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APRIL 2001 78
物流キーマン
「私の仕事、私の情報源」
――日本では物流学者の陰が薄い
ように思います。
そもそも学者は要素技術の細部
について実務家にかないっこない
んです。 物流業者は物流の体系自
体をテーマにすべきだというのが、
僕の昔からの主張です。 ところが
大部分の学者は体系をやらないで
技術をやるか、もしくは体系を超
えてすごく大きくテーマを拡げて
しまうかに分かれてしまって、中
間の体系論がない。
――先生の著書「運輸業のマーケ
ティング」は十数年経った今読ん
でも新鮮です。
あれは物流の本というよりも、
むしろサービス業のマーケティン
グを書いた本なんです。 僕はもと
もとマーケティングと流通を研究
テーマとしていましたから、マー
ケティングの視点で運輸業の経営
を分析したのです。
本を書く上では、国内よりむし
ろ米国の運輸業を参考にしました。
UPSとフェデックス、そしてU
SPS、米国の郵便ですね。 よく
調べてみると、この三社は扱うマ
ーケットが明らかに違う。 明確に
差別化されている。 これが運輸業
のマーケット・セグメンテーショ
ンかと驚かされました。 日本でも
消費財メーカーならどこでもやっ
ているが、運輸ではどこもやって
いなかった。
そして、この考えに国内で一番
最初に乗ってくれたのがヤマト運
輸の小倉昌男さんでした。 「宅急
便」をマーケティング的に分析し
ていくと、あれが何故あそこまで
伸びたのかよく理解できる。
――続編を書く予定は。
確かにマーケティング論で運輸
を語るというアプローチは今でも
面白いと思います。 改めて書けば
新しいことが言えそうです。 現在、
取り組んでいるチャネル論が終わ
ったら書くことになると思います。
実はあの本の前に私は「物流とマ
ーケティング」という本を書いて
いるんです。 これは運輸ではなく
物流です。 チャネル問題と物流、
販売促進に物流がどう使われるか
というテーマでした。 これが現在
のチャネル論に結びつく。 マーケ
ティングの分野ではチャネル論が
必須です。 ところが物流にはチャ
ネル論に該当する部分がない。 そ
れで取り組んでいるのです。
「要素技術ではなく体系自体を追う」
神奈川大学 中田信哉
教授
す。 その人が、非常に真面目な
方でね。 松下は「あらゆる環境
規制から逃げない」と正面切っ
て言うんです。 これは信頼できる
なと思いました。
それから家電製品協会との付き
合いも始まり、九四年からはソニ
ーと、九五年からは松下と組んで
家電リサイクルの実証実験を手掛
けています。 ちょうどその頃に物
流の重要性も認識しました。 そこ
で物流子会社のエコートランスポ
ートを設立したんです。
――その後、中間処理業者の全国
組織、マリソル・ネットワークを
構築しました。
九〇年代の半ば頃から、家電メ
ーカーをはじめとした大手排出業
者と話す機会が増えてきたんです。
すると「中田屋については分かっ
た。 でも北海道や九州はできない
んでしょ」という話が頻繁に出る。
そこで私は二年間、時間をくれと
言ったんです。 それから二年間で
全国の中間処理業者を組織して作
ったのがマリソル・ネットワーク
です。 現在では全国に二十一社、
一七〇カ所ほどの処理工場を持つ
全国組織になりました。
――物流ネットワークはどうなっ
ているんですか。
中田屋としても全国十数社の物
流業者によるネットワーク構築を
進めています。 物流関係について
は、消費者から廃家電を引き取る
一次物流を含めて、松下とも相談
しながら非常に丁寧にネットワー
ク作りを進めているところです。
ここが上手く機能するかどうかで、
家電リサイクルの行く末が大きく
左右されることになります。
日本通運のような大手に一括し
て頼むのは、確かに楽です。 しか
し、この業界にはすでに長年、収
集運搬業に携わってきた人達がい
ます。 我々は彼らと上手く連携を
取りながら、全国的な物流網を構
築しようとしています。 マリソ
ル・ネットワークに参加している
処理業者二十一社も、それぞれ主
体的に物流網の構築を進めている
ところです。
――最近、日本でも環境に対する
社会的な認識がようやく高まってきました。 昔から日本には「臭い物には蓋」
とか「水に流す」といった言葉あ
ります。 私はここに日本人の根底
にある意識が象徴的に表れている
ように思えてなりません。 目の前
にある問題から目を背け、これを
先送りしようという姿勢です。 し
かし、もはや限界です。
――リサイクル業者として中田屋
は、家電リサイクルの柱になって
いますね。
九〇年代の始めに、リサイクル
の研究開発を手がける財団法人
クリーン・ジャパン・センターの
講座で、たまたま松下の担当者
の隣りに座ったのが家電業界と
つき合うようになったきっかけで
「家電リサイクルの命運を握るのは物流」
中田屋 中田彪
社長
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