ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2002年11号
値段
ヒューテックノオリン

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

NOVEMBER 2002 54 トランコム、ハマキョウレックスに続く「好 業績・中堅企業」の第三弾として、ヒューテ ックノオリンを取り上げたい。
同社の二〇〇 二年三月期の連結業績は売上高二五一億円 (前年比七・六%増)、営業利益一五・六億円 (同十一・三%減)、当期利益八・四億円(同 十二・九%増)だった。
連結売上高は二期連 続で増収、当期利益は四期連続で増益を記録 した。
営業利益は二〇〇一年三月期の一七・ 六億円がピークだったが、例年ほぼ一五億円 程度の利益を確保できる体制を維持している。
売上高営業利益率は六・二%、連結ROE (株主資本当期利益率)は一〇・八%とトラ ック業界全体のそれと比較すると、相対的に 高い収益力を誇っていると言えるだろう。
株 価は一三〇〇円程度(一〇月一五日現在)と、 四桁の株価を維持している数少ない物流企業 である。
今年の高値一七五〇円からは下落し ているものの、株式市場が八三年以来の安値 圏にあることを考えると、パフォーマンスは 決して悪くない。
事業セグメントは、?運送事業(二〇〇二 年三月期の売上構成比六五・二%)、?倉庫 事業(同二七・九%)、?その他事業(同六・ 九%)――という内訳になっている。
運送事 業には主力の冷凍・チルド食品の輸配送業務 に加えて、貴重品類の警備輸送、病院用リネ ン類の集配業務、百貨店仕入商品の集配業務 などがある。
このうち、病院用リネン類の集 配業務は、連結子会社のヘルティーを通じて 展開している。
ヒューテック本体の部門別内訳は食品物流 が収入の九六・五%を占め、警備輸送に関わ る金融関係の物流が三・二%、残りがその他 となっており、冷凍・チルド食品物流に特化 していることがわかる。
また、カバーしてい る事業エリアは、単独ベースの地域別売上高 で見ると、関東地方(同七四・六%)、東北 地方(同一〇・四%)、関西地方(同八・ 二%)、九州(同六・八%)。
最大の消費地で ある首都圏エリアで強みを発揮している。
成長続ける問屋物流 続いて、他社との差別化要因について触れ てみたい。
同社の特徴は?冷凍・チルド食品 物流に特化している、?コスト管理能力と労働生産性が高い、?迅速な経営判断を下す組 織になっている――の三点である。
第一の冷凍・チルド食品物流に関して次の 三つの形態で事業展開を図っている。
一つ目 は冷凍食品メーカー・商社向けの共同配送事 業である。
荷主の商品を冷蔵倉庫で在庫保管 し、冷凍食品販売卸売事業者に共同配送する。
少量貨物向けの個建て料金設定、二四時間配 送などによって、少量多頻度の小口配送ニー ズに応えている。
因みに、この事業が食品物 流の全売上高のほぼ半分を占めている。
二つ目はチェーンストア物流である。
コン ビニエンスストアや食品スーパー向けに、生 鮮食料品のベンダーからの集荷、流通加工、 第20回 ヒューテックノオリン 百貨店物流から撤退して食品物流に特化した ことが奏功して、ここ数年業績が安定している。
高い収益力を誇り、株価のパフォーマンスも悪く ない。
再編の始まった定温物流業界で勝ち組とな るためには配送ネットワークの拡充が欠かせない。
北見聡 野村証券金融研究所 運輸担当アナリスト 55 NOVEMBER 2002 配送などのサービスを提供している。
特に自 社倉庫スペースを利用した流通加工業務は同 業他社には見られない付加価値の高いサービ スだと言える。
このチェーンストア物流は食 品物流の全売上高の三割弱を占めている。
三つ目は問屋物流である。
問屋に代わって 商品の保管、在庫管理などを行いながら、小 売り店舗への配送までを請け負う。
中間流通 事業者の合従連衡や物流オペレーションのア ウトソーシング化の流れを受けて、とりわけ この事業の成長率が高い。
いずれにしても、 冷凍・チルド食品物流に対する経験と真摯な 取り組みが評価されてきた結果と言えるだろ う。
また、顧客ニーズに則した輸送商品や付 加価値商品のラインナップを充実させたこと が差別化要因にもなっている。
第二のコスト管理能力と生産性の高さは、 物流センター運営の基本コンセプト「(従業 員やパート社員に)考えさせない、歩かせな い、探させない」に象徴されている。
従業員 数は二〇〇二年三月期末で八九六人、パート 社員が一七三九人(年間の平均人員)。
パー ト比率が高い。
「Total Management System 」 を通じて、業務のパッケージ化、マニュアル 化を進めている。
また、物流品質向上のための人材育成にも 注力しており、車両事故の抑制など基本的な 物流業務の品質維持も試みている。
努力した 従業員に対しては経営側がきちんと評価する というスタンスで、会社全体の生産性改善に 取り組んでいる。
第三の迅速な経営判断という点では、最近 の問屋物流の収入増加に見られるように、事 業環境の変化に機敏に対応していることが評 価できる。
振り返れば、同社は九九年五月に 不採算部門であった百貨店宅配事業から撤退 した(因みに同社に業務委託していた百貨店 はその一年後に破綻している)。
当時、冷凍・ チルド食品物流へ特化するという経営判断を 下したことが、結果として食品物流専業者と して強みを発揮することにつながっている。
エリア拡大が課題 今後の経営を考えた場合、同社が抱えてい る課題は次の二点に要約できる。
第一にカバ ーする事業エリアをどのように拡大していく か、である。
先述したように関東地域の売上 高構成比率が高い。
しかし、全国をカバーす る配送網の構築を求める顧客企業の声も少な くない。
現在、全国に拠点を構えているもの の、コールドチェーンネットワークとして十 分に機能しているとは言い難い。
第二に定温物流業界の競合状態の変化にど う対応していくか、である。
今年一〇月、ニ チレイと名糖運輸は資本提携を発表した。
冷 蔵倉庫、定温輸送業界の主力企業同士が手を 組むことで、シナジー効果を発揮するのが狙 いだ。
この提携によって業界シェアは大きく 変わる可能性が高い。
チルド、フローズンな ど低温食品にかかわる物流業界では、食品安 全に対する意識、物流コスト抑制ニーズが強 まっており、従来にも増して、より高度な物 流技術を低コストで提供できる物流業者にシ ェアが集中化するという現象が起こるだろう。
これまでの強みを生かしながら、規模の拡 大と収益力の向上という目標を同時に満たす ためにも、今後、同社にはより一層経営のス ピードを上げ、的確な判断を下していくこと が求められる。
それが勝ち組企業として名乗 りを上げるための条件となるだろう。
きたみ さとし 一橋大学 経済学部卒。
八八年野村 証券入社。
九四年野村総 合研究所出向。
九七年野 村証券金融研究所企業調 査部運輸セクター担当。
社団法人日本証券アナリ スト協会検定会員。
プロフィール ヒューテックノオリン過去2年間の株価推移 (円) (出来高)

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