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佐高信
経済評論家
67 MAY 2005
『週刊金曜日』別冊ブックレットで『NHK
の正体』が出た。 受信料支払い拒否は七十万
件を超えたといわれるが、それでも、多分
「私はNHKしか見ない」という人は少なくな
いのだろう。 民放のドタバタ劇よりは見てい
られるとか、見ていて「安心感がある」など
という声をよく聞く。 しかし、果たしてそう
なのか。
「NHK受信料を拒否して四〇年」の本多勝
一は、前記のブックレットでこう語る。
「NHKの性格は、今もニュースによく表れ
ているように、現政権の完全な広報機関でし
かない。 これは戦前からの?伝統〞なのだ。
私たちの世代の前後の人々であれば、子ども
のころきいたNHKのラジオ=ニュースを覚
えているだろう。 時報につづいて、あの『軍
艦行進曲
マ
ー
チ
』がはじまる。 そして、ウソでぬり
かためられた大本営発表」
ちょうど敗戦の年の生まれの私は、戦時中
にNHKがどんなニュースや音楽を流したか
は知らない。 しかし、いま、『東京スポーツ』
に「悲歌韓流――古賀政男の失郷」を連載し
ているために、いろいろ資料を読んで、「国民
歌謡」という番組で、こんな歌を流していた
ことを知った。
「靖国神社の歌」「靖国神社招魂祭の歌」「愛
国行進曲」「出せ一億の底力」「出征兵士を送
る歌」「紀元二六〇〇年」「国民進軍歌」――。
その責任がNHK内部はもちろん、外からも問題になったことはない。
昨年暮、NHKの労働組合が開いたシンポ
ジウムで、NHKのある記者はこう話したと
いう。
「地方で十二年サツ回り(警察担当)をして
きた。 また(地方に)出されると思うと、こ
うやってしゃべるのも怖い。 みんな卑怯者。
海老沢さんを認めている一人ひとりの弱さが
問題」
「NHKは密告社会です。 ここで言ったこと
が、三〇分後にはNHK幹部の耳に入ってい
る」
また、別の記者は『週刊金曜日』の取材に
こう答えている。
「NHKは頂点に政治部が君臨しています。
政治部に逆らうものは、地方や、?政治犯収容
所〞と呼ばれる放送文化研究所に飛ばされる
ことが少なくありません」
こうした体質を改める気が本当にあるのか
どうかである。 私は海老沢の後継者を内部昇
格の橋本にした時から、それを疑った。 橋本
が海老沢を顧問にしようとしたことでも、小
手先でかわそうとしか考えていないことは明
らかだろう。
OBの川崎泰資は『NHKと政治』(朝日文
庫)で、それをこう表現している。
〈NHKと権力との関係は、六〇年代は権力
と「対峙」したあと「妥協」から「屈伏」に、
また七〇年代は「屈伏」から「服従」へと向
かい、八〇年代になると「服従」から「迎合」
へと推移していった〉
それでも、「やはりNHK」と思う人は少な
くならないのか。
私が一番驚いたのはNHKの「プロジェク
トX」に登場した技術や製品を展示する特別
展への協賛金を募っていたことだった。 読売
新聞や東京商工会議所が実行委員会に加わり、
トヨタ自動車や大林組が特別協賛金を出した
という。 その依頼には当時のNHK専務理事、
関根昭義が同行したというのだから、NHK
は総会屋になってしまった、といわれても反
論できないだろう。
「プロジェクトX」は企業の問題点を取り上
げず、礼賛ばかりする番組だといわれるが、
NHKがこんな姿勢だから、三菱自動車や西
武鉄道など企業の不祥事が絶えないのだ。
特別協賛した大林組は東京湾アクアライン
の工事事務所長がトンネル技術などを説明し、
宣伝効果は十分にあり、協賛金の分は回収し
たと思っている、と語っている。
NHKは本当に体質を改められるのか
企業の不祥事を助長する甘いメディア
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