデータの標準化と並行して、各商 品ベンダー、そして各商品に対してユニークナンバー を割り振っていきました。
どの商品がどこで在庫され ているのかをきちんとトレース(追跡)するためです。
それがトレーサビリティの始まりでした」 ――国防総省が採用したデータの規格は。
「国防総省の独自のデータ規格を強要すれば、当然 ベンダー側からは反発が起こる。
それを避けるため、 国防総省はISO(国際標準化機構)のデータフォ ーマットを採用しました。
国際標準に則ったうえでの データフォーマットの見直しを求められれば、ベンダ 「技術屋は実務を分かっていない」 現在、ICタグを普及させようとしている勢力の中心には、 ICカードメーカーがいる。
彼らにはユーザー側の視点が欠 けている。
ロジスティクスの実務とその要求を十分に理解 しているとは言い難い。
柴田彰 日本自動認識システム協会 研究開発センター上級研究員 ーはそれに対応せざるを得なくなるからです」 「現在は国際協定に則った技術を使用しないと国際 協定違反だと各国から非難される時代です。
JRの ICカード『スイカ』を巡っても一悶着ありました。
スイカを開発したソニーは独自の技術を用いた。
これ に対して、米国の総務省が『鉄道のような公共性の高 い分野においてISOで認定されていない技術を使う のはけしからん』と日本の経済産業省に噛みついてき た。
ソニーは慌ててISOに技術を申請しました」 ――ユニークナンバーを割り振って個体管理を実現す れば、テロ対策にもつながります。
「今、米国は日本をはじめ各国に対してコンテナ貨 物の内容明細を船舶が米国に到着する二四時間前に 提出することを義務づけています。
コンテナの中身が 何であるかを特定するためです。
その際、コンテナに それぞれユニークな番号をつけさせている。
そうする ことで、どの企業がどこで生産した商品なのか。
誰が 最後にコンテナを開いて通関チェックを行ったのかを 細かく管理しています。
怪しい貨物があれば、ブラッ クリストと照合してチェックする。
そうやってテロを 未然に防ごうとしています」 「米国の税関では米国に入ってくるコンテナ全体の 二%程度しか中身をチェックできていないと言われて います。
恐らく日本もその程度でしょう。
通関業者は 通関がスムースに行われるよう商品の名前を変えて申 請しているケースもあります。
その国に何が入ってき ているのかきちんと把握できていないのが現状です」 ――米国政府はそのツールとしてRFIDを活用して いこうと考えているわけですか。
「データキャリアは一次元バーコードだろうが、二 次元バーコードだろうが何でもいいんです。
ただし、 既存の一次元バーコードだと使用できる桁数が限られ 19 AUGUST 2003 てしまう。
細かい情報を載せていくのであれば、たく さんの情報を盛り込める二次元バーコードやRFID ほうが便利だね、という話になっているだけです」 「トレーサビリティを実行するには最初に各種デー タキャリアへのデータ格納構造の標準化を進める必要 があります。
つまりどういうデータをどういう順番で 載せていくか、そのルールづくりが欠かせません。
し かし実際にはこれが各国それぞれに思惑があって前に 進んでいない。
ルールが決まっていないのに、データ キャリアをどうするかという議論に入ってもまったく 意味がありません」 ――ルールは決まりそうなのですか。
「トレーサビリティに必要なユニーク番号をどうい うルールで割り振っていけばいいか。
私は最近、IS Oに対して国際提案しました。
発番機関コード+企業 コード+企業品番+シリアルナンバーという形です。
頭 に発番機関コードをつけてその団体を認定する。
現在 は団体ごとに番号にダブりがあるわけだから、団体を 識別さえすればユニークな番号として使えるだろうと いう発想です。
提案はリーズナブルだと評価されてい ますが、採用されるかどうかは分かりません」 RFIDは目では読めない ――RFIDはSCMを飛躍的に向上させるバラ色の 技術だと喧伝されています。
「そうした認識は誤りです。
RFIDは目で読めな い。
それが最大の弱点です。
RFIDの読み取り機を 持っていない小さな商店はどうやって価格や賞味期限 などの情報を把握すればいいのですか? 結局、目視 できる情報、つまりバーコードを併用せざるを得ない。
数百円もするチップを埋め込んだうえにパッケージに バーコードを印刷するのではコスト的にも合いません」 ――RFIDには技術的な課題もまだまだ多い。
「現在、チップが壊れる可能性は千個に一個と言わ れています。
しかし、その程度のレベルではユーザー は満足しないでしょう。
仮にチップが壊れたとしても、 後工程でそれをリカバリーできるのであればいい。
例 えば、データベースサーバーに情報が残してあって、 それを引っ張ってくるとか。
ただし、そうした作業は ユーザーにとって手間以外の何物でもない」 「そもそもRFIDをつくっているメーカーにはユ ーザー側の視点が欠けている。
ユーザーからのアプリ ケーション要求をベースに、タグの構造を決めている わけではない。
ユーザーがロジスティクスに対してど ういうニーズも持っているかを掴んでいない。
RFI Dのメーカーにはバーコードの経験がない。
ICカー ドの世界からこの分野に入ったため、使い勝手の悪い タグが出来上がってしまう。
これに対して、バーコー ドはユーザー側からの要求が加味されて作られたデー タキャリアだった。
だからここまで普及したわけです」――はじめにツールありきでは普及しない? 「RFIDのメーカーにはサプライチェーン・マネ ジメントの発想が足りませんね。
サプライチェーンの 効率化に情報技術を活用していきましょう。
しかし既 存のバーコードでは情報の容量が足りませんね。
だか らこの部分はタグで置き換えていきましょう、という 手順であれば、普及もスムースに進んでいく。
しかし 今はそういう議論になっていない。
タグを与えて、さ あ使ってくださいという格好になっている」 ――バーコードをすべてRFIDに置き換えていくの は非現実的なようですね。
「少なくとも時間は掛かるでしょうね。
コスト、技 術、そして導入の進め方の全てに課題が残されていま す」 特集 ICタグ狂想曲 医 療 商品トレーサビリティの業界別目的 リサイクル法 リサイクル法の向上 環境影響物質の管理 リサイクル法 リサイクル法の向上 環境影響物質の管理 食品の安全保障 O-157問題 狂牛病問題 原産地証明 医療システムの安全性保障 患者の間違い 薬の間違い 投薬量の間違い ロジスティクスシステムの高度化 輸送品質の保障 リアルタイム集配システムの実現 自動車 家 電 食 品 運 輸

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