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DECEMBER 2002 26
マテハン導入――エル・エル・ビーン
L.L.Bean
1912年創業のアウトドア用品メーカー。 主力はカタログ通
販だが、近年は直営店での販売を強化している。 それに伴い、
商品出荷量が一気に増加。 物流センターの処理能力は限界に
達している。 2003年をメドに新たにマテハン機器を導入する
計画だという。
通販から店舗販売に販路拡大
米国のメーン州に本社を置く老舗アウトドア用品メ
ーカーの「L.L.Bean
(エル・エル・ビーン)」はここ
数年、ビジネスモデルの見直しを進めている。 一九一
二年の創業以来、同社は店舗をいっさい持たず、すべ
てカタログ(メールオーダー)を通じて商品を販売し
てきた。 しかし、九〇年代後半にこれを改め、直営店
を展開するようになった。 現在、直営店は米国で五店
舗、日本で一〇店舗の計一五店舗にまで拡大してい
る。
同社の年商は推定で十二億ドル(約一四四〇億円
=株式未公開企業のため売上高は未公表)。 現在も依
然として収入の約八割はカタログ通販が占めているも
のの、直営店の比率は徐々に高まる傾向にある。 将来
は直営店の収入比率を五割にまで引き上げることを目
標に掲げている。 そのために今後は新規出店を加速さ
せていく計画だという。
その分、出荷量も増加する。 そこで懸念されている
のが物流センターの処理能力だ。 同社では物流業務を
全てメーン州フリーポートに構える物流センター(延
べ床面積六三万五〇〇〇平方フィート)一カ所でカ
バーしている。 もともとカタログ通販の顧客向けの物
流を処理するために設計されたセンターだ。
調達先ベンダーは約一五〇〇社。 取扱商品三三万
SKU。 世界各国から毎日平均三万件の注文がハガ
キや電話・ファクスなどを通じて寄せられる。 それを
基に物流センターで商品をピッキング。 段ボール箱や
ビニールケースなどで商品を梱包。 宅配便を利用して
顧客に届けてきた。
出荷エリアには配送パートナーのフェデックスが入
居。 仕分け機のシュート口から出てきたケース商品を
フェデックスの社員がルート別に二次仕分けして、そ
れぞれのトラックに積み込んでいる。
マテハン設備としては九六年に七〇〇万ドル(約八
億四〇〇〇万円)投じてチルトトレイ式の自動仕分
け機を導入。 他にダブルトレイ式、リニア式の計三種
類のソーターを使い分けている。 いずれもピース商品
の仕分け作業に利用している。
バラピッキングは無線端末を使ったカートピッキン
グ。 売れ筋のA商品はラックとは別にピッキングのス
タート地点付近に設置した赤く塗られた大型のカゴに
保管するという工夫を施している。 カタログ通販向け
センターだけにピースピッキングの設備はよく整って
いる。
しかし、近年はこれに直営店への商品供給のための
物流が加わった。 こちらはケース単位だ。 カタログ通
販の物流に比べ、作業内容はシンプルだが、「店舗販
売を始めたことで、一日の処理件数は一気に膨れ上が
ってしまった。 またピースとケースの両方を処理する
必要があるため、作業の複雑さも増している」と同社
のオペレーションマネージャーを務めるティム・ロバ
ーツ氏は説明する。
処理能力増強で一拠点体制を維持
同センターは一日に一〇万件以上のオーダーを処
理する能力を持つ。 しかし、このまま店舗販売が拡
大すれば、近い将来、処理能力をオーバーしてしま
う。 それでも同社は拠点を分散させるつもりはない
という。 地域や商品特性などに応じて複数の物流拠
点を用意すれば、出荷量の増加にも対応できるはず
だが、「L.L.Bean
の商品はメーン州のフリーポートか
ら送られてくるというイメージが消費者に定着して
いる。 イメージを維持するためにも今後もこのセンタ
CaseStudy
特 集 《米国編》
27 DECEMBER 2002
ーから商品の出荷を続けていく」(ロバーツ氏)のだ
という。
現在、フリーポートの物流センターでは約一〇〇〇
人がオペレーションに従事している。 そのほとんどが
「ピッキング」と「パッキング」の作業に投入されて
いる。 このボトルネックを改善すれば、センターの処
理能力は向上する。 そこでマテハン機器を導入し、作
業の自動化を進めることで、物量の増大に対応し、一
拠点体制を維持しようとしている。
現在、ケース単位のピッキング作業は高層ラックに
保管している在庫から、垂直フォークを使ってケース
を取り出している。 完全に人手に頼った作業で生産性
が低い。
「当社には設備投資を二〜三年で回収するというル
ールがある。 そのため、従来は自動倉庫などの高価な
マテハン機器を導入することは避けてきた。 しかし、
もはやそれも限界だ。 現在はケース用の自動倉庫の導
入を検討している」とロバーツ氏。
また段ボールやビニールケースに商品を詰め込む
「パッキング」作業では、新たなマテハン機器の開発
を検討している。 シャツやニットなどのアパレルで発
注単位が一個の商品については、自動的にビニールケ
ースに商品と納品書を封入する装置「オートパッキン
グマシン」を導入済みだ。 一分間に二〇個のペースで
自動的に処理している。
ところが、複数の商品を一つの梱包材に詰め込む場
合にはまったくの手作業で処理している。 自動仕分け
機のトレイから落ちてきた商品を作業員が一つずつ拾
って段ボールに詰め込ている。 発注単位が二個以上の
商品であっても自動的に封入や梱包を処理できる装
置を開発することで、この作業の省人化を進めるとい
う。 その正否が処理能力向上のカギを握っている。
?メーン州フリーポートの物流センターは
延べ床面積63万5000平方フィート。 従
業員約1000人が働いている
?売れ筋のA商品はラックとは別にピッキ
ングのスタート地点付近に設置したた大
型のカゴに保管されている
?センターには3種類のソーターが導入さ
れている。 写真はダブルトレイ式のソー
ター
?ケース商品用のラック。 36万ケース
を格納できる。 作業員は垂直フォーク
を使って商品ピッキングする
?シャツ、ニットなどのアパレル商品をビ
ニールケースに封入する装置。 1分間に
20個の処理が可能
?トラックに商品を積み込むのはフェデッ
クスの社員
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