ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2001年5号
特集
物流&IT サムスン物産──物流内製化

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MAY 2001 60 インターネット先進国である韓国。
日 本をはるかに上回るスピードでインターネ ットが浸透している。
総人口当たりのイン ターネット利用率は二〇〇一年末に五〇% に達する見通しだ。
インターネット経由で 買い物をするネットショッピングの人気も 高い。
ある調査によると、ネット利用者の うち約六六%がネットショッピングを経験 済みだという。
その韓国で人気ナンバーワンを誇るネッ トショッピングモールが「サムスンモール」(写真下)だ。
会員数約一七五万人、サイ トへの一日の訪問者は五二万人に達する。
韓国の有力財閥の一つ、サムスングルー プの中核会社であるサムスン(三星)物 産が運営している。
サイトのオープンは九八年九月。
以来、 二〇〇〇年二月には書籍ネット販売最大 手の米国アマゾンドットコムと提携。
同年 十二月にはB to B向けのモールを新たに立 ち上げた。
二〇〇〇年の売上高は約一八 〇〇億ウォン(約一八〇億円)。
二〇〇一 年に二八六〇億ウォン(二八六億円)、二 〇〇五年には一兆四八三〇億ウォン(一 四八〇億円)を見込んでいる。
「サムスンモール」で扱う商品は家電製 品、パソコン、CDなど三九カテゴリー、 二三万品目に及ぶ。
豊富な品揃えが消費 者から支持を得る理由となっている。
韓 国のメディアが実施したショッピングサイ ト認知度調査で第一位を獲得。
また、「女 韓国版eクリスマスで物流が麻痺 宅配会社買収で配送網を整備 サムスン(三星)物産は韓国で人気ナンバーワ ンのインターネットショッピングモール「サムス ンモール」を運営する総合商社だ。
これまでモー ルで販売した商品の配送には郵便小包や路線便を 利用してきた。
しかし、クリスマス商戦で遅配・ 誤配が生じ、“顧客離れ”が懸念された。
そこで、 宅配便会社を買収し、自前で新たに配送網を構築 した。
完成度の高い日本のネット物流を教科書に、 翌日配達体制の確立を急いでいる。
サムスン物産 ──物流内製化 韓国で大人気の「サムスンモール」 産はすぐに物流体制の見直しに乗り出し た。
まず、取り掛かったのはネット物流の パートナー探し。
徐常務がイメージしたの はきめ細かいサービスを提供できる日本の 宅配便会社のような物流業者だった。
ところが、韓国にはネット物流に精通 しているといえる宅配便会社は見当たら なかった。
韓国では元々、郵便が消費者 物流の分野をほぼ独占し、民間の物流業 者は主にB to Bの貨物を中心に扱ってきた。
B to CやC to Cの分野に注力する路線便 会社が少なかった。
このまま外部委託を続ければ、同じ過 ちを繰り返してしまう。
そう考えた「サム スンモール」では昨年二月、韓国の宅配 便会社「HTH」を買収。
この会社をモ ール専門の宅配便会社として育成し、自 社で物流をコントロールする体制に切り替 えた。
「サムスンモール」が物流というリアル の部分の基盤強化に動いたのは、韓国で は注文後すぐに商品が届くことがショッピ ングモールとしての差別化要因になるから だ。
「商品の品揃えなど販売面で競争する 段階は終わった。
今後は物流など付帯サ ービスの部分でどれだけ他社に先行できる かが生き残りの条件となる」と徐常務は 力説する。
小売業者である「サムスンモール」にと って物流はコア・コンピタンスではない。
本来ならば、マーケティングやサイトの機 61 MAY 2001 性が好むショッピングサイト」の第一位に も選ばれた。
「サムスンモール」の特徴はサイト上の 店舗のほとんどが直営店、つまりグループ 企業の店舗を中心にショッピングモールを 形成している点だ。
「サムスンモール」の 総括責任者であるサムスン物産の徐康浩 常務は「間口を広げず、サムスンブランド の商品に絞り込むことで顧客は安心して 買い物ができるはず」と直営店制の利点 を説明する。
eクリスマスで失敗 順風満帆に見える「サムスンモール」だ が、物流では苦い経験も味わっている。
販 売した商品を郵便小包や路線便など外部 委託のかたちで配送していたためだ。
トラ ブル発生時に、貨物の所在確認などの対 応が遅れ、顧客からクレームが相次いだこ ともあった。
クリスマス商戦では予想以上 に注文が殺到、物流機能が麻痺して遅配 や誤配が発生し、急遽バイク便を利用し て商品を届けるという事態に陥った。
「顧客から『注文した商品がまだ届かな いんだけど』や『何時に届くのか教えてほ しい』といった問い合わせがあっても、物 流をアウトソーシングしているため、すぐ に答えることができなかった。
このままで は顧客が逃げてしまうと危機感を覚えた」 と徐常務は振り返る。
クリスマス商戦での失態後、サムスン物 能強化などに専念し、物流はアウトソー シングしたいというのが本音だろう。
とこ ろが、韓国には「サムスンモール」の要求 を満たすことができる物流サービスプロバ イダーが存在しない。
結局、現状では自 社で物流のネットワークづくりに乗り出す ほかに選択肢はなかった。
顧 客 商品注文 商品注文 集荷指示 配 達 商品ピックアップ 出荷指示 出荷指示 出荷指示 コールセンター サイト上 各ベンダー 宅配会社 
硲圍 SAMSUNG MALL ●サムスンモールの物流フロー 第3部ネットビジネスの物流戦略 MAY 2001 62 「取りに行く物流」を導入 改善後の「サムスンモール」の物流フロ ーはこうだ。
まず、顧客からの注文をウェ ブサイト、もしくはコールセンターで受け 付ける。
注文情報を翌日午前八時までに バッチで処理して、各ベンダーには出荷指 示、HTHには集荷指示を出す。
HTH は午後五時から七時までの間に商品をピ ックアップして、営業所に持ち帰る。
幹線 輸送後、翌日、配達営業所が顧客に商品 を届ける(前ページ図参照)。
従来、商品配送は各ベンダー任せだっ たため配達日がまちまちだった。
それを 「サムスンモール」専門の宅配便会社が集 荷、配送する仕組みに改めたことで、注 文を受けた商品は原則として三日で届け るという体制が確立された。
サービスレベ ルの均一化に成功したわけだ。
ただし、徐常務はこの体制にも満足し ていない。
「例えば、日本のアスクルは注 文の当日、または翌日に商品が届く体制 が出来上がっている。
サムスンモールの三 日というのはまだまだ遅すぎる」と考えて いる。
そこで現在、物流改革の第二ステ ップとして注文の翌日に商品を届けるた めの体制づくりを進めている。
「サムスンモール」では顧客からの注文 情報をバッチで処理して、翌日各ベンダ ーやHTHに渡している。
これをリアルタ イムに処理して瞬時に渡せば、HTHは その日のうちにベンダーからの集荷を済ま すことができる。
結果として、リードタイ ムを一日短縮できる計算だ。
午後三時ま での注文については翌日に配達できると見 ており、早ければ今年中に新体制に移行 させる計画だという。
さらに「貨物追跡システムの開発にも 着手した」と徐常務。
「サムスンモール」 が物流基盤の整備に奔走する日々はしば らく続きそうだ。
(刈屋大輔) ――韓国は日本を凌ぐインターネッ ト先進国で、ネットショッピングの 人気も高いようです。
ところが、そ れを支える物流インフラ、特にB to Cの宅配便インフラが脆弱だといわ れています。
「その通りです。
ある調査会社の統 計によると、韓国国内のB to C市場 規模は二〇〇一年に一兆一八一六億 ウォン(約一一八一億円)だったの が、二〇〇三年には四兆九二八八億 ウォン(四九二八億円)にまで拡大 すると言われています。
ネットショッ ピングが小売り市場全体に占める割 合は〇・五%から三・七%に、無店 舗市場に占める割合は一七・二%か ら七四・六%にまで伸びる見込みで す」 「データを見るかぎり、ネットショ ッピングの成長は約束されているの ですが、それを支える物流インフラ が整備されていません。
B to Bを支 援する物流企業、日本でいう路線業 者のネットワークは比較的充実して いるんですが、B to CやC to Cとい った消費者物流のサービスは日本よ りもはるかに劣っています」 ――何故、韓国では宅配便が発達し てこなかったのですか。
「事業の採算が合わないと判断して きたからでしょう。
既存の物流企業 はB to Bのロットのまとまる貨物を 中心に扱ってきて、宅配便には力を 注いでこなかった。
「to C」の分野は 圧倒的に郵便が強かったんです。
当 社もショッピングモールで販売した 商品を郵便で顧客に届けていました」 ――ネットショッピングの浸透で、韓 国内の宅配便需要は喚起されたはず です。
それでも担い手はいないので インタビュー サムスン物産 徐康浩 常務 宅配便がないと顧客が逃げる 63 MAY 2001 すか。
「B to Cの成長が見込まれているだ けに、宅配便にビジネスチャンスが あると見て事業化に踏み切る企業も 少なくないのですが、荷物を出す側 と受ける側の双方のニーズを満たす サービスを提供できるまでには至っ ていません。
利便性の高い日本の宅 配便と比べると、韓国の宅配便は宅 配便とは言えないレベルであるのが 実情です。
宅配便のサービスレベル が改善されないままだと、ネットシ ョッピング離れが進み、顧客が逃げ てしまう」 ――他人任せにはできないということ で、現地の宅配便会社を買収したの ですか。
「ショッピングモールの立ち上げ当 初から物流をアウトソーシングする というスタンスをとってきたのですが、 残念ながら期待通りには機能しませ んでした。
私は日本で仕事をした経 験もあり、日本の宅配便のサービス レベルを知っていますから、同じよ うなことを韓国の物流業者にも期待 していたんです。
ところが、蓋を開 けてみるとそうはいかなかった。
そこ で、『これは自社でやるしかないな』 と考え、HTHという現地の宅配便 会社の株式を七〇%取得して買収し たのです。
HTHはサ ムスンモールで販売し た商品を顧客に届ける 業務が中心で、専門宅 配便会社という位置付 けです」 ――日本並みのサービ ス水準にまで一気にレ ベルアップさせること は可能なのですか。
「一朝一夕にはいか ないでしょうね。
日本 の宅配便会社には何十 年も掛けて蓄積してき たノウハウがあるんでしょう? そ れをわれわれが短時間で習得するの は至難の業です。
しかし、ノウハウ を学ぶため、現在、宅配便に詳しい 日本企業にお手伝いしてもらってい ますので、少しずつですが、日本の サービスレベルに近づいていると自 負しています」 ――直近の課題は何ですか。
「一つは情報システムの整備です。
顧客に貨物追跡情報を提供するシス テムを構築することを検討していま す。
自分がサイト上で注文した商品 はどこにあるのか。
日本の消費者と 同じように、韓国の消費者もそれを 知りたがっています。
ベンダーの倉 庫の中なのか、ピックアップした宅 配便会社の営業所なのか、幹線輸送 中なのか、配達に向かっている途中 なのか、商品が届くまでの過程をリ アルタイムに情報提供するシステム です」 「もう一つは配達時間帯指定サービ スです。
日本では既にこのサービス は定着しつつありますよね。
韓国の 消費者にもウケるはずです」 「そして、最後が受注から配達まで のリードタイムを短縮することです。
サムスンモールでは顧客からの注文 を夜間にバッチ処理して、翌朝八時 にベンダーに注文情報を、宅配便会 社に集荷指示情報を提供しています。
宅配便会社はその日の午後五時から 七時の間にベンダーから商品を集荷。
幹線輸送、仕分け後、翌日の午前中 に配達します。
顧客が注文日の翌々 日に商品を受け取る仕組みです」 「これを注文日の翌日に商品を受け 取ることができる仕組みに改めよう と計画しています。
顧客からの注文 情報をリアルタイムで処理して、瞬 時にベンダーや宅配便会社に提供す るかたちにして、午後三時ぐらいま での注文については、翌日に配達で きるように切り替えます」 ――リアルの部分の機能強化を急い でいるわけですね。
「韓国でもクリスマスプレゼントを ネットで購入する『eクリスマス』がブームになったのですが、米国と同 じように物流機能がパンクして、約 束の日に商品を届けられず、顧客に 多大な迷惑を掛けてしまったという 経験があります。
応急措置としてバ イク便などを活用して何とかその場 はしのいだのですが、その際に物流 を軽視すると痛い目に遭うことを学 んだのです」 ・・ 第3部ネットビジネスの物流戦略

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