ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2001年5号
特集
物流&IT 日本には馴染まないという中傷を超えWMS市場は急速に拡大している

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MAY 2001 44 ――御社のソフトのワールドワイドの業績とマーケッ トシェアからお聞きしたい。
「売上高は一・一五億ドル(約一三八億円)で、マー ケットシェアは約十二%です。
内訳は米国でのシェア が約一五%、アジア地域で約三五%、ヨーロッパが約 一〇%。
ワールドワイドでの導入サイト数は一三〇〇 余りあり、顧客の数は五〇〇社を越えています。
また、 アジアでの顧客数は約一五〇社、約二五〇サイトです」 ――九八年七月に進出した日本法人の業績は。
「二〇〇〇年度の日本法人の売上は一八〇〇万ドル (約二一・六億円)でした。
前年比一〇〇%と急成長 しています。
導入サイト数は三五、顧客数は三社です」 ――日本よりアジアで強いということですか。
「アジアには九四年に進出しているため、導入サイ ト数も多いんです。
とくにシンガポール、タイ、マレ ーシア、香港、台湾といった国で高い評価をいただい ています。
ただマーケットシェアという意味では日本 が強い。
我々の日本でのシェアは、だいたい三〇%ぐ らいだと考えています。
しかし、日本のWMS市場は 現在、急速に拡大しています。
私は、日本市場は米 国に次ぐ世界第二位の市場だと考えています」 ――ポテンシャルがあるにもかかわらず、現在の市場 規模が小さい理由はなぜでしょうか。
「ソフトをカスタマイズするのが当たり前だからです。
従来、日本ではサプライチェーン・エクゼキューショ ン(運用)の分野のシステムを、企業内の情報部門や SIベンダーが構築してきました。
ようやく最近、パ ッケージ・ソフトを利用するという考え方にシフトし ている状況です。
ですから現状のパッケージ利用のマ ーケットは小さいかもしれませんが、これは年率およ そ四〇%の勢いで拡大しています。
EXEのような企 業にとっては大きなチャンスのある市場なのです」 日本のWMS(倉庫管理システム)市場は現在、急速に拡大 している。
とくに3PL事業者にとっては、不可欠のツールにな る。
WMSのトップ企業、米EXEテクノロジーズのレイモンド・ フッドCEOは本誌の独占インタビューに、そう答えた。
「欧米 のパッケージソフトは日本の物流には馴染まない」という中傷 には根拠がないと反論している。
Interview EXEテクノロジーズ レイモンド・フッド 社長兼CEO 「日本には馴染まないという中傷を超え WMS市場は急速に拡大している」 45 MAY 2001 ――日本での具体的な販売ターゲットは。
「一つのセグメントに絞っているわけではありません。
ただ主要なターゲットは3PL事業者、電子機器メー カー、一般消費財メーカー、小売りなどです。
これは ワールドワイドでの我々のターゲットと同じです。
米 国の調査会社であるARCの調べによると、ワールド ワイドでWMSの分野をみたときEXEのシェアは世 界一です。
実際、米国でフォーチュン五〇〇社に入る ような大手小売り業者のうち三社に一社は我々のパッ ケージを活用していますし、主要3PL事業者につい ても同様の導入実績があります」 3PLにIT武装は欠かせない ――それだけの実績にもかかわらず、日本で御社のソ フトを導入した企業のなかには上手く動かないという 話を聞きます。
なぜだとお考えですか。
「私は顧客からそのような話は聞いてはいません。
ま た、日本市場で導入に失敗した企業も一社もありませ ん。
我々は日本に進出したときから、日本企業にはな じまないとか、導入しても動かないといったさまざま な中傷を受けてきました。
しかし、いま現実に三五サ イトで稼働していますが、動いていないという事例は ひとつもありません」 「確かに、従来のカスタマイズしていたソフトと同 じような感覚でパッケージを利用しようとしたため、 本当は三カ月で導入するはずが半年、一年かかってし まったというケースはあります。
でも、こうしたケー スには我々はすべて無償で対応してきました。
そして 全てやり遂げています。
最近では顧客側の理解も深ま ってきましたし、我々もコツが分かってきましたので、 導入に要する期間は短くなっていきました」 ――では、一般論としてお聞きしたい。
世界標準にな っているERP、例えばSAPのソフトを導入しても、 日本では期待した効果に結びつかないケースが少なく ありません。
最大の理由はなんだとお考えですか。
「EXEとSAPの日本市場へのアプローチ方法は 違うと、私は考えています。
第一に、我々はベーシッ クな製品群の日本語対応能力を、長い時間をかけて 高めてきました。
ですからこの点で問題が発生するこ とはあり得ません。
また、我々の日本法人は独自の研 究開発部門を持ち、熟練したマネージメント体制も構 築しています。
つまり日本市場の現実に応じて製品の ローカライズをきちんと図っているわけです」 「また、ロジスティクスの分野に限れば、荷物は世 界中を移動しするわけですから、我々のソフトの持つ グローバル・スタンダードという強味は多いに活かさ れることになります。
確かに日本におけるロジスティ クスは特殊な部分もあります。
しかし、九五%は米国 やヨーロッパと何ら変わりません」――数千万円はする御社のソフトは安い買い物ではあ りません。
海外の3PLは、どうやってその投資負担 を収益に結びつけているのでしょうか。
「最近ではUPSやフェデックスが当社のソフトを 使い始めていますが、多くの3PL事業者はソフトの 導入コストについては問題にしていません。
重要なの は、ソフトを導入することによって、新規ビジネスを どれだけ獲得できるかです。
実際、ほとんどの3PL 事業者は、我々のソフトを導入することによって多く の新規顧客を獲得しているため、ROI(投資収益)と いう言葉を使えば非常に短期で回収しているはずです」 ――UPSやフェデックスのように自前でシステム開 発をする能力のある企業が、パッケージソフトを導入 する狙いは何ですか。
「UPSやフェデックスは従来、小口貨物の分野で、 ●EXEは サプライチェーンのどこを担うのか 情報の流れ 物の流れ Planinng 〈計画〉 (Advanced Planinng Systems) Demand Creation 〈需要創出〉 (Buying and Selling) Demand Fulfillment 〈需要充足〉 (Logistics Systems) Accounting & Control 〈会計・管理〉 (Enterprise Resource Planning) 第2部ソフトベンダーは証言する MAY 2001 46 取扱量こそ非常に多いがきわめてシンプルな業務を手 掛けていました。
これに対して、我々が提供している のはマネジメントの能力です。
これによって、より複 雑なサプライチェーン管理を手掛けることができる。
彼らはこうしたソフトは専門業者から入手した方が効 率的と判断したため、EXEのようなパッケージを購 入します。
これを社内で標準化し、世界的に展開しよ うとしているのです。
自前でシステムを開発するより、 その方が有利だと考えた結果なのでしょう」 ――すでにWMSの分野でEXEがデファクト・スタ ンダードを握っているとお考えですか。
「ありがたいことに我々のソフトは世界的にデファ クト・スタンダードに近い評価をいただいています。
また、これまでに付き合ってきた顧客とのやりとりを 通じて、多くの優れたビジネスプロセスやマネジメン トに接してきました。
EXEのソフトにはこうしたノ ウハウが蓄積されています」 荷主は総合サービスを望んでいる ――マーケットプレイスの話をお聞きしたい。
日本で は最近、求貨求車システムが数多く生まれましたが、 大半が上手くいっていません。
彼らの多くが手本にし てきた米 国 のN T E ( National Transportation Exchange )の現状を教えてください。
「パブリック・マーケットプレイスの多くは淘汰さ れるはずですが、私はNTEは成功すると思います。
すでに六年間の実績を持っており、七〇〇社以上の 輸送業者と、同じくらいの数の荷主が参加しています。
とくにLTL(Less than Track Load =小口貨物を 積み合わせて輸送するサービス)の分野では非常に大 きな力を発揮しています。
彼らは二つの重要な価値を 生み出しています。
参加する輸送業者を財務面でもコ スト競争力でも厳密に審査し、また業務プロセスを標 準化するという役割も担っています。
この二つを手掛 けることによって、NTEは荷主の輸送コストを劇的 に削減することができるはずだと私は考えています」 ――NTEのようなマーケットプレイスは、WMSと は今後、どのような関係になっていくのでしょうか。
「多くのマーケットプレイスがそうであったように、 NTEも最初は単に輸送業者の積載効率を高めると いう機能からスタートしました。
しかし彼らは、荷主 はそれだけでは満足せず、もっと複雑な問題の解決を 望んでいると気付いたんです。
荷主は輸送と保管を一 括管理することを望んでいます」 「そこでNTEは自社のソフトウエアにEXEのW MSを組み込んだのです。
こうすることによって彼ら は、荷主に輸送効率の改善だけでなく、倉庫管理やロ ジスティクス・マネジメントといった業務をも提案で きるようになりました。
実際、この三月にもNTEと EXEが一緒になって、大手メーカー二社へのトータ ル・ソリューションの提案を行ったばかりです」 ――SCMの分野には輸送や倉庫管理のほかに、サプ ライチェーン計画などのソフトが存在しています。
す べての機能を揃えなくてはサプライチェーンの効率化 はできないのでしょうか。
「答えは顧客の置かれている状況とニーズによって 異なります。
WMSだけを採用してもサプライチェー ンの高度化を図ることは可能です。
また、我々のパー トナーでもあるi2テクノロジーズやマニュジスティ ックスといった計画系のソフトとともに導入すること によって、より大きな効果を得ることもできる。
実際、 米国の主要3PL業者の中には、WMSに加えて、サ プライチェーン計画のソフトを導入している企業が少 なくありません」 47 MAY 2001 今年二月、FRBのグリーンスパン議長は「サプ ライチェーン・マネジメントの新たなテクノロジー と柔軟な生産活動は、経済減速期の在庫増加を早期 に防ぐだろう」と言いました。
情報技術に対して楽 観的な見方をしていたわけです。
しかし、現実はそ うはなりませんでした。
SCM分野のコンサルティングを手掛けるエスタ ブリッシュ社によると、米国企業の売上高に占める ロジスティクス・コストは一九七〇年代のオイルシ ョック後に急増し、以後は九〇年代の半ばまで長ら く下落傾向にありました。
それが九八年を境に 上昇に転じています。
つまり、数字はグリーン スパン議長の言った内容とは逆の動きをしたわ けです(図1)。
九九年度と二〇〇〇年度に企業がロジスティクス に費やしたコストの変化をみても、約半数の企業は 「コストが増えた」と答えています。
全企業の平均も 九・六%のコスト増という調査結果になっています (図2)。
ITの積極的な活用にもかかわらず、多く の企業のロジスティクス・コストは明らかに上昇し ているのです。
ただ、一方には、ITはロジスティクス・コスト の削減に有効であるというデータもあります。
先ほ どの米国企業を対象とした調査でも、全体の二三% の企業は前年度よりロジスティクス・コストが減っ たと答えています。
実際、コスト削減に成功した企 業の平均値をみると、前年より十一・五%減らして います。
いまやロジスティクスの管理にITは欠か せません。
そして上手く活用すれば有効であること も事実なのです パソコン直販で急成長を遂げたデルコンピュータのビジネスモデルは、当初は自らの在庫負担をサプ ライヤにシフトしただけのものでしかありませんでし た。
サプライヤに大きな負担を強いていたわけです。
しかし、デルはITを活用することによって、本当 に強いビジネスモデルを生み出したのです。
米国のロジスティクスをとりまく問題はたくさん あります。
二〇〇〇年度の第四四半期に経済の減速 が明らかになると、予想以上に在庫水準はふくらみ ました。
燃料コストの値上がりが輸送コストを増大 させ、顧客の要求の高度化は企業のロジスティク ス・コストを大きくしています。
にもかかわらず、何 十億ドルというコストを費やして導入したERPシ ステムはロジスティクスの慣行をサポートできず、き ちんとインターネットを使いこなしている企業もご くわずかしかいません。
(三月九日、幕張メッセで開催されたIBMフォーラム2001での講演の抄録とプレゼン資料) 「米国B2Bロジスティクスの最新動向」 図1 売上高に占めるロジスティクス・コストの推移 1962 1966 1970 1974 1978 1982 1986 1990 1994 1998 2002 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 (%) Source : ESTABLISH,INC./HERBERT W. DAVIS AND COMPANY 全調査企業 コストを削減した企業 変化のなかった企業(+−5%) コストが増加した企業 100% 23% 31% 46% 該当企業 +9.6% −11.5% −0.0% +26.6% 平均削減率(%) 図2 ロジスティクス費用の変化(2000/1999) (売上高物流費比率より算出) Source : ESTABLISH,INC./HERBERT W. DAVIS AND COMPANY EXEテクノロジーズ レイモンド・フッド 社長兼CEO 第2部ソフトベンダーは証言する MAY 2001 48 ポストポーンメント戦略 いま米国のロジスティクスには大きな変化が生じ ています。
三つの大きなトレンドがあります。
行動 や決断をできる限り後工程に先延ばしする「ポスト ポーンメント戦略」、ロジスティクスの「アウトソー シング」、「B2Bマーケットプレイス」です。
決断を先送りするというポストポーンメント戦略 は一見、悪いことのように聞こえるかもしれません。
しかし、多くの利点を持っています。
急速に変化す る経済環境下で、柔軟な対応と機敏な変化を可能に する経営戦略なのです。
典型的なケースとしては、 デルのようなパソコン・メーカーが、あらかじめ半 製品を作っておき、BTO(受注生産)によって最 終的な組み立て作業を行うといったものがあります。
ポストポーンメント戦略を実現するためには、ま ず業務プロセスを分解する必要があります。
そうす ることによってオペレーション・プロセスの最適な 配置を行い、製品を完成させる工程をできる限りサ プライチェーンの後工程に配置するのです。
こうしたメーカーの取り組みは、ロジスティクス にも大きな影響を与えます。
ロジスティクス・セン ターに求められる機能は、製品をカスタマイズし最 終的な仕上げをする場所として、また完成品を小売 店に代わって製品を保管する場所として、ますます 増えていくことになるのです。
ロジスティクスのための施設も生まれ変わる必要 があります。
保管やクロスドッキングといった機能 とは別に、組み立て工程をサポートしていく必要が あります。
また、誰もが容易に接続できる、透明性 の高いデータを管理・提供することによってサプラ イヤと顧客を統合することも重要です。
そのためにはインターネットの活用が欠かせませ ん。
さらには、複数の顧客が同居できる仕組 みによって、施設の利用効率を高めることも重要です。
こうした施設(Modern Fulfillment Center)は、従来型の物流センターというよ りは、むしろ工場に近いと考えた方がいいの です。
急拡大する米3PL市場 二つめのトレンドである「アウトソーシン グ」の話をします。
現在、米国ではロジステ ィクス分野でのアウトソーシングが積極化し ています。
多くの企業にとってロジスティク スは本業ではありません。
外部の有能なパー トナーに任せることによって、コスト削減と 顧客満足の向上の双方を得るというのが現実 的な選択になっています。
シスコシステムズやサン・マイクロシステ ムズといった企業は、メーカーでありながら 製造工程すらもアウトソーシングしています。
こうした傾向は今後、ロジスティクスの分野 でも確実に盛り上がってくるはずです。
企業 の進化とともに、メーカーとアウトソーシン グ先の関係は変わります。
いずれはIT、生 産、サプライチェーン管理、物流オペレーシ ョンといった業務が、すべてアウトソーシングされ ると私は考えています(図3)。
しかし、ロジスティクスのアウトソーシング、つ まりサードパーティ・ロジスティクス(3PL)の 利用には懐疑的な方も少なくないはずです。
ここに コンサルタント会社のアクセンチュアが米フォーチ ュン五〇〇社に入る製造業者を対象に、3PLサー ビスへの満足度を調査した資料があります(図4)。
これをみれば、全体の七二%の企業が満足している ことを納得していただけるはずです。
また、3PLサービスの利用によってコストが減 り、財務状況の改善につながったという別の調査結 果もあります。
利用企業は平均するとロジスティク ス・コストの一〇%削減に成功しています。
これは アウトソーシングの受け皿となる3PL企業が、複 数の荷主のあいだで資産を共有し有効活用している ためです。
バンク・オブ・アメリカの試算によると、現在の 戦略立案 マーケティング 研究開発 財  務 調  達 情報技術 生  産 倉庫業務・輸配送 戦略立案 マーケティング 研究開発 財  務 調  達 情報技術 生  産 ロジスティクス 図3 アウトソーシングをする企業の発展段階 倉庫業務 輸配送 戦略立案 マーケティング 研究開発 財  務 調  達 倉庫業務・輸配送 情報技術 生  産 サプライチェーン 垂直統合型の製造業 第1段階: コア業務以外をアウトソース 最終段階: バーチャル・ビジネス・モデル 内製化 外注化 49 MAY 2001 米国3PL市場の規模は少なくても五〇〇億ドル (約六兆円)あり、市場への浸透率は四・五%です。
この浸透率は将来、四五%まで伸びる可能性を持っ ていて、そうなれば3PL市場の規模は二二五〇億 ドル(約二七兆円)に拡大することになります。
未 来は明るいのです。
実際、米国の主要な3PL企業の売上規模は、過 去五年間で急拡大しています。
小口貨物(パーセル) を扱っていたUPSやフェデラル・エクスプレスが 3PL市場に参入してきたこともあって、主要3P L企業の九九年の平均売上高は一〇億ドル(一二〇 〇億円)を超えています(図5)。
今後、企業は高い付加価値を提供してくれる3P L企業に対して、より高い報酬で報いるという傾向 が強まっていくはずです。
つまり、3PL企業の生 み出す付加価値が高まるほど、マージン比率も高ま るということです。
ただ、こうした変化は非常に時 間のかかるもので、まずはITとロジスティクス実 務を合体する必要があります。
そこでポイントにな るのがeマーケットプレイスの存在です。
淘汰が進むeマーケットプレイス フォレスターリサーチ社は次のように定義していま す。
「不適切なビジネスプロセスと沈滞した情報フロ ーから脱却するため、いま大手製造業者の多くは自 社のサプライチェーンをインターネットに接続しよう としている。
eマーケットプレイスを介して、複数の 企業のサプライチェーンを結合させた状態をネットワ ーク・サプライチェーン(NSC)と定義する」 しかし、現存するシステムは、こうしたコミュニ ケーションが可能な仕組みではありません。
サプラ イチェーン上でパートナーと情報を共有するための 手段は、急速に変わりつつあります。
現在、インタ ーネットを使って情報を共有している企業は全体の 二八%しかいません。
しかし、二〇〇二年には八 八%の企業がオンラインで接続するという調査結果が出ています(図6)。
GDPの約一〇%を占めるロジスティクスの変化 は、コミュニケーションの革新にも大きな影響を与 えるはずです。
ただオンラインによるSCMには、お 手本になるベストプラクティスというものが存在し ません。
つまりリーダーとなる企業はいないのです。
そのためIBMなどのITベンダーが変化を先導す る必要があります。
もちろん、EXEテクノロジー ズもこの部分を解決するツールを提供していきます。
デルやシスコのような先進企業が取り組んできた サプライチェーンの効率化は、同じことをITの裏 付けなしにやろうとすればサプライヤに負担を押し つけることにしかなりません。
サプライチェーン上 で発生するコスト負担が、組み立てメーカーから部 品ベンダーにシフトするだけでは何の解決にもなり Source : Accenture 8th Annual U.S. Fortune 500 Manufacturer User Survey 従業員のモラル ロジスティクス・コスト 顧客満足 システム開発・支援 ロジスティクス・ サービスのレベル 非常に悪い 3% 2% 2% 悪 い 30% 15% 11% 13% 8% 影響なし 44% 11% 23% 47% 21% 良 い 18% 65% 59% 35% 67% 非常に良い 5% 10% 5% 3% 5% 図4 3PL利用の効果 3PLは企業内のさまざまな事柄に影響を与える 図5 急成長する3PL企業 $0ー99 $100ー199 $200ー299 $300ー399 $400ー499 $500ー599 $600ー699 $700ー799 $800ー899 $900ー999 $1000以上 平均年商(百万ドル) 1995 1996 1997 1998 1999 主要3PLの年商の推移 1995〜1999 3 5 4 4 1 1 3 $400 4 2 4 2 4 1 3 $453 3 1 5 2 1 1 3 $545 2 4 3 1 1 2 2 2 1 4 $610 2 5 2 2 1 1 3 $1,052 Source : Accenture 7 th Annual U.S. Provider CEO Survey (百万ドル) 第2部ソフトベンダーは証言する MAY 2001 50 ません。
その点、オンラインでつながったSCMは、サプ ライチェーン全体のコスト削減を可能にします。
で すから将来的には、多くの企業がeマーケットプレ イス上にSCMをアウトソースするはずです。
なぜ なら統合化によるコストメリットが明らかですから。
では一体、eマーケットプレイスの現状はどうな っているのでしょうか。
eマーケットプレイスには、不特定多数の参加者 に開かれたパブリックなものと、一部の企業グルー プだけで形成するプライベートなものがあります。
こ のうち閉じられた企業グループ内で機能するプライ ベート・マーケットプレイスについては、依然とし て大きな可能性を秘めています。
戦略的なサプライ ヤと顧客のあいだをつなぐことによって、きわめて 強固なつながりを形作っていくことになるでしょう。
しかし、パブリックなeマーケットプレイスのほ とんどは、ここ一年ぐらいの間に淘汰されるはずで す。
彼らの多くはハブとなるマーケットプレイスが なぜ存在しているのかという、基本的な視点を欠い ています。
現存する証券取引所を見れば明らかです が、公共性が高くオープンなマーケットプレイスと いうのは、数も限られるうえ、非常に小さな利益し か生み出しません。
単なる情報ハブに過ぎず、付加 価値を生み出し続けることが構造的に難しいビジネ スモデルなのです。
ただロジスティクスの分野では、ハブとなるeマ ーケットプレイスの存在が必要なことも確かです。
な ぜならロジスティクスは全業界にまたがる存在で、統 合化のためには複数企業を横断的につなぐことが欠 かせないからです。
今後は、情報が発信されてから完了するまでを、 各種のeマーケットプレイスをバランス良く 使い分けることによって統合していく必要が あります。
つまり、パブリックなeマーケッ トプレイスに求められる機能というのは、個 別のeマーケットプレイスに不足している部 分でしかなくなるのです。
SCMが財務に与える衝撃 これからの企業は優れたSCMを武器に 攻めに転ずるはずです。
現にデルやシスコと いった企業の強さは、効率的なSCMによっ て担保されています。
こうした企業と競争し ていくためには、すぐれたサプライチェーン の構築が不可欠です。
恐らく今後二、三年 の間で、企業収益にもっとも大きなインパク トを与えるのはSCMになるはずです。
簡単な試算をしてみましょう。
GDPに対 する平均的なロジスティクス・コストを一 〇%とすると、全世界のロジスティクス・コ ストは約三兆ドル(約三六〇兆円)ある計 算になります。
ここに一般的な構成比を当て はめると、三兆ドルのうち三七%が在庫管理 のコストとなり、ここだけで一・一一兆ドル (約一三三兆円)が費やされている計算にな ります。
仮にこれを五%改善できれば、一年目だけ で五五〇・五億ドル(約六兆六〇六〇億円)ものコ スト削減が可能になる計算です。
想像上のマーケットの話ではありません。
これは、 すでに存在しているマーケットに、小さな変化を起 こすことによって生み出される効果です。
きわめて 単純な試算ですが、SCMがいかに大きなインパク トを持っているかを、ご理解いただけるのではない でしょうか。
ただ、こうした変化はまだ初期段階にあります。
かつて七〇〜八〇年代にかけてコンピュータが登場 したあとも、米国の生産性は二〇年間、ほぼ横這い の状態が続きました。
おそらくサプライチェーン改 革も、明らかな効果が出るまでにはまだ時間がかか るはずです。
失敗もあるでしょう。
しかし、全体の トレンドが変わることはあり得ません。
78% 65% 28% 60% 60% 88% 28% 18% 15% 13% 13% 8% 8% 図6 サプライチェーンの情報を共有する手段は? SCM情報のオンラインでの共有を阻む障害は? 現在 2002年 FAX・eメール EDI インターネット 現在の情報システムの抱えるコラボレーションの機能欠如 コラボレーションに参加する上で問題がある 優先順位が低い 資源が不足している 必要ない 企業機密を保てない データを共有にしたくない Source : Forrester Reserch,Inc.ーNetwork Supply Chains Emerge ーDec.2000 第2部ソフトベンダーは証言する

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