2005年4月号
特集
特集
実録!中国物流 日中物流ワークショップ座談会
APRIL 2005 26
第1セッション――SCMの意義
三井物産 松本順一 執行役員物流本部長(以
下、三井・松本)
これよりパネルディスカッ
ションを始めます。
パネルディスカッションは 四つのセッションに分けて進めていきます。
第 一セッションはSCM推進の意義。
第二セッシ ョンは中国におけるSCMの具体的な事例、あ るいは各社がチャレンジ中の取り組みの紹介。
第三セッションは中国におけるロジスティクス 環境の課題や問題点の指摘。
そして最後に、第 一〜第三セッションの流れを踏まえて、今回の ワークショップとパネルディスカッションの結論 をまとめ、提言に結びつけていきたいと思いま す。
それでは第一セッションに入ります。
はじ めに日産自動車の小山さんからお願いします。
日産リバイバルプランからSCMへ 日産自動車 小山 彰 VP SCM本部長 (以下、日産・小山) まず当社にとって、な ぜSCMが必要なのかをお話しします。
九〇年 代後半、当社は経営的に非常に厳しい状態にお かれていました。
これには根本的に三つの問題 がありました。
一つは「利益追求の不徹底」。
つぎ込んだ金額に対してどれだけリターンがあ ったかというフォローが長年、中途半端だった ということです。
二つめは「顧客志向」。
カスタマーファース トといいながら実際には顧客が重視されていま せんでした。
頭では分かっていても、一人ひと りの仕事にそれが反映されていなかった。
顧 客が求める商品とまったく違うものができあが ってしまっていた。
三つめは構造的、体質的 な問題ですが、一つめ(利益追求の不徹底) と二つめ(顧客志向)を覆う形で「部門の壁」 が大きな課題になっていました。
そんな危機的な状況を、「日産リバイバルプ ラン」と、その後の「N180」というアク ションプランによって何とか生き残ってきたわ けです。
その過程では部門の壁をどう取り除 いていくかが一番大きな問題でした。
いわゆる 庭先管理(部門ごとの管理)、つまり自分のと ころさえよければそれで足りて、全体のプロセ スをみる体質になっていなかった。
そこで、一つにはクロス・ファンクショナ ル・タスク・チーム(CFT:Cross Functional Task Team )を作った。
部門横断的に 人を組織し、とにかくドラスティックな案を出 せ、ということで活動してきました。
その提案 を実行するかしないかの判断は経営者側がやる ことにしましたが、出てきた提案は結果的に 昨年11月、国土交通省と日本インタ ーナショナルフレイトフォワーダーズ 協会の主催による「中国物流をめぐる 日中ワークショップ/シンポジウム」 が開催された。
これに合わせて中国か ら行政関係者や有力企業のキーマンた ちが来日。
中国物流の現状と課題につ いて日本側関係者と議論を交わした。
その模様を報告する。
松本順一(まつもと・じゅんいち) 三井物産 執行役員物流本部長 横浜国立大学卒業。
1971年三井物産入社。
1982年シカゴ大学大学院(MBA)修了。
1992年米国三井物産ニューヨーク本店 VP&GM、2002年執行役員経営企画部長、 2003年執行役員駐中国副総代表を経て、 2004年より現職。
小山 彰(こやま・あきら) 日産自動車VP SCM本部長 早稲田大学卒業。
1974年日産自動車入社。
1989年生産管理部第二生産管理課長、 1997年欧州日産会社(NENV)生産計画 部長を経て、2003年SCM本部長に就任し、 現在に至る。
ロジスティクスとSCM領域に おける同社の戦略・企画を統括。
総合コーディネーター 三井物産 松本順一 執行役員物流本部長 中国側コーディネーター 中国遠洋物流(COSCO LOGISTICS) 葉偉龍 総経理 パネリスト 山九 賀来紀久男 顧問 セブン-イレブン・ジャパン 佐藤和久 執行役員物流管理本部長 日産自動車 小山彰 VP SCM本部長 フレームワークス 田中純夫 社長 江蘇小天鵝集団(LITTLE SWAN) 徐源 副総裁 中国国際貨運代理協会(CIFA) 劉占芳 副会長 日中物流ワークショップ座談会 第4部 27 APRIL 2005 ほとんど実行されました。
しかし、ここでの提案はプロジェクト的なこ とであって、これを会社の体質としてどう根 付かせていくかというところで、当社にとって のSCMの課題、任務、責任が出てきました。
つまり、当社におけるSCMとは?Big C FT〞、会社としてのCFTという位置づけで あって、すべてについて部門横断的な動きを していくというのがその任務です。
具体的に取り組んだのは、社内の効率化と いうことでは、車両、部品すべてを含む在庫 と物流コストの削減です。
対顧客ということ ではリードタイムの短縮です。
注文をもらって から顧客に車を届けるまでの日数をドラスティ ックに短縮しようという活動をしました。
その過程で、当社にはたくさんの資本関係 にある系列会社がありましたが、これらの会 社との取引を、一部を除いて一切やめようと いうことになりました。
資本関係の解消とともに主従の関係を断ち切り、ビジネスライク に仕事を進めています。
壁は乗り越えるより?壊せ〞 下請け企業との関係では片一方だけが儲か っても意味がなく、いかにして?Win ―Wi n〞の関係を築き上げるかが最大の課題です。
それをグローバルにやるということが、もう一 つのポイントです。
国内だけならそれほど難し いことではありません。
全世界で部分最適か ら全体最適をどう求めるかが課題でした。
先ほどの庭先管理、つまり部門ごとの管理 が全社的な管理に広がると総論賛成・各論反 対がぞろぞろでてきます。
衝突も起こります。
しかし、この衝突を避けるのではなく、意図 的に起こそうという考え方で進めていきました。
我々は「健全な衝突」と呼んでいます。
それ によって何が問題なのか、それをどう解決して いくのかという、まさにSCM的な課題解決 が求められるようになりました。
当社はそれまでも何十年にもわたって部門の 壁を乗り越えるということについて議論をして きましたが、まったくできていませんでした。
そこで、壁は乗り越えるのものではなく、壊す ものだという発想に切り替えました。
壁はある から越えなければならないのであって、なけれ ば越える必要はありません。
そうして全社的にSCMというコンセプトの 中で壁の排除に取り組んできました。
その結 果、在庫にしろ、物流コストにしろ、リード タイムにしろ、当初の目的(コミットメント) をクリアしたレベルに達することができました。
ただ、この先グローバルにどう展開していくか がこれからの課題です。
中国は当社にとって非常に重要なマーケッ トだととらえています。
しかし中国だからとい って特別なアプローチを考えているわけではあ りません。
アメリカ、ヨーロッパ、他のアジア 諸国とまったく同じように考えています。
イン フラ等は違っていますが、そこをどう乗り越え るか。
今までどおりの改善ではなく、ブレーク スルー、発想の転換が必要です。
中国でも、いわゆるQCD、つまりクオリ ティ、コスト、デリバリー。
最近ではDはタイ ムのTに変えていますが、この三つを世界共通のレベルに持って行こうという狙いです。
そ れも非常に短時間で実現していく。
その責任 を負っているのが当社にとってのSCMという 位置付けになっています。
系列の馴れ合いを解消する 三井・松本 先ほど系列の排除という話があ りました。
これをロジスティクスパートナーの 選択という面から、日本ならびに中国の例も 踏まえて補足してください。
日産・小山 我々はロジスティクスパートナー に限らず、SCMの中で何が重要かを考える ときに、一つは可視化(visibility )を重視し 特 集 写真右から三井物産の松本順一執行役員物流本部長、中国遠洋物流 (COSCO LOGISTICS)の葉偉龍総経理、江蘇小天鵝集団(LITTLE SWAN)の徐源副総裁 APRIL 2005 28 ます。
全体のプロセスが見えるようにするとい うことです。
全体のプロセスの中のどこが課題 なのか、誰の課題なのか、どうやって解決す るのかを探ります。
もう一つは透明性(transparence )をどう確保するかを重視します。
ロジスティクスパートナーとは、従来は主従 の関係にありました。
これはいいように見えま すが、実は透明性や可視性が確保されません。
サプライチェーンを絵に描いてみるとその辺が まったく分からないというのが実情でした。
系 列の解消は実は「馴れ合い」の解消なのです ね。
馴れ合いは夫婦間ではいいのですが(笑)、 会社ではダメです。
物事をはっきりさせていく ことがいかに大事かということが分かってきま した。
それといかにしてWin ―Winの関係をつ くるかということですね。
ロジスティクス・コ ストは下げたいのですが、単純に値引きを迫 れば輸送業者にしわ寄せがいく。
単品の単価 を下げたい時には部品のサプライヤーにしわ寄 せがきます。
それではうまくいきません。
例えば、サプライヤーとの間では、我々は 「日産同期生産」というコンセプトで、同じ情 報、同じ基点で仕事をしています。
我々が生 産を減らせばサプライヤーも減らすという発想 です。
サプライヤーからロジスティクス・コス トを下げるアイデアをもらうと、それから発生 するベネフィットを五〇:五〇で分けるという 取り決めもしています。
そうして両方でうまく コストを下げていく。
以前は部品代に輸送コストも含まれていま した。
SCMの観点からいうと透明性にまっ たく欠けていました。
しかしこれらを分離させ ました。
輸送コストはいくら、製造コストはい くらと分けて、製造の過程ではこういう無駄 があるからサプライヤーと一緒に解消していき ましょう、というやり方でお互いのコストダウ ンを進めていきました。
中国で事業を始めるにあたり、まったく同 じことを考えてやろうとしていますが、我々の 経験がないこともあってまだ不十分です。
いか に短期間でグローバルなレベルにするかという ことが現在の課題です。
パートナーシップの条件 三井・松本 これに対してロジスティクスパー トナーとして、日本側から山九、中国側から コスコ・ロジスティクスに話を聞きたいと思い ます。
まず賀来さんから。
山九 賀来紀久男 顧問(以下、山九・賀来) 私どもはロジスティクスパートナーとして荷 主企業からの信任を受けて荷主企業のロジス ティクスをいかに効率化するかということが 業務の主体です。
荷主からアウトソーシング を受けた業務については品質を低下させては いけません。
もちろんコストも上げてはいけ ません。
リードタイムやジャスト・イン・タ イム等々も厳守しなければいけません。
荷主 企業のマーケティング戦略についても、ロジ スティクスパートナーとして同じ戦略で対応 しなければなりません。
SCMを成功させるためには、とくに荷主企 ●日産自動車 中国におけるロジスティクスパートナー選定基準 1. 中国における経営実態が存在している ○ ○ 2. 物流コスト低減の企画、実行力 ○ 3. 物流専用の技術サポートを有して問題解決能力がある ○ 4. 中国において自動車輸送の経験がある ○ ○ 5. 自動車部品倉庫の運営ができる ○ 6. 複数の輸送モード展開ができる ○ 7. 日産の仕組みの経験がある ○ 8. プレゼンテーション内容 ○ ○ 9. 車両物流システムを短期間で開発できる ○ 10. 物流拠点のインフラが整っている ○ 11. 海上輸送の戦力を備え且つ中国での免許を持っている ○ 評価項目 調達 物流 完成車 物流 日産自動車の小山彰VP・SCM本部長 29 APRIL 2005 業とロジスティクスパートナーのトップ同士が 共通した認識を持つことが重要です。
目的や 問題点に対して共通意識をもち、お互いの信 頼関係の中で「運命共同体」として事業を始 めるのだということを認識する必要があります。
SCMを構築するにあたってロジスティクス パートナーは荷主企業のニーズに応えるために 作業工程、生産スケジュール、生産量、商品 別の販売戦略に関する情報を共有しなければ なりません。
これについては綿密な打ち合わせ をするということを一つのプロセスとして意思 統一する必要があります。
SCMを実施したことによる成果は両者で 確認します。
どこが成功した、どこがまだ十 分ではないといったことをお互いに認識し、ロ ジスティクス業者が次のステップでトライして いくという環境に持っていくことが大切です。
さらに、可視化された物流を可能にするため にはEDIを活用したネットワークの確立が必 要です。
ハードの部分では、荷主企業の要求に応え られる拠点展開が求められます。
最終的には 荷主が固定費として物流費用等々を変動費と し、我々の努力の成果が変動費に反映される ようにする。
これが荷主企業の収益改善にな り、ひいてはキャッシュフローが改善されるこ とになります。
三井・松本 次に中国側から葉さん。
中国遠洋物流(COSCO LOGISTICS ) 葉 偉 龍 総経理(以下、コスコ・葉) 物流企業 として、自分の荷主にSCMサービスを提供 する際、条件として荷主と戦略的パートナー シップを組まなければなりません。
コスコ・ ロジスティクスは中国本土において、中国の 大手電機メーカー八社にSCMサービスを提供しています。
当社の物流サービスの提供に より、荷主企業の物流コストは低減され、同 時に従来それぞれのメーカーが持っていた自 社の物流部門、倉庫、トラックが当社との提 携によって必要なくなりました。
そして、そ れらの企業の物流部門の人員をすべてコス コ・ロジスティクスの管理下に置くことにな りました。
それが成功したモデルです。
私は荷主と物流企業が連携し、SCMを構 築する場合、四つの関係に注目しなければな らないと考えます。
まず、正しい提携関係を 持つことです。
荷主は物流サービスを単なる 取引と考えるのではなく、戦略的視点を持つ べきです。
そうすれば長期的な目線で経営戦 略を考えることができます。
二番目は、このような提携関係を別の目線 を持って見なければいけません。
物流企業は メーカーの物流コストを減らすだけではなく、 それによってメーカーが自社のコア部分である 製造および販売などに経営資源を集中できる 環境を提供しています。
三番目は、Win ―Win関係への対処です。
つまりリスクと利益を共に分け合うことです。
荷主が物流企業に業務委託をする場合には、公 平かつ市場原理に基づいた原則に沿っていく ことが望ましい。
外部環境が大きく変化した 場合にも、契約で定めているサービスを提供 する代償としての合理的利益を物流業者が得 ることを認めなければなりません。
実際、市 場の変化は非常に素早いため、完全に契約で 縛るわけにはいかないのです。
四番目は信頼関係の構築です。
物流企業の トップから現場まで、完全に契約通りの良い サービスを提供しなければなりません。
それに 対し、荷主のトップは自社物流のアウトソーシングに対する社内の反発を常に察知し、和 らげなければなりません。
それにより、SCM における荷主と物流企業との良好関係の構築 になります。
賀来さんが先ほど話されたように、ある企 業がその物流業務をアウトソーシングする場合、 物流企業のトップと荷主のトップは良好なコミ ュニケーションを持たなければなりません。
そ のようなコミュニケーションがなければ、成功 は難しいと思います。
人材育成とCLO 三井・松本 いろいろな企業のコンサルティン 特 集 賀来紀久男(かく・きくお) 山九 顧問 西南学院大学卒業。
1965年山九入社。
1979年中国プロジェクト本部業務マネー ジャー、1984年上海駐在員事務所長、 1994年東アジア営業部長を経て、1997 年国際事業本部副本部長執行役員中国総 代表就任。
2003年に顧問(中国担当)就任。
葉 偉龍 中国遠洋物流 総経理 上海海事大学・オランダマスホリット学院工 商管理修士課程コース修了。
1996年上海 中遠国際貨運総経理、1998年中遠コンテ ナ輸送副総経理兼務、2002年中国遠洋物 流取締役総経理就任、現在に至る。
上海海 事大学客員教授他兼務。
APRIL 2005 30 グをしている立場からフレームワークスの田中 さん、SCMの意義、あるいは必要性につい てコメントをお願いします。
フレームワークス 田中純夫 社長(以下、 FW・田中) 我々がSCMの仕組みを日本 だけでなく、アジア、ヨーロッパ、アメリカ で活動している日本企業向けに導入する際に いつも直面するのが人材の問題です。
SCM という形を作っても動かすのは、やはり人間 です。
時々、物流マネージャーの採用に立ち会っ てくれとクライアントから依頼を受けることも あります。
なかには雇って一週間で会社に出 てこなくなって、その上、一週間分の退職金 を要求されたというケースがありました。
別の 企業では採用した人がとてもよく働くので評価 していたら、その人が知り合いを採用してくれ と言い始めて、それに応えていると、半年く らいで親族・縁者が社員の半分を占めるよう になり、元に戻すまでに数年かかったという事 例もありました。
こうした難しい環境の中でシステムをどうつ くり、どう動かしていくかということが課題に なります。
中途採用は確かに即戦力になりま す。
しかし、時間はかかるものの三〇歳以下 の若い人をしっかり教育し、SCMをよく理 解した人材を育てることに取り組んではどうか と思います。
当社は各国の大学、研究機関、物 流協会などと交流をもって、講師の相互派遣、 場合によってはインターンシップとして学生を 受け入れるなどして、将来の人材を育成して いきたいと考えています。
昨今、中国や韓国では大学で物流の修士課 程あるいは博士課程ができて、物流人材の育 成に国を挙げて取り組んでいます。
日本では 私学中心にセミナーや社会人大学院などがあ るくらいで、大学における学生の教育がまだ 本格的には行われてないようです。
これは早 急に整備することが望まれます。
さらにSCMの位置づけを経営者が理解す ることが重要です。
経営陣のなかにCLO ( Chief Logistics Officer )を置くことが、こ れからの企業には必須になってくると思います。
新人の育成と、トップダウンのロジスティクス あるいはSCMの取り組み。
この二つのアプ ローチが必要でしょう。
具体的に日本と中国の間で物流と情報が動 き始めるとコミュニケーションが問題になって きます。
システム間で情報を交換するためには 標準化は避けて通れません。
オペレーションの 効率化を図るためには物差しが必要となります。
何をやったらどうした効果が出てきたかという 管理指標です。
一般的にはKPI(K e y Performance Indicator )といいますが、ロジ ス テ ィ ク ス の 場合は 、KLPI(K e y Logistics Performance Indicator )という共 通の物差しを持って効率化を図っていきます。
最初の段階では情報コードの統一から入っ ていく必要があります。
これが様々な影響を 及ぼします。
例えば、バーコードの普及とコン ビニエンスストアの広がりには切っても切れな い関係があります。
バーコードの標準ができた 時にいろいろな産業が対応しました。
例えば 飲料水は、かつてはガラスの瓶に入っていまし たが、曲面を持つものにバーコードを印刷する のは難しかった。
そのため瓶を作った会社が 何社か倒産しました。
標準化への乗り遅れで すね。
一方で、バーコードを使って情報システム が動き始めるとデータが蓄積されていきます。
それを活用した結果が現在のコンビニエンスス トアの発展です。
標準化によって将来は知識 データベースが日中間に構築されてきます。
こ れは国の様々な施策や企業の戦略的な物流ビ ジネスに活用できると考えています。
三井・松本 第一セッションの議論を統括し ます。
まず組織のあるところには必ず壁がある。
この壁を取り除くことがSCMの基本的な使 命かと思います。
そのためには情報がスムーズ に流れるようにする。
部分最適から全体最適 へ向かうというキーワードが何度も繰り返され ていますが、そこが重要だと思います。
また、これを担うのは一企業だけではない。
企業間つまり荷主企業とロジスティクス企業、 ベンダー企業、納入先を含めた全関係者の共 同プロジェクトにしていく。
その時には「共有 化」が大切です。
情報の共有に限らず「思い」 も含めて一つにしていく。
ここから「信頼感」、 「Win ―Win」の関係が生まれてくる。
こ れは日本の企業だけでなく中国の企業にも共 通の認識で、お互いにSCMを推進しながら 全体最適企業を目指そうというコンセンサスが みられました。
31 APRIL 2005 第2セッション ――中国におけるSCMの事例 三井・松本 第二セッションでは、まず田中 さんから中国、日本それぞれの国におけるS CMの進展度合いについての説明をお願いし ます。
FW・田中 SCMは大別すると三つのステ ージで発展していくと考えられます。
ステージ 1は「サプライチェーンの実行」です。
まずや れるところから業務改善していき、その結果 を管理データ、実績データとして数字で残し ていきながら生産性の向上を図っていきます。
係数データに基づくモニタリングや、物流収 支の改善を図っていきます。
それができるとステージ2「SCM計画」 に進んでいきます。
ベンダーなどの取引先を含 めた在庫の扱い方を見直します。
この過程で物流を外部の専門家にアウトソースすることが 始まります。
そして次のステージ3の「グロー バルSCM」は、系列を超えて戦略的な同盟 を確立していく「CPFR(Collaborative Planning and Forecasting Replenishment )」 の段階になります。
製造と販売が同盟を組ん でマーケットの予測を行ってものをつくり、売 れたものを補充していく、という取り組みです。
それがグローバルに展開されていくということ です。
もっとも実際の進展度合いは、この分野で 先行しているとされるアメリカでさえ、一九九 七年の五月に初めてシカゴの?Distribution Expo 〞でSCMセミナーのセッションが開か れたくらいで、情報がまとまってきたのはわず か数年前のことです。
ウォルマートとP&G などが推進しているCPFRにしても、ガイ ドラインができたのは九七年の一月。
しかも 新聞で見る限りウォルマートですら、この展 開を攻めあぐねているという状況です。
それでもアメリカは戦略同盟まできています が、日本の企業はようやくVMI(Vendor- Managed Inventory: ベンダー主導型在庫管 理)を導入して、ロジスティクス業者とパー トナーシップを組みながら在庫を低減していく ことに取り組んでいるという段階。
中国はま だ成長段階ですから、物流業務をどうするか という過程にあります。
しかし、中国では非常に短い期間でSCM の実行が実現されているので、もしかするとこ の後、一足飛びにグローバルソーシングまでい ってしまうかもしれません。
そんな中で、上昇 していく物流コストを、IT等を活用して低 減するという取り組みがSCMの中で行われて いるという状態ではないかと思います。
ライバル企業と物流合弁 三井・松本 それでは中国側から家電メーカ ー「江蘇小天鵝集団(リトルスワン)」の徐さ んに、中国で自らチャレンジしたSCMの実 例について披露してもらいます。
江蘇小天鵝集団(LITTLE SWAN ) 徐 源 副 総裁以下、小天鵝・徐) わが社もかつては 中国の伝統的企業と同じく、社内に物流部門 を持っていました。
しかし、WTO加盟後、新しい挑戦が始まりました。
社内の物流部門 では環境の変化に到底、対応しきれなくなり ました。
物流という「第三の利潤源」を得る ため、我々は強い危機感を持ってパートナー を求めました。
恐らく中国では、当時のわが社のような環 境に置かれた企業が少なくても全体の五〇% を占めています。
各社ともパートナーを求めて いるものの、誰もその一歩を踏み出せないでい ます。
そこで、わが社は二〇〇一年において、 (ライバルの大手家電メーカー)科龍集団とコ スコ・ロジスティクスとの合意のもと、安泰 達物流会社を設立することにしました。
それ 特 集 写真左からフレームワークスの田中純夫社長、セブン-イレブン・ジャパ ンの佐藤和久執行役員物流管理本部長、日産自動車の小山彰VP・SCM 本部長、山九の賀来紀久男顧問 APRIL 2005 32 が我々にとって最初の一歩でした。
我々は安泰達物流会社の株をそれぞれ一部 ずつ所有することで、それぞれ利益配分を受 けられるようにしました。
このため比較的スム ーズに提携が決まりました。
その後、それぞれ の企業の物流業務を統合し、企業間で協調し あう体制を作り上げました。
もちろん、順風満帆ではありません。
何よ り既存の自社輸送部門を処理しなければなり ませんでした。
それでも安泰達物流が立ち上 がって三年が経った現在、我々は目に見える メリットを得られるようになりました。
まず物 流コストが三八%も下がりました。
そして物 流のスピードが速くなり、さらに輸送中の貨 物損傷はかつての四%から〇・三%に激減し ました。
またアウトソーシングによって、長年 解決できなかった監督コストを下げることがで きました。
目に見えないメリットについては計 り知れません。
当初、わが社と科龍の二つの荷主会社で始 まったこの取り組みに、現在はより多くの荷 主企業が参加するようになりました。
美菱、小 鴨、長菱や一部の海外企業、例えば東芝、エ プソンなども参加し、最近では長虹もそれに 加わりました。
3PLは単なるスローガンではありません。
はじめの一歩は大きな困難を伴います。
中国 企業である我々でさえこのような困難に直面し ており、それを克服しなければなりませんでし た。
それにも増して日本企業を始めとした外 資企業が中国市場を開拓する際には企業間の 信頼関係構築が難しく、かつ最も重要である ことを認識していただけるのではないかと思い ます。
しかし、実績は作り上げるものです。
良 い結果は皆さんの努力によって作り上げるもの であることを指摘しておきたいと思います。
三井・松本 ジョイントベンチャーのパートナ ーであるコスコ・ロジスティクスの葉さん。
今 の話に付け加えることがありますか。
コスコ・葉 私の経験では、中国でのSCM の展開に際し、二点ほど注意しなければなら ないことがあります。
まず物流企業が荷主の ためにSCMを設計する場合、荷主の現状に 合わせたオーダーメードで行わなければなりま せん。
これは簡単に聞こえるかも知れませんが、 実際の運営において、物流企業は大きな困難 を克服しなければなりません。
たとえば恐らく全ての物流企業がそれぞれ違 った情報システムを持っています。
しかし顧客 のニーズを完全に満たすためには、専門的な 情報部門を持ち、物流企業の情報システムと 荷主の情報システムを完全に接続できるように しなければなりません。
技術上それが達成でき なければ、業務的に大きな障害を持つことに なります。
荷主との提携関係も長く続きませ ん。
もう一点、物流企業は一般的に自社所有の 設備を使い、顧客に物流サービスを提供する 傾向があります。
それは誤りです。
顧客のS CMをサポートする場合、まず顧客のニーズ に合わせたプランを立て、それに必要となる資 源を新たに調達しなければなりません。
物流企業が競争を勝つためには、もはや一 般的なサービスの提供では荷主の満足を得ら れません。
いかにより高いサービスを提供する かが大事です。
たとえば我々の大口荷主であ る製紙メーカーは、ほとんど外資企業です。
紙 製品の輸送および原材料の搬入量はかなり大 きく、それらの工場は場合によっては専用埠 頭が必要とします。
そのための支援を我々は 基本的に無料で顧客に提供しています。
こう した通常業務以外のサービスを提供することで、 顧客と良好な関係を維持できるのです。
中国市場のコンビニ物流 三井・松本 次に中国におけるSCMについ てセブンイレブンの佐藤さんからお話を伺いた いと思います。
セブン-イレブン・ジャパン 佐藤和久 執行 役員物流管理本部長(以下、セブン・佐藤) セブンイレブンは今年の四月に北京に店を出 しました。
今後数年間で五〇〇店くらいは出 田中純夫(たなか・すみお) フレームワークス 代表取締役社長 埼玉大学卒業。
1981年鈴与入社、1981 年富士システムハウスCIL事業本部長就任。
1991年エクゼ(現・フレームワークス)代 表取締役就任、現在に至る。
ロジスティクス 関係の寄稿多数。
静岡市産学交流センター 運営協議会委員。
2004年11月藍綬褒賞(新 規産業功績)受賞 徐 源 江蘇小天鵝集団 副総裁 中央広 電視大学卒業。
1978年江蘇小天 鵝集団入社、1984年最終組立部副主任、 19688年社長補助、1989年副総裁就任。
グループの物流部門を統括管理。
主な著作 として「市場に対する科学的管理」他。
中国 生産力発展センター上級顧問他兼務。
33 APRIL 2005 店する予定ですが、現在はまだ八店舗です。
基本的には中国の事業展開も日本での展開と 同じだという考えのもとでやっています。
あ くまでマーケット、顧客をしっかりみながら、 マーチャンダイジングをどう反映していくか、 そこに合わせた物流の仕組みをどう作ってい けばいいか、という視点で取り組んでいます。
コンビニですから小さな店です。
二千数百 アイテムの商品、二百数十社の取引先がある 中で、これらが個別に店に商品を持ってきた ら当然、店は大混乱します。
そのため物流は ロジスティクスパートナーに委託しながら、ベ ンダーとセブンイレブンの三者でどのような形 でSCMを構築できるか、これが課題になっ ています。
まだ一〇〇%専用ではありませんが、相当 程度専用化した共同物流センターを現地につ くり、ロジスティクスパートナーに物流を委託 しているのが現状です。
取扱商品が食品です から品質をしっかり保ちながらマーケットにあ った配送回数を確保するため、冷凍、冷蔵、常 温の三温度帯について、冷蔵については一日 二回、常温は週三回といった頻度を決めて納 品体制を作っています。
実際に店の売れ行きをみながら発注したいの で、午前十一時に発注したものが当日の夜、あ るいは翌日の夕方までには納品できる仕組みを 一応、中国でも作ることができました。
しか し発注のシステム、納品のシステム、納品の リードタイムもまだ不十分です。
日本ではノー 検品、要するに店に納品したときに検品しな くても済む仕組みがシステムとしてできていま すが、中国ではまだそれができない。
そのため、 配送効率がもう一つ伸びないという現実を抱 えています。
そのような中で、例えば定時配送、温度帯 物流の中での品質管理など一つひとつの過程 をロジスティクスパートナー、ベンダー、それ に当社が継続的に打ち合わせをしながら進めて きているのが実状です。
まだシステム化できる 部分も多いし、店舗数が少ないために物流効 率が上がらない面もありますが、集中出店を 進めていきながら日本以上の効率的な物流体 制ができるのではないかという気もしています。
日本とまったく同じではないですが、商品ある いはマーケットに合わせた物流を組み立ててい きたいと考えています。
三井・松本 環境整備がまだ発展途上の中で、 いろいろチャレンジしながら苦労されているこ とがよく分かります。
次に中国国際貨運代理 協会(CIFA)から、発展途上である中国 の物流をどう支援していくかを聞きたいと思い ます。
中国国際貨運代理協会(CIFA) 劉 占芳 副会長(以下、CIFA・劉) 国際貨運代 理という業界は、物流業界においても重要な 位置を占めています。
中国の貨運代理業の発 展は非常に速く、今年の前半までに貨運代理 企業は子会社も含めて五〇〇〇社に達しまし た。
このうち日系企業は七九社、子会社が三 〇社です。
中国国際貨運代理業の近代化を促進するた めに、我々協会は最近では以下の活動を行っ てきました。
まず二〇〇六年のFIATAの 年次会議を中国上海で行うよう働きかけ、そ の開会の申請に成功しました。
これは我々の 業界にとって、オリンピック大会を誘致する ようなものです。
会議は世界の貨物代理業の 相互交流と勉強をする良い機会であり、その開催地に選ばれたことを光栄に思います。
こ の会議には一〇〇〇社以上の国際貨運代理企 業が出席する見込みで現在、我々は準備に取 り掛かっています。
この大会を史上最高の年 次会議にしたいと考えています。
その際には、 ぜひ日本の方々にも上海にお越しいただきたい。
二番目は、二〇〇三年の後半に当協会が行 った「中国物流万里行」の活動が成功裏に終 了したことです。
この活動は政府部門の支持 を得て、業界では良い反応を得られました。
そ の後、協会が貨運代理のトップ一〇〇企業の 選定を行いました。
今日同席している葉総経 理が代表するコスコ・ロジスティクスもトップ 特 集 ●セブン― イレブン販売動向に応じた 計画 的な 納品頻度を設定する 商 品 納品頻度 管理温度 米飯類・調理パン 3回/日 20℃ 焼成パン・総菜・ 2回/日 5℃ 調理麺・牛乳等 ソフトドリンク・ 3回/週 常温 加工食品・菓子・雑貨 酒類 6回/週 常温 アイスクリーム・ 6回/週 −20℃ 冷凍食品等 APRIL 2005 34 一〇社に入っています。
三番目は、貨運代理業の資格認定および人 材育成について成果を上げていることです。
人 材育成は中国の弱い部分です。
我々協会は積 極的に人材育成を図っています。
その一つと して資格試験制度を作りました。
この三年間 に約四万六〇〇〇人が受験しました。
合格率 は六五%です。
四番目は国内企業と海外との連携を深める ための取り組みです。
二〇〇四年には中外物 流商談会を行いました。
また日中韓物流シン ポジウムも開きました。
その際、我々は一対 一の方式を取り、企業それぞれが個別に相手 と話をする時間を設けました。
多くの企業か らかなりの好評を得られました。
今後は業界の基準作りなどでさらに力を入 れたいと思っています。
具体的には二〇〇五 年三月に行われる「信用重視キャンペーン」 というイベントに当協会も参加します。
これに よって業界内の有力企業を中心に、信用度を リンクさせて、業界のレベルアップを図りたい と思っています。
また政府に協力し、業界の新たなルール作 りに力を入れています。
現在の法律を修正す ることもあり得ます。
実際、既に国内の貨運 代理企業は認可制から登録制に変わりました。
今後は外資企業に対しても登録制を採用して いくことになります。
その他、業界の情報化 にも力を入れています。
また大学と連携し、人 材育成を行っています。
今後、JIFFAな ど海外の団体とも提携し、当協会のレベルア ップを図りたいと考えています。
三井・松本 SCMの推進とロジスティクス パートナーということで、田中さんの方から何 かコメントはございますか。
FW・田中 物流企業と荷主企業の間の議論 は、どうしてもコストダウンの話になってしま います。
しかし、これを一年二年と重ねてい くうち、コストダウンにも限界がきます。
行き 過ぎたコストダウンは荷主にとってもサービス レベルを下げる可能性がありますし、物流企 業そのものの経営を圧迫する要因にもなってし まいます。
そこで第一セッションでも話が出て いましたが、荷主と目的を共有する、顧客サ ービスという観点が重要になってきます。
日本、韓国、中国にはそれぞれ世界的メー カーが存在して、品質も遜色のないものを製 造しています。
それではどこに競争の優位性 を見いだすかというと、ひとつはビジネスある いはサービスのプロセスです。
これからはロジ スティクスやSCMを競争力として利用するこ とが可能になります。
企業が元々持っている ブランドと品質にプロセス改革としてのロジス ティクスサービスを掛け合わせて競争力を高め ていく。
そのために物流改革を荷主企業と物 流企業との間の共通の目的のもとに追求する ことが求められてくると思います。
第3セッション――克服すべき課題 三井・松本 次に第3セッションに移りたい と思います。
「中国におけるロジスティクス環 境改善のために克服すべき課題」です。
とく に中国側から、この話を聞くというのは我々 日本側にとっては大変新鮮だと思います。
ま ずコスコ・ロジスティクスの葉さんから中国の ロジスティクス環境に関する問題点について話 していただきたい。
中国物流の「小、少、弱、散、低」 コスコ・葉先ほど田中社長が紹介されたよ うに、中国における物流サービスはまだ荷主 のニーズに合致しているとは言い難い状況です。
我々自身、まだ多くの問題があることを感じ ています。
特に鉄道輸送に大きな問題が存在 し、中国全体の物流の発展を阻害するネック となっています。
また大都市の市内交通規制 が厳しく、都市内配送が非常に制限されてい ます。
大型物流センターの数が極端に少ない ことが企業の物流コストが下がらない一因にも なっています。
佐藤和久(さとう・かずひさ) セブン-イレブン・ジャパン 執行役員物流管理本部長 帯広畜産大学卒業。
1980年セブンイレブ ンジャパン入社。
1992年品質管理総括マ ネージャー就任。
2002年物流管理本部副 本部長を経て、2004年執行役員物流管理 本部長に就任し、同社の物流部門と品質管 理部門を統括。
劉 占芳 中国国際貨運代理協会 副会長 北京外語大学卒業。
1975年対外経済貿易 部配属。
1985年総合計画統計処主任スタ ッフ、1993年対外貿易貨物輸送司総合処 副処長、処長就任。
1998年中国国際貨運 代理協会副会長就任、現在に至る。
国際貨 運代理業界の指導を担当。
35 APRIL 2005 我々は日系企業を含む外資企業と中国本土 の企業の物流に対するニーズを調査し比較し ました。
その結果、少なくとも以下の三つに ついて、外資企業は非常に強い関心を持って いることがわかりました。
第一に、物流企業の情報システムが整備さ れているか、しかも荷主企業のシステムとリン クできるかどうか。
二番目に、KPIです。
特 に配送のスピード、正確性といった点に高い 要求をしています。
三番目に、外資企業はで きるだけ母国で行われているSCMと同様のも のを中国でも行いたいと考えています。
こうし たニーズは中国企業にとって、大きいプレッシ ャーとなると同時に、中国物流の発展を促進 するものでもあります。
三井・松本 CIFAの劉さん、付け加える ことがあったらお願いします。
CIFA・劉 葉さんの意見と全く同じです が、私は主に貨運代理業の立場から問題点を申し上げます。
先ほども触れたように中国貨 運代理業界も量的にはかなり拡大してきまし たが、質的にまだ多くの問題が存在していま す。
そこで我々は業界の現状を五文字でまと めました。
その五文字とは「小、少、弱、散、 低」です。
「小」とは経営規模や資産規模が小さいこと。
「少」とはサービスメニューおよび専門的な人 材が少ないこと。
「弱」とは競争力および資金 調達力が弱いこと。
「散」とは均一的なサービ スレベルがなく、ネットワークがない、あるい は分散化し統一的な経営がないことです。
最 後の「低」とは情報化レベルおよびマーケテ ィング手法の低さのことです。
もちろん、これ は一般的な話です。
当業界は中小企業が圧倒 的に多く、葉総経理のコスコ・ロジスティク スのような大企業はまだまだ少数派なのです。
日本の企業と比較し現段階で最も重要なの は、制度およびサービス基準の樹立です。
そ の解決について、以下の三点が重要であると 考えています。
まず、政府主管部門の政策指 導および制度の制定・実行です。
次に国有企 業の改革問題の対処。
最後に人材育成の発展 を図ることです。
三井・松本 山九の賀来さんにも中国の物流 事情に関する課題を指摘していただきたい。
山九・賀来 やはり焦点となるのは人材の育 成と確保です。
先ほどCIFAの劉さんから 物流士の資格について紹介がありましたが、こ れに期待しています。
通関士の時もそうでし たが、外資の物流企業にはそのような資格取 得のチャンスがなかなか与えてもらえません。
中国側の企業には、例えば一〇人受験できる といった枠がありましたが、外資系物流企業 には試験の紹介もすぐには来ませんでした。
我々が申し出ると二〜三人受験できるといっ た具合でした。
そのような環境が阻害要因の 一つに挙げられると思います。
それから、中国の人は自分の持っているノ ウハウを他人に教えることを嫌う傾向がありま す。
教えてしまうと自分のポジションがなくな ってしまうからです。
それを克服するためには、 社内教育の評価制度をつくって、給料に反映 させるというシステムが必要だと考えています。
WTOへの加盟による規制緩和は年ごとに確実に実現していますが、我々の事業免許等 については中央政府の政策や方針が地方政府 まで行きわたっていません。
地方では規制が 生きているところもあります。
それには国内企 業の保護という面もあるのだと思います。
投 資についても過剰投資が求められます。
陸送 事業で我々がトラック保有台数を申請すると、 その一〇倍くらいの保有を求められます。
さらに一般的に言って中国の企業には輸送 責任という意識が低いようです。
我々は保険 をかけて輸送を引き受けるわけですから、料 金勝負になると苦しい立場に置かれます。
こ の点についても基準があればと思います。
特 集 左から中国国際貨運代理協会(CIFA)の劉占芳副会長、江蘇小天鵝集団 (LITTLE SWAN)の徐源副総裁、中国遠洋物流(COSCO LOGISTICS) の葉偉龍総経理 APRIL 2005 36 物流施設面については、主要都市では中国 政府が物流センターをつくるよう指令がでてい て、上海にも六カ所できています。
ところが、 それらの施設は保管に重点が置かれていて多層 階がほとんどです。
しかもアクセスのための道 路が狭いなど立地条件にも問題があります。
で すから我々が利用しようとしても難しいと判断 せざるを得ないケースが多くあります。
せっか く建設するのですから、近代物流をやるため にはそれに対応した施設を提供してくれると非 常に助かります。
三井・松本 それでは荷主代表としましてリ トルスワン、セブンイレブン、日産の順に中 国における問題点について話していただきたい と思います。
小天鵝・徐 我々は物流企業と完全な契約を 結び、良好な提携関係もあり、しかも基準も きちんと定めてあります。
それでも管理は難し い。
我々の生産ラインからの製品を国内三〇 〇〇以上の県・市に供給する物流は全て安泰 達物流会社に任せていますが、そのプロセス においての人的管理が非常に難しいのです。
コ ミュニケーションがうまくいかなければ、仕事 もつまずくことになります。
人的なコミュニケ ーションが最も大事です。
トップマネジメント、ミドルマネジメント、 ローマネジメント、それぞれを担当する管理者 が物流企業とのそれぞれのレベルにおけるコミ ュニケーションを適宜、図るべきです。
トップ による頻繁な経営方針の変更は慎むべきです。
現実には新たに赴任した部門管理者や経営ト ップが従来のやり方を覆すこともあるので、絶 えず物流企業との意見交換が大事です。
また二〇〇四年から中国で新しい「道路交 通法」が施行されました。
それに伴い過積載 の規制がかなり厳しくなっています。
石油の 高騰もあって従来、不当に安かった運賃の調 整が現在行われています。
それらの問題につ いては、単純に契約通りではいきません。
相 手の現状に合わせた契約の見直しが必要です。
中国の物流企業の利益率は元々高くありま せん。
外部環境の変化によって、利益を圧迫 するようなこともあり得るので、その都度調整 していくことが重要です。
今回の場合、我々 は話し合いによって一〇%のコストアップで対 応しました。
もちろん、それはコスコ・ロジス ティクスとの親密的な対話を保っているからこ そできたことです。
三井・松本 次に佐藤さん。
セブン・佐藤 問題だと感じているのは、ベ ンダーとロジスティクスパートナーの双方とも、 SCMに対する理解度が低いことです。
顧客 に必要な品物を提供していくという小売りの立 場から見たときに理解の足りないところがある 気がしています。
現在、商流と物流を分けて、それぞれセブ ンイレブンも含めた三者でチームを作って仕事 をしているところですが、現実にはなかなかう まくいきません。
もともと中国のメーカーは自 社配送でした。
それに対して我々は物流セン ターにいったん商品を預けてもらい、預かり在 庫の中から発注された分を物流センターから店 に配送するように依頼しているのですが、ベン ダーがきちんと在庫をもたせてくれません。
店で一日何個売れて、センターには今、在 庫が何個あるか、という情報をベンダーはイン ターネットでいつでも見られるような状態にな っています。
その数字を見た上でベンダーがセ ンターに納品する仕組みになっているのですが、 肝心の納品がありません。
そのためセンターの 在庫がなくなって店では欠品が多くなるという 事態が起こっています。
センターからベンダー に配送を依頼してもなかなか入ってこない。
そ こでセブンイレブンからベンダーに商流のなか でいろいろなお願いをしています。
一方で、ロジスティクスパートナーによる物 流センターの運営にも問題を抱えています。
流 通加工で、食品は鮮度管理をしながら仕分け して店に納品しなければならないのですが、鮮 度管理不良、仕分けミス、帳簿在庫と実在庫 の不一致などがまだ多く起こっています。
技 術的な問題はシステムも含めてそれぞれの部分 で修正していけばいいと思うのですが、パート ナーとしてトータルの流れで顧客に商品を提供 していくのだという本質的なところでまだ理解 が得られていません。
言われたから納品します、商売がなくなる から納品します、といったレベルに陥っている 気がします。
流通加工という初歩的な段階な のですが、セブンイレブン、物流センター、ベ ンダーも含めてもう一段階ステップアップする ことが一番の課題です。
また今のところはまだ店舗数が少ないので直 37 APRIL 2005 接大きな問題にはなっていませんが、北京市 内の交通混雑や厳しい交通規制で夜間でない とトラックが通行できないという問題もありま す。
多頻度の配送、顧客へのサービスを考え た場合、将来この辺がネックになってくる気 がしています。
三井・松本 日産の小山さんお願いします。
日産・小山 武漢の西北約三〇〇キロの襄樊 というところに当社の工場があります。
二〇 〇四年の夏にそこで?ティアナ〞という新型車 の生産が始まりました。
クオリティー(Q)、 コスト(C)、デリバリー(D)とも、当初の 目標としてきたレベルで立ち上げることができ ました。
通常、新車の立ち上げでは非常に大変な苦 労をするのですが、むしろ日本より短い期間 で立ち上げることができました。
途中、設備 や作業の準備を見ていて、実は計画に間に合 わないのではないかと思っていたのですが、最 後にはきちんと帳尻が合った。
中国のポテン シャルにはすごいものがあると実感しました。
ただし、その時のQCDの目標値は中国用 のもので、日本、北米、欧州のレベルにはま だ達していません。
一つには作業する人の仕事に対する知識、習熟度の問題があります。
そ れに文化の違いからくる仕事のやり方の違い。
ただ、これは外国で生産する場合には中国だ けでなく、どの国でも出てくる問題です。
時 間をかけても?Nissan Way〞を理 解してもらって、進めていくしかない。
中国用の目標値を設定した理由はいくつも ありますが、そのうち若干の具体例を紹介し たいと思います。
まず道路の未整備です。
日 本ですと生産用の部品をサプライヤーから当社 の工場まで届けてもらう平均距離は五〇キロ 前後ですが、中国では一〇〇〇キロを超えて います。
しかも途中にはでこぼこ道もあります。
エンジンのようなセンシティブな部品を、でこ ぼこ道で運んでも耐えられるような容器に費用 をかけなければなりません。
本来なら世界共 通の容器でやりたいのですがそれができない。
条件が違ってきますからコストが余分にかかり ます。
次に、外資系の製造業者には?貿易権〞と いう制約があります。
あらかじめ許可された以 外の品目や数量を輸入することができません。
それができるのは貿易権をもっている国内メー カーだけです。
法律ですから仕方ないのですが、 我々の立場から見れば、SCMの?節〞が増 え、時間もコストもかかることになります。
実際にやってみて分かったこともあります。
我々は日本から部品を相当量中国に輸出して 現地で組み立てています。
これらの部品の通 関にかかる時間が北米や欧州に比べて長い。
日 本から工場までパイプライン(リードタイム) が通関のところで伸びて長くなります。
これを 欧米並にしてもらいたい。
通関もインフラの 整備と同じで、法的な整備を含めてぜひ改善 をお願いしたいところです。
中国は重要なマー ケットだからこそ、日本、北米、欧州と同じ マネジメントレベルにしていきたいのです。
三井・松本 最後になりますが、今回のワー クショップ/シンポジウムを通じて驚いたのは、 まず日中双方の指摘がほとんど同じだったとい うことです。
通常、自分の国の問題点や欠点 は隠したがる、あるいは守りに入る傾向があり ますが、中国側から率直に、オープンに問題 点の指摘があったことは新鮮な驚きでした。
お そらく物流にかかわるものとして、ものをきちんと正確に、安全に運ぶという思いが双方の 原点にあるのではないかと思います。
その解決 のために両国の官民が一体となって、迅速に 解決していくというコンセンサスができたこと は大変意味があったのではないかと思います。
葉さんからもコメントをお願いします。
コスコ・葉 中国の市場はさらに開放されるこ とになります。
同時にSCMは中国ですでに スタートしています。
私は日中両国の企業が 提携し、SCMの推進に力を注ぎ、我々の荷 主により良いサービスを提供すると同時に、両 国間の貿易発展を促進するよう努力しなけれ ばならないと認識しています。
特 集 セブン-イレブン・ジャパンの佐藤和久執行役員物 流管理本部長 APRIL 2005 38 本シンポジウムは、中国におけるロジスティクス環 境の改善について、以下のとおり提言する。
1 中国におけるロジスティクス環境の改善の意義 ●SCM(サプライチェーンマネジメント)構築のた めのロジスティクス最適化は、消費者ニーズを優先 した「プル型」経営の実現を促すものである。
中国 企業の中には、未だ企業の都合を優先した「プッ シュ型」経営が見られるが、「プル型」経営への転 換を促すためにもロジスティクス最適化が求められ る。
●「プル型」経営を意識している日中の企業は、中 国においてSCM構築のためのロジスティクス最適 化の方策を模索しているが、さまざまな阻害要因か ら中国の実情に合わせて対応していることが現状で あり、これらの要因を解決することにより中国にお ける企業経営の効率化を実現することができるとと もに、中国経済はもとより、アジア経済・グローバ ル経済の発展に大きく貢献することが期待できる。
2 中国におけるロジスティクス環境の 改善の方向性 ?ロジスティクスパートナーの有効活用と育成 ロジスティクスパートナーは、企業のSCM構築の 柱となる重要な存在。
中国企業の発展のためにもロジ スティクスパートナーの有効活用が必要である。
他方、物流事業者は、多様化する荷主のニーズに 応えるため、「運送」のみを請け負う存在から、荷主企業に対して提案ができる存在(ロジスティクスパー トナー)となるべきである。
?ロジスティクス高度化への理解の促進 ロジスティクスは、社会・産業・生活を支える「ラ イフライン」であり、温度帯管理、トレーシング等の 技術導入や、IT技術との融合によるロジスティクス 高度化は、より豊かで安全な社会を提供するものであ るとともに、省エネルギー、CO 2 削減などの地球環 境問題の解決に貢献するものであることから、その付 加価値について企業、消費者の理解を深めることが重 要である。
?インフラの改善 中国におけるインフラ整備は、飛躍的に進みつつあ るが、利用者の視点に立った施設の「使い勝手」と いう観点から見ると、未だ改善の余地がある。
ロジスティクス最適化を推進する上では、「共同配 送センター」のような施設が有効であると考えられ、 行政の主導による整備促進が求められる。
?中国固有の商慣習 現存する中国固有の商慣習は、ロジスティクス最適 化を阻害する要因となり得ることから、透明性の向上 「中国物流をめぐる日中シンポジウム」提言 二〇〇四年十一月十八日 39 APRIL 2005 が求められる。
?人材育成 ロジスティクス最適化を実現するためには、専門知 識を身につけた人材の確保・育成が不可欠である。
中 国では、特に現場長クラスの人材育成が急務である。
?規格、システム、制度の標準化 中国では、ロジスティクスに関する規格、システ ム、制度が地域ごとに違う場合があり、ロジスティク ス最適化を阻害する一因となっている。
ロジスティク ス最適化を推進するためには、規格、システム、制度 の標準化が有効であり、早期からの透明性の高い情報 開示が求められる。
3 中国におけるロジスティクス環境の 改善に向けた関係者の取り組み 上記2を実現するため、日中両国の官民及び関連 業界団体が協力して、以下の諸件についてスピード感 をもって取り組むべきである。
?日中官産学共同による人材育成方策の検討 ロジスティクスは、総合的な学問であり、技術的、 経済的、実務的側面から幅広い知識が求められるた め、企業レベルのみならず、行政、大学等学術研究 機関の協力によるインターンシップの受け入れ、相互 講師派遣、研究等人材育成方策の検討が求められる。
?ロジスティクス高度化の意義、メリットについての 積極的アピール 中国においてロジスティクスパートナーの有効活用 を促すため、ロジスティクス高度化の意義、メリット を積極的にアピールすべきである。
また、企業レベルにおいても、日々のビジネスを通 じた日中両国企業のパートナーシップ関係の構築によ り、相互のレベルアップが図られるべきである。
?当局間による継続的な情報交換・意見交換と民間 へのフィードバック 日中両国のロジスティクス環境の改善を図るため、 両国の物流当局は、それぞれの施策について情報交 換・意見交換を継続的に行い、更なる協力関係を構 築することが求められるとともに、その成果を民間に フィードバックすべきである。
4 将来展望と期待 ?経済のグローバル化の進展による国際分業体制の確 立により、中国における近隣諸国との国際的なS CM構築を求める動きが加速しており、今後、近 隣諸国との連携によるSCM構築のための環境整備 が必要となる。
?ロジスティクス環境の改善がグローバルな課題であ ることを踏まえると、将来的には、ロジスティクス 最適化の取り組みが日中間のみならず、周辺のアジ ア地域に広がっていくことが望まれる。
※ こ の 記 事 は 同 イ ベ ン ト で 行 わ れ た 座 談 会 を 国 土 交通省の許可を得て本誌が編集・再構成したも のです。
文責は本誌にあります。
特 集
パネルディスカッションは 四つのセッションに分けて進めていきます。
第 一セッションはSCM推進の意義。
第二セッシ ョンは中国におけるSCMの具体的な事例、あ るいは各社がチャレンジ中の取り組みの紹介。
第三セッションは中国におけるロジスティクス 環境の課題や問題点の指摘。
そして最後に、第 一〜第三セッションの流れを踏まえて、今回の ワークショップとパネルディスカッションの結論 をまとめ、提言に結びつけていきたいと思いま す。
それでは第一セッションに入ります。
はじ めに日産自動車の小山さんからお願いします。
日産リバイバルプランからSCMへ 日産自動車 小山 彰 VP SCM本部長 (以下、日産・小山) まず当社にとって、な ぜSCMが必要なのかをお話しします。
九〇年 代後半、当社は経営的に非常に厳しい状態にお かれていました。
これには根本的に三つの問題 がありました。
一つは「利益追求の不徹底」。
つぎ込んだ金額に対してどれだけリターンがあ ったかというフォローが長年、中途半端だった ということです。
二つめは「顧客志向」。
カスタマーファース トといいながら実際には顧客が重視されていま せんでした。
頭では分かっていても、一人ひと りの仕事にそれが反映されていなかった。
顧 客が求める商品とまったく違うものができあが ってしまっていた。
三つめは構造的、体質的 な問題ですが、一つめ(利益追求の不徹底) と二つめ(顧客志向)を覆う形で「部門の壁」 が大きな課題になっていました。
そんな危機的な状況を、「日産リバイバルプ ラン」と、その後の「N180」というアク ションプランによって何とか生き残ってきたわ けです。
その過程では部門の壁をどう取り除 いていくかが一番大きな問題でした。
いわゆる 庭先管理(部門ごとの管理)、つまり自分のと ころさえよければそれで足りて、全体のプロセ スをみる体質になっていなかった。
そこで、一つにはクロス・ファンクショナ ル・タスク・チーム(CFT:Cross Functional Task Team )を作った。
部門横断的に 人を組織し、とにかくドラスティックな案を出 せ、ということで活動してきました。
その提案 を実行するかしないかの判断は経営者側がやる ことにしましたが、出てきた提案は結果的に 昨年11月、国土交通省と日本インタ ーナショナルフレイトフォワーダーズ 協会の主催による「中国物流をめぐる 日中ワークショップ/シンポジウム」 が開催された。
これに合わせて中国か ら行政関係者や有力企業のキーマンた ちが来日。
中国物流の現状と課題につ いて日本側関係者と議論を交わした。
その模様を報告する。
松本順一(まつもと・じゅんいち) 三井物産 執行役員物流本部長 横浜国立大学卒業。
1971年三井物産入社。
1982年シカゴ大学大学院(MBA)修了。
1992年米国三井物産ニューヨーク本店 VP&GM、2002年執行役員経営企画部長、 2003年執行役員駐中国副総代表を経て、 2004年より現職。
小山 彰(こやま・あきら) 日産自動車VP SCM本部長 早稲田大学卒業。
1974年日産自動車入社。
1989年生産管理部第二生産管理課長、 1997年欧州日産会社(NENV)生産計画 部長を経て、2003年SCM本部長に就任し、 現在に至る。
ロジスティクスとSCM領域に おける同社の戦略・企画を統括。
総合コーディネーター 三井物産 松本順一 執行役員物流本部長 中国側コーディネーター 中国遠洋物流(COSCO LOGISTICS) 葉偉龍 総経理 パネリスト 山九 賀来紀久男 顧問 セブン-イレブン・ジャパン 佐藤和久 執行役員物流管理本部長 日産自動車 小山彰 VP SCM本部長 フレームワークス 田中純夫 社長 江蘇小天鵝集団(LITTLE SWAN) 徐源 副総裁 中国国際貨運代理協会(CIFA) 劉占芳 副会長 日中物流ワークショップ座談会 第4部 27 APRIL 2005 ほとんど実行されました。
しかし、ここでの提案はプロジェクト的なこ とであって、これを会社の体質としてどう根 付かせていくかというところで、当社にとって のSCMの課題、任務、責任が出てきました。
つまり、当社におけるSCMとは?Big C FT〞、会社としてのCFTという位置づけで あって、すべてについて部門横断的な動きを していくというのがその任務です。
具体的に取り組んだのは、社内の効率化と いうことでは、車両、部品すべてを含む在庫 と物流コストの削減です。
対顧客ということ ではリードタイムの短縮です。
注文をもらって から顧客に車を届けるまでの日数をドラスティ ックに短縮しようという活動をしました。
その過程で、当社にはたくさんの資本関係 にある系列会社がありましたが、これらの会 社との取引を、一部を除いて一切やめようと いうことになりました。
資本関係の解消とともに主従の関係を断ち切り、ビジネスライク に仕事を進めています。
壁は乗り越えるより?壊せ〞 下請け企業との関係では片一方だけが儲か っても意味がなく、いかにして?Win ―Wi n〞の関係を築き上げるかが最大の課題です。
それをグローバルにやるということが、もう一 つのポイントです。
国内だけならそれほど難し いことではありません。
全世界で部分最適か ら全体最適をどう求めるかが課題でした。
先ほどの庭先管理、つまり部門ごとの管理 が全社的な管理に広がると総論賛成・各論反 対がぞろぞろでてきます。
衝突も起こります。
しかし、この衝突を避けるのではなく、意図 的に起こそうという考え方で進めていきました。
我々は「健全な衝突」と呼んでいます。
それ によって何が問題なのか、それをどう解決して いくのかという、まさにSCM的な課題解決 が求められるようになりました。
当社はそれまでも何十年にもわたって部門の 壁を乗り越えるということについて議論をして きましたが、まったくできていませんでした。
そこで、壁は乗り越えるのものではなく、壊す ものだという発想に切り替えました。
壁はある から越えなければならないのであって、なけれ ば越える必要はありません。
そうして全社的にSCMというコンセプトの 中で壁の排除に取り組んできました。
その結 果、在庫にしろ、物流コストにしろ、リード タイムにしろ、当初の目的(コミットメント) をクリアしたレベルに達することができました。
ただ、この先グローバルにどう展開していくか がこれからの課題です。
中国は当社にとって非常に重要なマーケッ トだととらえています。
しかし中国だからとい って特別なアプローチを考えているわけではあ りません。
アメリカ、ヨーロッパ、他のアジア 諸国とまったく同じように考えています。
イン フラ等は違っていますが、そこをどう乗り越え るか。
今までどおりの改善ではなく、ブレーク スルー、発想の転換が必要です。
中国でも、いわゆるQCD、つまりクオリ ティ、コスト、デリバリー。
最近ではDはタイ ムのTに変えていますが、この三つを世界共通のレベルに持って行こうという狙いです。
そ れも非常に短時間で実現していく。
その責任 を負っているのが当社にとってのSCMという 位置付けになっています。
系列の馴れ合いを解消する 三井・松本 先ほど系列の排除という話があ りました。
これをロジスティクスパートナーの 選択という面から、日本ならびに中国の例も 踏まえて補足してください。
日産・小山 我々はロジスティクスパートナー に限らず、SCMの中で何が重要かを考える ときに、一つは可視化(visibility )を重視し 特 集 写真右から三井物産の松本順一執行役員物流本部長、中国遠洋物流 (COSCO LOGISTICS)の葉偉龍総経理、江蘇小天鵝集団(LITTLE SWAN)の徐源副総裁 APRIL 2005 28 ます。
全体のプロセスが見えるようにするとい うことです。
全体のプロセスの中のどこが課題 なのか、誰の課題なのか、どうやって解決す るのかを探ります。
もう一つは透明性(transparence )をどう確保するかを重視します。
ロジスティクスパートナーとは、従来は主従 の関係にありました。
これはいいように見えま すが、実は透明性や可視性が確保されません。
サプライチェーンを絵に描いてみるとその辺が まったく分からないというのが実情でした。
系 列の解消は実は「馴れ合い」の解消なのです ね。
馴れ合いは夫婦間ではいいのですが(笑)、 会社ではダメです。
物事をはっきりさせていく ことがいかに大事かということが分かってきま した。
それといかにしてWin ―Winの関係をつ くるかということですね。
ロジスティクス・コ ストは下げたいのですが、単純に値引きを迫 れば輸送業者にしわ寄せがいく。
単品の単価 を下げたい時には部品のサプライヤーにしわ寄 せがきます。
それではうまくいきません。
例えば、サプライヤーとの間では、我々は 「日産同期生産」というコンセプトで、同じ情 報、同じ基点で仕事をしています。
我々が生 産を減らせばサプライヤーも減らすという発想 です。
サプライヤーからロジスティクス・コス トを下げるアイデアをもらうと、それから発生 するベネフィットを五〇:五〇で分けるという 取り決めもしています。
そうして両方でうまく コストを下げていく。
以前は部品代に輸送コストも含まれていま した。
SCMの観点からいうと透明性にまっ たく欠けていました。
しかしこれらを分離させ ました。
輸送コストはいくら、製造コストはい くらと分けて、製造の過程ではこういう無駄 があるからサプライヤーと一緒に解消していき ましょう、というやり方でお互いのコストダウ ンを進めていきました。
中国で事業を始めるにあたり、まったく同 じことを考えてやろうとしていますが、我々の 経験がないこともあってまだ不十分です。
いか に短期間でグローバルなレベルにするかという ことが現在の課題です。
パートナーシップの条件 三井・松本 これに対してロジスティクスパー トナーとして、日本側から山九、中国側から コスコ・ロジスティクスに話を聞きたいと思い ます。
まず賀来さんから。
山九 賀来紀久男 顧問(以下、山九・賀来) 私どもはロジスティクスパートナーとして荷 主企業からの信任を受けて荷主企業のロジス ティクスをいかに効率化するかということが 業務の主体です。
荷主からアウトソーシング を受けた業務については品質を低下させては いけません。
もちろんコストも上げてはいけ ません。
リードタイムやジャスト・イン・タ イム等々も厳守しなければいけません。
荷主 企業のマーケティング戦略についても、ロジ スティクスパートナーとして同じ戦略で対応 しなければなりません。
SCMを成功させるためには、とくに荷主企 ●日産自動車 中国におけるロジスティクスパートナー選定基準 1. 中国における経営実態が存在している ○ ○ 2. 物流コスト低減の企画、実行力 ○ 3. 物流専用の技術サポートを有して問題解決能力がある ○ 4. 中国において自動車輸送の経験がある ○ ○ 5. 自動車部品倉庫の運営ができる ○ 6. 複数の輸送モード展開ができる ○ 7. 日産の仕組みの経験がある ○ 8. プレゼンテーション内容 ○ ○ 9. 車両物流システムを短期間で開発できる ○ 10. 物流拠点のインフラが整っている ○ 11. 海上輸送の戦力を備え且つ中国での免許を持っている ○ 評価項目 調達 物流 完成車 物流 日産自動車の小山彰VP・SCM本部長 29 APRIL 2005 業とロジスティクスパートナーのトップ同士が 共通した認識を持つことが重要です。
目的や 問題点に対して共通意識をもち、お互いの信 頼関係の中で「運命共同体」として事業を始 めるのだということを認識する必要があります。
SCMを構築するにあたってロジスティクス パートナーは荷主企業のニーズに応えるために 作業工程、生産スケジュール、生産量、商品 別の販売戦略に関する情報を共有しなければ なりません。
これについては綿密な打ち合わせ をするということを一つのプロセスとして意思 統一する必要があります。
SCMを実施したことによる成果は両者で 確認します。
どこが成功した、どこがまだ十 分ではないといったことをお互いに認識し、ロ ジスティクス業者が次のステップでトライして いくという環境に持っていくことが大切です。
さらに、可視化された物流を可能にするため にはEDIを活用したネットワークの確立が必 要です。
ハードの部分では、荷主企業の要求に応え られる拠点展開が求められます。
最終的には 荷主が固定費として物流費用等々を変動費と し、我々の努力の成果が変動費に反映される ようにする。
これが荷主企業の収益改善にな り、ひいてはキャッシュフローが改善されるこ とになります。
三井・松本 次に中国側から葉さん。
中国遠洋物流(COSCO LOGISTICS ) 葉 偉 龍 総経理(以下、コスコ・葉) 物流企業 として、自分の荷主にSCMサービスを提供 する際、条件として荷主と戦略的パートナー シップを組まなければなりません。
コスコ・ ロジスティクスは中国本土において、中国の 大手電機メーカー八社にSCMサービスを提供しています。
当社の物流サービスの提供に より、荷主企業の物流コストは低減され、同 時に従来それぞれのメーカーが持っていた自 社の物流部門、倉庫、トラックが当社との提 携によって必要なくなりました。
そして、そ れらの企業の物流部門の人員をすべてコス コ・ロジスティクスの管理下に置くことにな りました。
それが成功したモデルです。
私は荷主と物流企業が連携し、SCMを構 築する場合、四つの関係に注目しなければな らないと考えます。
まず、正しい提携関係を 持つことです。
荷主は物流サービスを単なる 取引と考えるのではなく、戦略的視点を持つ べきです。
そうすれば長期的な目線で経営戦 略を考えることができます。
二番目は、このような提携関係を別の目線 を持って見なければいけません。
物流企業は メーカーの物流コストを減らすだけではなく、 それによってメーカーが自社のコア部分である 製造および販売などに経営資源を集中できる 環境を提供しています。
三番目は、Win ―Win関係への対処です。
つまりリスクと利益を共に分け合うことです。
荷主が物流企業に業務委託をする場合には、公 平かつ市場原理に基づいた原則に沿っていく ことが望ましい。
外部環境が大きく変化した 場合にも、契約で定めているサービスを提供 する代償としての合理的利益を物流業者が得 ることを認めなければなりません。
実際、市 場の変化は非常に素早いため、完全に契約で 縛るわけにはいかないのです。
四番目は信頼関係の構築です。
物流企業の トップから現場まで、完全に契約通りの良い サービスを提供しなければなりません。
それに 対し、荷主のトップは自社物流のアウトソーシングに対する社内の反発を常に察知し、和 らげなければなりません。
それにより、SCM における荷主と物流企業との良好関係の構築 になります。
賀来さんが先ほど話されたように、ある企 業がその物流業務をアウトソーシングする場合、 物流企業のトップと荷主のトップは良好なコミ ュニケーションを持たなければなりません。
そ のようなコミュニケーションがなければ、成功 は難しいと思います。
人材育成とCLO 三井・松本 いろいろな企業のコンサルティン 特 集 賀来紀久男(かく・きくお) 山九 顧問 西南学院大学卒業。
1965年山九入社。
1979年中国プロジェクト本部業務マネー ジャー、1984年上海駐在員事務所長、 1994年東アジア営業部長を経て、1997 年国際事業本部副本部長執行役員中国総 代表就任。
2003年に顧問(中国担当)就任。
葉 偉龍 中国遠洋物流 総経理 上海海事大学・オランダマスホリット学院工 商管理修士課程コース修了。
1996年上海 中遠国際貨運総経理、1998年中遠コンテ ナ輸送副総経理兼務、2002年中国遠洋物 流取締役総経理就任、現在に至る。
上海海 事大学客員教授他兼務。
APRIL 2005 30 グをしている立場からフレームワークスの田中 さん、SCMの意義、あるいは必要性につい てコメントをお願いします。
フレームワークス 田中純夫 社長(以下、 FW・田中) 我々がSCMの仕組みを日本 だけでなく、アジア、ヨーロッパ、アメリカ で活動している日本企業向けに導入する際に いつも直面するのが人材の問題です。
SCM という形を作っても動かすのは、やはり人間 です。
時々、物流マネージャーの採用に立ち会っ てくれとクライアントから依頼を受けることも あります。
なかには雇って一週間で会社に出 てこなくなって、その上、一週間分の退職金 を要求されたというケースがありました。
別の 企業では採用した人がとてもよく働くので評価 していたら、その人が知り合いを採用してくれ と言い始めて、それに応えていると、半年く らいで親族・縁者が社員の半分を占めるよう になり、元に戻すまでに数年かかったという事 例もありました。
こうした難しい環境の中でシステムをどうつ くり、どう動かしていくかということが課題に なります。
中途採用は確かに即戦力になりま す。
しかし、時間はかかるものの三〇歳以下 の若い人をしっかり教育し、SCMをよく理 解した人材を育てることに取り組んではどうか と思います。
当社は各国の大学、研究機関、物 流協会などと交流をもって、講師の相互派遣、 場合によってはインターンシップとして学生を 受け入れるなどして、将来の人材を育成して いきたいと考えています。
昨今、中国や韓国では大学で物流の修士課 程あるいは博士課程ができて、物流人材の育 成に国を挙げて取り組んでいます。
日本では 私学中心にセミナーや社会人大学院などがあ るくらいで、大学における学生の教育がまだ 本格的には行われてないようです。
これは早 急に整備することが望まれます。
さらにSCMの位置づけを経営者が理解す ることが重要です。
経営陣のなかにCLO ( Chief Logistics Officer )を置くことが、こ れからの企業には必須になってくると思います。
新人の育成と、トップダウンのロジスティクス あるいはSCMの取り組み。
この二つのアプ ローチが必要でしょう。
具体的に日本と中国の間で物流と情報が動 き始めるとコミュニケーションが問題になって きます。
システム間で情報を交換するためには 標準化は避けて通れません。
オペレーションの 効率化を図るためには物差しが必要となります。
何をやったらどうした効果が出てきたかという 管理指標です。
一般的にはKPI(K e y Performance Indicator )といいますが、ロジ ス テ ィ ク ス の 場合は 、KLPI(K e y Logistics Performance Indicator )という共 通の物差しを持って効率化を図っていきます。
最初の段階では情報コードの統一から入っ ていく必要があります。
これが様々な影響を 及ぼします。
例えば、バーコードの普及とコン ビニエンスストアの広がりには切っても切れな い関係があります。
バーコードの標準ができた 時にいろいろな産業が対応しました。
例えば 飲料水は、かつてはガラスの瓶に入っていまし たが、曲面を持つものにバーコードを印刷する のは難しかった。
そのため瓶を作った会社が 何社か倒産しました。
標準化への乗り遅れで すね。
一方で、バーコードを使って情報システム が動き始めるとデータが蓄積されていきます。
それを活用した結果が現在のコンビニエンスス トアの発展です。
標準化によって将来は知識 データベースが日中間に構築されてきます。
こ れは国の様々な施策や企業の戦略的な物流ビ ジネスに活用できると考えています。
三井・松本 第一セッションの議論を統括し ます。
まず組織のあるところには必ず壁がある。
この壁を取り除くことがSCMの基本的な使 命かと思います。
そのためには情報がスムーズ に流れるようにする。
部分最適から全体最適 へ向かうというキーワードが何度も繰り返され ていますが、そこが重要だと思います。
また、これを担うのは一企業だけではない。
企業間つまり荷主企業とロジスティクス企業、 ベンダー企業、納入先を含めた全関係者の共 同プロジェクトにしていく。
その時には「共有 化」が大切です。
情報の共有に限らず「思い」 も含めて一つにしていく。
ここから「信頼感」、 「Win ―Win」の関係が生まれてくる。
こ れは日本の企業だけでなく中国の企業にも共 通の認識で、お互いにSCMを推進しながら 全体最適企業を目指そうというコンセンサスが みられました。
31 APRIL 2005 第2セッション ――中国におけるSCMの事例 三井・松本 第二セッションでは、まず田中 さんから中国、日本それぞれの国におけるS CMの進展度合いについての説明をお願いし ます。
FW・田中 SCMは大別すると三つのステ ージで発展していくと考えられます。
ステージ 1は「サプライチェーンの実行」です。
まずや れるところから業務改善していき、その結果 を管理データ、実績データとして数字で残し ていきながら生産性の向上を図っていきます。
係数データに基づくモニタリングや、物流収 支の改善を図っていきます。
それができるとステージ2「SCM計画」 に進んでいきます。
ベンダーなどの取引先を含 めた在庫の扱い方を見直します。
この過程で物流を外部の専門家にアウトソースすることが 始まります。
そして次のステージ3の「グロー バルSCM」は、系列を超えて戦略的な同盟 を確立していく「CPFR(Collaborative Planning and Forecasting Replenishment )」 の段階になります。
製造と販売が同盟を組ん でマーケットの予測を行ってものをつくり、売 れたものを補充していく、という取り組みです。
それがグローバルに展開されていくということ です。
もっとも実際の進展度合いは、この分野で 先行しているとされるアメリカでさえ、一九九 七年の五月に初めてシカゴの?Distribution Expo 〞でSCMセミナーのセッションが開か れたくらいで、情報がまとまってきたのはわず か数年前のことです。
ウォルマートとP&G などが推進しているCPFRにしても、ガイ ドラインができたのは九七年の一月。
しかも 新聞で見る限りウォルマートですら、この展 開を攻めあぐねているという状況です。
それでもアメリカは戦略同盟まできています が、日本の企業はようやくVMI(Vendor- Managed Inventory: ベンダー主導型在庫管 理)を導入して、ロジスティクス業者とパー トナーシップを組みながら在庫を低減していく ことに取り組んでいるという段階。
中国はま だ成長段階ですから、物流業務をどうするか という過程にあります。
しかし、中国では非常に短い期間でSCM の実行が実現されているので、もしかするとこ の後、一足飛びにグローバルソーシングまでい ってしまうかもしれません。
そんな中で、上昇 していく物流コストを、IT等を活用して低 減するという取り組みがSCMの中で行われて いるという状態ではないかと思います。
ライバル企業と物流合弁 三井・松本 それでは中国側から家電メーカ ー「江蘇小天鵝集団(リトルスワン)」の徐さ んに、中国で自らチャレンジしたSCMの実 例について披露してもらいます。
江蘇小天鵝集団(LITTLE SWAN ) 徐 源 副 総裁以下、小天鵝・徐) わが社もかつては 中国の伝統的企業と同じく、社内に物流部門 を持っていました。
しかし、WTO加盟後、新しい挑戦が始まりました。
社内の物流部門 では環境の変化に到底、対応しきれなくなり ました。
物流という「第三の利潤源」を得る ため、我々は強い危機感を持ってパートナー を求めました。
恐らく中国では、当時のわが社のような環 境に置かれた企業が少なくても全体の五〇% を占めています。
各社ともパートナーを求めて いるものの、誰もその一歩を踏み出せないでい ます。
そこで、わが社は二〇〇一年において、 (ライバルの大手家電メーカー)科龍集団とコ スコ・ロジスティクスとの合意のもと、安泰 達物流会社を設立することにしました。
それ 特 集 写真左からフレームワークスの田中純夫社長、セブン-イレブン・ジャパ ンの佐藤和久執行役員物流管理本部長、日産自動車の小山彰VP・SCM 本部長、山九の賀来紀久男顧問 APRIL 2005 32 が我々にとって最初の一歩でした。
我々は安泰達物流会社の株をそれぞれ一部 ずつ所有することで、それぞれ利益配分を受 けられるようにしました。
このため比較的スム ーズに提携が決まりました。
その後、それぞれ の企業の物流業務を統合し、企業間で協調し あう体制を作り上げました。
もちろん、順風満帆ではありません。
何よ り既存の自社輸送部門を処理しなければなり ませんでした。
それでも安泰達物流が立ち上 がって三年が経った現在、我々は目に見える メリットを得られるようになりました。
まず物 流コストが三八%も下がりました。
そして物 流のスピードが速くなり、さらに輸送中の貨 物損傷はかつての四%から〇・三%に激減し ました。
またアウトソーシングによって、長年 解決できなかった監督コストを下げることがで きました。
目に見えないメリットについては計 り知れません。
当初、わが社と科龍の二つの荷主会社で始 まったこの取り組みに、現在はより多くの荷 主企業が参加するようになりました。
美菱、小 鴨、長菱や一部の海外企業、例えば東芝、エ プソンなども参加し、最近では長虹もそれに 加わりました。
3PLは単なるスローガンではありません。
はじめの一歩は大きな困難を伴います。
中国 企業である我々でさえこのような困難に直面し ており、それを克服しなければなりませんでし た。
それにも増して日本企業を始めとした外 資企業が中国市場を開拓する際には企業間の 信頼関係構築が難しく、かつ最も重要である ことを認識していただけるのではないかと思い ます。
しかし、実績は作り上げるものです。
良 い結果は皆さんの努力によって作り上げるもの であることを指摘しておきたいと思います。
三井・松本 ジョイントベンチャーのパートナ ーであるコスコ・ロジスティクスの葉さん。
今 の話に付け加えることがありますか。
コスコ・葉 私の経験では、中国でのSCM の展開に際し、二点ほど注意しなければなら ないことがあります。
まず物流企業が荷主の ためにSCMを設計する場合、荷主の現状に 合わせたオーダーメードで行わなければなりま せん。
これは簡単に聞こえるかも知れませんが、 実際の運営において、物流企業は大きな困難 を克服しなければなりません。
たとえば恐らく全ての物流企業がそれぞれ違 った情報システムを持っています。
しかし顧客 のニーズを完全に満たすためには、専門的な 情報部門を持ち、物流企業の情報システムと 荷主の情報システムを完全に接続できるように しなければなりません。
技術上それが達成でき なければ、業務的に大きな障害を持つことに なります。
荷主との提携関係も長く続きませ ん。
もう一点、物流企業は一般的に自社所有の 設備を使い、顧客に物流サービスを提供する 傾向があります。
それは誤りです。
顧客のS CMをサポートする場合、まず顧客のニーズ に合わせたプランを立て、それに必要となる資 源を新たに調達しなければなりません。
物流企業が競争を勝つためには、もはや一 般的なサービスの提供では荷主の満足を得ら れません。
いかにより高いサービスを提供する かが大事です。
たとえば我々の大口荷主であ る製紙メーカーは、ほとんど外資企業です。
紙 製品の輸送および原材料の搬入量はかなり大 きく、それらの工場は場合によっては専用埠 頭が必要とします。
そのための支援を我々は 基本的に無料で顧客に提供しています。
こう した通常業務以外のサービスを提供することで、 顧客と良好な関係を維持できるのです。
中国市場のコンビニ物流 三井・松本 次に中国におけるSCMについ てセブンイレブンの佐藤さんからお話を伺いた いと思います。
セブン-イレブン・ジャパン 佐藤和久 執行 役員物流管理本部長(以下、セブン・佐藤) セブンイレブンは今年の四月に北京に店を出 しました。
今後数年間で五〇〇店くらいは出 田中純夫(たなか・すみお) フレームワークス 代表取締役社長 埼玉大学卒業。
1981年鈴与入社、1981 年富士システムハウスCIL事業本部長就任。
1991年エクゼ(現・フレームワークス)代 表取締役就任、現在に至る。
ロジスティクス 関係の寄稿多数。
静岡市産学交流センター 運営協議会委員。
2004年11月藍綬褒賞(新 規産業功績)受賞 徐 源 江蘇小天鵝集団 副総裁 中央広 電視大学卒業。
1978年江蘇小天 鵝集団入社、1984年最終組立部副主任、 19688年社長補助、1989年副総裁就任。
グループの物流部門を統括管理。
主な著作 として「市場に対する科学的管理」他。
中国 生産力発展センター上級顧問他兼務。
33 APRIL 2005 店する予定ですが、現在はまだ八店舗です。
基本的には中国の事業展開も日本での展開と 同じだという考えのもとでやっています。
あ くまでマーケット、顧客をしっかりみながら、 マーチャンダイジングをどう反映していくか、 そこに合わせた物流の仕組みをどう作ってい けばいいか、という視点で取り組んでいます。
コンビニですから小さな店です。
二千数百 アイテムの商品、二百数十社の取引先がある 中で、これらが個別に店に商品を持ってきた ら当然、店は大混乱します。
そのため物流は ロジスティクスパートナーに委託しながら、ベ ンダーとセブンイレブンの三者でどのような形 でSCMを構築できるか、これが課題になっ ています。
まだ一〇〇%専用ではありませんが、相当 程度専用化した共同物流センターを現地につ くり、ロジスティクスパートナーに物流を委託 しているのが現状です。
取扱商品が食品です から品質をしっかり保ちながらマーケットにあ った配送回数を確保するため、冷凍、冷蔵、常 温の三温度帯について、冷蔵については一日 二回、常温は週三回といった頻度を決めて納 品体制を作っています。
実際に店の売れ行きをみながら発注したいの で、午前十一時に発注したものが当日の夜、あ るいは翌日の夕方までには納品できる仕組みを 一応、中国でも作ることができました。
しか し発注のシステム、納品のシステム、納品の リードタイムもまだ不十分です。
日本ではノー 検品、要するに店に納品したときに検品しな くても済む仕組みがシステムとしてできていま すが、中国ではまだそれができない。
そのため、 配送効率がもう一つ伸びないという現実を抱 えています。
そのような中で、例えば定時配送、温度帯 物流の中での品質管理など一つひとつの過程 をロジスティクスパートナー、ベンダー、それ に当社が継続的に打ち合わせをしながら進めて きているのが実状です。
まだシステム化できる 部分も多いし、店舗数が少ないために物流効 率が上がらない面もありますが、集中出店を 進めていきながら日本以上の効率的な物流体 制ができるのではないかという気もしています。
日本とまったく同じではないですが、商品ある いはマーケットに合わせた物流を組み立ててい きたいと考えています。
三井・松本 環境整備がまだ発展途上の中で、 いろいろチャレンジしながら苦労されているこ とがよく分かります。
次に中国国際貨運代理 協会(CIFA)から、発展途上である中国 の物流をどう支援していくかを聞きたいと思い ます。
中国国際貨運代理協会(CIFA) 劉 占芳 副会長(以下、CIFA・劉) 国際貨運代 理という業界は、物流業界においても重要な 位置を占めています。
中国の貨運代理業の発 展は非常に速く、今年の前半までに貨運代理 企業は子会社も含めて五〇〇〇社に達しまし た。
このうち日系企業は七九社、子会社が三 〇社です。
中国国際貨運代理業の近代化を促進するた めに、我々協会は最近では以下の活動を行っ てきました。
まず二〇〇六年のFIATAの 年次会議を中国上海で行うよう働きかけ、そ の開会の申請に成功しました。
これは我々の 業界にとって、オリンピック大会を誘致する ようなものです。
会議は世界の貨物代理業の 相互交流と勉強をする良い機会であり、その開催地に選ばれたことを光栄に思います。
こ の会議には一〇〇〇社以上の国際貨運代理企 業が出席する見込みで現在、我々は準備に取 り掛かっています。
この大会を史上最高の年 次会議にしたいと考えています。
その際には、 ぜひ日本の方々にも上海にお越しいただきたい。
二番目は、二〇〇三年の後半に当協会が行 った「中国物流万里行」の活動が成功裏に終 了したことです。
この活動は政府部門の支持 を得て、業界では良い反応を得られました。
そ の後、協会が貨運代理のトップ一〇〇企業の 選定を行いました。
今日同席している葉総経 理が代表するコスコ・ロジスティクスもトップ 特 集 ●セブン― イレブン販売動向に応じた 計画 的な 納品頻度を設定する 商 品 納品頻度 管理温度 米飯類・調理パン 3回/日 20℃ 焼成パン・総菜・ 2回/日 5℃ 調理麺・牛乳等 ソフトドリンク・ 3回/週 常温 加工食品・菓子・雑貨 酒類 6回/週 常温 アイスクリーム・ 6回/週 −20℃ 冷凍食品等 APRIL 2005 34 一〇社に入っています。
三番目は、貨運代理業の資格認定および人 材育成について成果を上げていることです。
人 材育成は中国の弱い部分です。
我々協会は積 極的に人材育成を図っています。
その一つと して資格試験制度を作りました。
この三年間 に約四万六〇〇〇人が受験しました。
合格率 は六五%です。
四番目は国内企業と海外との連携を深める ための取り組みです。
二〇〇四年には中外物 流商談会を行いました。
また日中韓物流シン ポジウムも開きました。
その際、我々は一対 一の方式を取り、企業それぞれが個別に相手 と話をする時間を設けました。
多くの企業か らかなりの好評を得られました。
今後は業界の基準作りなどでさらに力を入 れたいと思っています。
具体的には二〇〇五 年三月に行われる「信用重視キャンペーン」 というイベントに当協会も参加します。
これに よって業界内の有力企業を中心に、信用度を リンクさせて、業界のレベルアップを図りたい と思っています。
また政府に協力し、業界の新たなルール作 りに力を入れています。
現在の法律を修正す ることもあり得ます。
実際、既に国内の貨運 代理企業は認可制から登録制に変わりました。
今後は外資企業に対しても登録制を採用して いくことになります。
その他、業界の情報化 にも力を入れています。
また大学と連携し、人 材育成を行っています。
今後、JIFFAな ど海外の団体とも提携し、当協会のレベルア ップを図りたいと考えています。
三井・松本 SCMの推進とロジスティクス パートナーということで、田中さんの方から何 かコメントはございますか。
FW・田中 物流企業と荷主企業の間の議論 は、どうしてもコストダウンの話になってしま います。
しかし、これを一年二年と重ねてい くうち、コストダウンにも限界がきます。
行き 過ぎたコストダウンは荷主にとってもサービス レベルを下げる可能性がありますし、物流企 業そのものの経営を圧迫する要因にもなってし まいます。
そこで第一セッションでも話が出て いましたが、荷主と目的を共有する、顧客サ ービスという観点が重要になってきます。
日本、韓国、中国にはそれぞれ世界的メー カーが存在して、品質も遜色のないものを製 造しています。
それではどこに競争の優位性 を見いだすかというと、ひとつはビジネスある いはサービスのプロセスです。
これからはロジ スティクスやSCMを競争力として利用するこ とが可能になります。
企業が元々持っている ブランドと品質にプロセス改革としてのロジス ティクスサービスを掛け合わせて競争力を高め ていく。
そのために物流改革を荷主企業と物 流企業との間の共通の目的のもとに追求する ことが求められてくると思います。
第3セッション――克服すべき課題 三井・松本 次に第3セッションに移りたい と思います。
「中国におけるロジスティクス環 境改善のために克服すべき課題」です。
とく に中国側から、この話を聞くというのは我々 日本側にとっては大変新鮮だと思います。
ま ずコスコ・ロジスティクスの葉さんから中国の ロジスティクス環境に関する問題点について話 していただきたい。
中国物流の「小、少、弱、散、低」 コスコ・葉先ほど田中社長が紹介されたよ うに、中国における物流サービスはまだ荷主 のニーズに合致しているとは言い難い状況です。
我々自身、まだ多くの問題があることを感じ ています。
特に鉄道輸送に大きな問題が存在 し、中国全体の物流の発展を阻害するネック となっています。
また大都市の市内交通規制 が厳しく、都市内配送が非常に制限されてい ます。
大型物流センターの数が極端に少ない ことが企業の物流コストが下がらない一因にも なっています。
佐藤和久(さとう・かずひさ) セブン-イレブン・ジャパン 執行役員物流管理本部長 帯広畜産大学卒業。
1980年セブンイレブ ンジャパン入社。
1992年品質管理総括マ ネージャー就任。
2002年物流管理本部副 本部長を経て、2004年執行役員物流管理 本部長に就任し、同社の物流部門と品質管 理部門を統括。
劉 占芳 中国国際貨運代理協会 副会長 北京外語大学卒業。
1975年対外経済貿易 部配属。
1985年総合計画統計処主任スタ ッフ、1993年対外貿易貨物輸送司総合処 副処長、処長就任。
1998年中国国際貨運 代理協会副会長就任、現在に至る。
国際貨 運代理業界の指導を担当。
35 APRIL 2005 我々は日系企業を含む外資企業と中国本土 の企業の物流に対するニーズを調査し比較し ました。
その結果、少なくとも以下の三つに ついて、外資企業は非常に強い関心を持って いることがわかりました。
第一に、物流企業の情報システムが整備さ れているか、しかも荷主企業のシステムとリン クできるかどうか。
二番目に、KPIです。
特 に配送のスピード、正確性といった点に高い 要求をしています。
三番目に、外資企業はで きるだけ母国で行われているSCMと同様のも のを中国でも行いたいと考えています。
こうし たニーズは中国企業にとって、大きいプレッシ ャーとなると同時に、中国物流の発展を促進 するものでもあります。
三井・松本 CIFAの劉さん、付け加える ことがあったらお願いします。
CIFA・劉 葉さんの意見と全く同じです が、私は主に貨運代理業の立場から問題点を申し上げます。
先ほども触れたように中国貨 運代理業界も量的にはかなり拡大してきまし たが、質的にまだ多くの問題が存在していま す。
そこで我々は業界の現状を五文字でまと めました。
その五文字とは「小、少、弱、散、 低」です。
「小」とは経営規模や資産規模が小さいこと。
「少」とはサービスメニューおよび専門的な人 材が少ないこと。
「弱」とは競争力および資金 調達力が弱いこと。
「散」とは均一的なサービ スレベルがなく、ネットワークがない、あるい は分散化し統一的な経営がないことです。
最 後の「低」とは情報化レベルおよびマーケテ ィング手法の低さのことです。
もちろん、これ は一般的な話です。
当業界は中小企業が圧倒 的に多く、葉総経理のコスコ・ロジスティク スのような大企業はまだまだ少数派なのです。
日本の企業と比較し現段階で最も重要なの は、制度およびサービス基準の樹立です。
そ の解決について、以下の三点が重要であると 考えています。
まず、政府主管部門の政策指 導および制度の制定・実行です。
次に国有企 業の改革問題の対処。
最後に人材育成の発展 を図ることです。
三井・松本 山九の賀来さんにも中国の物流 事情に関する課題を指摘していただきたい。
山九・賀来 やはり焦点となるのは人材の育 成と確保です。
先ほどCIFAの劉さんから 物流士の資格について紹介がありましたが、こ れに期待しています。
通関士の時もそうでし たが、外資の物流企業にはそのような資格取 得のチャンスがなかなか与えてもらえません。
中国側の企業には、例えば一〇人受験できる といった枠がありましたが、外資系物流企業 には試験の紹介もすぐには来ませんでした。
我々が申し出ると二〜三人受験できるといっ た具合でした。
そのような環境が阻害要因の 一つに挙げられると思います。
それから、中国の人は自分の持っているノ ウハウを他人に教えることを嫌う傾向がありま す。
教えてしまうと自分のポジションがなくな ってしまうからです。
それを克服するためには、 社内教育の評価制度をつくって、給料に反映 させるというシステムが必要だと考えています。
WTOへの加盟による規制緩和は年ごとに確実に実現していますが、我々の事業免許等 については中央政府の政策や方針が地方政府 まで行きわたっていません。
地方では規制が 生きているところもあります。
それには国内企 業の保護という面もあるのだと思います。
投 資についても過剰投資が求められます。
陸送 事業で我々がトラック保有台数を申請すると、 その一〇倍くらいの保有を求められます。
さらに一般的に言って中国の企業には輸送 責任という意識が低いようです。
我々は保険 をかけて輸送を引き受けるわけですから、料 金勝負になると苦しい立場に置かれます。
こ の点についても基準があればと思います。
特 集 左から中国国際貨運代理協会(CIFA)の劉占芳副会長、江蘇小天鵝集団 (LITTLE SWAN)の徐源副総裁、中国遠洋物流(COSCO LOGISTICS) の葉偉龍総経理 APRIL 2005 36 物流施設面については、主要都市では中国 政府が物流センターをつくるよう指令がでてい て、上海にも六カ所できています。
ところが、 それらの施設は保管に重点が置かれていて多層 階がほとんどです。
しかもアクセスのための道 路が狭いなど立地条件にも問題があります。
で すから我々が利用しようとしても難しいと判断 せざるを得ないケースが多くあります。
せっか く建設するのですから、近代物流をやるため にはそれに対応した施設を提供してくれると非 常に助かります。
三井・松本 それでは荷主代表としましてリ トルスワン、セブンイレブン、日産の順に中 国における問題点について話していただきたい と思います。
小天鵝・徐 我々は物流企業と完全な契約を 結び、良好な提携関係もあり、しかも基準も きちんと定めてあります。
それでも管理は難し い。
我々の生産ラインからの製品を国内三〇 〇〇以上の県・市に供給する物流は全て安泰 達物流会社に任せていますが、そのプロセス においての人的管理が非常に難しいのです。
コ ミュニケーションがうまくいかなければ、仕事 もつまずくことになります。
人的なコミュニケ ーションが最も大事です。
トップマネジメント、ミドルマネジメント、 ローマネジメント、それぞれを担当する管理者 が物流企業とのそれぞれのレベルにおけるコミ ュニケーションを適宜、図るべきです。
トップ による頻繁な経営方針の変更は慎むべきです。
現実には新たに赴任した部門管理者や経営ト ップが従来のやり方を覆すこともあるので、絶 えず物流企業との意見交換が大事です。
また二〇〇四年から中国で新しい「道路交 通法」が施行されました。
それに伴い過積載 の規制がかなり厳しくなっています。
石油の 高騰もあって従来、不当に安かった運賃の調 整が現在行われています。
それらの問題につ いては、単純に契約通りではいきません。
相 手の現状に合わせた契約の見直しが必要です。
中国の物流企業の利益率は元々高くありま せん。
外部環境の変化によって、利益を圧迫 するようなこともあり得るので、その都度調整 していくことが重要です。
今回の場合、我々 は話し合いによって一〇%のコストアップで対 応しました。
もちろん、それはコスコ・ロジス ティクスとの親密的な対話を保っているからこ そできたことです。
三井・松本 次に佐藤さん。
セブン・佐藤 問題だと感じているのは、ベ ンダーとロジスティクスパートナーの双方とも、 SCMに対する理解度が低いことです。
顧客 に必要な品物を提供していくという小売りの立 場から見たときに理解の足りないところがある 気がしています。
現在、商流と物流を分けて、それぞれセブ ンイレブンも含めた三者でチームを作って仕事 をしているところですが、現実にはなかなかう まくいきません。
もともと中国のメーカーは自 社配送でした。
それに対して我々は物流セン ターにいったん商品を預けてもらい、預かり在 庫の中から発注された分を物流センターから店 に配送するように依頼しているのですが、ベン ダーがきちんと在庫をもたせてくれません。
店で一日何個売れて、センターには今、在 庫が何個あるか、という情報をベンダーはイン ターネットでいつでも見られるような状態にな っています。
その数字を見た上でベンダーがセ ンターに納品する仕組みになっているのですが、 肝心の納品がありません。
そのためセンターの 在庫がなくなって店では欠品が多くなるという 事態が起こっています。
センターからベンダー に配送を依頼してもなかなか入ってこない。
そ こでセブンイレブンからベンダーに商流のなか でいろいろなお願いをしています。
一方で、ロジスティクスパートナーによる物 流センターの運営にも問題を抱えています。
流 通加工で、食品は鮮度管理をしながら仕分け して店に納品しなければならないのですが、鮮 度管理不良、仕分けミス、帳簿在庫と実在庫 の不一致などがまだ多く起こっています。
技 術的な問題はシステムも含めてそれぞれの部分 で修正していけばいいと思うのですが、パート ナーとしてトータルの流れで顧客に商品を提供 していくのだという本質的なところでまだ理解 が得られていません。
言われたから納品します、商売がなくなる から納品します、といったレベルに陥っている 気がします。
流通加工という初歩的な段階な のですが、セブンイレブン、物流センター、ベ ンダーも含めてもう一段階ステップアップする ことが一番の課題です。
また今のところはまだ店舗数が少ないので直 37 APRIL 2005 接大きな問題にはなっていませんが、北京市 内の交通混雑や厳しい交通規制で夜間でない とトラックが通行できないという問題もありま す。
多頻度の配送、顧客へのサービスを考え た場合、将来この辺がネックになってくる気 がしています。
三井・松本 日産の小山さんお願いします。
日産・小山 武漢の西北約三〇〇キロの襄樊 というところに当社の工場があります。
二〇 〇四年の夏にそこで?ティアナ〞という新型車 の生産が始まりました。
クオリティー(Q)、 コスト(C)、デリバリー(D)とも、当初の 目標としてきたレベルで立ち上げることができ ました。
通常、新車の立ち上げでは非常に大変な苦 労をするのですが、むしろ日本より短い期間 で立ち上げることができました。
途中、設備 や作業の準備を見ていて、実は計画に間に合 わないのではないかと思っていたのですが、最 後にはきちんと帳尻が合った。
中国のポテン シャルにはすごいものがあると実感しました。
ただし、その時のQCDの目標値は中国用 のもので、日本、北米、欧州のレベルにはま だ達していません。
一つには作業する人の仕事に対する知識、習熟度の問題があります。
そ れに文化の違いからくる仕事のやり方の違い。
ただ、これは外国で生産する場合には中国だ けでなく、どの国でも出てくる問題です。
時 間をかけても?Nissan Way〞を理 解してもらって、進めていくしかない。
中国用の目標値を設定した理由はいくつも ありますが、そのうち若干の具体例を紹介し たいと思います。
まず道路の未整備です。
日 本ですと生産用の部品をサプライヤーから当社 の工場まで届けてもらう平均距離は五〇キロ 前後ですが、中国では一〇〇〇キロを超えて います。
しかも途中にはでこぼこ道もあります。
エンジンのようなセンシティブな部品を、でこ ぼこ道で運んでも耐えられるような容器に費用 をかけなければなりません。
本来なら世界共 通の容器でやりたいのですがそれができない。
条件が違ってきますからコストが余分にかかり ます。
次に、外資系の製造業者には?貿易権〞と いう制約があります。
あらかじめ許可された以 外の品目や数量を輸入することができません。
それができるのは貿易権をもっている国内メー カーだけです。
法律ですから仕方ないのですが、 我々の立場から見れば、SCMの?節〞が増 え、時間もコストもかかることになります。
実際にやってみて分かったこともあります。
我々は日本から部品を相当量中国に輸出して 現地で組み立てています。
これらの部品の通 関にかかる時間が北米や欧州に比べて長い。
日 本から工場までパイプライン(リードタイム) が通関のところで伸びて長くなります。
これを 欧米並にしてもらいたい。
通関もインフラの 整備と同じで、法的な整備を含めてぜひ改善 をお願いしたいところです。
中国は重要なマー ケットだからこそ、日本、北米、欧州と同じ マネジメントレベルにしていきたいのです。
三井・松本 最後になりますが、今回のワー クショップ/シンポジウムを通じて驚いたのは、 まず日中双方の指摘がほとんど同じだったとい うことです。
通常、自分の国の問題点や欠点 は隠したがる、あるいは守りに入る傾向があり ますが、中国側から率直に、オープンに問題 点の指摘があったことは新鮮な驚きでした。
お そらく物流にかかわるものとして、ものをきちんと正確に、安全に運ぶという思いが双方の 原点にあるのではないかと思います。
その解決 のために両国の官民が一体となって、迅速に 解決していくというコンセンサスができたこと は大変意味があったのではないかと思います。
葉さんからもコメントをお願いします。
コスコ・葉 中国の市場はさらに開放されるこ とになります。
同時にSCMは中国ですでに スタートしています。
私は日中両国の企業が 提携し、SCMの推進に力を注ぎ、我々の荷 主により良いサービスを提供すると同時に、両 国間の貿易発展を促進するよう努力しなけれ ばならないと認識しています。
特 集 セブン-イレブン・ジャパンの佐藤和久執行役員物 流管理本部長 APRIL 2005 38 本シンポジウムは、中国におけるロジスティクス環 境の改善について、以下のとおり提言する。
1 中国におけるロジスティクス環境の改善の意義 ●SCM(サプライチェーンマネジメント)構築のた めのロジスティクス最適化は、消費者ニーズを優先 した「プル型」経営の実現を促すものである。
中国 企業の中には、未だ企業の都合を優先した「プッ シュ型」経営が見られるが、「プル型」経営への転 換を促すためにもロジスティクス最適化が求められ る。
●「プル型」経営を意識している日中の企業は、中 国においてSCM構築のためのロジスティクス最適 化の方策を模索しているが、さまざまな阻害要因か ら中国の実情に合わせて対応していることが現状で あり、これらの要因を解決することにより中国にお ける企業経営の効率化を実現することができるとと もに、中国経済はもとより、アジア経済・グローバ ル経済の発展に大きく貢献することが期待できる。
2 中国におけるロジスティクス環境の 改善の方向性 ?ロジスティクスパートナーの有効活用と育成 ロジスティクスパートナーは、企業のSCM構築の 柱となる重要な存在。
中国企業の発展のためにもロジ スティクスパートナーの有効活用が必要である。
他方、物流事業者は、多様化する荷主のニーズに 応えるため、「運送」のみを請け負う存在から、荷主企業に対して提案ができる存在(ロジスティクスパー トナー)となるべきである。
?ロジスティクス高度化への理解の促進 ロジスティクスは、社会・産業・生活を支える「ラ イフライン」であり、温度帯管理、トレーシング等の 技術導入や、IT技術との融合によるロジスティクス 高度化は、より豊かで安全な社会を提供するものであ るとともに、省エネルギー、CO 2 削減などの地球環 境問題の解決に貢献するものであることから、その付 加価値について企業、消費者の理解を深めることが重 要である。
?インフラの改善 中国におけるインフラ整備は、飛躍的に進みつつあ るが、利用者の視点に立った施設の「使い勝手」と いう観点から見ると、未だ改善の余地がある。
ロジスティクス最適化を推進する上では、「共同配 送センター」のような施設が有効であると考えられ、 行政の主導による整備促進が求められる。
?中国固有の商慣習 現存する中国固有の商慣習は、ロジスティクス最適 化を阻害する要因となり得ることから、透明性の向上 「中国物流をめぐる日中シンポジウム」提言 二〇〇四年十一月十八日 39 APRIL 2005 が求められる。
?人材育成 ロジスティクス最適化を実現するためには、専門知 識を身につけた人材の確保・育成が不可欠である。
中 国では、特に現場長クラスの人材育成が急務である。
?規格、システム、制度の標準化 中国では、ロジスティクスに関する規格、システ ム、制度が地域ごとに違う場合があり、ロジスティク ス最適化を阻害する一因となっている。
ロジスティク ス最適化を推進するためには、規格、システム、制度 の標準化が有効であり、早期からの透明性の高い情報 開示が求められる。
3 中国におけるロジスティクス環境の 改善に向けた関係者の取り組み 上記2を実現するため、日中両国の官民及び関連 業界団体が協力して、以下の諸件についてスピード感 をもって取り組むべきである。
?日中官産学共同による人材育成方策の検討 ロジスティクスは、総合的な学問であり、技術的、 経済的、実務的側面から幅広い知識が求められるた め、企業レベルのみならず、行政、大学等学術研究 機関の協力によるインターンシップの受け入れ、相互 講師派遣、研究等人材育成方策の検討が求められる。
?ロジスティクス高度化の意義、メリットについての 積極的アピール 中国においてロジスティクスパートナーの有効活用 を促すため、ロジスティクス高度化の意義、メリット を積極的にアピールすべきである。
また、企業レベルにおいても、日々のビジネスを通 じた日中両国企業のパートナーシップ関係の構築によ り、相互のレベルアップが図られるべきである。
?当局間による継続的な情報交換・意見交換と民間 へのフィードバック 日中両国のロジスティクス環境の改善を図るため、 両国の物流当局は、それぞれの施策について情報交 換・意見交換を継続的に行い、更なる協力関係を構 築することが求められるとともに、その成果を民間に フィードバックすべきである。
4 将来展望と期待 ?経済のグローバル化の進展による国際分業体制の確 立により、中国における近隣諸国との国際的なS CM構築を求める動きが加速しており、今後、近 隣諸国との連携によるSCM構築のための環境整備 が必要となる。
?ロジスティクス環境の改善がグローバルな課題であ ることを踏まえると、将来的には、ロジスティクス 最適化の取り組みが日中間のみならず、周辺のアジ ア地域に広がっていくことが望まれる。
※ こ の 記 事 は 同 イ ベ ン ト で 行 わ れ た 座 談 会 を 国 土 交通省の許可を得て本誌が編集・再構成したも のです。
文責は本誌にあります。
特 集
