ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2002年11号
ケース
ニッセン―― アウトソーシング

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

NOVEMBER 2002 36 デフレを尻目に過去最高益を更新 総合カタログ通信販売大手のニッセンが業 績を急回復させている。
二〇〇一年十二月期 の連結売上高は一三五七億円(前期比三・ 四%増)で、経常利益が四五億円。
売上高こ そピーク時の九六年度より一割以上減ってい るが、利益は過去最高を確保した。
さらに今 年六月の中間決算では、上半期だけですでに 四五億円の経常利益を稼ぎ出している。
通販業界の市場規模は現在、約二・五兆 円といわれている。
バブル経済の崩壊後も九 六年までは成長を持続していた。
ところが九 七年以降、二期連続で市場規模は縮小。
その 後はオフィス用品のアスクルや、化粧品のフ ァンケルなどの元気な企業が出てきて再び盛 り返したものの、千趣会やセシールといった 総合通販大手は苦戦を続けている。
そんな中でニッセンは売上至上主義から収 益性重視に舵を切ることで、いちはやく業績 回復を果たした。
同社でロジスティクス全般 を統括する藤井博取締役調達本部長は、「当 社にとっては九六 年が転機になった。
それまで急激に伸 びていた売り上げ が頭打ちになり、 大量の在庫を抱え 込んでしまった。
それ以来、縮小均 ヤマト運輸との一括契約を3年延長 管理の軸足は配送から調達へシフト 3年前、顧客への商品配送をヤマト運輸に一 本化した。
当初は大型商品の配送トラブルが 頻発したが、これを地道な活動で改善。
2002 年末の契約満了を前に、再びヤマトと3カ年契 約を結んだ。
この契約更新を機に大型商品の 代引きサービスを実現するなど、両社のパー トナーシップは新たな領域に入っている。
ニッセン ―― アウトソーシング 「問題は物流センターより上流 で発生している」とニッセンの 藤井博取締役は語る で含むほぼ全ての宅配業務をヤマト運輸に一任したのである。
ライバルの総合通販業者か らも大いに注目を集める経営判断だった。
紆余曲折の配送パートナー選び 総合通販事業のビジネスモデルは、最初に 大量のカタログを消費者に発送し、カタログ に掲載した商品について電話で注文を受け、 宅配便などで届けるというものだ。
店舗での 接客がない分、配送業務の巧拙が通販事業の 競争力を決める重要なポイントになる。
だか らこそ通販業者の多くが、宅配業務を自前で まかなったり、複数の宅配業者を互いに競わ せるなどしてサービス向上に躍起になってき た。
当のニッセンも、配送パートナー選びには これまで試行錯誤を繰り返してきた。
八七年 に初めて自前の物流センターを京都に構築し たときには、全国規模で赤帽を使っていた。
だが個人事業者の集まりである赤帽のサービ スレベルのばらつきに業を煮やし、九一年に なると全国の配送業務を日本通運に一括委託 してサービスの均一化を図った。
ところが当時の日通の宅配便料金はニッセ ンの期待するレベルではなかった。
そのため ニッセンの物流拠点で梱包済みの商品を、改 めて日通の拠点で大箱に詰め直して一個当た りの単価を下げるという特殊なオペレーショ ンを行った。
日通の現場レベルでの苦肉の策 だったのだが、いかんせんこの手法では、「受 衡に転じ、カタログの発送部数を減らしなが ら、在庫整理や経営効率化に三年間を費やし てきた」と振り返る。
ニッセンが?負の遺産〞の整理の最終局面 にあった九九年十二月期の業績は、どん底と も言うべきものだった。
連結売上高は一二七 九億円とピーク時より二割以上減り、経常利 益にいたっては二四億円の赤字。
業績が好調 だった九四年頃に三〇〇〇円以上あった株価 は、四〇〇円前後に低迷していた。
厳しい環境下にあったこの九九年に、ニッ センは配送パートナーの大胆な見直しを行っ た。
地域ごとに陸運業者を使い分ける従来の 方針を転換し、カタログ配送から家具配送ま 37 NOVEMBER 2002 注してからお客様の手元に商品が着くまでに 一週間から一〇日かかる」(藤井取締役)と いう配送リードタイムの問題がどうしても解 消できなかった。
これを短縮するため、ニッセンは九五年に 配送パートナーを再び見直した。
全国を約一 〇地域に分割して、各地でナンバーワンの陸 運業者と組むという方針を打ち出し、特積み 業者ばかりでなく赤帽や三越物流などをエリ ア別に使い分ける体制を組んだ。
各社を競わ せることで、低コストと高サービスを両立さ せる狙いだった。
しかし、この体制にもいくつかの問題があ った。
地域ごとの物流品質のばらつきが依然 として解消できなかったことに加え、情報シ ステム面の問題が浮上した。
当時はインター ネットを利用する貨物追跡が普及しつつあっ た時期。
だが運送各社の持つシステムは個別 に異なっている。
その配送体制のままニッセ ンが全国レベルで貨物追跡サービスを実現し ようとすれば、複数のシステムに対応するた めの投資が避けられなかった。
九九年の初めに配送パートナーを全国で一 本化するために開いた物流コンペは、こうし た紆余曲折の結果だった。
このときニッセン は全国展開している大手陸運業者のほとんど に声を掛け、日通、ヤマト、佐川急便、西濃 運輸、福山通運、フットワークの六社が入札 に応じた。
当時は宅配業界が個数拡大にしの ぎを削っていた時期だけに、各社にとって年 ニッセンの単体売上高と在庫の推移 有価証券報告書より本誌が作成 90 1,800 1,600 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 単体売上高 在庫回転期間 売上高(億円) 回転期間(カ月) に就いた。
しかし、当初は苦労の絶えない日々が続いた。
カタログ配送や、中小サイズ の商品宅配については、コスト高を承知でヤ マトを選んだだけに配送品質にもおおむね満 足できた。
問題は、家具などの大型商品の扱 いだった。
ヤマトの「宅急便」のサイズは、縦・横・ 高さの合計が一六〇センチ、重さ二五キロ以 内の荷物と定められている。
これより大きな サイズの荷物も「ヤマト便」や引っ越し事業 で扱ってはいるが、決して得意分野ではない。
ところがニッセンの仕事では、大型商品を扱 う三重センターから、組立家具やベッドなど が毎日およそ一万二〇〇〇個、車両台数にし て四〇〜五〇台分も発生する。
ヤマトにとっ ては過去に例のない取り組みだった。
契約締結で新設されたヤマト運輸ニッセン 統括支店の井福悌二支店長は、立ち上げ時の 状況をこう説明する。
「大型商品を扱うニッ センさんの三重センターでは、恐らく不安だ らけだったと思う。
ヤマト側の不安も大きく、 私も眠れない日々を過ごした。
幸いニッセン さんの協力もあって、思っていたよりはスム ーズに業務を立ち上げることができた」 何とか最低限のハードルはクリアしたもの の、初年度の二〇〇〇年には大型商品の配送 トラブルが頻発した。
そもそもヤマトの宅急 便の管理方法は、一つの荷物に一枚の伝票を 付けるというものだ。
組立家具やベッドのよ うに一つの商品なのに梱包が複数に分かれる ケースを、基本的に想定していなかった。
こ のため一つの商品なのにパーツ単位でばらば らと顧客の手元に届くという事態が少なから ず発生してしまった。
ニッセンの藤井取締役は、「ヤマトに一本 化する以前、当社は大型貨物の配送を佐川に 委託していた。
佐川の場合は一人のお客さん の荷物が三つあれば、それぞれに管理する仕 組みを持っている。
これに対してヤマトは、 あくまでも一個一伝票で動かしていた。
だか NOVEMBER 2002 38 間一〇〇〇万個以上を発送するニッセンは極 めて魅力的な荷主だった。
一発勝負のプレゼンテーションを経て、ニ ッセンはヤマトを選んだ。
「コストだけを考え れば、もっと安い会社が二、三社あった。
だ が社内の意見では圧倒的にヤマトの評価が高 かった。
今は亡くなった川島会長も、『通販 のサービスのベースは宅配なんや。
だから 少々高くてもいい』と言う。
それでヤマトに 決めた」と藤井取締役は述懐する。
両社の正式な契約期間は、二〇〇〇年初 めから二〇〇二年の一二月末までの三カ年契 約だった。
九九年秋にまず中小サイズの商品 を扱う「福井ロジスティクスセンター」(福 井県)の配送業務をヤマトに移管。
続いて組 立家具やベッドなどの大型商品を扱う「三重 大型商品物流センター」(三重県)からの配 送業務もほぼ全面的にヤマトに移した。
運賃はニッセン側の強い希望で全国一律と した。
カタログ、宅配便、大型貨物という区 分はするが、それぞれの区分の中ではサイズ や重量が異なっても料金は同じ。
実際の契約 運賃は未公表だが、業績不振のまっただなか にあったニッセンと、宅配荷物の個数を増や したいヤマトの思惑が合致して、宅急便とし てはかなり安値での契約成立だったようだ。
大型商品の配送トラブルが頻発 こうしてニッセンは、年間一〇〇億円以上 を支払うヤマトにとって最大の法人顧客の座 福井ロジスティクスセンターでの出荷作業 高速自動仕分け機のシュート下 でヤマトの作業者が待ち受けて いる。
配送伝票に印字してある ヤマトの着店コードを見ながら カゴ車に積み分けていく ニッセンのセンターは、もとも とヤマトへの作業の外注を前提 に作ったわけではない。
このた め仕分けスペースが、ヤマトの カゴ車を並べるだけで一杯にな ってしまう ら一つだけ忘れてしまうという信じられない ような間違いが簡単に起きた。
最初は参った なと思った」と率直に明かす。
しかもヤマトのインフラでは、大型商品は ベース店(地域のターミナル拠点)での自動 仕分けに乗せられない。
人手で仕分けざるを 得ないため、通常の宅急便とは較べものにな らないほど手間がかかる。
ニッセンが顧客に 対して、大型商品の配送リードタイムをあら かじめ一週間とうたって宅急便と区別してい るのもそのためだ。
無論、この辺の事情はヤマトも承知の上だ ったのだが、現実には一週間かけても配達で きないケースが起きてしまった。
特に年末年 始やお盆などの繁忙期には、多忙を極めるヤ マトの現場が大型商品の処理を後回しにした。
その結果、顧客の手元に商品が到着するまで に何週間もかかるというケースすら発生する 始末だった。
トラブルの発生件数を五分の一に ニッセンは、この状況を何とか改善するよ うにヤマトに求めた。
だがヤマトの立場では、いかに大口顧客とはいえニッセンの大型商品 のためだけに宅急便のインフラを改造するこ とはできない。
情報システムの工夫で解決で きる問題でもない。
結局、残された手段は、 現場レベルでミスを起こさないように注意を 喚起するぐらいでしかなかった。
この状況下でヤマトは、いかにも同社らし い対応をした。
「当初は大型貨物に対する社 内の抵抗もあったが、いったん動き出してし まえば一丸になってやるのがヤマトの強み」 という井福ニッセン統括支店長の言葉通り、 仕組みには手を付けずに現場レベルでの改善 を重ねた。
荷分かれを防止するために作業現 場でチェックリストを出し、本社レベルでも ニッセンの大型貨物の取り扱いに関する注意 を全社に呼び掛けた。
結局、三年間の契約期間を通じて、ヤマト は大型貨物を運ぶ仕組み自体に大枠ではまっ たく手を着けなかった。
それでも「三年前に スタートした時点の問題を一〇とすれば、現 状は二くらいまで減った」(ニッセンの藤井 取締役)。
依然として課題が大きいことは両 社の共通認識だが、トラブルの発生頻度を減 らしたことをニッセンは高く評価している。
だからこそ来年度からの新たな三カ年契約 でも、引き続きヤマトに配送業務を一任する ことを決めた。
一応、今回も宅配各社に呼び 掛けてコンペを実施したが、三年前のような 安値の入札はなかったという。
前回、コスト 高にもかかわらずヤマトを選んだことに加え、 宅配各社の拡大志向が当時とは様変わりして いることも影響したようだ。
強力なライバルが不在だったこともあって、 ヤマトとの再契約をためらう理由は何もなか った。
しかも「見直しへの要望が強かった大 型商品の運賃については多少、値上げした。
全体をかなり低く抑えていることは我々も分 かっているから、大型が苦しいであろうこと は想像できた」と藤井取締役。
ヤマトにとっ ては三年間の苦労が報われた契約更改だった。
もっとも、ニッセンは再契約にあたり条件 をきっちりと付けた。
大型商品の代引きサー ビス(代金と引き換えで商品を受け取るサー ビス)の実現や、商品の返品作業の効率化な どがそれだ。
現状では大型商品の代引きを全 国規模で実施している総合通販業者はいない。
ニッセンとしては、これがライバルに対する 競争力強化につながるというわけだ。
大型商品で代引きサービスを開始すること は、ヤマトにとっては大きな決断だった。
輸 送システムそのものが多くの課題を抱えてい る現状では、「当面、積極的に拡販するつも りはない」とも語る。
ただし、すでに「ヤマ ト便コレクトサービス」という商品名を決め ていることからうかがえるように、ヤマトが 大型貨物の輸送システムの構築に本腰を入れ ようとしていることは明らかだろう。
ヤマトにとって、大型貨物への対応は長年 の悩みのタネだった。
従来から「ヤマト便」 39 NOVEMBER 2002 ヤマト運輸の井福悌二ニッセン 統括支店長は「ニッセンさんの ロジスティクスをすべて受託し たい」と意気込む NOVEMBER 2002 40 で扱ってはいるが、宅急便のために最適化し たネットワークで大型荷物を効率よく運ぶの は難しい。
引っ越し事業のインフラを使うな どすれば運べないことはないが、宅急便と同 様の翌日配達などのサービスを期待されても、 現状では応えようがない。
ヤマトは返品回収を商品化 それでもヤマトが大型荷物の配送にこだわ るのは、法人営業の強化という至上命題があ るからだ。
年間一〇億個近くある宅急便のう ち、すでに七割以上が法人発となっている。
成長が頭打ちになると言われて久しい宅急便 が、依然として伸び続けているのは法人需要 が牽引しているためだ。
そして法人のなかに は、ニッセンのように荷物のサイズにかかわ らず配送業者を一本化して物流管理コストを 下げたいと望む荷主が少なくない。
メール便から大型貨物までを一括受託でき る体制を構築することが、宅急便の成長を持 続する必須条件になりつつある。
ヤマト本社 で大口の法人営業を担当しているセールスプ ロモーション部の長谷川誠部長は、今後の方 向性を次のように示唆する。
「大型貨物の配 送を効率化する前提として、すべてを自前の ネットワークでまかなおうと考えているわけ ではない。
場合によっては地域単位でアライ アンスを組むこともあり得る」 また、ニッセンが今回の契約更改に際して、 もう一つヤマトと合意した条件に、「カミン グコール」と呼ぶ返品作業の効率化がある。
これはニッセンの顧客が商品を購入してから 一〇日以内の返品であれば、ヤマトが集荷に 出向き、伝票記入も不要というサービスであ る。
これも過去三年間の取り組みを通じて浮 かび上がってきた課題だった。
かつてニッセンが「カミングコール」サー ビスを開始したとき、ライバルの通販各社は 冷ややかに見ていたという。
わざわざ返品を 発送するために家で待機している消費者など いない。
自分でコンビニにでも持ち込んだ方 がよほど便利というわけだ。
ところが実際に サービスを実施してみると、年間およそ一五 〇万件発生する返品のうち八割超が「カミン グコール」を利用したことが分かった。
こうなると今度はヤマト側の処理体制が問 題になった。
過去三年間の協力関係の中では、 ニッセンの返品処理システムと、ヤマトのシ ステムを相互接続していなかった。
このため 返品の際に顧客が使う配送伝票は、いったん すべてニッセン統括支店で発行して、全国の 営業所は伝票が届いてから集荷に出向いてい た。
このやり方ではリードタイムが長くなる ため、ニッセンは互いに情報システムに手を 加えて、どこでも伝票を発行できる仕組みの 構築を望んできた。
が、これをヤマト側が先 送りしてきた。
今回の契約更改にあたって、ヤマトはこの 条件を呑んだ。
それどころか同様の回収サー ビスを「宅急便引取サービス」として一般向 けに商品化し、今年一〇月から大々的に売り 出してしまった。
実は同社は以前から家電な どの修理ニーズに応えるため「クイックメン テナンス」という商品を販売していた。
しか し、このサービスは、まず利用者に専用折り 畳みコンテナを届けて、これを後日あらため て集荷するという二段階の手順だった。
これが「宅急便引取サービス」では大幅に 簡素化された。
ニッセンとのケースのように 情報システムの相互接続さえ実施すれば、ヤ マトの各事業所で発行した伝票を携えたドラ イバーが集荷に出向き、専用資材を使ってそ の場で梱包してしまう。
従来より圧倒的にリ ードタイムを短縮できるため、急に発生する パソコンや家電製品の修理などでアフターサ ービスの充実を図りたいメーカーにとって有 効な商品とヤマトはみている。
「『宅急便引取サービス』を商品化するに当た って、ニッセンさんの要望があったのは事実 だ。
でも、それだけではない。
他からも多く の要望が寄せられていて、ニーズに汎用性が あると判断できたからこそ商品化した。
実際 ヤマト運輸の長谷川誠セールス プロモーション部長は「顧客企 業の利益拡大に貢献するのが 我々の役割」と強調する の商品設計は三カ月あれば可能だが、それ以 前の約六カ月間は市場調査に費やしている。
そのときにリース会社や旅行会社など多くの ニーズが見えてきたため、ニッセンさんとも やろうという話になった」と、ヤマトの長谷 川部長は商品化の経緯を説明する。
配送管理から全体最適へ 過去三年間の付き合いを通じて、ニッセン とヤマトの関係は単なる協力物流業者の枠組 みを超えて、マーケティング・パートナーと でも言うべき戦略的なものへと進化している。
ニッセンは今後も配送面のクレーム管理やコ スト管理などは日常的に行うが、大規模な枠 組み変更はまったく考えていない。
ヤマトが 独自開発する新サービスを、ニッセンのサー ビスとして素早く取り込むことによって、ラ イバルの通販各社と差別化していく方針だ。
ヤマトとの協力関係を軌道にのせたニッセ 41 NOVEMBER 2002 ンの物流部門の関心は、すでに配送の効率化からSCMへと移っている。
「欠品補充に時 間がかかるとか、在庫が多いといった物流セ ンターでの問題は、元をたどればすべて上流 で発生している」(ニッセンの藤井取締役)こ とに気付いたためだ。
ニッセンの物流センターにある商品は、原 則としてすべて買い取り在庫となっている。
季刊で発行するカタログに掲載してある限り、 商品の取り扱いは止めることができず、しか も注文に即応するために約二万四〇〇〇SK Uをフルラインで在庫しなければならない。
それでも事前の需要予測が外れれば、欠品が 発生してしまう。
ニッセンにとって欠品は、販売機会の損失 を発生させるばかりか、配送のコストアップ に直結する深刻な問題だ。
同社の商品の配送 料は、カタログ通販でもインターネットを使 ったネットショッピングでも一律で一回三九 〇円。
特に表示のある商品以外、一度に複数 の商品を購入しても送料は同じだ。
このため 仮に同時に三商品を購入する顧客がいて、一 品が欠品していれば、ニッセンはまず二点を 先に送る。
後日、欠品していた商品が入荷し 次第、発送するのだが、このときの送料はニ ッセン負担となる。
実際、二〇〇〇年十二月期のニッセンの連 結売上高は一三一二億円(前期比三・一% 増)だったが、これに対する「運賃荷造費」 は九〇億円(対売上高比率六・七%)と、前 年より十二億円も増えている。
在庫を絞った 影響で欠品が相次ぎ、ニッセンが負担する送 料が膨れあがったためだ。
この傾向は二〇〇 一年度も続き、対売上高運賃荷造費は七・ 〇%とさらに高くなってしまった。
この頭の痛い問題を解消するため、昨年六 月にニッセンは従来は別々に管理していた 「調達」と「ロジスティクス」の組織を一体 化した。
そして約二万四〇〇〇SKUある商 品すべてについて、四〇人の担当者が単品ご とに商品を管理する体制を構築。
需給調整の 高度化に本腰を入れた。
すでに成果も出ている。
二〇〇二年度の上 半期を見る限り受注時の欠品点数は大幅に減 った。
これによって欠品に起因する配送コス トの高騰も適正化しつつあり、今年六月の中 間決算の対売上高運賃荷造費率は、六・〇% と前期比で一・二ポイントも改善した。
欠品 が発生した際に解消するリードタイムも三五 日から二五日へと短縮できた。
今後は在庫補充のタイミングを工夫するこ とで、一層の在庫削減と、欠品減らしの両立 に取り組んでいく方針だ。
そこでは、すでに 海外調達が五五%に上っている仕入れ面での 物流が重要な検討課題になる。
当然、ヤマト のニッセン統括支店でも、次のステップとし て調達領域への受注拡大を狙っているが、「い ずれはヤマトも上手くやるのだろう。
でも現 状ではまだまだのレベル」と藤井取締役の評 価は甘くない。
(岡山宏之) ※2002年度は上期のみの半期決算 1,600 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 7.2 7.0 6.8 6.6 6.4 6.2 6.0 5.8 5.6 5.4 98 99 00 01 02 連結売上高(億円) 運送費比率(%) ニッセンの連結売上高と荷造運送費比率の推移 連結売上高 運送費比率

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