ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2001年4号
特集
日本の3PL市場 3PLはどこへ行く?

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

APRIL 2001 36 か。
それとも物流だけが特にコネクテ ィビティが弱いということ? 入江 弱い、弱い。
物流はいろんな面 が弱い。
とくに流動性とスピードは問 題だよね。
本誌 それは日本の特徴ですか? そ れとも海外も同じようなもの? 入江 いや違う。
海外は進んでいる。
日本が遅れているだけ。
でもね。
これ だけ日本で物流がネックになっている のだから、そのうちずいぶん変わると は思う。
私自身、それを変えようとし て、「トレンドセッティング」と呼んで いるのですが、新しい流れを作るプロ ジェクトをいくつも手掛けています。
物流がコネクトできない 本誌 今回の特集では3PLをテーマ にしたわけなんですが、入江さんは物 流業者をコンサルティングすることっ てありますか。
入江 やってますよ。
ただし、物流業 者自身を主体にして変革するというの ではなくて、マーケットというか、経 済社会をベースにサプライチェーン全 体の構造を変えるというコンサルティ ングです。
そのフレームワークの中で 物流業者も変わらなくてはならないと いうアプローチになりますね。
本誌 ということはコンサルティング の直接の顧客は、メーカーなどの荷主 企業が多い。
入江 そうなりますね。
荷主企業にと って必要なロジスティクス・サービス は何かという視点から始めて、物流業 者はどうあるべきかを考えるというパ ターンで、いくつかやっていますね。
本誌 そうやってサプライチェーンの 新しいモデルを描いていく上で、物流 がボトルネックになることは多いんで すか? 入江 多いなんてもんじゃない。
日本 で一番問題になるのが物流の「コネク ティビティ」(接続可能性)です。
要 するに荷主企業から見た時に協力物流 業者の取り替えができない。
特に物流 子会社は親会社と密接にくっついてい て、他の業者が使えない。
本誌 それだけ義理やしがらみが強い ということですか? 入江 そういう言葉でカバーできるか どうか分からないけれども、日本の、 特にメーカーというのは自社で全部や るという思いでずっとやってきた。
そ ういう過去の「しがらみ」っていうの か、雰囲気っていうのか、それを打破 できないんでしょ。
本誌 でも、それは物流に限った話じ ゃないでしょう。
他の分野の子会社だ って、「しがらみ」は同じじゃないです 3PLはどこへ行く? 日本が3PLの導入に右往左往しているうちに欧米の 産業界はずっと先に進んでしまった。
3PLはもう古い。
欧米の先進的な物流業者は既に3PLを卒業し、「LL P」という新たな業態へと進化を始めている。
さらにその 先には、究極のアウトソーシング企業として「JOM」と いう新しいビジネスモデルまで想定されているという。
入江仁之 キャップジェミニ・アーンストヤング 副社長 VS 本誌編集部 アングロサクソン経営入門《第1回》 第5部 入江仁之(いりえ・ひろゆき) キャップジェミニ・アー ンストヤング副社長。
製造・ハイテク自動車産業統括責任 者。
公認会計士合格後、約二〇年にわたり経営コンサルテ ィングを行う。
とりわけサプライチェーン・マネジメント 分野では国内屈指のスペシャリストして評価が高い。
ハー バード大学留学を経て、都立科学技術大学大学院、早稲田 大学大学院などで客員講師をつとめる。
著書訳書多数。
プロフィール 37 APRIL 2001 で、すぐにその解決をするっていうモ デルです。
本誌 さっぱり分かりません。
入江 もともと自家物流の場合、変革 に手をつけると最初にまずコストがか かる。
そして所有資産や人の問題もか らむから、実際に変革が効果を発揮す るまでには時間がかかってしまう。
そ れがアウトソーシングしていた場合は 若干、時間が短くなる。
で、JOMの 場合は、それが瞬時に効果の出る形で 提供する。
モデルの絵柄でいくと、こうなりま す(次ページの図2)。
LLPやLS Pを含めて必要なオペレーションのモ デルを作り、ワンストップで一括して 請け負う。
要するにサプライチェーン を全部請け負ってサービスしましょう っていうビジネスです。
クライアント のリスクヘッジを、全部受けちゃう。
本誌 つまりJOMはビジネスモデル のデザイナーであり、なおかつ日々の 運用もやると。
入江うん、うん。
全部のハブになる。
「ブラーの時代」の富の源泉 本誌 しかし、それってアウトソーシ ングというより企業活動の全てでし ょ? 入江 そうだね。
本誌 アウトソーシングどころか主客 逆転ですよ。
そこには物流業者も当然、入ってくる。
本誌 そうですか。
で、そこでカギに なるのは、やはり物流業者の情報シス テム機能ということになりますか。
入江 いや、情報システムはごく一部 だよね。
それよりモデル。
ビジネスモ デルがどうなるかという話だから。
本誌 入江さんが想定されている新し いモデルの中では3PLが必要とされ ると考えていいのかな? 入江 それは3PLという概念の定義 にもよります。
いろんな人がいろんな 形で3PLという言葉を使っているか ら定義がハッキリしていない。
まず定 義を整理する必要があります。
究極のサードパーティ「JOM」 本誌 それで整理できたんですか。
入江 ええ。
こ れ(上の図1) がそうです。
本 誌   何 だ か 、 「JOM」とか 「LLP」とか、 また新しい言葉 がやたら出てき ているみたいです けれど‥‥。
入江 ええ。
図 のピラミッドの 一番下が自家物 流で、上にいく ほど発展型のア ウトソーシング になります。
本誌 順番に説 明して下さい。
入江 物流のア ウトソーシング で、まず最初に やるのが「LS P」、ロジスティクス・サービス・プロ バイダー。
ここでは何よりコストを下 げることが大事で、荷主の顔ぶれも決 まっている。
本誌 従来型の物流業者は、ほとんど これですね。
入江 それに対して、もっと気の利い たことをやろうというのが一つ上の3 PL。
業務範囲を広げて、単にコスト だけではなく機能強化を売りものにす る。
物流子会社であっても親会社だけでなく、外部にサービスを提供しよう とする場合にはそうなりますね。
実際 はともかく。
本誌 問題はその上です。
「LLP」っ て何ですか。
入江 3PLの後に「4PL」とか、 「5PL」という言葉が出てきました ね。
これは複数の3PLを束ねて管理 するのだから、3PLのもっと上でし ょうということで、そう呼んだわけで すが、曖昧なので改めて明確な形に定 義しました。
それが「LLP」と「J OM」です。
LLPはリード・ロジスティクス・ プロバイダーで、プロジェクト・マネ ジメントまで手掛ける。
流通モデルの 改革まで提案して管理する。
そして、アウトソーシングの最終形 がジョイント・オペレーティング・モ デル。
?ジョム〞って呼んでいます。
こ れは、随時いろんな案件がでたところ 自家物流 (Insourcing) グローバル・サプライチェーン統合 汎地域統合 3PLs 多地域 (Third Party Logistics) LSP (Logistics Service Providers) JOM (Joint Operating Model) LLP (Lead Logistics Provider) 特定地区 ・導入スピード ・ナレッジの譲渡 ・リスクと成果の配分 ・柔軟性 ・プロジェクト管理 ・窓口の一本化 ・機能強化 ・広い業務範囲 コスト削減 顧客ナレッジ キーファクター 地理的な業務範囲 資料:CAP GEMINI ERNST & YOUNG 図1 物流アウトソーシングは進化している APRIL 2001 38 作ることが何より重要になる。
新しい ビジネスモデルによって、マーケット 全部を牛耳ることが可能になるんです。
従来の物質を前提にしているようなビ ジネスでは設備投資が必要になるから、 そこに制約があった。
ところが無料で 入江 だからJOMを使う側では何が コア・コンピタンスかっていう話にな る。
例えば、ソニーは工場を売っちゃ ったわけだよね。
あるいは、半導体で もファブレスカンパニーなんてのが既 にある。
これは開発のところだけ自社 で持つということでしょう。
実際、昔 から総合商社などはJOMに似た仕事 をしてきた。
それじゃあ、JOMと総 合商社は同じかというと、瞬時に全て がコネクトできるようになってるとこ ろが違う。
本誌 「コネクト」って、どういう意 味で使っていますか。
入江 コネクトは全ての面でのコネク トという意味。
情報システムのインタ ーフェイスを作って、それを稼働させ るっていうのは当然として、それ以前 の、必要なパートナーと契約をしてア ライアンスを組んでいくといった、全 てのビジネスを瞬時に始めるという意 味でのコネクトです。
本誌 単にシステムの話ではない。
入江 そうそう。
ビジネスをどうやっ て切り分けるか。
何を自社のコア・コ ンピタンスにして、社外に何を出すべ きかっていうのをはっきり決めて、自 社の強みだけでビジネスをやれば、最 小の資本で最大の利益がでるわけです よね。
それによって資本利益率、ある いは株主価値が最大になる。
それが株 主の要求です。
効率性のないものを社内に持ってい たら、それは株主価値からいくとネガ ティブになってしまう。
だから、そう いう部分をどんどん外していく。
その 担い手がJOM。
本誌 しかし、モデルの絵を描いて形 を作るだけで、現場は人任せとなると JOMって一種の虚業じゃない? 入江 これからは、そこが経済価値の 全てになってくるんです。
「ブラーの時 代」にはね。
本誌 その「ブラーの時代」っていう のが分からない。
入江 またですか。
結局、ブラーを理 解しておかないと全て説明がつかない んだよね。
しょうがないから説明する けど、これからの経済はまず三つの次 元で変わっていきます。
本誌 「距離」、「時間」、「物質」の三 つですね。
入江 そのうち「距離」っていうのは、 今までは物理的な距離がビジネスの前 提としてあったけれども、情報技術で それをコネクトできるようになった。
実 際、今騒がれている情報技術は、ほと んどがコネクティング・テクノロジー だといっていいんです。
本誌 それは何となくわかる気がする。
入江 「時間」はスピードを意味して います。
ただし、安定的なスピードで はなく、加速度的に伸びているスピー ド。
加速度のあるスピードです。
それ だけ「時間」がどん どん短くなっている。
そして「物質」は、 価値のよりどころが 有形のモノから無形 のアイデアや情報に 変わってきているこ とを指しています。
本誌 すいません。
その「加速度のある スピード」というところが分かりません。
インターネットで全 部、リアルタイムに なるってことですか。
入江 今の世の中、 変化がどんどん速く なってきているでし ょ。
例えば新しい情 報が来たら、その瞬 間にはすごい価値が あるんだけれども、 一瞬にして誰もが知 ることになって価値 が無くなってしまう。
情報が加速度的に 陳腐化していく。
新しいコンセプトも どんどん陳腐化する。
新製品もあっと いう間に陳腐化しちゃう。
本誌 それはそうですね。
入江 それがブラーの時代です。
こう した時代には新しいビジネスモデルを 図2 JOMのビジネスモデル 開発情報 経営情報 調達部材販売 事務サービス アフターサービス 販売情報 完成品販売 商品配達 生産工程情報 部材配送 R&Dセンター 営  業 顧客 資料:CAP GEMINI ERNST & YOUNG ヘッドクオーター シュアードサービスセンター 工 場 サプライヤー 取引の流れ モノの流れ サービスの流れ JOM 39 APRIL 2001 はある。
しかし、欧米の先進的な3P Lとは違う。
欧米はLLPのレベルに までかなり食い込んでいるという差で すか。
入江 うん。
そう。
具体的にはチェン ジ・マネジメントのケーパビリティが 違う。
組織改革をして、新しいものを どんどん作っていきましょうというL LPの能力の部分ですね。
本誌 つまり3PLとLLPの切れ目 というのは、けっこう明確にある。
入江 そうですね。
本誌 で、上の図3を見ると、とくに 変革管理(チェンジマネジメント)能 力と習熟曲線効果の差が大きい。
入江 そうですね。
本誌 欧米の3PLは今、LLPを目 指している。
3PLはもう卒業した。
ところが、日本の場合は3PLで汲々 としている。
入江 うん。
あるいはLSP段階でね。
本誌 
械丕未竜’修鬚ちんと持って いる企業が日本にでてくれば当然受け 入れられるのでしょうか。
入江 もちろん、そうだと思いますよ。
荷主側の環境は熟してきた。
少なくと もトップ企業の社長たちは変えろと言 って指示していますよね。
本誌 そうか。
3PLの時代が来るん だ。
入江 そこで喜んでいるようでは、ま だまだなんですよ。
コピーできる情報であれば、あっとい う間にマーケットを席巻できる。
ちょ っと前のマイクロソフトはその典型例 です。
本誌 経済原則の一つである「収穫逓 減の法則」が働かないってことね。
入江 そうそう。
「収穫逓減」から「収 穫逓増」になれば制約が外れて一気に マーケットを牛耳れるから、その新し いモデルを作った人が「富」を独り占 めするわけです。
3PLを卒業した米国 入江 歴史を振り返ると、かつて土地 を持っている人が富を独占した時代が あり、その次には資本を持っている人 が独占した。
そして技術の時代が来た。
今度はビジネスにいかに情報技術を適 用するかっていうことを軸に富の独占 が起こった。
従来の業務をどう自動化 するかっていうところで合理化して、 それで利益を得てきたのが今までの情 報化時代だった。
そして、これからは価値を生む源泉 が情報技術からオーガナイゼーション、 オーガナイズする能力に変わっていく。
世の中に存在する価値を結びつけて、 そして新しいビジネスを立ち上げる。
その能力が富を生 む一番の源泉にな る。
従来利益の源 泉だった設備投資 型の能力は、もう 誰もができること になってしまう。
差別化できなくな れば当然、コスト 競争にどんどんは まっていく。
しか し、そういうもの を組み合わせて新 しいビジネスを立 ち上げるというと ころに、また新た なマーケットが生 まれるんです。
本誌 分かったような、分からないよ うな‥‥。
でも、それがJOMの仕事 だというわけですね。
入江 そうです。
本誌 話を3PLに戻しますが、日本 の場合、3PLなんて昔からやってい たよ、いまさらどうこういう話ではな いという説もあります。
それについて は? 入江 それはその通りです。
先ほどの アウトソーシングのピラミッドでも、3 PLは典型的なアウトソーシングのひ とつの形態に過ぎないので、別に目新 しくはない。
日本でも物流業者によっ ては、単純なLSPに付加価値を付け た商売をしてきた。
物流子会社は分社 化した瞬間に、たいてい親会社以外の 顧客を探せという話になりますから当 然3PLになりますよね。
本誌 しかし、日本には3PLらしい 3PLがまだ根付いていないように思 います。
入江 日本の場合、実際には荷主企業 の外でやるか中で処理するかの違いだ けで、機能的には変わらないんですよ ね。
アナタがおっしゃっているのは、ア メリカのような3PLが日本にないと いう話でしょう。
本誌 ああ。
確かに。
これまでは入江 さんのいうLSPと3PLとLLPを ゴッチャにして3PLと呼んでいまし たからね。
となると、日本にも3PL 導入能力 価値を生み出す速さ 必要とされる自社の変化の程度 ナレッジの譲渡と能力開発 新技術の評価と導入 持続的な改善とプロセス リレーションシップ管理 変革管理能力 複数顧客との関係維持 戦略的な計画立案立案 リスク/成果配分 習熟曲線効果 窓口の一本化 サービス終了のための引継調整能力 × × ○ △ × × ○ × × × × ○ ○ NA △ △ △ × △ △ △ × ○ × △ × × × △ △ △ × △ △ △ △ ○ × △ △ △ △ ○ ○ × ○ ○ ○ △ ○ △ ○ ○ △ ○ ○ ×:最小限度 △:発展途上 ○:強力 自家物流 3PL LLP JOM 資料:CAP GEMINI ERNST & YOUNG 図3 ビジネスモデルによる機能の違い

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