2002年1月号
FOCUS

貨物鉄道事業の規制緩和不採算路線撤退が真の狙い?

JANUARY 2002 82 貨物鉄道事業の需給調整規制廃止は、 政府が二〇〇〇年三月に閣議決定した 「規制緩和推進三カ年計画」に盛り込 まれたもので、二〇〇二年度末の実施 を目指す。
国土交通省は需給調整規制 や運賃規制のあり方などについて学識 経験者や荷主、通運業者など関係者に 対しヒアリングを実施。
その結果を諸 施策の立案に反映させる意向だ。
同懇談会は野尻俊明・流通経済大 学教授を座長に、濱中昭一郎・全国通 運連盟会長、佐藤文夫・日本ロジステ ィクスシステム協会会長、伊藤直彦・ JR貨物社長、石川裕己・国土交通 省鉄道局長をメンバーとしている。
需給調整廃止の目的は、ある市場で 新規事業者の参入を認めて、市場の活 性化を図ること。
ところが、貨物鉄道 事業に関してはJR貨物による独占状 態のため、規制緩和されても市場は活 性化しないのではないか、といった見 方が支配的だ。
JR貨物関係者やシン クタンクの間でも、「新規参入者が出 てくるとは考えにくい」との意見が大 半。
フォワーダーとして貨物鉄道を利 用中のヤマト運輸も「キャリアは儲か らない」(首脳)と見ている。
貨物鉄道事業には莫大な投資が必要 になることが、新規参入への足かせと なりそうだ。
例えば、鉄道車両は一編 成(二〇両)当たり八億円かかる。
メ ンテナンスを考えると最低三編成、計 二四億円が必要となる。
このほか、駅 やターミナルといったインフラの整備、 減価償却費などの経費も当然負担しな ければならない。
新規参入を促すためには、JR旅客 各社に支払う線路使用料についても、 改めて検討を加えなければならないだ ろう。
JR貨物がJR旅客六社に支払 う線路使用料は、八七年の国鉄改革の 際に、当初から経営難が予想されたJ R貨物を支援するため、旧運輸省が考 え出したもので、通常かかる費用の二 〇〜三〇%程度に設定されていると言 われる。
九六年に開催された「JR貨 物の完全民営化のための基本問題研究 会」では、同使用料の維持が確認され た。
ところが、JR貨物とJR旅客各社 との間でしか成立しない線路使用料を めぐり、最近では新たな問題も発生し ている。
東北新幹線開業(盛岡〜青森 間)後、並行在来線が第三セクター化 されるため、線路を保有することにな る青森県や岩手県が、線路使用料の現 行料金の維持を主張するJR貨物に対 して?正規の料金〞の支払いを求めた。
これにより、鉄道貨物輸送のあり方が 改めて問われる事態までに発展したと いう経緯がある。
仮に貨物鉄道事業者の新規参入が認 められれば、JR貨物の三〜五倍の線 路使用料を支払うことになり、極端な 不公平が生じることになる。
したがっ て、同事業の新規参入など到底見込め ない、との結論に達するわけだ。
シン クタンクは「英国のように完全に上下 分離されているならともかく、(旅客 輸送を優先させたい)旅客会社がレー ルを保有する状況では、上下分離の関 係が成立するとは思えない」と話す。
いったい、懇談会設置の目的とは何 か。
国土交通省貨物鉄道室では「まず は鉄道事業の新規参入を認める環境を 整備すること」と説明する。
だか、懇 談会では事業撤退の規制緩和も議論さ れる見通しであることから、一部関係 者の間では経営難のJR貨物が採算の 合わない路線を切り離せるようにする ための議論だ、とも囁かれている。
JR貨物は発表した二〇〇一年度中 間決算は、経常ベースで三億円の黒字 を確保。
通期でも九年ぶりに黒字転換 できそうな見通しという。
とはいえ、経営体質強化が進んでいるとは言いに くい状況で、自然災害が発生すれば、 たちまち赤字に転落する恐れがあり、 予断を許さない状況は続く。
JR貨物の伊藤社長は全国ネットワ ークに固執しており、不採算路線も維 持する、と主張してきた。
だが、経営 体質の強化、また貨物鉄道輸送の特性 を生かすなら、不採算路線の切り離し は不可欠だ、と多くの関係者が指摘し ている。
(宮崎 台) FOCUS 貨物鉄道事業の需給調整規制の撤廃に向け、本格的な議論 が始まった。
二〇〇一年十一月三〇日、同事業の規制緩和に 関する懇談会が開催された。
国土交通省は二〇〇二年一月を めどに、貨物鉄道関係者の意見を取りまとめる予定だ。
しかし、 関係者の間では鉄道車両を保有するなど莫大な投資をしてまで 新規参入する事業者が出てくるとは考えにくい、との声が支配 的だ。
この懇談会の真の狙いとは‥‥。
貨物鉄道事業の規制緩和 不採算路線撤退が真の狙い? KEY WORD 貨物鉄道 83 JANUARY 2002 廃業率は三〜七% 深刻化する大都市部の大気汚染改善 に向けて、国の自動車NO x ・PM法 では二〇〇二年から首都圏、中京圏、 阪神圏の規制地域で一定の排出ガス基 準を満たさないディーゼル車の保有を 制限する「車種規制」が実施され、非 適合車は車検が通らなくなる。
一方、 東京都は二〇〇三年一〇月からやはり 一定の基準を満たさないディーゼルト ラック・バスの都内での運行を禁止す る規制を独自の条例により実施する予 定で、いずれにしても車両の買い替え か装置の装着に対する費用負担は膨大 なものとなる。
環境省が二〇〇一年八月から九月に かけて行った自動車NO x ・PM法の 政省令案に対する意見募集では、意見 提出件数一六六一件のうち、七五%に 当たる一二四四件が運送事業者からの もので、厳しい経済情勢を反映して車 種規制の猶予期間延長を求める声が殺 到した。
三菱総研が二〇〇一年一〇月末にま とめた「NO x ・PM法、都条例の施 行がトラック運送業界に与える影響調 査」の結果によると、トラック運送事 業者らは資金調達の難しさ、コスト増 分の運賃転嫁の困難さを経営課題とし て挙げており、規制の影響が本格化す る二〇〇三年度には、運送事業者の売 上高経常利益率は現状の一・八%から マイナス二・九%〜同十二・八%へと大幅に悪化すると予測されている。
ま た、トラック代替費用などで、経常利 益の大幅赤字が予想されると推計して いる。
調査結果はさらに、赤字の拡大は事 業者の廃業の増加を招き、通常一%程 度の廃業率が三〜七%にも急増し、失 業者数が一〜二万人増加する恐れもあ ることから、事業者に対する公的保証 枠を拡大したり、車両代替コストを支 援するなどの対策が必要だと指摘して いる。
規制猶予の陳情相次ぐ 一方、全日本トラック協会の試算に よると、東京都のディーゼル車規制に 対応するために必要となるトラック運 送事業の代替台数と代替資金需要は、 規制初年度の二〇〇三年は通常の代 替ペースの約四倍となり、これに伴う 借入金利息の増大や減価償却費の増 加で、二〇〇三年度以降、三年間は 赤字経営を強いられることになる、と いう。
とりわけ都条例の場合、規制の 猶予期間が短いため、平均使用年数と の差が逸失利益となり、損失は二〇一 二年度まで一〇年間継続すると指摘し ている。
二〇〇一年一〇月から十一月にかけ てはディーゼル車を使用するトラック、 バス業界から規制猶予や支援策を求め る陳情が相次ぎ、とくにNO x ・PM 法で新たに規制地域となる愛知県では トラック事業者ら七五〇人が集まって 経営危機回避決起大会を開催。
同じく 三重県でもバス、トラック業界が地域 指定の返上も含めて規制の猶予を求め た。
自動車NO x ・PM法の所管官庁で ある国土交通、環境両省では、業界の 厳しい実情に配慮し、当初二〇〇二年 五月に予定されていた車種規制の実施 を一〇月へと延期するほか、車種ごと に定められた規制の猶予期間を実質的 に最大で二年程度延長し、できるだけ 車両の買い替えが分散するような方策 をとることにした。
ただし、これにより激変は緩和され るが、業界が負担を迫られることに変 わりはない。
国民、市民全体が環境改 善の恩恵に浴するものであり、国、自 治体による代替費用助成など公的支援 が望まれる。
(芹江 亜太郎) 環境規制にトラック業界が悲鳴 負担増で廃業に追い込まれる業者も トラック運送業界が相次ぐ環境規制に悲鳴を上げている。
NOx・PM法による車種規制や東京都条例によるディーゼ ル車規制により、使用途中の車両を新車に買い替えなければ ならなかったり、排ガス削減装置の装着を求められるためだ。
その費用負担は営業用トラックだけで一兆数千億円にも上る と見られている。
ある民間シンクタンクの緊急調査によると、 規制の影響が本格的に出始める二〇〇三年度にはトラック事 業者の経常利益は大幅赤字に転落。
小規模企業の廃業により 極端なケースでは失業者が二万人を超える可能性もあると指 摘されている。
KEY WORD 物流行政 JANUARY 2002 84 独占禁止法は事業者同士で協議して 商品やサービスの共通価格を設定する、 いわゆる「カルテル行為」を禁止して いる。
ただし、外航定期船の分野では ?新規参入の障壁が低いこと、?市場 原理に委ねただけでは需給バランス調 整が構造的にうまくいかないこと―― などを理由に、共通運賃の設定などが 適用除外として認められている。
だが、 他産業にはあまり見られないレアなケ ースだけに、外航海運の独禁法適用除 外制度(以下、制度)の存廃をめぐる 論争が頻繁に起こる。
現在、海運業界では経済協力開発機 構(OECD)の事務局がこのほど発 表した「定航海運への競争法の適用に 関するレポート」案が注目を集めてい る。
同レポートは「競合船社間の運賃 やサーチャージの協議ないし設定行為 によって、荷主・消費者はコスト負担 増を強いられることはあっても、恩恵 を受けるとはどうしても判断されなか った」と指摘。
そのうえで「価格設定 と運賃談合に関しては、限定的な独禁 法適用除外であっても許されるべきで はない」と結論づけたからだ。
米国が九九年に導入した改正米国海 運法(OSRA)は、定航海運の世界 に劇的な変化をもたらした。
同法は海 運カルテルの反トラスト法の適用除外 を認めたうえで、船社と荷主が個別に 締結する非公開のサービス・コントラ クト(S/C)を制度化した。
これによって、共同運賃の存在意義がなくな り、北米航路の海運同盟は休止や廃止 に追い込まれ、代わって太平洋航路安 定化協定(TSA)という協議協定が 台頭した。
今後は共同運賃を設定しな い協議協定が世界の海運協定の主流に なりそうだ。
一方、EUの行政執行機関である欧 州委員会は、協議協定に対するEU競 争法の適用除外すら認めていない。
運 賃同盟には同盟に加盟してない船社 (盟外船社)というコンペティターが 存在しているが、同盟も盟外船社も内 包する協議協定は「全ての競争的要因 を排除する」と解釈しているからだ。
前述したOECD事務局のレポートは このEUの政策をベースにしてまとめ られている。
EUは海運協定に対して独自の解釈 を貫いており、欧州委員会が突然、船 社協定に対して競争法違反で罰金を課 すというケースもある。
しかも欧州委 の罰金は最高で当該船社の全世界の売 り上げの四分の一という途方もない金 額に設定されている。
厳しい内容だ。
これに対して、日本政府は海運カル テルに関して寛容だ。
九九年に改正さ れた海上運送法でも適用除外の「制 度」は維持されている。
また、世界で もあまり例がない、海運協定と荷主団 体(日本荷主協会)が協議(コンサル テーション)を行うという慣行も残っ ている。
世界的に見て、海運同盟の力は過去 に比べ弱くなりつつある。
共通運賃は 形骸化し、同盟を結ぶ企業同士の競争 も激しさを増している。
運賃は需給バ ランスにほとんど委ねられているとい っていい。
一八七五年に最古の海運同盟「イギ リス/カルカッタ同盟」が結成されて から一〇〇年以上が経ち、海運業界は 産業として成熟した。
船社間の破滅的な過当競争はもはや起こらないだろう。
カルテル適用除外の「制度」がいずれ なくなるのは確実だ。
ただし、船社だけでなく荷主側の混 乱を避けるためにも軟着陸させたいと ころだ。
「制度」は自転車の補助輪の ようなもの。
近い将来、海運業界がそ れなしでも完全に秩序を保てるように なったとき、各国関係者の自然な選択 として取り除くのが最良の策ではない だろうか。
OECDが発表したレポートが注目を集めている。
独 禁法適用除外の対象である海運カクテルに?NO〞を つきつけたからだ。
海運カクテルに寛容な日本もいずれ 見直しを迫られることになりそうだ。
独禁法適用除外の海運カルテル 廃止を迫るOECDのレポート KEY WORD 海運 主要国の外航海運独禁法適用除外制度 適用除外を 既定する法規 海上運送法 1998年 改正海運法 (OSRA) 理事会規則 4056/86 海運協定の 監視機関 公正取引委員会 国土交通省 米連邦海事委員会 (FMC) 欧州委員会競争総局 (DG Competition) 適用除外を認めている 海運協定の形態 海運同盟 協議協定 (運賃同盟) (航路 安定   化協定) ( スロットチャ ーター、コンソ ーシアムなど) 運航協定 日本   米国  EU ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × FOCUS 85 JANUARY 2002 バイク便大手四社のコールセンター の仕組みは基本的にどれも同じだった。
受注担当(オペレーター)と配車担当 に組織を分割し、互いに連携する。
具 体的には、電話などで注文を受けたオ ペレーターが受注システムの画面上に 「引き取り先・届け先」の住所を入力 すると、「配送距離・料金」が自動的 に表示され、その情報を顧客に伝える。
オペレーターは電話を切った後、配車 担当へ顧客情報を伝えて担当ライダー を手配するという手順だった。
ダットは車両運行管理システムの刷 新によって、業界で初めて受注と配車 の手続きを一人のオペレーターで処理 できるようにした。
新システムは、G PSを利用して荷物の受け取り先から 最も近くにいるライダーを自動検索し、 そのライダーが「受け取り先に到着す るまでの時間」と「届け先までの時 間・料金」を瞬時に表示する仕組みに なっている。
他のバイク便は電話を一旦切って から担当ライダーを決めるため、集荷 に向かうライダーの名前を即答できな いほか、荷物の受け取り時間もおおま かにしか伝えられない。
これに対して、 ダットのオペレーターは、電話で受注 する際、担当ライダーの名前と正確 な荷物の受け取り時刻を顧客に伝え られる。
サービスを差別化できるわけ だ。
投資総額一億二〇〇〇万円 新システムは、NTTドコモの 子会社、ドコモ・マシンコミュニ ケーションズの車両運航管理シス テム「DoCo ですCar 」とソフト開 発のドリームテクノロジーズ社の地 図情報システム「Nexus Map 」の 機能を融合させたかたちで構築さ れている。
投資総額は約一億二〇〇〇万円。
写真にある通り、オペレーター 一人につきシステム画面が二つ用 意されている。
ゼンリンデータコム 社製の地図情報を瞬時に表示して、 三六〇度、どの方向にも自由にス クロールできる。
地図は縦横二〇 〇メートルの範囲まで拡大でき、ラ イダーが左右どちらの車線を走行中か 判断できるほど精度が高い。
システム画面上では、「青・黄・赤」 の三色から「待機車両・荷物配送中車 両、休憩中車両」を識別できる。
ダッ トの一日の車両運行台数は三〇〇〜三 五〇台ほどだが、システム上は最大六 万台まで管理できるという。
ダットの新システムは画期的だが、 他の大手三社は「今のところ、(ダッ トが)どれだけ効果を出せるか様子見 といったところ」(ソクハイの金子俊哉 営業計画室係長)、「当社も既存システ ムでかなりのコスト削減を果たしてい るので、今のところGPSを使ったシ ステムを導入するかどうかは様子見の 状態」(バイク急便の大槻隆志代表取 締役副社長)、セルートは「ノーコメ ント」(同社総務部)――という素っ 気ない反応だった。
ダットは二〇〇一年六月、従来料金 の約四割値下げに踏み切った。
他社も ダットの低料金に追随しているが、ダ ットに対抗するコスト競争力をつける ためには、従来システムの刷新が避け られないだろう。
バイク便業界のIT 化競争に拍車が掛かりそうな気配だ。
(石井教子) バイク便業界でIT化競争加速 ダットが低価格対応で情報システム刷新 バイク便大手四社のIT化が加速しそうだ。
口火を切ったのは業界二 位のダット・ジャパン。
二〇〇二年一月、配送車両に全地球測位システ ム(GPS)を搭載した車両運行管理システムを新たに稼働させた。
配 送時間を五〜一〇分短縮するほか、コールセンターの人件費を四割削減 するという。
バイク便業界では低価格競争が本格化している。
競合する 三社(ソクハイ、セルート、バイク急便)がいずれダットのシステムに 追随するのは必至と見られる。
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