ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2001年4号
デジロジ
アナログからデジタルへ

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

APRIL 2001 74 eの時代である。
何でもeである。
eの代表格といえばインターネットやER P、SCMであり、昨今では件の「e- Logistics 」だ。
「e」とはelectronic 、つまり エレキのことだ。
ついに物流もエレキでシビ れてしまったとでもいうのであろうか。
物流の実体はe化も、ヴァーチャル化もで きやしない。
今も昔も現実(リアリティ)だ。
近い将来、あらゆるビジネスがe化しても、 リアリティである物流は「動いてナンボ」の 世界のまま残る。
その結果、物流がビジネス すべてのボトルネックになる。
物流とITを考える上で、確かにインター ネットは最も重要な要素の一つだ。
インター ネットは遠隔地の情報の入手やコミュニケー ションのための時間・距離を短縮した。
便利 であり、様々なサービスが利用可能だ。
とこ ろが、便利になった反面、避けて通れぬクリ ティカルな課題として逆に物流がクローズア ップされている。
eビジネスで先行したITベンチャーは、 いずれも物流の存在に成長を阻まれている。
e化は進んでも、eでは物流そのものを変え ることはできない――。
このパラドックスを 解決しないことにはニッチもサッチもいかな い状況に陥ってしまう。
アナログ物流は何故ダメか 物流をITで活性化しようとするならば、 物流の本質の変化を捉え、変化に適切に対応 することが必要だ。
これまでの物流では、製造と流通との需要 ギャップという捉えにくい「量」の変化を、 「物流」が連続的に変化することにより、そ れを人間系によって追随することにより処理 してきた。
その意味で、いままでの物流は人 的・連続的・アナログ的だったと言ってよい。
とくに我が国の物流はきわめてアナログだっ た。
アナログとは、ある現象(量やデータ)を 連続的に変化しうる物理量に置き換えること だ。
連続的な処理でも、時間とコストを問題 にしなければ何とか「量」をこなせる。
しか し、これからの物流には、製造・流通はもと より、特に市場の変化をリアルにキャッチアップする仕組みづくりが要求される。
アナロ グ物流でリアル性や並行処理に対応するのは 困難で限界がある。
その対応には高度な情報 処理能力が必須だ。
リアルに、同時に、複数のプレイヤーと情 報を交換し、最適な在庫・輸配送のマネジメ ントをとりおこなう。
この「リアル・同時・ 複数」は人間系アナログの最も苦手なものな のだ。
「量」の変化に連続的に対応するので あるから、結果に至るまでに膨大な手間・費 用、時間を要してしまう。
そこで、デジタルの登場だ。
捉えにくい 「量」を有限の要素(数字)に分解すれば、効 率良く並列処理することができる。
精度は要 素の大きさに依存するので、概算であれば要 素を大きくとり、詳細が必要であれば細かく 田中純夫エクゼ社長 アナログからデジタルへ 第1回  どんなに「e化」が進んでも、最後まで物流はリアル のまま残る。
IT時代のボトルネックとなっている物流を、 やはりITによって活性化するためには現在、起きてい る変化の本質をつかむ必要がある。
筆者はそれを「デ ジタル・ロジスティクス」という言葉で表現する。
75 APRIL 2001 すればよい。
要はコストと時間に応じて最適 なメッシュで処理するのである。
デジタル革命の本質 在庫管理・輸配送を、最初から最後まで連 続した一本の線として扱う従来の物流のやり 方では、市場のニーズに適合したサービスを 提供するのに限界がある。
これらを適切な要 素・単位に分割し、並行して処理する。
この 「リアル・同時・複数処理」を情報技術の活 用によって執りおこなうことができれば事は 済む。
それがデジタル指向の物流だ。
身近な例を考えてみよう。
アナログの代表 というとレコードだ。
レコードは順に情報を 刻み込んだ一本の溝でできている。
溝に刻ま れた凹凸を針で拾い、記録された情報を連続 的に増幅し再生する。
レコードといえば、パチパチというノイズ や針飛びをイメージされる方が多いと思う。
途中に傷(トラブルや効率の悪い部分)があ れば全体が台無しになる。
初めから終わりま でのルートは固定されていて短縮できない。
また、アナログプレーヤーは基本的な再生以 外の付加機能は苦手だ。
高級機ほど基本機能 に忠実で余分な機能はない。
これに対してデジタル化されたCDには針 飛びが無い。
しかも、アナログでは実現が困 難であった多彩な処理が可能だ。
演奏順序を 組み替えたり、時間をずらして同時に演奏す ることなどが、いとも簡単にできる。
CDにはレコードのような一本で繋がった 溝がない。
CDにはブロックになった情報が、 飛び飛びに記録されている。
そこから必要なデータを、一見ランダムであるかのようにピ ックアップし、再度、内部で順に組み立て直 し、出力するのである。
先読みや再読込もで きるし、データ欠落などのトラブルにもあら かじめ検知することで対処できる。
コンピュータのハードディスクもCDと同 様の構造を持っている。
データを細分化して 記憶媒体のなかにバラバラ(もちろんルール はある)に入れ、障害時の連続的なエラーの 回避や容量の増加(隙間を効率よく埋めると いう意味で)、並行処理による処理時間の短 縮、効率化を図っている。
このように、CDはデジタルの代表であり、 CDはレコードを駆逐した。
しかし、レコー ドがCDに置き換えられたことが革命的だっ たのではない。
音をデジタルとして処理でき るようになった時、音楽は初めてコンピュー タの領域になった。
情報はいったん数値にな りさえすれば、後はいかようにでも料理でき る。
音が既存の汎用的なコンピュータ技術で 処理できること。
それこそが画期的だったの である。
そして、デジタルロジスティクスへ 物流も同じだ。
物の動きと様々な情報を分 散(離散化)し、並行処理することで物流の 効率は上がる。
物流そのものをエレキ化、デ ジタル化することはできないが、物流に関係 する情報はデジタル化が可能である。
いままで量で扱われていた物流情報を最適 なメッシュの有限要素(情報)に分けること で、汎用的なコンピュータシステムで物流を 容易に扱えるようになる。
そのとき、アナロ グ物流はデジタル・ロジスティクスとして飛 躍的に発展するのである。
現在、インターネットに代表されるハイテ クノロジーを物流サービスに活用しようとい う試みが盛んに行われている。
そこには、ビ ジネスの本質からかけ離れているもの、デジ タル化の本質をはき違えているものが多数あ る。
そこで、この連載ではERP、SCM、E Cと物流、海外システムの諸事情等をテーマ に取り上げて解説する。
単に「物流+IT=e- Logisitics 」と言う図式ではなく、むしろアナログからデジタルへという、パラダイムシフ トの観点から、これからの物流とITを時に は検証し、考察してみたいと思う。
一九八三年、埼玉大学工学部卒。
物流企業系シス テムハウスを経て、九一年に独立。
エクゼを設立 し、社長に就任。
製造・販売・物流を統合するサ プライチェーンシステムのインテグレーターとし て活動。
九七年には物流管理ソフト「Nexus 」を 開発し、現在は「Nexus ?」にバージョンアップ してシリーズ展開してい る。
日本企業の物流事情 に精通したシステムイン テグレーターとして評価 が高い。
田中純夫(たなか・すみお) Profile

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