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APRIL 2001 62
物流は減っても宅配は増える
――企業発・一般消費者向けの貨物、
いわゆるB
to
C市場を強化する方針を
打ち出していますね。 そもそも「宅急
便」は消費者物流のC
to
C用に設計さ
れたシステムで、完成度も高い。 B
to
Bを含めた企業ニーズに対応できます
か。
「『
to
C』の部分を攻めることが当社
の基本です。 企業荷主でも個人商店を
中心とした限りなくCに近いBを中心
に攻めていくつもりです。 純粋なB
to
Bについては微妙ですね。 この部分に
も力を注ぐと社内で公言すると、『か
つての路線、区域会社に戻すつもりな
のか』という批判も聞こえてきますか
ら。 そこで、今年からは表現の仕方を
若干変えています。 『B
to
Bはあくま
でも小口貨物が中心だよ』と」
――宅配市場はまだ伸びるのでしょう
か。 「昨年暮れに、ソニーの玩具ロボット
『AIBO』の物流を請け負ったんで
すが、これは工場から消費者への直送
でした。 従来は工場からメーカーの保
管倉庫、さらに百貨店の物流センター
を経由して店頭に並べられた玩具を顧
客が買いにくるという流れだったんで
すが、最近では売り方が変わって、店
頭には商品の見本だけをおいて、実際
に購入した商品を工場からダイレクト
Interview
ヤマト運輸
有富慶二社長
「批判の大きさは当社への期待感。
ラストワンマイルで他社を圧倒する」
「宅急便」の開発以来、産業界の賛辞を欲しいままにしてきたヤマト運輸が、昨年から批判の矢面に
立たされている。 硬直化したサービス、情報システムの陳腐化、従業員のモラール低下など、同社の
大企業病を指摘する声がメディアでも報じられるようになった。 インターネット銘柄の一角に祭り上
げられ、一時は4000円台を付けた株価も現在は半値近くの水準まで低下している。
それでも有富社長は経営の基本戦略を変えようとはしない。 正社員ドライバーの純血主義と、ち密
なネットワークを自らのコア・コンピタンスと位置づけ、愚直なまでにラストワンマイルの強化を図っ
ている。 一連の批判にも「当社への期待の表れ」と余裕を見せる。 依然として“一人勝ち”を続ける
国内最強の物流業者であるという事実が、その自信を裏付けている。
63 APRIL 2001
Interview
に顧客に届けるというかたちになって
きました。 企業から消費者に直接モノ
を届けるこうしたケースは今後も着実
に増えていきます。 横持ち輸送がなく
なる分、物流の全体量は減りますが、
宅配貨物は増えていく。 この分野はと
くに強化していきます」
――スーパーで買い物したものを、そ
の日のうちに宅配するサービスなども
出始めています。
「当社でも始めています。 以前から
『いつも宅急便のお兄ちゃんが家まで
きているんだから、そのついでに買い
物した商品を運んでくれれば便利だね』
って言われてきました。 確かにその通
りなんです。 個人の生活の中で、輸送
が伴うものはもともと多い。 しかし、
買い物もそうですが、これまでは重く
ても我慢して自分の手で運んだりして
いた。 その負担を軽くしたり、なくし
たりできれば、サー
ビスとして十分成り
立つし、顧客からも
支持されるはずで
す」
「こうした買い物
宅配サービスは、経
営理念の一つである
『より便利な生活関
連サービスを創造す
る』にピッタリのサ
ービスです。 このほ
かにも世の中に登場
していないサービス
はまだまだたくさん
あるのではないでし
ょうか。 B
to
Cに比
べて、C
to
Cの伸び
は小さくなっていま
すが、新しい生活関
連サービスを見つけ
れば、C
to
Cの分野
もまだまだ伸びる可能性はあります」
運転しないドライバーが増加
――日本通運や佐川急便に比べ、拠点
数が圧倒的に多いのがヤマトのネット
ワークの特徴です。 しかし、ち密なネ
ットワークは強みである一方、システ
ム投資や経営効率の面で弱みにもなり
かねないという指摘があります。
「宅配便事業はどうやっても最後は
届ける部分、つまりお客さんに手渡し
する部分での勝負になります。 ラスト
ワンマイルでの戦いです。 現在のとこ
ろ、この部分で当社は圧倒的に強いと
自負しています。 確かに拠点数が多い
と固定費がかかります。 だからヤマト
は利益率が低いという指摘は否定しま
せん。 実際に拠点数が少ない佐川さん
のほうがはるかに利益率が高い。 だか
らといって、ラストワンマイルの部分
を手薄にするつもりはありません。 む
しろ、もっと網の目を細かくする必要
がある」
――そのためにはパート・アルバイト
を含めた軽装備の集配要員を、さらに
増やす必要が出てきます。 これまでト
ラック輸送業者は労働装備率や一人当
たり利益率の向上を目標として掲げて
きました。 ところが、ヤマトの場合、ア
プローチが違うようですね。
「労働装備率の発想がないわけでは
ないんですよ。 しかし、ヤマトではあ
くまでもサービスレベルを高めること
に重点を置いています。 ドライバーを
増やせば、担当するエリアが小さくな
り、さらに担当する顧客の数が減って
サービスレベルは高まる。 当社は二ト
ンのウォークスルー車を使用していま
すが、それを四トントラックにして担
当エリアを倍にしたほうが確かに儲か
る。 労働装備率の観点からすると、そ
のほうが正しいのかもしれません。 し
かし、敢えて労働装備率とは逆の発想
で動いています。 装備率よりもサービ
スの質にこだわりたい。 配達がよけれ
ば、発側の顧客に『もうヤマトには荷
物を出さない』といわれることがなく
なるんです。 逆に荷物を受け取る側が
不満を持てば、送る側は絶対にその業
者を使わなくなる」
――ネットワークの網の目をどんどん
狭くして密度を上げていくとセールス
ドライバーの仕事も変わってくるので
すか。 「ドライバー一人当たりの担当エリア
を絞っていくと、最終的にはトラック
がいらなくなるんです。 例えば、既に
車両を持たないドライバーのチームで
構成するサテライト営業所が都心を中
心に約一〇〇カ所ありますが、こうい
うかたちでの拠点展開も有効だとみて
います」
――サテライト営業所を増やしていく
のですか。
ヤマト運輸
828(+7.3%)
図1 宅配便個数の推移
「宅急便」の右肩上がりは続く
(単位:百万個)
佐川急便
535(+371.9%)
日本通運
389(+5.9%)
郵便小包
319(+0.9%)
福山通運
165(+10.9%)
西濃運輸
150(▲0.6%)
※航空宅配便を除く
※( )内は前年比
900
800
700
600
500
400
300
200
100
0
年度 3/91 3/92 3/93 3/94 3/95 3/96 3/97 3/98 3/99 3/00
APRIL 2001 64
「現在進行中の中期経営計画には敢
えて拠点計画を盛り込んでいません。
従来、当社は集配時間や人口分布の要
素を考慮して営業所の新設を決めてき
ました。 しかし、これからはエリア特
性に合わせた拠点展開を進めていくつ
もりです。 サテライト営業所はそうし
た選択肢の一つですが、それが全てと
いうわけではありません」
ネットワークをさらに細分化
――拠点ネットワークに対する基本的
な考え方を教えて下さい。
「当社は一二〇〇カ所までは計画的
に営業所をつくってきました。 営業所
を何カ所つくればいいのか、真剣に考
えるようになったのは一九八六年から
です。 当時の宅急便取扱個数は約二億
個。 営業所は既に六〇〇あったのです
が、闇雲に増やしていくだけではダメ
だなと、拠点戦略を真剣に考えるよう
になったんです」
「そこで、何かヒントが掴めないかな
と思って、警察に出向いた時に『どう
して警察署の数は全国で一二〇〇なん
ですか』と尋ねてみたんです。 すると
『いつの間にか一二〇〇カ所になった』
という答えが返ってきた。 ただし、警
察は適当に一二〇〇カ所つくったわけ
ではなかったんです。 事件や事故が発
生した時に現場に急行できるアクセス
タイムを計算した結果、いつの間にか
一二〇〇カ所になったのだそうです」
「この話を聞いた時に、ピンときまし
たね。 ウチ(ヤマト)も同じ発想で拠
点を増やしていけばいいんだって。 配
達に伺ったものの留守で荷物をいった
ん営業所まで持ち帰った場合、不在票
を見た顧客からの電話を受けてから、
三〇分以内に再配達できればサービス
レベルは高いはず。 それならば、日本
全国の家庭まで三〇分以内に配達でき
るように営業所をつくろうという話に
なったんです」
「早速、白地図を買ってきて、半径
二〇キロの円をコンパスで描いてみま
した。 二〇キロという数字はトラック
が時速四〇キロで走行した場合、三〇
分で進める距離です。 ところが、そう
やって円を描いていくと、営業所は六
〇〇で済む計算になってしまう。 当時
の営業所の数と同じです。 そこで、人
口分布の要素、一〇万人に一拠点とい
う基準を加えて、もう一度円を描いて
みました。 すると、警察署と同じ一二
〇〇という数になったのです」
――現在、営業所は二三〇〇カ所にま
で増えています。
「その後、取扱個数が急激に伸びた
ため、拠点が足りなくなり、一二〇〇
の営業所を核分裂させた。 それが現在
の二三〇〇という数です。 単純に日本
の人口である約一億二〇〇〇万人で割
ると、約五万人に一営業所という計算
4000
3800
3600
3400
3200
3000
2800
2600
2400
2200
2000
1800
1600
1400
1200
40
35
30
25
20
15
10
5
0
26,000
25,000
24,000
23,000
22,000
21,000
20,000
19,000
18,000
17,000
16,000
15,000
14,000
13,000
12,000
4/96 4/97 4/98 4/99 4/00
(円) (円)
ヤマト運輸の株価の推移と出来高
IT銘柄として注目され、一時は4,050円の値を付けた
株価推移
売買株数
日経平均
最安値 1,100円
最高値 4,050円
ヤマトの株価 日経平均
(百万株)
65 APRIL 2001
Interview
になります。 だいたい小さな市でも一
つは営業所がある計算です。 私は栃木
市の出身で人口は八万人程度ですが、
自転車でちょろちょろと走れば、すぐ
に市の外れまでいける大きさです。 要
するに、五万人に一つあれば営業所間
はそんなに離れていない。 それだけネ
ットワークの網の目が細かい」
「ただし、この二三〇〇という数が
適正であるかどうかは疑問です。 一二
〇〇カ所以降は、拠点が一杯になると
その隣に別の拠点を作るという形でき
たわけですが、そろそろ新しい基準で
ネットワークを見直すことも必要でし
ょう。 そういう時期になりました。 具
体的な方向性を来年四月以降の中期経
営計画の中に盛り込む予定です」
ヤマト流チーム制の極意
――ヤマトではセールスドライバーが
チームを組んでいます。 そしてチーム
の構成員は三、四人に限定しています。
なぜですか。 例えば一〇人ではダメな
のですか。
「すぐに同業他社が真似をするので、
ドライバーの管理方法についてはあま
りお話したくないのですが(笑)。 試行
錯誤を繰り返した結果、一チーム三、
四人制がベストであるという結論に達
しました。 一人のリーダーが一〇人を
統率するのは不可能なのです」
「チームの人数を三、四人に限定し
ている理由の一つに休日の関係があり
ます。 セールスドライバーは三日に一
日休日がある計算です。 例えば、三人
で一つのチームを組むとすれば、この
三人で二つのエリアを担当すればいい
わけです。 これが四人、五人のチーム
になると、休日のローテーションを組
みにくくなる。 休みが取れなければ、
ドライバーから不平不満が生じます。
すると、ドライバーのやる気がなくな
り、チームの統率が取れなくなる。 や
る気のないドライバーは、良いサービ
スを提供できません。 結局、サービス
が悪ければ、お客さんはヤマトを指名
しなくなります」
――人件費が高いという指摘を受けて
も、一貫して「セールスドライバーは
正社員」というスタンスですよね。
「セールスドライバーはヤマトの核、
商品そのものなんです。 だから、ここ
の部分は正社員、つまり正規軍にこだ
わっているのです。 この方針を変える
つもりはまったくない。 差別化のポイ
ントである集配の部分を外注して品質
を落とすことはヤマトにとって自殺行
為なのです」
――ただし、ヤマト全体としてはセー
ルスドライバーよりもパート・アルバ
イトの方が増えています。
「確かに人数としてはそうかも知れま
せんが、パートアルバイトの場合は一
日当たりの稼働時間が少ない。 人時で
計算すれば、セールスドライバーとパ
ートの比率は変わっていません」
――急激に人員が増加した結果として、
ヤマトのサービスレベルが最近、落ち
ているという指摘があります。
「宅急便を始めた頃、お客さんは荷
物を翌日に届けるだけで感激してくれ
ました。 営業所に電話をすれば、集荷
にもきてくれる。 こんな便利なサービ
スはそれまでなかったんです。 ところ
が、二五年経って、翌日配達や自宅集
荷は当たり前のサービスとして定着し
てくると、もはやその程度のサービス
では感動してくれないんですね。 顧客
の欲求はどんどん膨らんできます。 そ
れに併せて、ヤマトでも配達時間帯指
定サービスなどきめ細かいサービスを
次々と用意してきたんです。 それでも
顧客はさらに上のサービスを求めてく
る」
「ヤマトは融通が利かないとか、サー
ビスレベルが落ちているといった指摘
は、顧客の感覚的なもので、逆に期待
度の高さの表れだと受け止めています。
実際にサービスレベルは落ちていませ
んよ。 取扱個数の伸びとともに、クレ
ーム件数も増えていますが、件数当た
りのクレーム率はほとんど変化してい
ませんから」
今後二年で情報システムを刷新
――全国規模のインフラは完成してい
ます。 これから投資の矛先は情報シス
テムが中心となるのですか。 今後三年
間で五〇〇億円ぐらい投資する計画の
ようですね。
「佐川さんや日通さんは情報システ
ムに四〇〇億円ぐらい投資するらしい
ですね。 ヤマトもだいたい同じくらい
の規模ですよ。 しかし、その額が五〇
〇億円だと明言はしていません」
――ヤマトの拠点数を考えれば、投資
額が少ないような気がしますが。
「そんなことはありませんよ。 恐らく、
他社が行うのは通信の部分への投資で
しょう。 通信インフラの整備には確か
にお金が掛かります。 ところが当社は
既に通信インフラの整備は完了してい
ます。 だから投資金額は同じレベルで
も他社とは少しお金の使い方が違うか
たちになる。 分かりやすく言えば、ヤ
マトは基礎工事の部分ではなく、建物
に五〇〇億円掛けるということです」
――ネットワークの端末部分への投資なんですか。
「端末とは限りません。 ホストコンピ
ュータやソフトの刷新も含んでいます」
――これは勝手な想像ですが、NTT
ドコモのDoPaを採用した端末を入
れたり、さらに判取りデータの顧客に
フィードバックすることを考えている
のではないでしょうか。
「判取りの部分をどうするかは決めて
いません。 あの部分は非常にお金が掛
APRIL 2001 66
かる部分なもので。 イメージセンサー
を数台導入して、判取りデータをフィ
ードバックしている会社もあるようで
すが、果たして、それが差別化要因に
なるのかどうかは疑問です。 そこに本
当に顧客ニーズがあるかどうかはわか
りません」
――これまでの情報投資は、物流セン
ター内での作業効率を高めるための投
資が中心でした。 顧客向きではなかっ
た。
「効率化投資もちろん大切なのです
が、今回は基幹システムのバージョン
アップ、リプレースがメーンになりま
す。 ヤマトの情報システムは非常に完
成度が高いと自負していますが、既存
のシステムはホストコンピュータを中
心に構成されたシステムで、集中一括
処理型なんです。 しかも、貨物追跡
システムなど、ここ数年に立ち上がっ
た比較的新しいシステムはすべて基幹
システムに後付けするかたちで構築さ
れています。 そのため、処理スピード
が遅かったり、インターネットとの相
性があまりよくないなどのマイナス面
がある。 そこで、今後二年間で分散
処理型のクライアント・サーバー型シ
ステムに移行しようという計画なので
す」
「だたし、年間九億個分もの宅急便
のデータを処理している既存システム
をある日突然一気に変えるのは非常に
業からの打診も多いのではないでしょ
うか。
「確かに打診はあります。 とくに韓国
からは複数、相談を持ちかけられてい
ますが、具体的な話にまでは詰まって
いません。 今はそれぞれの案件を比較
しているところです」
――昨年、米国UPSとの合弁会社を
三社に分社化しました。 その狙いがよ
く分かりません。
「昨年がちょうどUPSとの契約更
新の年だったんです。 業務提携から一
〇年経って、『さあ、これからどうしよ
うか』という話になりました。 この一
〇年を振り返ると、UPSとヤマトと
いう組み合わせを考えれば、もっと
色々なことができたのかもしれない。
一〇年経ったことだし、このタイミン
グで一度提携関係を白紙に戻そうかと
いう話があったのも事実です」
「UPS側もこの機会にいろいろと
考えたと思いますよ。 他のパートナー
探しを真剣に考えた時期もあったのか
もしれない。 しかし、日本でのヤマト
のブランド力やネットワークと、他社
のそれを比較した結果、ヤマトをパー
トナーに選んだほうが得策だと判断し
たのではないでしょうか。 結局、再び
契約を交わすことになったのですが、
従来のやり方を少し変えてみようとい
う話になりました。 そこで、エキスプ
レス貨物はUPSが、一般航空貨物は
難しい。 万一うまく走り出さなかった
場合のリスクも大きい。 そこで、新し
いシステム(新幹線)を走らせながら、
別に既存システム(在来線)も走らせ
る『新幹線方式』でシステム刷新を進
めていく計画です。 在来線のシステム
を新幹線システムに全面的に切り替え
るまで二年ぐらい掛かるとみています」
課題はロジスティクス事業
――ロジスティクス事業本部を新設し
ますが、その狙いを教えてください。
「当社は配送面では高く評価されて
いるんですが、保管・流通加工といっ
たロジスティクスサービスの面では対
応が遅れていると言わざるを得ません。
企業のお客さんに『ヤマトは融通が利
かない』と叱咤されるのは、この部分
に不満を持たれているからなのかもし
れません。 あくまで宅急便の会社でき
ましたから、ロジスティクスがあまり
上手じゃないんです」
「ターミナル拠点には保管スペースが
ありますが、有効活用できていません。
このスペースをうまく使えば、お客さ
んの商品を預かって、オーダーに従っ
てタイムリーに届けるサービスができ
るはずなんです。 例えば、新たにオー
プンした熊本のターミナルならば、前
日の午後十一時ぐらいまでに注文を受
ければ、九州一円で翌日配達が可能な
わけです。 こうしたニーズは年々高ま
っています。 それに対処していくため
に専門部署を設けることにしました」
――しかし、同じ目的で昨年五月にY
LP(ヤマトロジスティクスプロデュ
ース)という別会社を発足させてます
よね。 YLPとロジスティクス事業本
部の棲み分けはどうなるのですか。
「ロジスティクス事業本部のほうは、
宅急便ネットワークを利用することが
前提となっています。 それに対して、YLPは宅急便ネットワークには拘ら
ない。 お客さんのニーズによっては、
他社の配送ネットワークとロジスティ
クスサービスを組み合わせたサービス
を提供することもあり得るわけです」
UPSとの提携を継続した理由
――台湾での宅配便事業の滑り出しは
順調のようです。 クロネコブランドの
国際展開の次の一手が注目されていま
す。
「当社自身が積極的に海外に進出し
ていこうという姿勢ではありませんよ。
現地の物流企業に宅急便のノウハウを
提供して、宅配便サービスを展開する
ためのお手伝いをする。 その結果、そ
こに住んでいる人々の生活が便利にな
って、喜んでもらえばいいという考え
です。 もちろん、商売ですからライセ
ンス料はいただきますが」
――ヤマトのノウハウは他の国の物流
業者にとっても魅力的なはず。 海外企
67 APRIL 2001
Interview
ヤマトがそれぞれ主導権を握って、会
社を運営することになったんです」
――海外では物流企業の国際的な提携
や買収が相次いでいます。 UPSがヤ
マトを買収するという話はなかったの
ですか(笑)。
「多分それはなかったと思いますよ。
昨年、ヤマトの株価は一時四〇〇〇円
の値をつけていました。 現在は二〇〇
〇円台で推移していますが。 仮に一株
三〇〇〇円で計算したとしても、発行
株式数の三分の一を取得するのに四〇
〇〇億円掛かります。 UPSは上場し
たことで、約五〇〇〇億円調達しまし
たが、そのうちの四〇〇〇億円も日本
市場開拓のために突っ込むはずがあり
ません。 もちろん、そのような動きが
あれば、当社も必死で防ごうとします
しね」
――UPSとの提携関係はしばらく続
くのですか。
「もちろんです。 非常に仲良くやって
います。 分社化したばかりで、その効
果を見ずに関係を見直すのは意味がな
いでしょう。 結果を見るまで、しばら
くは今の状態が続きます」
郵便事業の変わらぬ体質
――日通と郵政事業庁の提携が水面下
で進められているようです。
「新聞や雑誌を見る限り、両者は提
携ではないといっているので、現段階
では何ともいえないですね(笑)。 ただ
し、郵便は民営化されていないのにそ
ういう話が出てくるのはおかしいとは
思いますよ」
――信書の取り扱いが解禁されると、
宅配マーケットは変わりますか。
「解禁する範囲や解禁の仕方にもよ
りますが、マーケットが大きく変わる
のは間違いない。 しかし、郵政は基本
的に解禁するという言葉を使いながら、
自分たちの縄張りをどう守るかを考え
ているように見えてならない。 先日発
表された民営化に関する答申はそうい
う内容だったでしょう」
――そうでしたか。 言葉が難しくてよ
く分かりませんでした。
「民間に解放する範囲を、難しくお
役所言葉で書くことで分かりにくくし
ているのかも知れません(笑)。 要は、
ユニバーサルサービスを確保すること
が国民のためである。 そのためにはあ
る一定の仕事量を俺達に確保させなければ、それはできない。 よって、明確
ではないが、この辺りまでは欲しい、
と郵政は主張しています。 信書という
定義をはずして、この部分は切り捨て
ざるを得ないと腹をくくっているよう
にも見受けられますが、自分たちの都
合で範囲を決めようとするスタンスは
従来とまったく変わっていない。 ここ
まできたら、小細工しないで、民間企
業とフェアに戦うべきだと思いますね」
従業員数(人)
事業所数(店)
取扱店数(店)
車両台数(台)
61,775
1,953
283,980
25,375
65,973
2,043
291,339
26,915
74,193
2,158
294,661
28,327
74,800
2,239
299,160
29,004
84,242
2,311
309,663
30,223
1996年
3月31日現在
1997年
3月31日現在
1998年
3月31日現在
1999年
3月31日現在
2000年
3月31日現在
設備投資額 365
90年度
390
91年度
411
92年度
294
93年度
479
94年度
296
95年度
346
96年度
346
97年度
386
98年度
257
99年度
(単位:億円)
図3 戦力補強/設備投資の推移
ヤマト運輸
35.6%
828
佐川急便
23.0%
535
日本通運
16.7%
389
福山通運 7.1%
165
西濃運輸 6.4%
150
その他
11.2%
図4 99年度の宅配便国内シェア
※航空宅配便を除く
※郵便小包を除く
(単位:百万個)
(運輸省調べ)
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