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23 MAY 2001
積載率
50
%はウソ?
本誌
インターネットを使った求車求貨システム
が続々と誕生しましたが、事業が軌道に乗ってい
ると言える会社は少ないようです。 帰り荷斡旋業
である「水屋」を稼業としている皆さんから見て、
求車求貨システムが機能しないのは何故だと考え
ていますか?
安積
そもそもの出発点が間違っている。 経済産
業省(旧通産省)が「トラックの積載率は五〇%」
と発表しているが、それを鵜呑みにしてビジネス
モデルを描いている点が悲劇の始まり。 あの調査
ほどいい加減なものはないよ。 例えば、半径三〇
キロ以内で仕事をしているトラックがどれだけあ
るのか知らないが、いわゆる近距離トラックはほ
とんどが片荷輸送であることは間違っていない。 し
かし、長距離トラックはどうだろう? 積載率五
〇%で走っていたら、会社は潰れているはずだよ。
長距離、中距離、近距離に分けて積載率を発表し
てもらいたいもんだね。
水口
積載率五〇%ってことはありえないね。 緑
ナンバートラックの積載率は七〇%はあるんじゃ
ないの? オレも長距離トラックの積載率が五〇%
だったら、会社が潰れちゃうと思うよ。 ただし安
積さんの指摘通り、近距離トラックの半分は空だ
っていうのは正しいよ。 通産省の発表数字は意味
がない。 完全に数字が一人歩きしている。 アドバ
ルーンを上げるのに、都合良く使っている会社が
たくさんいるけどね(笑)。
安積
一五〇キロ以上走る中・長距離トラックの
七〇%はすでに荷主が決まっていて、その残りの
三〇%の部分が求車求貨システムのマーケットだ
っていうけど、あれも説得力に欠ける。 荷主の決
まっていないトラックなんてほとんどないはずだよ。
本誌
求車求貨システムの運営に乗り出した企業
にしても、お役所の調査のみを事業化の判断材料
に使っているとは思えないのですが。
安積
「水屋業は誰にでも出来る儲かる商売」とい
うイメージが強いんだろうね。 水屋業はトラック
や拠点などの資産が要らないから、確かに利益率
の高い商売だよ。 だけど、素人がマウスをクリッ
クすれば、簡単に稼げるような商売じゃない。 奥
が深いんだよ。 物流は荷主、元請け運送、下請け、
孫請けという多段階構造で、しかも取引形態が複
雑だから、情報のオープン化を毛嫌いする会社が
多いんだよね。 何もしないでマージンだけを抜い
ていることを知られたくないもんね。 つまり、物
流は「秘め事」なんだよ。 それを理解しないで「オ
ープンな市場」を謳っても、誰もついてこないに
決まっている。
高度経済成長が水屋を生んだ
本誌
機能している求車求貨システムもいくつか
はありますよね。
安積
動いている求車求貨システムだって、ほと
んどが配車管理システムの域を抜け出せないでい
るでしょう? 評価の高いキユーソー流通システ
ムの求車求貨システムだって、結局はグループ内
の配車システムだよね。 世間一般でいう求車求貨
システムとは性質が違う。
水口
キユーソーさんも肝心な運賃交渉の部分は
電話のやり取りで交渉しているんでしょう? そ
れが正解だよ。 結局、最初から最後まで電話を使
ってマッチングする水屋のやり方が正しいわけよ。
司 会:本誌編集部
出席者:安積高吉さん(仮名)……… 元運送業者
水口貫太さん(仮名)…… 現役水屋業者
覆面座談会
テーマ「水屋稼業はIT化できるか」
第1部求車求貨システムの実態
求車求貨システムの開発担当者はこうつぶやいた。 「水屋業者の頭脳
を完全にプログラミングできれば、ネット版求車求貨システムは必ず
うまくいく」と。 しかし、“勘ピュータ”で制御されている、ファジー
(曖昧)な水屋のマッチング技術を完全分析し、システム化に漕ぎ着け
たシステムエンジニアは未だ存在しない。 水屋稼業のIT化は本当に実
現できるのか――。 元運送業者と現役水屋業者の2人にその可能性につ
いて語ってもらった。
MAY 2001 24
本誌
求車求貨システムにとって何が足かせとな
っているのですか。
水口
マッチングまでの時間が掛かりすぎる点だ
ね。 求車求貨の情報提供者って、トラックがない、
あるいは荷物がないと困っている企業だよね。 す
ぐにトラックを手配してもらいたい、すぐに荷物
を見つけて欲しいという緊急の需要なんだよ。 だ
から、パソコンの画面を見て、「この仕事いいな」
と選んでいる時間なんてないんだよ。 申し込んで
も、なかなか返事がないと、荷主の物流担当者や
運送屋の配車係は「トラックが見つからないんじ
ゃないかな」とか「空車で走らせないといけなく
なるんじゃないかな」って段々と焦ってくる。 不
安にさせないことが大切なんだよ。 その点、水屋
は頼まれれば、すぐにマッチングするからね。
本誌
既存の求車求貨システムはまったくダメだ
ということですか。
水口
そんなことはないんじゃない。 いい面だっ
てあるよ。 水屋にはそれぞれ得意とする地域があ
るんだけど、求車求貨システムはそれ以外のエリ
アの情報をインターネットで簡単に入手できると
いう意味で有効だね。 ただ、情報がオープンにな
ることで、オレたちは商売がやりにくくなるけど
ね(笑)。
本誌
求車求貨システムは水屋業をIT化したも
のだと言われています。 しかし、求車求貨システ
ムの原点である水屋業の実態がよくわかりません。
まずは水業業の歴史を辿ってみたいのですが、い
ったいこの商売はいつ頃登場したのですか?
安積
戦前からあるという説もあるけど、台頭し
てきたのは昭和五十年代に入ってから。 高度経済
成長の波に乗って、トラックでモノが大量に運ば
れるようになったでしょう? その頃から帰り荷
斡旋の需要が喚起されたんじゃないかな。 本誌
モノが大量に運ばれる時代は売り手(トラ
ック事業者)市場だったはず。 水屋を介さなくて
も簡単に荷物を見つけることはできたのではない
でしょうか?
安積
例えば、東京〜福岡の運行を考えた場合、
東京から出る荷物は多いけど、福岡から出る荷物
って少ないよね。 荷物って大都市から一定方向に
流れているわけ。 行き便の需要はあるんだけど、着
点から戻る便、つまり帰り荷は見つけにくいとい
う構造になっている。 着点には配送を終えたトラ
ックがたくさんあって、そこから出る少ないパイ
の荷物を奪い合うことなる。 そこで、荷物を斡旋
する水屋業の出番になるわけよ。
水口
運送屋の社長さんってドライバー上がりの
人がほとんどでしょう? 車の運転やドライバー
の管理は上手なんだけど、営業能力はゼロに等し
い。 それを補うために水屋が必要なんですよ。 水
屋は運送屋の営業マン。 営業代行業ですよ。
本誌
水屋のメッカ(聖地)ってどこなのですか。
安積
水屋が拠点を構えているのは東京と大阪、そ
して九州が多いね。 水屋は荷物が集まるところ、長
距離輸送が発生するところで商売をしているんだ。
九州に水屋が多いのは東京からの帰り便で農産物
を運ぶ需要があるからだと思うよ。
水屋の市場規模
本誌
現在、水屋の市場規模はどのくらいなので
すか。
水口
それは掴んでいないな。 でも、バブルの頃
がピークで、今はどちらかといえば縮小気味だろ
うね。
本誌
水屋の数も分かりませんか。
安積
貨物運送取扱業者って今どのくらいいる
の? 取扱業=水屋だからね(笑)。 それは冗談だ
としても、いわゆる水屋の専業者っていうのは二
〇〇〇〜三〇〇〇社ぐらいあるんじゃないの?
水口
個人で水屋業をやっている人を入れるとそ
んな数じゃきかないだろう。 万単位じゃないの?
本誌
水屋業の方は国土交通省の許可を受けてい
るのですか。
水口
受けているはずだけど、そうでない違法水
屋もたくさんいるだろうね。 特に築地あたりで商
売している水屋には「自称・水屋」も多いんじゃ
ないの?
本誌
水屋にはダーティーなイメージがあります。
世間体は良くないですよね。
水口
トラックなどの資産をまったく持たないで、仕事をやっているからね。 必要なものといったら
電話くらいだから(笑)。 手を汚さずに、他人のふ
んどしで飯を食っていると思われているからイメ
ージが悪いんじゃないかな。
本誌
水屋には暴力団系の人が多いということは
ありませんか。
安積
今はそんなことはないよ。 でも、昔は多か
ったのかな。 でも、俺なんかからすると、運送屋
のほうがよっぽど、ヤクザだと思うけどね。 平気
で仕事をキャンセルしたり、無責任な奴が多いか
ら。
水口
ご覧の通り、水屋のほうが紳士だよ(笑)。
お客さんからの信用が命だから、仕事に穴を開け
るようなことは絶対しない。 車が見つからないと
困っているお客さんのために何が何でも車を探そ
25 MAY 2001
うと必死に働くからね。 運送屋よりもはるかに責
任感は強い。 運送屋はひどいから。 せっかく仕事
をつけてやったのに平気でドタキャンする。 それ
を被ってお客さんに謝るのは水屋なんだよ。 運送
屋は「運んでやる」というバブル期の感覚がまだ
まだ抜けていないね。
帰り荷確保は死活問題
本誌
水屋業は一匹狼の方が多いですよね。 これ
を組織化して全国展開しようという試みはこれま
でなかったのですか?
安積
実は何年か前に全国展開に挑んだ会社があ
った。 全国に水屋の拠点を設ければ、それだけ情
報が集まって配車しやすくなると考えたんだろう
な。 しかし結局、うまくいかなかったみたいだよ。
水口
あ〜、あの会社? ひどい会社だったね〜。
うまくいかなかったの? とにかく運賃が安くて、
だぼハゼのように何でも食べちゃう水屋で有名だ
ったから。 あのやり方だと長続きしないだろうね。
本誌
物流子会社も、いわば水屋の一種といえる
のでは。
安積
その通り。 そもそも物流子会社は実運送は
下請けに任せて、運賃をピンハネするために設立
された会社が多いんだよ。 余剰人員で会社を作っ
て、「お前らピンハネやっておけ」って親会社から
言われているんだよ。 だから、トラックをほとんど
持っていない会社が多いでしょう? ×××××
なんて典型例じゃない。
本誌
水屋は儲かるのでしょうね。
水口
そりゃ儲かるさ。 荷主の支払い運賃が一〇
〇だとすると、物流子会社はそのうちだいたい三
〇をピンハネしているんじゃないの? 残った七
〇が下請け、孫請けの運送屋に流れる。 最終的に
実運送を担当する運送屋に落ちる運賃は五〇くら
いだね。
本誌水屋業のノウハウや日常業務の詳細につい
て伺おうと思います。 まず、そもそも皆さんがこ
の商売に目を付けたきっかけは何だったのですか?
水口
元々、ある運送屋の社員だったんだけど、そ
の会社で配車の仕事をしてたのよ。 営業で取った
荷物を自社で運ぶのではなく、傭車に投げてサヤ
を抜く。 そんな仕事を何年もやってきた。 それで
「これは儲かる」と思ったのがきっかけだね。
本誌
傭車に仕事を投げてサヤを抜くのと、水屋
の商売は性質が違う部分もありますか。
水口
確かに似ているようで違うね。 傭車ってい
うのは行きの荷物の斡旋にウエイトを置いている
けど、水屋は帰り荷を斡旋するのがメインだから。
本誌
帰り荷を確保することはそんなに大事なこ
となのですか?
安積
特に地方の運送屋にとっては死活問題だよ。
例えば、仙台の運送屋は仙台から東京まで安い運
賃で運んでいる。 東京から仙台に帰る時の運賃の
ほうが高いんだから。 これじゃあ、仙台の運送屋
にとって、どっちが帰り荷なのか分からないよね。
いかに運賃の高い帰り荷を確保できるかが大事な
んだろうな。 九州でも同じような運賃の逆転現象
が起きている。 広島もそうだな。
本誌
行きと帰りではどのくらい運賃が違うので
すか。
安積
二〇〜三〇%ぐらい違うんじゃないの?
水口
いやもっと違うよ。 「これって寸志だろう?
運賃はどこじゃ」という話も多い。 これじゃ人件
費どころか、油代も出ないんじゃないのっていう
運賃。 ひどいもんだよ。
本誌
帰り荷を運ぶとドライバーにとってもプラ
スになるのですか。 何も積まないで、帰ってきた
ほうが運転も楽じゃないですか?
水口
その通り。 でもドライバーはサラリーマン
だけど、給料は水揚げした運賃の何%と決められ
ているのがほとんどなんだよ。 だからドライバーは
帰り荷探しに必死なんだ。
水屋業界の紳士協定
本誌
水屋同士には紳士協定みたいなものがある
のですか?
水口
決まったルールや掟があるわけではないけ
ど、俺は他人のエリアを荒らさないように注意し
ている。 でも、話を聞くと最近は水屋同士のお客
さんの奪い合いも結構あるみたいよ。 背に腹は代
えられないからね。
水屋同士で仕事を融通することもあるんだけど、
その時も相手にはなるべく情報を与えない。 水屋
の事務所に電話をする時、どこから積むのか地域
だけ教えて、細かい指示は実運送を担当するトラ
ックに直接伝えるんだ。 事務所に余計な情報を与
えると直接取引されちゃうからね。
本誌
お客さんとの間にはルールがあるのですか。
水口
運送屋が水屋に紹介してもらった荷主を横
取りするのはタブーだよ。 それだけは絶対に許さ
ない。 「軒先貸して母屋取られる」っていう状態を
作らないようにしないとダメ。 横取りしたら、業
界内で噂が広がって、あの会社には気をつけろと
いう話になる。 そういうルールを知らない運送屋
は直取引をして、後で痛い目に遭うんだよ。
安積
荷主さんが集荷にきたトラックと直接交渉
第1部求車求貨システムの実態
MAY 2001 26
するケースもある。 荷主さんも水屋にピンハネさ
れていることを知っているから。 直取引のほうが
コストダウンできると考えるんだろうね。
攻撃的な性格なら成功する
本誌
お客さんはどうやって見つけているのです
か。
水口
運送屋にいた頃から付き合いのあるお客さ
んが多いけど、新規開拓もやっているよ。 街でト
ラックのナンバーをメモしてどこから来ているトラ
ックなのかをチェックする。 後で調べて運送屋に
「いつもこっちのほうまで走ってきているようだけ
ど、帰りの仕事あるの?」と連絡する。 「帰り荷が
ないなら、俺がつけてやるよ。 仕事がないときは
連絡ちょうだいね」って声を掛ける。 そうやって、
運送屋のネットワークを作ってきたんだ。
本誌
一日のスケジュールを簡単に教えてくださ
い。
水口
朝の八時ぐらいに事務所に出勤して、まず
は運送屋に電話を掛けまくる。 「いま車はどこにい
るの?」「空いている車ない?」って、得意先に問
い合わせをする。 すると、「大阪に空トラックが一
台あるよ」とか「東京にいるよ」と返事がもらえ
る。
次に荷物探し。 荷主さんや元請けの運送屋に電
話して車が足りているかどうか確認して、困って
いるようであれば「その仕事もらうよ。 ちょっと
待っててね」といったん電話を切る。
ここからが時間との戦いだね。 実運送を担当す
る側、荷主さんや元請け運送屋といった荷物を出
す側とも、自分たちで何とか荷物や車を探そうと
しているわけだから、それよりも早くマッチングし
ないと、水屋の存在価値はなくなってしまう。 お
客さんを待たせないことが成約のコツ。 時間を引っ張れば、それだけ条件のいいお客さんが見つか
るかもしれないけど、逆に失う可能性も高くなる。
どこで見切りをつけるか、結構頭を使う仕事なん
だよ。
仕事のピークは出社してからの二時間、そして
十一時頃から昼、二時から三時、四時から五時の
間。 とにかく電話を掛けまくる。 水屋は攻撃的な
奴じゃないと成功しない。 待っていたのではいつ
まで経っても仕事はこない。 仕事が終わるのはだ
いたい五時頃だよ。
本誌
マッチングのノウハウを披露してもらえま
せんか? いったい運賃はどうやって決まるので
すか。
水口
もちろん需要と供給で決まるんだよ。 トラ
ックが少ない日は運賃が高くて、逆に多い日は運
賃が安くなるという簡単な仕組みだね。 運賃の相
場は株式と同じで毎日変動する。 例えば、土曜日
なんてトラックが余っているので、運賃は安くな
る。 どんなに安い運賃でも運送屋は空で走るより
はマシだと判断して仕事を受ける。 一方、物流の
知識に乏しい荷主企業は運賃に相場があるなんて
知らないから、いつもと同じ運賃を払ってくれる。
その差額を水屋が頂戴するわけよ。
本誌
どのくらいサヤを抜けるのですか。
水口
ケース・バイ・ケースだな。 おいしいのは
直接荷主から「車探して」って頼まれる仕事。 「直
荷主の仕事」って呼んでるんだけど、これは結構
サヤが抜けるね。 ただし、運送屋からの仕事、つ
まり下請け、孫請けを探す仕事は、なかなかしん
どい。 相手もプロだし、運賃の相場をだいたい掴
んでいるでしょう? だから、慎重に値を指すよ
うにしている。 それでも平均して一〇%は抜いて
いる。 だいたい、手数料は一〇%からプラスマイ
ナス五%といったところで推移しているよ。
運賃の決め方
本誌
ピンハネしすぎると、運び手が見つからな
いでは。
水口
あまり安いと誰も手を挙げないね。 だから、
どこまで値を下げることができるかが水屋の腕の
見せどころなわけよ。 時には逆ざや覚悟でいい運
賃で仕事をあげたり、時にはギリギリの運賃で押
し通したりと、飴とムチの使い分けが大事なんだ。
本誌
運賃を提示するのは荷主のほうからですか。
水口
荷主さんのほうから「いくらで運んでもら
える」と申し出がある場合もあるし、逆にトラッ
ク会社のほうから打診される場合もある。 本誌
相手はいくら抜かれているのか分からない
のですか。
水口
絶対にバレないように細心の注意を払って
いる。 知られたら仕事にならないからね。 俺はひ
どい時、いや多い時(笑)には一つのマッチング
で三万円から四万円ピンハネすることもある。 そ
れでも「ありがとうございます」ってお客さんに
喜んでもらえるんだから。 変な商売でしょう?
本誌
荷主企業は毎回同じ運賃を提示するでしょ
う?
水口
そんなことはないよ。 ある程度決まった運
賃しか提示しないお客さんもいるけど、基本的に
は市場原理に則っている。 空車が少ない時には料
金は高いし、逆に車が余っていれば、料金は下が
る。 車が少ない時は「今日は運賃を余分にくださ
27 MAY 2001
いよ」とお客さんに話しているしね。
本誌
トラックの仕様とか細かい条件を電話で相
手に聞くのですか。
水口
それはちゃんと聞いているよ。 トラブルの
原因になるからね。 積載量はもちろん、ウィング
車なのか平ボディー車なのか、電話でちゃんと確
認しているよ。
本誌
次にトラックの現在位置を聞くわけですね。
水口
その通り。 「今どこにいるの?」って聞いた
後に、その車が何時に空車になるのか確認する。 相
手に伝えるのは荷物の形態と、それをどこに何時
までに運ぶのかという情報。 そして、その情報を
きちんとメモしておくことが大事なんだ。
節操のない運送屋
本誌
マッチング率はどのくらいですか。 水屋に
頼めば一〇〇%斡旋してくれるのですか。
水口
水屋は信用第一が大事だから、それに近い
ところまでは何とかマッチングするようにしている
よ。 でも、こっちから断ることもあるので、一〇
〇%というわけにはいかないな。
本誌
荷主企業と直接取引することもあるのです
か。
水口
水屋の世界では直荷主とか直貨物とか呼ん
でいるけど、それも結構多いね。 それに、直接取
引がないと水屋はなかなか儲からない。 下請けか
ら孫請けに流す運送屋同士のマッチングだと少し
しかサヤが抜けないからね。 飛び込み営業はほと
んどやらないけど、誰かの紹介で荷主さんとおつ
き合いさせてもらうようにしている。
本誌
どうしても車が見つからない時だってあり
ますよね。
水口
ないときは本当にないね。 あれだけトラッ
クが走っているのに見つからない時は本当に見つ
からない。 何件電話してもダメ。 でもね、最初は
「今日は空車がないよ〜」っていってた運送屋に、
ちょっと高い運賃で交渉するとどこからかトラッ
クが出てくるんだな〜これが(笑)。 空車はないは
ずなんだけどね。 「車が故障した」「ドライバーが
急病になった」とか嘘ついて高いほうに仕事を回
そうとしているだろうね。 気持ちは分かるけど、運
送屋って節操ないでしょう? 水屋よりも運送屋
の社長のほうがワルだよ。
本誌
配車の翌日に運送行為が発生するのが基本
ですよね。 一週間とか一カ月前の仕事をマッチン
グすることはないのですか。
水口
もちろんあるよ。 でも、前日配車が多くな
っているよね。 荷主の営業マンが締め切り時間を
延ばして配車するようになってきたから。 ギリギ
リまで引っ張って、何とかトラックの使用台数を
減らそうとしているんだろうけど、結局最後はト
ラックが足りなくなって、水屋に打診してくるん
だよ。
本誌
荷主企業の物流マンとか配車係からバック
マージンを要求されることはないのですか?
水口
高い運賃で請求書を出してもいいから、何%
かバックしろ、ってやつでしょう? 今はほとん
どないけど、昔は要求する人もいたね。
安積
運送屋とか水屋との癒着を防ぐため、営業
とオペレーションの担当者を分けるようにしてい
る会社もあるよ。
本誌
運送屋への支払条件は決まっているのです
か。
水口
当月締めの六〇日後の現金払いが基本だね。
だから、水屋は仮に月間一千万円の仕事をするの
ならば、三千万円ぐらいの資金力が必要になる。 決
して楽な商売ではないよ。 手形もほぼ同じ条件で
支払っているし。
銀行筋から情報入手
本誌
運賃を払う側が倒産したら、連鎖倒産に追
い込まれる可能性もありますね。
水口
それが一番怖いんだよ。 だから、与信管理
には注意を払っている。 特に最近は運送屋の倒産
も少なくないからね。 手形をジャンプし始めたら
要注意だよ。 危ないと思ったら、例えば、五台分
仕事をくれたら、五台分返すといったように相殺
勘定にしているよ。
本誌
仕事を受けないケースもあるのですか。
水口
そりゃありますよ。 冷やかし半分の安い運
賃は相手にしない。 積み卸しに時間が掛かる仕事
とか何軒も立ち寄って荷下ろしする必要がある仕
事などはドライバーが好まないし、トラブルの原
因になるから手を出さないようにしている。 あと、
手形のサイトが長いやつ。 これも敬遠するね。
本誌
信用情報はどのように入手しているのです
か。
水口
業界内の噂を聞いたり。 銀行関係者に聞い
たり。 水屋はみんな情報収集に余念がないよ。
本誌
例えばド素人の私が明日から水屋の仕事を
始めたら、どのくらいで一人前になれますか。
水口
何年かかるかね。 まあ、三、四年は掛かる
だろうな。 まず人脈づくりに時間が掛かるよ。 や
ってみれば?
本誌
‥‥。 今日はお忙しい中、ありがとうござ
いました。 大変、勉強になりました。
第1部求車求貨システムの実態
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