ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2002年9号
素朴な疑問
物流網の最適化にITをどう使う

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

65 SEPTEMBER 2002 物流拠点の統廃合は多くの場合、グループ会社や 協力会社の見直しに繋がります。
グループ会社や協 力業者から見れば突然、仕事を失ってしまうことに なりかねない怖い話です。
しかし、これを荷主側か ら見れば、プロセス改革などの時間のかかるプロジ ェクトと比較して、「即効性のある改革」というこ とになる。
そのため現在のような環境下では、最優 先で取り組まれるテーマの一つになっています。
もともと欧米の企業は拠点の統廃合を日常的に実 施してきました。
これに対して日本企業の場合は、 いったん工場や物流センターを建ててしまうと、そ れを改めるということをほとんどしませんでした。
これまでの日本企業の拠点政策は不動産に縛られて きました。
ご存じのように日本の不動産は流動性が 低く、土地利用について多く の規制がある。
選択肢は限ら れており、そう簡単に拠点の 再編などできませんでした。
そのためネットワークの最適化ツールの開発も欧米 に比べてかなり遅れていました。
しかし、最近ではかなり様子が変わってきました。
不動産の流動化が進み、工場の海外シフトによって 土地が空くようになってきた。
同時に、東南アジア や中国を含めてグローバルにネットワークを考える 必要が出てきています。
実際、日本国内で多少拠点 網をいじっても、もはや大きなコスト削減は期待で きません。
しかし海外に目を向けてみる。
例えば、 在庫を日本に置かない。
日本には必要最小限の在庫 を置くだけで、後は調達先となっている東南アジア に置く。
割高な日本国内の物流をできる限り避ける ことでコストを削減する。
そうしたことが現実に可 能になっています。
さて、問題はその具体的な検討方法です。
従来、 日本企業が拠点の統廃合を検討する場合には、既 存拠点の入出荷量や保管料などの経営上の数字を 元に、分散した拠点を一つに集約したらどうなるか といった計算をしていました。
そのような限られた 選択肢の中で、どれが良いのかを選択するだけなら、 エクセル程度の表計算ソフトでも処理できます。
しかし選択肢が増えてくると、それでは済まなく なる。
輸送モード一つとっても、国内ならトラック輸 送だけを考えればよかったけれど、国際輸送であれ ば船や飛行機など、複数のモードを選択して、さら にそれを組み合わせてトータルコストやリードタイ ムを検討する必要が出てくる。
そこまで計算が複雑 化してくると、やはり専用ソフトの助けが要ります。
その代表的なツールとしては英Invensysグループ の「CAPS」や、米国の「インサイト」というソフ トが有名です。
こうしたシミュレーションソフトの 役割は、交通機関の乗換案内のソフトになぞらえる と分かりやすいかも知れません。
乗換案内では出発 点と到着点を入力すれば、料金別、スピード別の最 適ルートを教えてくれます。
同じように拠点の最適 化ソフトは、コスト優位のシナリオでは、どのよう なネットワークの選択肢があ るのか。
リードタイム優位だ とどうか、といった具合に各 種のシナリオを元に、ネット ワークの能力をシミュレーションできるのです。
こうした最適化ソフトは元々、軍事技術から転用 されたものです。
軍事作戦を展開する時に、どこに 補給基地を作って、どこに攻め込むか。
道路や川、 海など与えられた自然環境の中で利用可能な輸送モ ードを選択して、拠点を配置していく技術を、平和 利用という名目で民間に展開したわけです。
販売価格は、まだかなり高額です。
そのため実際 に日本企業が自分で購入して活用しているというケ ースは数えるほどに過ぎません。
日本企業の場合、 最近では変わってきたとはいえ、今のところ大手企 業であっても拠点の統廃合は、欧米ほどには日常化 されていません。
そのため現状では、パッケージソ フトではなく、ソリューションとしてベンダーから 提供される場合がほとんどです。
物流網の最適化にITをどう使う 選択肢が増えると試算も複雑に 軍事技術を転用したソフトが台頭 たなか・すみお 物流企業系シス テムハウスを経て、91年に独立。
エ クゼを設立し、社長に就任。
製造・ 販売・物流を統合するサプライチェ ーンシステムのソリューションプロ バイダーとして活動。
2001年10月 に「フレームワークス」に社名変更 フレームワークス 田中純夫社長

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