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2005年4月号
ケース

東京システム運輸――物流拠点

53 APRIL 2005き かけはバブル期の需要急増東京システム運輸は 首都圏を中心に倉庫業や小売業向け配送センタ の運営 運送事業などを展開する中堅物流会社だ 直近の年商は約一〇〇億円 内訳は 主力の倉庫事業が六八%を占め 運送事業が三〇% 他に不動産事業や人材派遣事業などが二%ある 都心からほぼ半径五〇キロ圏内に四五カ所の拠点を展開している 延べ床面積の合計は約二六万平方メ トル 協力会社を含めて三七〇台の車両を運行しており 全体の三分の一近い車両をクロスド キング方式の配送車として使 ているところに同社のビジネスの特徴がある 大型車で幹線輸送された貨物を自社の拠点で受け 小型車に積み替えて配送するという いわゆるクロスド ク配送に同社が初めて乗り出した時期は 八〇年代後半までさかのぼる き かけは ある住宅設備機器メ カ の物流再構築に携わ たことだ た 八〇年代後半の日本はバブル景気に沸きかえ ており 建設業界はオフ スビルやマンシ ンの建設ラ シ が続いていた なかでも首都圏では 東京都の新庁舎を始め 地下鉄など公共施設の大型プロジ クトが目白押し 物流現場ではどこも あふれる物量を前に連日悲鳴を上げていた 重量物を扱う住設メ カ の場合も 事情は深刻だ た 当時 この住設メ カ では 愛知県内の中堅物流企業が挑む提案型営業既存業務と融合し効率化めざす中継拠点で大型車から小型車に積み替えてリレー配送する、いわゆるクロスドック方式によって中ロット貨物の市場開拓に成功した。
昨年秋には同事業向けの専用拠点も稼働。
夜間はクロスドック業務を行い、日中は一時在庫を伴う配送などを手掛けることで24時間稼動をめざし、一層の効率化を図ろうとしている。
東京システム運輸――物流拠点 APRIL 2005 54物流センタ から全国の施工現場へ 主に路線便 特別積み合わせ便 で商品を直送していた だが 輸送需要の急増から輸送力が不足して積み残しや遅延などが起こり 配送先から頻繁にクレ ムがくるようにな た とりわけ首都圏の状況が悪化していた 施工現場への納品は 工期に合わせて指定された日時に行わなければならない また 現場によ ては荷受け窓口が数カ所に分かれているケ スもある ところが当時の路線便では こうした対応がほとんどできなか たのだ 本来なら 遠隔地への輸送は大型のチ タ 便で運ぶ方がコストを安くできる だが 代理店などへまとめて納品するのとは異なり 施工現場では付近に車両を駐車して荷降ろしする充分なスペ スがなく 立地によ ては車両が道路に進入できないところも少なくない 大型チ タ 便での配送は事実上 不可能だ た そこで この住設メ カ は 広域輸送ネ トワ クの再構築に乗り出した 幹線部分を大型車で輸送し 消費地で二トンクラスの小型車に積み替えてリレ 配送しようという構想だ た これによ てコストを抑制でき 施工現場への対応もスム ズにいくと考えたのである 路線業者には幹線輸送だけを任せ 消費地での中継配送は地場の運送業者に委ねることにして 各地でパ トナ 探しを進めた 当時の多摩地区は 首都圏の中でも都心に次いで物量の多いエリアだ た 同エリアに細かな配送網を持つ東京システム運輸はこのとき 愛知県の路線業者から住設メ カ の構想に関連する提携話を持ちかけられた 東京システム運輸は当初 この申し出をい たん断 た 住設メ カ が 新しいネ トワ クの輸送コストを従来の路線便並みに抑えることを前提にしており 提示されたのも路線タリフをベ スにした運賃でキロ当たりの単価が安か たためだ とても採算がと取れそうになか た 折りしもバブル景気の真 只中で仕事はほかにいくらでもあ た 五〇〇kg以上なら事業化できる だが この住設メ カ の物流担当マネジ の熱意もあり 改めて重量帯や配送件数 車両の回転数などを想定してシミ レ シ ンしてみた その結果 たしかにキロ当たり単価は安いものの 一カ所に配送する貨物の重量が五〇〇キロ以上を超えるという条件ならば 理論的には事業として成り立つことがわか た と交渉にあた た東京システム運輸の江島裕営業開発部長は振り返る これを条件に 同社は中継配送を引き受けることにした 一届先あたりの貨物が五〇〇キロ以上ということは 二トン車一台で回る配送先は三カ所程度 積み替え基地から配送先まで一時間で到着できる二〇キロメ トル圏内の距離なら 積み込み・積み降ろし時間を入れても四時間で一回転できる 一日八時間運行で二回転すれば採算を取ることは可能と見たのだ 一度は断 た中継配送を引き受けた理由は もう一つあ た 東京システム運輸はかねがね リスクの高い中長距離輸送から手を引きたいと考えていた 当時は動態管理システムなどもなく ひとたび車両が営業所を出発してしまうと状況をま たく把握することができず これが経営上の問題にな ていた なるべく自社便は近距離配送にだけ使いたいという思いが根本にあり その点では住設メ カ のリレ 配送は渡りに舟だ た 東京都下の武蔵村山市に開設した拠点で この新規事業をスタ トした 八八年の夏のことだ 愛知県にある住設メ カ の物流センタ から 夜間に大型車で貨物が届く これを拠点で仕分け 翌朝に二トン車で建設施工現場へリレ 配送する この業務のために 従来は午前八時から休憩を挟んで午後五時までだ たドライバ の勤務時間帯を 午前三時から正午までにシフト 既存業務のない時間帯を活用して対応するようにした 東京システム運輸の江島裕営業開発部長 55 APRIL 2005六〇社をピ クア プこの住設メ カ のリレ 配送を立ち上げるにあたり 東京システム運輸では配送条件が似通 ている他の住宅関連メ カ に対する積極的な営業活動に打 て出た 一つには 荷主一社では物量の変動を吸収しにくいという問題があ たからだが 同じような悩みを抱えるメ カ にこの仕組みを提案すれば新規顧客の開拓につながるという狙いもあ た この仕組みを売り込むために 出荷拠点が東京システム運輸の中継基地から三〇〇キロ以上離れていて 五〇〇キログラムから二トンまでの中ロ ト貨物の輸送需要がある企業を六〇社ほどピ クア プした 見込み通り需要はあ た 消費地に在庫を持たずに 工場などから指定された時間帯にオ ダ のあ た分だけ配送する方法を模索していたタイルやシステムキ チン 空調機 照明器具などのメ カ が 相次いで顧客とな た 当時 二トン未満の中ロ ト貨物の中長距離輸送は需給逼迫の影響を最も受けた分野だ た この重量帯をチ タ 便で運べば割高になる 頼みは本来ならどんな貨物でも積み合わせが可能な路線便だ た だが 路線会社の多くは 貨物の小口化と件数の増加に対応して効率化を図るため 仕分けタ ミナルの機械化に力を入れていた 中ロ ト貨物はそのタ ミナルの自動仕分け機に乗らず 路線便に不向きな貨物とな ていたのだ 東京システム運輸はこうして行き場を失 た貨物に着目し そこにタ ゲ トを絞 て市場開拓を進めた 積み合わせることでチ タ 便よりも安い運賃を設定し しかも路線便との差別化を図るために時間帯指定や納品先での受領書の回収などにも対応した 現地で積み替えて配送する仕組みは一見 路線便に似ている だが輸送システムのうえに貨物を載せるのではなく 貨物に合わせて輸送システムを用意するという発想が路線便とは根本的に異なる この仕組みで東京システム運輸は チ タ とも路線便とも異なる 第三の選択肢を荷主に提示したのだ ある家電メ カ には 在庫削減の切り口からこの仕組みを提案した 当時この家電メ カ では 関西の工場から神奈川県内にある域内拠点を経由して 関東地区の数カ所の販社拠点へ在庫を補充し そこから販売店などへ配送していた これに対して東京システム運輸は 域内拠点から同社の拠点で中継して販売店へ直接配送する方法を持ちかけた メ カ はこの提案を受け入れて 販売店向け配送をリレ 方式に切り替えた その結果 数カ所の販社拠点に分散していた在庫をすべて廃止することができた 東京システム運輸の提案によ て荷主の物流形態は一変した 同社はこの考え方をほかの家電メ カ にも応用して荷主の開拓に成功した 配車システムも自社開発こうした顧客開拓に合わせて 情報システムの整備も進めた 中継基地で方面別の仕分け・配車を行うリレ 配送方式では 荷主との間の情報の連携が重要になるためだ 最初にリレ 配送方式をスタ トした住設メ カ とは このメ カ の薦めに応じてあるソフトメ カ の配車支援システムを導入した このシステムは 配送先の住所や貨物の重量などをもとにマ ピングしながら配送順を自動的に割り出すところに特徴があ た 荷主からEDIで出荷情報を受けて この配車支援システムで配車を行 た デ タの入力がいらず 車両一台あたりの売り上げ図1 中継リレー配送のエリア展開 ★  ★ ★ ★ ★ 海老名 立川  千住 川越 平和島 首都圏エリア ★前橋 ★水戸 ★  ターミナル 幹線・横持ち ターミナル 配送エリア 半径25km APRIL 2005 56まで自動計算できるようにな たことが導入のメリ トだ た ただこのシステムは 東京システム運輸のサ バ とOS オペレ テ ングシステム が異な ていたことなどから 稼動までに三年近くかか た さらに新規で獲得した顧客とつなげるためには 一件ごとにカスタマイズしなければならないという問題もあ た そこで同社は も と低コストで導入できるよう 配車上手 と呼ぶリレ 配送専用の配車システムを自社開発した リレ 配送では対象を中ロ ト貨物に絞 ているため 一台あたりの配送件数はさほど多くない 配送先の八割方は毎回ほぼ固定だ 施工現場など配送先が変わ ても ドライバ は担当エリアの道路状況を熟知している この実態に合わせて 地図情報はつけない軽装備とした 一台の車両が積む重量や回る件数の上限 時間指定などの条件を設定して 自動的に貨物をコ ス別に振り分けるだけのシンプルなシステムだ ただし一トン以上の貨物については 現地でクレ ン荷役を行う必要があり 事前に打ち合わせするなど特殊な対応を要するため 管理画面に色分け表示をして注意を促すように工夫してある 荷主からは電子メ ルで出荷予定情報を受け 運賃計算や請求まで自動化できるようにした この自社開発した配車システムが 九〇年代後半にはフル稼働するようにな た 二〇〇一年にはクロスド ク事業の顧客数は八社となり 貨物量は年間四〇万トン近くに達するまでにな た ただこの間に多くの分野で 東京システム運輸がその一端を担 てきたような幹線輸送とエリア配送をリレ でつなぐ輸配送ネ トワ クの構築が 荷主主導で進んできた 在庫を集約してユ ザ へ直送する物流形態を志向する荷主が 従来の路線便に代わる方法として採用するようにな たのだ これを受けて 本来積み合わせを得意とする路線業者が 専用車を仕立て低コストでこうした需要に応じるようになり 価格競争が厳しくな た 一方では 家電製品のように 物流が各店配送から大手量販店などへのセンタ 一括納品に替わり リレ 配送のニ ズそのものが不要となるケ スもでてきた 元々 東京システム運輸にと てこの事業は 物量の波動が大きく収益が安定しにくいという問題点があ た 一定のサ ビスレベルを維持するためには車両をある程度は安定確保する必要があり 物量の変動に応じた台数の調整が困難だ 増えた分については車両の回転を上げて対応できるが 物量が減るとたちまち利益が圧迫されてしまう 貨物が減 た時の空きスペ スを埋めるために新規顧客の開拓を進めてきたが 本来 クロスド ク配送はニ チな分野であり それだけで大きく事業を伸ばすのはどだい不可能なこと 配送センタ 事業のような ある程度 日々の物量が安定している事業をベ スとする構造のうえで 大きな波をかぶりにくい状態にして運営すべきものだ と江島部長は今にして思う これまでは いろいろな荷主からクロスド ク配送の貨物をタ ミナル 中継拠点 に集めて 積み合わせる ことだけを考えてきた これからは クロスド クだけでなくほかのさまざまな配送ニ ズを持 た貨物と 組み合わせる 発想をしていきたい 同 とする 通過型と在庫型との融合へ昨年十一月 東京システム運輸は武蔵村山市に新拠点を竣工した クロスド ク機能を図2 「配車上手」のシステム概要 納品伝票 住所エラー 訂正・チェック サービス追加 時間変更登録 ターミナル 一時保管・持ち戻り登録 コース別一覧表 部門別運賃日計表 請求明細書  車両別運賃日計表 請求データチェックシート 配車支援表 配送管理表 日次資料 予定データ取込 予定データ保守 月次資料 部門別明細表 業務支援 システムメニュー A・B・C商品 各タイプ別 データ受信 予定データ確定 配車 請求 データ  57 APRIL 2005重視して設計した初めての拠点で その名も TERMINAL X とした 八七〇〇平方メ トルの敷地に建つ鉄骨二階建ての建物で 延べ床面積は五二〇〇平方メ トルある 南北二方面にバ スを備え 同時にトラ ク四〇台の接車が可能だ 一階はすべて荷捌きスペ スで 処理能力は一日に四〇〇トン 二階は保管や流通加工スペ スとして活用できるようにしてある 同社では TERMINAL X を クロスド クとTC 通過 型 DC 在庫 型の融合した基地として運用することをめざしている 深夜から早朝にかけてはクロスド ク基地として機能するが 日中はDCやTCに姿を変える 午前中から午後にかけてDCの入庫・ピ キング・出庫を行い 夕方から夜にかけてはTCとして入荷・仕分け・出荷業務を中心にこなして 二四時間フル稼働するという形が理想だ これまでは 既存の倉庫にクロスド ク業務を取り込む形だ たため 昼間を中心とした従来型の営業倉庫業務と夜間のクロスド ク業務とが別々に管理されていた TERMINAL X では この管理を一本化し一体運営する それによ て施設や車両の稼働率を上げるとともに 例えば一括荷受けした商品を数回に分けて配送したり 流通加工を施してから出荷するなどとい たさまざまな需要に対応することで 新規顧客開拓を図 ていきたい と江島部長は意気込む 路線便タ ミナルでの仕分けを 倉庫の空きスペ スを使 て夜間に行うという方法で取り込み しかも専用車両による配送で付加価値をつけることで 中ロ トのリレ 配送が一つの分野として認知されるような た 今では広域配送システムの一つとして荷主のネ トワ ク構築に広く採用されている しかし その末端の部分は主に東京システム運輸のような地場の運送会社が担 ており 事業としての課題はまだ多い フリ ジ ナリスト・内田三知代 東京システム運輸の物流拠点

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