ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2002年11号
特集
卸が描く日本の流通 小売り専用TCが流通を歪めている

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

NOVEMBER 2002 24 ――四月に発足した「あらた」をどう見ていますか。
「競争は進化を促しますから、ライバルの誕生は歓 迎します。
それほど意識してはいませんが、負けたく ない、負けてはダメだとは思っています。
ただ問題は 何を競うかです。
これまで我々の業界では売上高とか、 お客さんの数とか、社員数などを競ってきました。
し かし今後は、どんな機能やサービスを中間流通として 提供できるかが問われるはずです」 「いま流通業は世界的に競い合っていますが、これ は生産から販売までをいかに無駄なくやるかという競 争です。
この視点を忘れてしまっては、最終的に生き 残るのは難しい。
流通をトータルで構築するテクノロ ジーが不可欠です。
そのためにも、あるべき流通構造 とは何かを考える必要があります」 ――その点を、どう考えているのでしょう。
「まず消費者の視点で発想する必要があります。
小 売店が、どのようなお客さんに、どういった満足を提 供しようとしているのか。
要するにマーチャンダイジ ングから出発すべきなんです。
そこから品揃えが決ま り、ボリュームが決まる。
次にその店頭をいかに無駄 なく、安く維持するかが課題になる。
中間流通の物流 がどうあるべきかは、初めてそこで決まります」 システムの標準化が合併の条件 ――来年四月に小川屋(北関東)、加納商事(滋賀) と合併することになりましたね。
「我々は、直接のお客様である小売業の変化にどう 対応するかという課題を常に抱えています。
小売業に とってチェーン化の進展は最大の命題ですから、お客 様自身がどんどん大きくなっていく。
かつて県単位だ った小売業者が県を超えて店舗展開をするようになり、 そして全国規模のチェーン店へと成長していく」 「このことが問屋にとって致命的な変化を引き起こ すことがあります。
それまでお取引先だった小売業者 が、ある日突然、合併などで全国チェーンに変わり、 従来とは異なる問屋と取引をはじめる。
我々にとって は非常に不安定な状況が生まれているわけです」 ――二社の情報システムや物流はどうなるのですか。
「あの二社からは以前から物流の相談を受けていま した。
そのため実は情報システムも物流センターの中 身も、パルタックと同じものを使っていた。
もともと 非常に近い関係にあったんです」 「僕は標準化が絶対条件だと思っています。
規模が 大きくなればなるほど、例外を許すととんでもないこ とになる。
だからこそ頑に一つのやり方でやってきま した。
現場を動かす基本コンセプトは一貫しています。
当然、そのやり方が本当に正しいのかどうかも一生懸 命に考えざるを得ない。
それが結果として、コストを 下げることにつながりますからね」 ――御社がRDCと呼んでいる大型物流拠点の設置 状況はどうなっているのでしょうか。
「現在は九州、近畿、中部、北陸、岐阜、横浜の六カ 所にRDCがあります。
この他に関東には越谷と千葉 に拠点がありますが、これは昔からの単なる倉庫に過 ぎません。
この二拠点を統合して新たにRDCを作る ため、千葉県の舞浜に約五〇〇〇平米の土地をすで に購入済みです。
できれば来年の秋頃には、七カ所目 のRDCを立ち上げたいと思ってます」 ――御社はこれまで一貫して汎用型の中間流通機能 の提供を目指してきましたね。
「専用型も視野に入っていますよ。
チェーンストア の発達と発展によって、専用型の物流でも採算が合う くらいの規模になったとき、汎用型がいいのか、専用 型がいいのかは、これから検討すべき課題でしょうね。
「小売り専用TCが流通を歪めている」 日本の中間流通は、メーカーから小売りまでを最適化する 視点を欠いている。
製配販の3者が、互いの思惑の違いを乗 り越えて全体最適に取り組まなければ、いずれは消費者に見 捨てられることになる。
パルタック山岸十郎副社長 Interview 25 NOVEMBER 2002 どちらの物流スタイルがいいのかは、その都度、試算 できるはずです」 ――通過型の専用センター(TC)には否定的ですね。
「店舗から見ると、商品がまとまってくるというメ リットは確かにあります。
ただし、その前工程をずっ と遡って見てみると、依然として業種問屋がたくさん いて、それぞれにピッキングという行為が発生してい ます。
専用センターに納入するまでに最低三回はピッ キングをしている。
非常にムダが多い」 「それからもう一つのTCの問題は、作業の平準化 が非常に難しい点です。
例えば、お店があって、TC があって、卸があり、メーカーがあるとする。
お店側 の望むリードタイムというのは、だいたい発注から納 品まで二四時間です。
朝のうちに店舗が卸に発注を出 し、翌朝までに納品するというパターンが一般的です。
ここで、たいてい発生しているのが、作業の集中とい う問題です。
TCで仕分けて翌朝、店舗に持っていく ためには、昼一番には卸のセンターから出す必要があ る。
つまり卸のセンターでは受注してから昼までが勝 負で、この時間帯はめちゃくちゃ忙しくなる」 世界にも類を見ないムダが横行 ――小売りの専用TCによって、サプライチェーン全 体が悪影響を受けるわけですね。
「当社の近畿RDC(泉大津市)にしても、本当は あんな土地の高いところに建てたくはなかった。
もう 少し土地の安い山の中にでも作りたかった。
しかし、 小売りのTCまで持っていくリードタイムに余裕がな いため、ああいう所に建てざるを得なかった。
だから 僕は、こんなバカげた物流は世界でも類がないと言っ ているんです」 ――日本では、メーカーから中間流通拠点までの一次 物流にも課題が山積しています。
「日本でメーカーから卸までの物流を一番安くした ければ、一〇トン車のフルトラックで工場から出荷す ればいい。
本来であれば、そのための中間流通の機能 を考えるべきで、そこからまとまったロットをまかな えるセンターの規模というのも出てきます。
そこで店 別にピッキングして、どこの店まで運べるかを考える のが理屈としては一番シンプルです。
ところが日本の 流通には、そういった視点がまったく欠けています」 「メーカーの製品というのは、一つの工場ですべてを 作っているケースはまずありません。
たいてい複数の 工場に分かれている。
だから、お客さんがすべての商 品について注文してきたときに各工場から小出しに出 荷するわけにはいかない。
このため、どうしてもデポ を置く必要が出てくる。
最近になってようやくABC ( Activity Based Costing )をやるようになりましたが、 日本のメーカーの多くは物流コストに無頓着でした」 ――工場と店舗の間に一カ所の在庫型の汎用センターを設置するのが理想ということですね。
「そういうことです。
ただ、それが最適ではない商 品もあります。
例えば、ウォルマートがDSD(Direct Store Delivery)で扱っているような商品です。
一店 舗分で一〇トン車が満載できる商品や、店舗に置く 場所がある場合、もしくは一カ月分でもOKという場 合は、お店側の希望に応じて店舗に直送すればいい」 「もう一つはスロームーブの商品です。
店舗の品揃 えには欠かせないが、売れる頻度が低い商品について は、ウォルマートも二段階物流でやってます。
店舗向 けに発送するDCを複数カ所カバーする集約拠点を作 り、スロームーブの商品だけを集める。
そこからDC に供給して、在庫している商品と一緒に出荷するわけ です。
こういうTCであれば僕も賛成ですよ」 オリコンスタッカー バラピッキング済みの折り畳み コンテナをキャリーに自動で積 み付ける。
このまま陳列作業の ために店舗に納入 バラピッキング 独自開発したピッキングカート 「SPIEC」を使ったバラピッキ ング。
平面スキャナーの採用で 作業効率を高めている 店別仕分け 6000店をまかなう汎用センター のためソーターでは処理しきれな い。
特許取得済みの「ADELS」 で店別にカゴ車に積む オートカートンカッター 段ボール箱のサイズを光セン サーで読み取り、上蓋を自動 でカットする。
特許も取得済 みのオリジナル機器

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