ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2005年1号
keyperson
九州産交運輸の買収を手始めに全国網構築

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

1 JANUARY 2005KEYPERSON再生機構駆け込み前に接触 産業再生機構が保有する九州産交運輸の株式をすべて買い取りました 今回の買収話が持ち上が たのはいつ頃だ たのですか? 二〇〇三年の春です 法的整理や私的整理を模索していた九産交グル プのメ ンバンクである みずほ銀行から スポンサ になりませんか と話を持ち掛けられたのがき かけです ち うど フ トワ クの営業譲渡先として内定していたオ エスエル オリ クスや シンガポ ルの物流会社であるセムコ プ・ロジステ クスなどによる出資で設立されたフ トワ クの受け皿会社 が フ トワ クの更正計画をまとめていた時期と重なります ていましたけどね しかし結局 九産交の買収話は白紙撤回されることになりました 九産交グル プが六月に発足した産業再生機構の管理下で再建を目指すことにな たからです まさに寝耳に水で 最初にその話を聞いた時は え ち と待 てよ ウチとの話はどうな ち うの? というのが正直な気持ちでした 銀行が九産交グル プの 再生機構送り を決定したのは 銀行救済色の強い同機構に再建を委ねれば 債権放棄額が少なくて済む つまりダメ ジを小さくできると判断したためでし う 一方 民間企業がスポンサ 候補の場合 銀行は債権放棄額を上積みするようスポンサ 候補に迫られます カネボウと同じケ スですね カネボウは花王に化粧品事業を譲渡することを決めておきながら 土壇場で再生機構に駆け込んだ 九産交の場合も銀行がそうすると決めたわけですから われわれにはどうすることもできませんでした ただし 再生機構に駆け込んだことで九産交との話が全て白紙に戻 たわけではなか た 実はその後も坂本社長とは互いに協力できることはないか 話し合いを続けていました ようやく更正計画が確定して二〇〇四年一月に再スタ トをき たフ トワ ク そして産業再生機構主導で経営再建を目指すことにな た九産交 両社の共通の課題は輸配送ネ トワ クの効率化を進めることでした そこで手始めに福岡と熊本でタ ミナル拠点の相互利用を始めてみようという話になりました 実際にスタ トしたのは二〇〇四年四月でした 買収話が再浮上したのは? 二〇〇四年七月になります 産業再生機構から 九産交の 再建のメドがた たので そろそろ民間に売却しようと思 ている 興味はありますか? という連絡が入 た もちろん興味はあるとすぐに手を挙げましたよ 再生機構に駆け込む前 当社は九産交の買収を真剣に検討して オ エスエルが用意した更正計画案に対して 一部の債権者から突然 NO を突きつけられ フ トワ クの再建は無理かもしれない と諦めかけていた頃でした オリ クスとセムコ プは フ トワ クの案件がご破算にな ても 日本の物流マ ケ トに参入することを決めていました フ トワ ク以外にどこかいい物流会社はないか と探し始めたところに 銀行から九産交の話が飛び込んできました すぐに具体的な検討に入 た 四月から六月にかけて数回 九産交の坂本洋一社長に面会する機会がありました 話し合いの感触は悪くなか た もちろん その間も並行して更正計画の承認を目指し フ トワ クの債権者たちと交渉を続け浅井克仁フ トワ クエクスプレス 社長THEME九州産交運輸の買収を手始めに全国網構築二〇〇四年十一月 フ トワ クエクスプレスは産業再生機構の管理下で経営再建を模索していた九州産交運輸を買収 子会社化すると発表した 二〇〇一年三月に経営破たんし オリ クスをスポンサ に迎えて再スタ トをき たばかりのフ トワ クが九州を代表する老舗特積み業者をどう活用するつもりなのか 買収劇の舞台裏を覗いた 聞き手・刈屋大輔 JANUARY 2005 2いたわけですから 八月末に第一回目の競争入札が開かれました 外資を含め 三〇 四〇社程度が九産交に興味を示したようです 実際に入札したのはそのうちの二〇社程度だ たようです しかし八月の入札では売却先が決まらず 一〇月末に上位三社で決勝入札が開かれることになりました フ トワ クさんに決まりましたよ と連絡があ たのは十一月上旬でした 落札額は未公表 落札額は? 公表していません 再生機構が九産交を一一〇億円で引き受けたことはすでにオ プンにな ています それを下回る額で売却すれば マイナス分は国民負担となる 再生機構としてはそれだけは避けたか たはず フ トワ クは一一〇億円を下回らない額で落札したと解釈していいのでし うか? 金額はご想像にお任せします 九産交の年商は二〇〇億円弱です 仮に一一〇億円以上で落札したとすると かなり高い買い物だ たような気がします 九産交をグル プ内に組み込んだ場合に生じるシナジ 効果 相乗効果 を弾き出して その分を上乗せするかたちで入札額を決めました 買収によるメリ トは大きく分けて三つを想定しています 一つ目は営業面でのシナジ です フ トワ クは東名大と山陰地区のネ トワ クが充実していますが 九州は手薄 これに対して 九産交は九州一円にネ トワ クを張り巡らせているものの 本州に弱い しかし二社のグル プ化によ て今後は西日本であれば すべてカバ できる体制になります これまで 拠点がないので引き受けられません と断 ていた仕事をきちんと取り込むことができるようになる 大幅な増収が期待できます 二つ目は? 効率化が進むことです 特積み事業というのは荷物のボリ ムが増えないと効率が上がらない構造にな ています 特積み会社は福岡 大阪 大阪 東京とい た具合に路線をひいているわけですが 各路線の物量を増やすことで 線 を太くする つまり幹線を運行するトラ クを常に満載にしなければ儲かりません フ トワ クと九産交がそれぞれ用意している路線を一本にまとめることで 路線は太くなり 効率が上がります 拠点の統廃合が進めば 間接部門の効率化も期待できます それが三つ目ですね 両社の拠点の統廃合が進めば 事務処理など間接部門で働くスタ フの数を減らせます ただしリストラを断行するという意味ではありません 間接部門の余剰人員は営業部隊にまわ てもらうつもりです 現在 両社の各拠点には営業スタ フが配置されていますが 彼らはドライバ への指示やお客さんからのクレ ムの処理などに追われて 満足な営業活動を展開できていません 顧客の新規開拓にも手がまわ ていないのが実情です 将来のお嫁さん候補に 今回の買収で西日本のネ トワ クが充実しました フ トワ クグル プは西日本で圧倒的に強い そんなブランドイメ ジを早急に確立したか た 残念ながらフ トワ クには顧客を惹きつけるような特徴がありませんでした カバ しているエリアは中途半端だ た 市場ではミニ福山 通運 ミニ西濃 運輸 という呼ばれ方をしています 恐らく日本の市場で将来 特積みとして生き残れるのは五 七社程度でし う 全国ネ トを持たない特積みはいずれ淘汰されます 現在 全国ネ トを構築できているのは日本通運 ヤマト運輸 佐川急便 福山通運 西濃運輸の五社 残りの一 二枠の中に当社はどうしても食い込みたいと考えている 西日本では圧倒的に強いというセ ルスポイントがあれば 将来 東日本に強い特積み業者の お嫁さん候補 にもなれるし お嫁さんを選ぶ側にまわるチ ンスも出てくる 東日本を対象にした 新たな買収も視野に入れている? 正直に話しまし う 東日本に強い特積み会社があれば すぐにでも手を結びたい もし売 てくれる会社があれば 真 先に手を挙げるつもりです いま市場では あの特積みが売りに出ている とい た話をあさい・かつひと 東京大学経済学部卒、欧州経営大学院(INSEAD)MBA。
三菱銀行(現・東京三菱銀行)、ビジョン・キャピタル・コーポレーションを経て、オリックスに。
2004年1月、フットワークエクスプレス社長に就任 KEYPERSON3 JANUARY 2005よく耳にします 噂話の域を出ないものもありますが なかにはとても魅力的な会社があるのも事実です 当社は特積みに次ぐ経営の柱として3PL事業を挙げていますが この3PLをうまく機能させていくためにも全国ネ トという土台が不可欠です 倉庫はリ スで確保できる 同じように輸配送の部分も他社に委託するという選択肢もありますが お客さんのニ ズに合 た輸配送を展開するためには 自社でネ トワ クを持 ていたほうがいいと判断しています 結局 業務委託では融通が利かないんです 日本や欧米でアセ ト型の3PLが主流とな ているのはそのためでし う 先日 近鉄物流を買収したハマキ ウ レ クス さんも当社と同じ発想だ たと思いますよ いまトラ ク運送はオ バ サプライ 供給過剰 の状態にあると言われています 確かにトラ クの台数は多い しかし全国ネ トを持 た 日本国内のサプライチ ンをすべてサポ トできる事業者は数える程度しかない 全国をカバ できる物流企業はオ バ デ マンド 需要過多 の状態にあると見ている どのお客さんもこれとい た物流企業がなくてとても困 ています 特積み会社はオ ナ 企業が少なくありません そう簡単にM&Aや業務提携に応じるとは考えにくい 確かにこれまではそうでした しかし ここにきて徐々に風向きが変わりつつある 今年四月の減損会計導入を控え 銀行からのプレ シ が相当きつくな てきているようです 不動産価格がも とも高か たバブル期に拠点を取得した特積み会社は減損会計によ て資産の目減りを余儀なくされ 最悪の場合は債務超過に陥 てしまう可能性がある これ以上 不良債権を抱えたくない銀行が爆弾を抱えた特積み会社に資産の売却や 他社への事業譲渡を迫 ているというのが実情のようです フ トワ クや九産交も減損会計でダメ ジを受ける? すでに両社とも減損を済ませています 影響は受けません 法的整理や私的整理を受けた会社というのはバブル時代の膿をすべて出し切 ています 他の特積みよりも財務は健全な状態にあります 路線便の数を柔軟に設定 フ トワ クの前期 二〇〇四年十二月期 の業績は? 売上高は前年並の約五〇〇億円 これに対して 営業利益が三〇億円 売上高営業利益率は六%で落ち着きそうです 全体としては まあまあですね 同業他社に比べ営業利益率は高いほうですが まだまだコスト削減の余地があ たと分析しています 具体的には? 路線の部分ですね 無駄な運行をもう少し減らすことができた さきほども説明した通り 路線というのは幹線トラ クを満載にしなければ儲からない仕組みにな ています それがきちんとできなか た 路線のビジネスでは発想の転換が必要なことに最近ようやく気づきました 例えば 大阪から東京に一日で三便の路線を用意していたとしまし う 当社もそうですが これまで特積み会社は三便 つまり大型トラ ク三台分のスペ スを売 て歩いていた トラ ク三台分のスペ スを用意しましたので ぜひ使 てください という路線ありきのセ ルスだ たわけです スペ スが一杯にな たら もう運べません と断 てしまう 逆にトラ ク一台分のニ ズしかなくても便数を減らさない とても非効率な商売にな ていました そこで二〇〇四年一〇月から新たな試みを開始しました お客さんのニ ズに合わせて柔軟に路線の便数を決めていくというものです まず営業マンがお客さんからの情報をもとに 三カ月後の物量を路線別に予測 その需要予測デ タをもとに各路線の便数を仮決定する さらに輸送発生日の一カ月前 一週間前 前々日 前日に予測値に修正を加えて 当日に最終的な便数を決めるというやり方です これによ て無駄な運行と販売機会ロスを大幅に減らせる 用意したスペ スを売るのがサプライチ ン的な発想だとしたら 新たな試みはデ マンドチ ン的な発想ですね お客さんのニ ズや出荷量が日々変化しているのに 特積み業界では路線の便数の見直しが年一回という会社が少なくありません 年初で便数を決めてしま たら 途中でお客さんを失 ても 幹線トラ クのスペ スは一年間そのまま 空で走 ている これでは儲かりません 数カ月が経過しましたが 成果は見られますか? 需要予測の精度は徐々に高ま ています ただし まだ現場ではお かなび くりでや ている面がある 慣れるまでもう少し時間が掛かりそうですね まずは意識改革だけでもいい これまでの特積みの商売のやり方には無駄が多いということを理解してもらえるだけで十分です

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