ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2001年5号
特集
物流&IT ITベンチャー淘汰の行方

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MAY 2001 14 行政が描いたバラ色のIT物流 荷物を安く運びたい荷主企業と、トラックの空いた 荷台を埋めたい運送業者を、インターネットを使って マッチングする。
一般に「求車求貨システム」と呼ば れる物流版eマーケットプレイスが昨年、日本で乱立 した。
九九年度の補正予算で通産省が実証実験に七億円 を割いたのを皮切りに、ITベンダー、総合商社、大 手メーカー、物流業者、さらには個人投資家からベン チャーキャピタルまで加わって、華やかなITベンチ ャーの設立ラッシュが繰り広げられた。
一説には五〇 にも上る企業が求車求貨システムの事業化に乗り出し たと言われる。
これらの出資者の中には、数年来のITブームに乗 じた新規株式公開(IPO)による一攫千金を期待 する向きも少なくなかった。
実際、その可能性は十分 に高いと一時は目されていた。
ブームに先立つ九八年に通産省、慶應義塾大学、マ ッキンゼー・アンド・カンパニーの三者は、IT革命 によって最も大きな恩恵を受ける産業は物流業界であ り、日本の物流業界は?E化〞によって今後一〇年 間で利益(EVA)を約九倍に拡大させるという予 測を共同調査レポートとして発表している。
その最大の根拠が物流eマーケットプレイスの活用 によるトラック積載率の向上だった。
現状では国内の トラック運送の積載率は五〇%を割っており(通産省 調べ)、空いた荷台を情報化によって埋めることがで きれば、運送業者の生産性は飛躍的に向上する。
さら には、トラックの必要車両台数が減ることで、環境問 題の改善にもつながると、レポートにはバラ色の未来 図が描かれていた。
ところが実際には、期待された通りに事は進んでい ない。
商品取引所のような公共性を持ちながら十分な 規模をもって運営し、必要な利益を挙げている、当初 想定されていたようなシステムは皆無といえる状態だ。
株式公開を期待できそうな企業など、どこにも見あた らない。
それどころかブームから一年も経たずに事業 の存続が困難になるケースが出始めている。
稼働後四カ月で破綻が明らかに 昨年稼働した求車求貨システムの一つ、「クラブ ア イライン」を運営する日本ネットワークサポートは今 年三月、自らのホームページ上にこんな?張り紙〞を 出した。
昨年五月にサービスを開始してから一年にも満たな いうちの撤退だったが、同社の大嶽聡社長は「傷口が 広がる前に事業から撤退すべきだと考えました。
これ でも判断が遅すぎたぐらいかも知れません」という。
実は昨年八月頃には既に事業が立ち行かなくなるいこ とは見えていた。
その時点で一四人を数えたスタッフ 「ITベンチャー淘汰の行方」 物流ITの大本命との呼び声の高かった「求車求貨システム」 の雲行きが怪しい。
昨年の乱立から一転。
稼働後1年も経た ずに早くも事業から撤退する企業が現われ始めた。
今年中にも 淘汰は一気に進みそうだ。
官民が足並みを揃えて設立に乗り出 した物流eマーケットプレイスのどこに誤算があったのか。
本誌編集部 解 説 拝啓 平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申 し上げます。
さて、日本ネットワークサポート株式会社は、平 成十三年三月三一日をもちまして、求車求貨システム「クラブ アイライン」のオンラインでの業務 を一時休止させていただきます。
(中略) 今後弊社は、事業戦略を大幅に変更し、倉庫等 の得意分野に特化してまいります。
事業の態様が決 定するまでの間、ネット上での営業は休止させてい ただきます。
会員の皆様には大変ご迷惑をおかけす ることを深くお詫び申しあげます。
何卒ご理解の上、これからもよろしくお願い申し あげます。
敬具 15 MAY 2001 も全員、解雇していたのだという。
日本の物流業界で最もボリュームの厚い保有車両 台数二〇台〜五〇台の中小トラック運送業者を対象 に、入会金五〇〇〇円、月会費二〇〇〇円という低 価格で求車求貨のマッチングサービスを行う。
マッチ ング手数料も運賃の三%と低く抑え、取引件数を拡 大することで広く浅く利益を得る。
大嶽社長がデザイ ンしたのは、そんなビジネスモデルだった。
それまでメーカーの商品企画担当という立場で物流 を見てきた大嶽社長は、その非効率さとIT活用の 可能性に着目して、物流ベンチャーとしての起業を決 意。
前職を辞して、約八カ月の準備期間を経た後、昨 年一月に自分の会社を設立した。
その時点での資本 金二五五〇万円は貯金と家族や知人の出資でまかな った。
ビジネスモデルに破綻 四月のテスト稼働を前に三月には東京・文京区で 初の説明会を開いた。
事前に業界紙で告知したことも あって、会場には中小の運送業経営者五〇〜六〇人 が集まった。
喜んだのも束の間、この説明会の席上で 大嶽社長は来場者から思ってもみなかった吊し上げを 喰った。
「ITに荷物が運べるのか!」「荷主も入れて 運賃が下がったらどうしてくれるんだ!」。
来場者の うち一〇人ほどのグループが入れ替わり立ち替わり声 を挙げる。
「後で分かったのですが、彼らは協同組合単位で貨 物を融通し会ってきた仲間たちでした。
新興企業に自 分のシマを荒らされるのが許せなかったのでしょう。
当社は求車求貨システムの分野では先行グループの一 つでした。
それだけ当初は風当たりも強かった」と大 嶽社長は振り返る。
ところが昨年五月に、大手総合商社やトヨタ自動 車が求車求貨システムに参入するというニュースが流 れてから急に風向きが変わった。
地方のトラック協会 などから、システムについて講演して欲しいという依 頼が大嶽社長のところに舞い込むようになった。
求車 求貨システムの登場を当初は脅威としてとらえていた 中小の運送業者も、もはや参入は阻止できないと、そ れまでの考えを改めたことが実感できた。
当初から会員の獲得自体は順調だった。
五月の本 格稼働時点で運送業者一〇〇社、荷主企業二〇社を 確保。
その後も伸び続けていた。
会員募集を中断した 今年二月の時点では、運送会社四一〇社、荷主一〇 〇社まで拡大していた。
しかし、利益は全く上がっていなかった。
会員は増 えても収入が増えない。
途中増資を受け入れ、約一億 九〇〇万円まで確保した資本金も次第に底が見えて きた。
闇雲な投資をしてきたわけではない。
システム 開発費は二〇〇〇万円程度に抑えた。
残りの支出は 大部分が人件費だった。
もともと入会金や月会費を低額に抑えてきたため、 マッチングが成立しなければ売り上げは確保できない。
ところが、会員のうちアクティブに取引に参加する企 業は全体の一〜二割に過ぎなかった。
肝心のマッチン グ成約率も当初は約一六%に止まっていた。
その後、 マッチングの仕組みを改善のことで徐々に成約率は上 がってきたものの黒字転換するメドは立たなかった。
もはや同社に求車求貨システムを運営するだけの体 力は残っていない。
「当社以外にも事実上、運営から 撤退しているサイトが既にいくつもあるようです。
今 のところ求車求貨システムで、これが正解といえるよ うなビジネスモデルは、少なくとも国内には一つもな い。
とくに多対多を結ぶeマーケットプレイスのスタ 第1部求車求貨システムの実態 “E化”で物流業者のEVAは9倍に拡大すると予測されたが‥‥ (億円:利益ベース*/年間) ● 自 動 車 ● 金   融 ● 物   流 ● ヘ ル ス ケ ア ● 電   機 ● 小 売 り( コ ン ビ ニ ) 36,000 19% 54% 42,900 55,500 -24,000 13,000 34,000 7,500 35,500 67,500 13,100 26,500 50,800 13,400 17,700 24,400 4,500 11,500 16,000 N.A. N.A. 370% 800% 102% 288% 32% 82% 160% 270% *営業利益(ただし、金融機関は経常利益) **物流・小売りは95年、自動車・電機は96年、金融・ヘルスケアは97年の数字 資料:IPR プロジェクト 現状 2001〜  
横娃娃廓 2003〜  
横娃娃固 MAY 2001 16 イルでは答えが全く見えないのが現状でしょう」と、 大嶽社長は今、痛感している。
売上高三百万・赤字三億八千万 輸送経済新聞社の小平忠社長を経営トップに置き、 フットワークエクスプレス、第一貨物、アクセンチュ ア、マイクロソフト、日本アジア投資などの大手企業 が出資するイー・トレックスも、現状ではかなりの苦 戦を強いられている。
同社は車両単位だけでなく、荷 台のスペース単位のマッチングまでオークション形式 で行うという独特の方式で、鳴り物入りで登場した大 型ベンチャーだ。
昨年三月に各種メディアを招いて開かれた設立記 者会見の席上で、同社の小平社長は「現在日本の物 流業界の非効率な輸送コストは約二兆円に上ってい る。
EC化および効率化を図ることで、数年後にはこ こから約一兆円の利益を生み、荷主とフォワーダー、 キャリアの三者に?WIN ―WIN―WIN〞の関係 を提供できる」とぶち上げたという。
ところが、その後の運営状況は芳しくない。
初年度 決算では売上高約三〇〇万円に対して、約三億八〇 〇〇万円の赤字を計上した模様だ。
今期も黒字転換 は期待できない。
「年度末の単月度黒字を目指す。
そ のために月当たり四〇〇〇〜五〇〇〇件の成約を実 現したい」(同社)という状況だ。
例えそれを実現したとしても、月間のマッチング手 数料はせいぜい数千万円程度。
当初、計画されていた 二年目で売上高一〇〇億円、二〇〇二年度夏の株式 公開という目標は遙かに遠い。
それどころか、五億円 以上を集めた資本金も既にかなりの部分までシステム 投資などに費やされており、「現在は再度の増資を調 整している」(同)状況だという。
今年三月には同社の大口出資者であるフットワーク エクスプレスが物流史上最大の負債を抱えて経営破 綻(本誌四月号参照)に陥っている。
「フットワーク は現在も操業を続けており、当社の経営には影響はな い」(同)とはいうものの、イメージダウンは避けら れない。
前述の通産省他の調査では、二〇〇一年から二〇 〇三年の間に一兆一〇〇〇億円規模の物流eマーケ ットプレイスが日本に誕生すると予測されていた。
イ ー・トレックスは、この調査レポートをベースに自ら の事業計画を立て「ターゲットとする市場規模を当初、 一八〇〇億円、五〜一〇年後に一兆一〇〇〇億円」 と弾いた。
ところが前提となった調査レポートの予測自体が大 きく外れてしまった。
IT分野に強い調査会社の日本 ガートナーグループは今年二月末に発表したレポート で「二〇〇四年までの間、日本で上場企業を対象と した3PLをベースとしたロジスティクスのオープン なeマーケットプレイスは登場しない」と予測してい る。
本来、教訓とすべきだった事例はITバブルの崩壊 以前に既に国内に存在していた。
日本で初めて九六 年末にインターネットを活用した求車求貨システムを 事業化した日本デジコムは九九年にビジネスモデルを 変更。
システムの運用による事業化を断念し、配車支 援ソフトの販売へと収入源をシフトさせた。
物流サー ビスという商品が、ネット取引には簡単には馴染まな い商品特性を持っていることが原因だった。
こうした前例や物流市場の実態を軽視し、税金を 使って玉虫色の共同調査レポートを作成した通産省、 慶応大学、マッキンゼーの三者。
そして調査レポート の予測に乗る形でIPOを目論んだ投資家たちは、バ 17 MAY 2001 ブルに踊ったという誹りをまぬがれないだろう。
本家米国のITバブルが弾けてしまった今、求車求 貨システムに対する世間の評価は格段と厳しくなって いる。
少なくとも派手なビジネスモデルを打ち出して 投資を募り、利益が出ていなくても創業後短期間で 株式を公開してキャピタルゲインを得るというやり方 は、もはや通用しなくなっている。
「出資?必要ない。
IPO?それ何?」 「ドッグイヤーなんてとんでもない。
長期戦を覚悟 しています。
しかも、ゲリラ的な持久戦でやっていき ますよ」。
現在、求車求貨システムの分野で三本の指 に入る有望格とされるトラボックスの藤倉泰徳社長は、 当面の運営方針をそう説明する。
同社の運営するサイ ト「Tr@Box」は現時点で荷主会員二九二社、運 送会社会員一三七七社、総トラック台数五万七〇〇 〇台という国内屈指の規模を誇っている。
同社が昨年の設立ラッシュ時にこの分野に参入した ベンチャー企業であるのは他の運営会社と同様だが、 その経営はITベンチャーとして一般に想像されるも のとは全く異なっている。
そもそも株式を公開するつ もりなど、端からなかったという。
「サイトを立ち上げてから、ベンチャーキャピタルと 呼ばれる会社のほとんどが出資を打診してきた。
しか し、全部断りました。
当社の場合、システムの開発に も、運営にも、ほとんどお金はかかっていません。
だ から出資してもらう必要がない。
IPOって言われて も、それ何? というのが本音でした」と藤倉社長。
実際、システム開発のために外部に支払ったのはサ ーバー購入代金の二〇〇〜三〇〇万円のみ。
後は半 ばボランティアの学生がアルバイトでプログラムを組 んでくれた。
現在、常勤する社員は七人。
しかし、藤 第1部求車求貨システムの実態 倉社長を含め、そのうち四人はいまだに手弁当だとい う。
運営規模は急拡大しているものの収入らしい収入 がないのだから、それもやむを得ない。
「Tr@Box」には入会金も月会費もない。
マッ チング手数料も発生しない。
計画では今年四月から月 額一〇〇〇円程度の会費制を導入する予定だったが、 それさえ当面は見合わせるという。
今は何より敷居を 低くして、中小運送業者の利用しやすいようにするこ とで利用者の裾野を拡げようとしている。
運営規模さ え確保できれば、ビジネスモデルは後から付いてくる という考えのようだ。
「最終的には中小運送業者の業務支援代行のような機 能を持つようにしたい。
しかし、それには信用が必要。
まだまだ時間がかかります。
周りの人は有望なシステ ムだと持ち上げてくれるけれども、自分としてはいく らか可能性が出てきたかなという程度。
いまだに立ち 上げの頃と状況が変わったとは思えません」と楽観は していない。
「水屋」を育成・組織化する 手弁当の「Tr@Box」とは対照的に、総合商 社大手三社、トヨタ自動車、日本通運などの大資本 が出資するロジリンクジャパンの南部周一社長も「当 社が成功しなければどこも成功しない、というぐらい の自信はある。
しかし、上手く成功したとしても、こ のビジネスはそれほど大きく儲かるような商売ではな い」と指摘する。
実際、今年四月にシステムを本格稼働させた同社 の売り上げ目標は初年度四億円、五年後でも十三億 円と、出資者の面子を考えると控えめだ。
株式の公開 も「将来的な話としてはあるが、当面の計画には入っ ていない。
そもそも求車求貨がカバーするのはかなり 「本当にビジネスとして成り立つか どうか、まだ全くわかりませんよ」 というトラボックスの藤倉泰徳社長 MAY 2001 18 ニッチなマーケットだ」という。
現状では、求車求貨システムによるマッチングを必 要とする荷物・車両は、スポット取引のうち、既存の 配車業務で処理しきれなかった分に限られる。
いくら 国内トラック運送市場の規模が一〇兆円以上に上る といっても、求車求貨システムの利用は数千億円規模 にとどまる。
さらに、サイト運営収入となると取引さ れる運賃の数%〜一〇%の手数料のみ。
とても大きな 絵が描けるような事業ではない。
取引の完全な自動化も難しい。
ロジリンクではマッ チング方法は自動化を目指すのではなく、「ロジステ ィクス・コーディネーター」と呼ばれるスタッフを育 成し、それをITでサポートするというアプローチを とる。
マッチングには、どうしても人間の頭脳が必要 で、完全にはIT化できないという判断が、その前提 になっている。
そもそもこれまで日本の物流市場では、空車と荷物 のマッチングを、俗に「水屋」と呼ばれる一種のフォ ワーダーが担ってきた。
多くはアパートの一室に数本 の電話を引き込み、人的なネットワークを通じて取引 を仲介、一〇%前後のマージンを稼ぐという属人的な ニッチビジネスだ。
これまでは組織化されることもな かった。
「収穫逓増」のウソ 求車求貨システムとは、この水屋商売をIT化しよ うというビジネスだと言える。
確かにそれができれば、 資産を持たずに取引を仲介するだけで利益を得ること のできる「おいしい商売」になるはずだが、実際には 容易ではない。
水屋という商売が、周囲の考えている 以上に、高度な判断を要求される仕事であることがそ の一因となっている。
「求車求貨システムというのは、現実問題としてか なり人手を介入させなくては上手くいかない。
一言で トラックといっても、砂利を運ぶものから、食品を運 ぶものまで様々。
システム化しようにも例外事項が多 過ぎる。
IT関連の子会社で現在、インターネットの 活用を進めているが、なかなか実現は難しい。
システ ムはほぼ完成しているが、どうビジネスとして事業化 するかが課題になっている」 名古屋に本社を置く中堅運送会社、トランコムの 武部芳宣社長はそう説明する。
家電を中心にした共 同配送で店頭公開を果たしたベンチャー企業として知 られる同社だが、実は売上高の三分の一程度を、 ?水屋商売〞で稼いでいる。
「物流情報サービス事業」 という名称で既に二〇年近くの事業実績を持つ。
二 〇〇〇年度の同事業の売上高は約四〇億円。
今年三 月期には前年比四〇%増の約五五億円を売り上げた 模様だ。
マッチングは完全に人手で行っている。
各地に営業 所を設置し、水屋のノウハウを叩き込んだ専門スタッ フを配置している。
教育されたスタッフと拠点の増設 が必要であるため、事業拡大には時間がかかる。
eビ ジネスの利点とされる「収穫逓増」の法則とは全く無 縁。
しかし、確実に利益を稼ぎ出す手堅いビジネスモ デルとなっている。
今日、ITの普及を誰もが当たり前のこととして予 測している。
これを物流マネジメントに活用しない手 はない。
しかし、そこで差別化の要因となるのはIT そのものではなく、運用のノウハウと地に足の着いた ビジネスモデルだ。
ITをどのようなタイミングで導 入し、実際のビジネスにどう結びつけるのか。
その答 えをITの専門家に求めるのは難しい。
経営者のビジ ネスセンスと判断に全てはかかっている。
「当社が成功しないなら、他は全部 ダメだろう」とロジリンクジャパン の南部周一社長 19 MAY 2001 ――求車求貨事業はいつ からやっているんですか。
「八二年からです。
共同 配送を始める少し前からや っています。
あの頃の私は、 何の特徴もない地場の運 送会社だった当社が、どう やったら生き残れるかを必 死に考えていた。
「物流情 報サービス」と呼んでいる 求貨求車サービスについては、ある人との出 会いがきっかけです。
結局、その方に当社の 物流情報サービス事業の基礎を作ってもら うことになるんですが、彼が従来から個人で ?水屋〞をやっていたんです。
当時のトラッ ク業界の認識では、水屋稼業は決してイメ ージのいいものではなかった。
いわばアウト ローです。
輸送秩序の確立という点では、運 賃値崩れの張本人と位置付けられていまし た」 ――それでも事業化したわけは? 「しかし僕はね。
当時から、安くてもやれる というのはスゴイことだと思ったんです。
お 客の値引き要請が出てくるのは当然だし、運 輸会社にとっても帰り荷の確保は切実な課 題です。
ある意味では、きわめて経済原則に のっとったビジネスですよ。
『これだ』と思 いました」 ――ビジネスとしてペイすると判断されたわけですね。
「八〇年代半ばにトラン コムの株式公開の準備をし ていたとき、実はこの事業 の方が、共配より先に株式 公開できるんじゃないかと 思ったほどです。
当初は一 〇年間で売上高一〇〇億 円達成という目標を掲げていました。
目標 とはだいぶズレてしまいましたが、それでも 昨年度の売上四〇億円に対して、二〇〇一 年三月期には売上五五億円を見込んでいま す。
前年比で四〇%ぐらい伸びるはずです」 ――急成長の理由はなんですか。
「いくつか理由があります。
一つは営業マ ンが育ってきたこと。
モラールと営業力が付 いてきたことが最も大きい。
もう一つは、当 社が築いてきた実績が信用力につながったと いうことでしょう。
我々は全国三〇〇〇の 運送業者と契約しているんですが、時間を かけて支払い条件などをきちんと管理してき ましたから。
あとは数年前に積極化した関東 エリアへの進出によって、マッチング率が非 常に高まったことも大きい。
これも信用力確 保につながったはずです」 ――営業拠点はどれくらあるんですか。
「サービス開始当初は名古屋だけだったの ですが、その後、関東に進出し、二〇〇〇 年一〇月には関西にも第一号店を開設しま した。
社内で『配車センター』と呼んでいる こうした拠点が現在、全国に一五カ所あり ます。
関東には東京・神奈川・千葉・埼玉 の四拠点に九配車センターあり、名古屋エ リアには三拠点・五配車センターを設置し ています」 ――マッチング作業はどうやるんですか。
「電話です。
もちろん最近のウエブを使っ た求車求貨システムには、非常に興味があ る。
当社もインターネット上に移行するため の作業は進めています。
しかし、システムは ほぼ完成しているのですが、ビジネスモデル が課題になっている。
どうやったらビジネスとして成り立つのか。
実際の収支を分析し ていくと、具体化するのはなかなか難しい。
やる以上は商売にならなければ仕方がありま せんからね」 ――現状のモデルのままで、ITによって省 人化だけするというわけにいかないんですか。
「求車求貨システムというのは、現実問題と してかなり人手を介入させなくては上手く いかないんです。
一言でトラックといっても、 砂利を運ぶものから、食品を運ぶものまで 様々。
システム化しようにも例外事項が多 すぎます。
IT関連の子会社であるトラフ ィックアイで、具体的な事業化モデルなど を検討していますが実際の開始時期は未定 です」 「安易にシステム化はできない」 トランコム 武部芳宣 社長  第1部求車求貨システムの実態

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