*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。
欧米ではロジスティクス・マネジャーの平均年収
が10万ドルを超えている。 ロジスティクス専門職は
有望なキャリアの1つとして社会的に広く認知され、
教育体制の整備も進んでいる。 中国も現在、物流人
材の育成に官民を挙げて取り組んでいる。 日本もこ
れ以上、人材開発の遅れを放置することはできない。
Q1 日常実務を遂行するうえで、現在のあなたの
物流・ロジスティクスに関するスキル(熟練度)や
知識は足りていると思いますか?
本誌はこのたび物流人材教育の現状に関するアンケー
ト調査を行った。 本誌読者の中からランダムに選んだ約
1000人にメールで質問項目を送付。 締め切り日までに
121人から回答を得た。 その集計結果と自由回答欄に綴
られた読者の生の声を以下に報告する。
本誌アンケート調査
―― 物流人材教育の現状
注:自由回答欄のコメントは読みやすいように本誌編集部で字句を多少、修正しています。
足りている
8人
全く不足
17人
まあ、
足りている
31人
不足気味
63人
特集
MAY 2005 8
――本誌アンケート調査から
人材教育の課題
■重要な分野にもかかわらず産・官・学各界でのロジステ
ィクスに対する認知度・評価が低く、人材が集まらない。
現在携わっている人たちのモチベーションは、こうした
社内外の環境が一因となってあまり上がっていない。 (物
流子会社・支社長)
■現場経験者で企画力と実行力のある若い人材が不足し
ている。 (個人)
■物流の社会的地位を高めて大学・大学院で物流の専攻
が増えるなど優秀な人材が参入してくることが必要。 (医
薬品・物流管理・課長代理)
■荷主企業内の物流屋としては、幅広い知識(構内も輸出
入も輸送も梱包も)を持たないと商売できない。 必然的
に人材育成には時間がかかる。 (輸送機械・物流改革プ
ロジェクト)
■理論や座学を学ぶ機会は多々あれど実践的な教育を若い
うちに受ける機会は少ない。 「実践は現場作業で学べ」ということなのかもしれないが、理論や座学とは懸離れ
た世界が現場には多い。 そういう時に柔軟な発想を持っ
て対処できる人材の育成と教育が必要。 今、色々と学習
している物流の「理論」もはたして現代社会の「物流」
にマッチしているのだろうかという疑問は常に存在して
いる。 特に大手企業の物流部員を見ていると机上理論の
みで現場を知らないように思う。 (製造販売業・経営改
革室)
■?企業トップの問題意識。 ?JILSの存在意義の向
上と企業内教育システムとしての活用。 ?JILSの拡
充。 ?物流業界団体の質的向上。 例えば京都議定書達
成への取組プロジェクトを組織化する。 (食品・監査役)
■ロジスティシャンに求められる業務知識の範囲は広く、
どのように教育プログラムを組むかが課題となっている。
(食品・ロジスティクス部)
■財務面等会社経営全般まで分かるようにすることが課題。
9 MAY 2005
(物流子会社・経営企画本部・課長)
■実際のワークが会社の経営にどうかかわっているのかを
実感できる方法が必要。 (国際物流業・営業担当課長)
■物を動かす現場オペレーション教育だけではなく、情報
を動かす本来の意味での「ロジスティクス」に関する教
育が急務。 会社の上層部および総務等の社内教育管理
部署にはその認識がない。 (メーカー・SCM部・主任)
■担当者の知識がオペレーションに偏りすぎてしまうのが
問題。 在庫管理理論などを強化したいが国内には、なか
なかよいテキストがない。 (メーカー・サプライ部・マネ
ージャー)
■?グローバルでSCM改革を実践できる人材を育成する
ための体系的な教育プログラムの構築が急務、?現場力
が弱まっている――物流現場のオペレーションのノウハ
ウ欠如と改善能力の低下。 (電機・ロジスティクス企画
部・課長)
■最近、3PLが叫ばれているが、3PLに対応できる人
材育成、業務企画・設計能力とIT化能力を同時に持
ち合わせる人材育成、5Sによる現場改善等の現場の改
善指導能力および改善遂行力。 (大学・非常勤講師)
■社内で異動し二カ月弱だが、余りにも情報が少なすぎる。
(小売業・センター長)
■若手の登用と人材の定着化。 (総合物流業・所長)
教育方法のアイデア
■いろいろな職場を一〜二年ごとに経験させる。 (個人)
■将来の人材を育成するためには、幼、小、中、高、大、
大学院、主婦に対して、楽しく教える(洗脳する)こと
も重要。 幼・小↓玩具・ゲーム(昔は路地で遊んだが、
これからは、ロジで遊ぶ!)。 中・高↓ロジネタのドラ
マ、漫画。 大・大学院↓民間企業事例の提供、産学協
力。 主婦↓ロジネタの昼ドラ、イケメン宅配、韓流ブー
ムの活用。 (業界団体)
■老若男女を問わず物流・ロジスティクスに関心を持つ人
には現場を豊富に経験させていくことが望ましい。 理論
武装だけではムリな面がある。 年齢は関係ない。 熱意が
人並み以上にあればよい。 泥臭さ、汗のにじみ出た雰囲
気の人間性が大切。 (物流コンサルタント)
■残念ながら、ロジスティクス=経営戦略という認識が一
般的にはまだまだ薄い。 これは経営トップの認識もしか
り。 企業のトップにロジスティクス=経営戦略という意
識があれば人材育成にも自ら取り組むはず。 その意味で、
経営トップを対象とした有益なロジスティクス講座を有
力企業連合で立ち上げる等の方策があれば、経営トップ
→経営幹部→社員という人材育成の連鎖が構築される。
(総合電子・物流部門・グループマネージャー)
■弊社は「お客様の販促支援サポート業」を軸にしている。
経営の軸をきっちりすることによって、ブレの少ない人
材育成ができている。 ちなみに弊社には、二つの使用禁
止用語がある。 ひとつは、「荷主」。 「お客様」という用
語で社内統一している。 もうひとつは「クレーム」。 「苦
情」なのか「事故」なのか、はたまた「手抜き」なのか、
ぼやけてしまうので使用禁止にしている。 (物流会社・
社長)
■定年後、直ちにアドバイザーとして物流会社に招致され
た。 理由は「仕事の評価の仕方に感覚的なものが多く、絶対値で、具体的に議論されるような、仕組みを作って
欲しい」というトップからの要望だった。 そこで、?人
材育成の基本体系作り――資格制度の新規導入、最適
なOJTの体系作り、最適なOFF
―JT作り。 ?評価
と処遇の最適化――成果・実績に基く給与体系作り、評
価方法の最適化、その他の方針系統図を提案し、人材
開発委員会を発足させ「ありたき人材像」を目指した展
開を経て今日に至っている。 「全体最適」「SCMや3P
L等の最新の動向への情報提供」「専門性の強化」等新
たにテキストを整備し、講師を育成し、顧客に期待され
るロジスティクス提案会社を目指している。 (物流子会
社・総務担当)
■土日を利用した勉強会の開催。 平日は日々の運用に追
われ、出席しにくい。 あるいは出席していても携帯電話
が鳴り集中できない。 参加者が持ち回りで講師をする等
5
Q.2 自社内に物流・ロジスティクスに関する教育体制はあり
ますか?
Q.3 Q2で「はい」とお答えの方にお聞きします。 具体的に、物流・ロジスティクスに関して、
会社はどのような教育体制を用意していますか?
はい いいえ
全体
荷主
物流業者
44人
11人
31人
75人
43人
20人
社内研修カリキュラムがある
不定期ながら勉強会を
催している
職能別研修に組み込まれている
企業内学校を設けている
OJT(オン・ザ・ジョブ・
トレーニング)のみ
その他
外部団体が主催する研修制度
などを社費で受講できる
(人)0 10 20
24
20
15
11
3
3
MAY 2005 10
して、自費参加も可能なリーズナブル(一万円以内/
日)な勉強会がいい。 (ネット通販・ロジスティクス部) ■自分で実際にモノを動かして、さまざまな業種の物流部
門を肌で感じ、共通点、相違点などを見つける。 そして
共配やWMSでの管理など、効率的な物流品質を提供
できないかを見出す。 (物流業・営業流通システム部)
■最新の手法や専門用語などはどんどん変化するので、必
要に応じてコンサルを活用するとか、適宜情報を集めれ
ばよい。 それよりもむしろ基礎体力をつけるという意味
で、基本的な会計・財務、統計の知識や論理的思考の
訓練などを、若いスタッフを中心に行ったほうが良い。
(専門商社・購買部・部長)
■物流、ロジスティクスの基本概念を先ずしっかり身につ
けてから、OJT、最近トピックステーマを勉強するこ
とが必要。 基本概念を知らずに、ただ新しいテーマを追
いかける人が多い。 企業において、ロジスティクス業務
の使命を知らずに、手法やテクニックに取り組んでも、
方角違いの改革になってしまう。 (物流コンサルタント)
■異業種巡見研修。 (小売業・物流部・チーフ)
■?会社的に物流・ロジスティクスは、まだまだ重要視さ
れていない。 スタッフにも諦めがあるように感じている。
ロジスティクスを活かして伸びている会社の紹介など、
もっと手軽に情報が入れば意識も変わる。 ?実際にロジ
スティクスを機能させているスタッフの意見(理想など
ではなく現場の問題点など)を、情報共有できるような
「専門紙」「サイト」などあると良い。 ロジビズでもメー
ルマガジンなどを無料で発信して欲しい。 (個人)
■キムタクでTVドラマ化する。 (個人)
■商流では競合していても、物流の担当者は同じ課題に取
り組んでいるはず。 同じ悩みを持つ立場の担当者を一同
に集めてケーススタディすれば有効。 (食品・管理本部・
課長)
■社内教育等で自己啓発を促す。 やる気が大事。 (電気・
物流部)
■地味な業界のため、業界あげてのイメージ一新が研修体
制の改善に繋がるのでは?(流通業・衣料品部・統括)
キャリアプランについて
■現場のオペレーション、会計、ネットワーク構築など、
継続的に座学と体験をしていかないとロジスティクスは
身につかない。 またロジスティクスは範囲が広いので、
どのエリアに関して自分が必要とされるかというキャリ
アデザインもあわせて行わないと意味がなくなってしま
う。 (物流子会社・事業推進担当)
■人材育成には、その対象者である新入社員の募集が第一
の問題として挙げられる。 第二に、物流部門への関心が
少ないこと。 これからは、他部門へ働きかける、伝達能
力や説得力、プレゼン能力が、これまでの経験などに加
えて必要では。 (化学・物流部門・主任)
■物流のプロになる、強いリーダーシップ、新しいことを
取り入れることに貪欲、コスト意識をもつ、自らをステ
ップアップさせる、仕事に対してのテーマを持つことが
必要。 (外食・ロジスティクス部・課長)
■荷主サイドから見るとかなり専門分野の職種になり、プ
ロフェッショナルの採用は本人のその後のキャリア(昇進の可能性)がネックになっている。 (電気・経営戦略
部・課長)
■体系だった理論とそれを具体的に実践する力が必要。 し
かしながら、人の頭数そのものが不足しており、それ以
前の問題で悩んでいるのが実態。 (自動車・物流部)
■物流はとっかかりやすいが実は奥の深い分野。 現場・現
物・現象の3現主義と机上計算の根拠となるデータ解析
を徹底することが大事。 他社よりもまずは自社のことを
キチンと把握することが優先される。 よって時間がかか
り即効性がない印象がある。 (人材派遣・物流企画部)
専門教育機関への要望
■大学などの機関による社会人を対象とした夜間学校があ
ればぜひ通いたい。 地方ではそういう講座や専門教育機
関がない。 東京で良い講座が開かれていても参加しにく
Q.4 あなたは社会人になってから、社外で物流・ロジス
ティクスに関する教育を受けた経験がありますか?
Q.5 問4で「はい」とお答えの方にお聞きします。 具体的にはどのような社外教育を受けましたか?
JILSの教育研修を受講
JILS以外の業界団体の
教育研修を受講
コンサルティング会社などの
民間企業による研修
国内大学/大学院の
社会人向けコースを受講
海外留学
はい
69人
いいえ
51人
(人)0 10 20 30
31
30
26
16
8
4
その他
11 MAY 2005
い。 通信教育、放送大学などで気軽に受けることができ
る教育メニューが欲しい。 ロジ分野の人材育成では基礎
分野以外の専門的な知識は各業種、分野や仕事内容に
より異なるため、細かく分かれた教育メニューが求めら
れる。 現在はそれに対応しているメニューが少ない。 (物
流会社・開発部門・主任)
■外部機関でのロジスティクス教育はJILSの研修位し
か見当たらないというのが実感。 内容も簡単過ぎる等不
満な点も多い。 この分野のネット教育には、ビジネスチ
ャンスがありそう。 (個人)
■物流・ロジスティクスを体系的に習得できる教育制度・
機関が少ない。 (物流子会社・製品物流部・係長)
■JILS等のセミナーの参加料は高過ぎる。 例え会社が
全額負担したとしても若手社員が参加費八万ぐらいする
セミナーへの参加を月に何回も要請できるとは思えない。
現に私はできなかった。 (物流業・営業担当)
■アクセンチュアのワールドワイドな社内研修・インター
ネットによる講習およびフォロー研修に期待。 (化学・
購買物流部門・主席)
■JILSの講義をもっと割安な設定にして多くの物流マ
ンに受講させた方が良い。 (3PL・常務)
■東京海洋大学、多摩大学、早稲田大学、大阪産業大学
などロジスティクスを研究している大学と企業との産学
連携が重要になってくる。 (学生)
■?大学・大学院の物流専攻過程の充実、?JILS等
の業界団体の研修の充実、特に?は体系的・本格的な
もの。
?は土日受講できるもの、?インターネットで在
宅で学習できるもの。 (物流子会社・海外事業部・課長)
■日本国内の物流・ロジスティク環境は諸外国と比べ、地
理的な面や市場ニーズの面から観ても非常に複雑。 その
中で各企業はそれぞれの手法でコストや業務の効率化を
図っている。 その現場の内容をヒアリング、もしくは体
験できる環境がもっとあっていい。
自分はJILSの
講座を受講したが、基本的な知識が主で、現業に活かさ
れていると実感できる機会がなかなかない。 (飲料・物
流部)
■?日本3PL協会〞に大いに期待。 (業界団体)
特集
11
(人)0 10 20 30
Q.6 あなたのスキル・知識を向上させるうえで最も期待している教育機関
を1つだけ選んでください。
Q.7 物流・ロジスティクスに関する情報源として活用する度合いの高いものを2
つ挙げるとすれば?
コンサルティング会社などの
民間企業による研修
JILSの教育研修を受講
国内大学/大学院の
社会人向けコースを受講
JILS以外の業界団体などの
教育研修を受講
海外留学
その他
専門紙誌
新聞
書籍
取引先
競合他社との横の繋がり
雑誌
社内の先輩や同僚
海外の学術情報
国内の学術情報
その他
29
27
19
9
5
84
31
27
9
21
2
1
8
(人)0 20 30 40 80
24
24
インターネットで
公開されている情報
Q.8 ロジスティクス・物流に関する書籍(雑誌を除く)で、後輩に勧めるとすれば?
『「物流管理」の
すべてがわかる本』
湯浅和夫(PHP研究所)
『ザ・ゴール』
エリヤフ・ゴールドラット
(ダイヤモンド社)
10人
『物流管理ハンドブック』
湯浅和夫編著
(PHP研究所)
16人 『
物
流
戦
略
策
定
シ
ナ
リ
オ
』
日通総合研究所
(かんき出版)
『ロジスティクスマネジメント』
ベリングポイント
(東洋経済新報社)
『ロジスティクス用語辞典』
日本ロジスティクス
システム協会(白桃書房)
『物流コストを半減せよ!』
湯浅和夫
(かんき出版)
『よくわかるこれからの物流』
河西健次、津久井英喜 編著
(同文舘出版)
『オンデマンド・
ロジスティクス』
水谷浩二ほか
(ダイヤモンド社)
『山・動く――
湾岸戦争に学ぶ経営戦略』
ウィリアム・G・パゴニス
(同文書院インターナショナル)
位
10人
位
位
位
位
位 位
位
位
位
6人 6人
4人 6人 6人
4人
4人
7
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