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独立系OA商社最大手の大塚商会は、コ
ンピューター販売業界の?盟主〞ともい
うべき存在だ。 七〇年代後半から法人向
けコンピュータ販売をスタートし、市場の
成長とともに事業規模を拡大させてきた。
創業者の大塚実社長は、パソコン販売店
などで組織している業界団体の会長も務
めている。
近年、パソコン販売の流通構造は大き
く様変わりしている。 デルコンピュータを
筆頭とする直販メーカーの勢いは一向に衰える気配を見せず、昨年は国内パソコ
ン市場の二強であるNECと富士通が、イ
ンターネットを使った直販を開始した。
いまや店頭販売などの従来の間
接チャ
ネルを利用するのは初心者が大半で、買
い換え層のユーザーでは直販チャネルの利
用が急速に伸びている。 今後もユーザーの
熟練度の高まりとともに、ますます中間流
通の中抜きが加速するという見方が業界
の常識になりつつある。
長年、大手メーカーの販売代理店とし
て実績を積み上
げてきた大塚商
会にとっては、
座視できる状況
ではないはずだ。
しかし、同社は
「メーカーには
できないことが
ある」とパソコ
メーカーと顧客の業務を肩代わり
リスクまで負うことで直販に対抗
顧客の指定に合わせてパソコンの仕様を設定す
る大塚商会の「CTOサービス」が順調に取扱台
数を伸ばしている。 取引先メーカーから半製品を
買い取り、自社で在庫。 顧客の注文に合わせて組
み立て、納品している。 リコーロジスティクスが
物流パートナーを務めている。
大塚商会
――流通加工
大塚商会の小幡欣也東京CTOセン
ター長
東京CTOセンターの最近の取扱台数
は、パソコン直販が拡大しているのとは裏
腹に順調に伸びている。 二〇〇一年三月
には、多くの企業が決算期末の駆け込み
発注をかけてきたこともあって、従来の取
扱台数を大幅に上回る月間八五〇〇台を
処理した。 これは同センターが単月で処理
できる上限値と考えていた六〇〇〇台を
大きく上回るものだった。
「当社はメーカー業務を代行しているの
ではない。 顧客の情報システム部門の作
業を肩代わりしている。 だからCTOセン
ターでは、周辺機器の組み付けやネットワ
ークの設定にとどまらず、顧客が独
自開
発したソフトのインストールまで手掛けて
いる」と大塚商会、東京CTOセンター
の小幡欣也センター長はアピールする。
もっとも、CTOセンターの前身として、
同社が九四年から千葉県市川市の物流拠
点で手掛けていたサービスは、ここまで高
度なものではなかった。 当時、「インスト
ールセンター」と呼んでいた同拠点の役割
は、メーカーが組み立てた?完成品〞に
ソフトをインストールするというもの。 追
加する周辺機器に関する在庫リスクにし
ても顧客が負う、一般的なキッティング・
サービスに過ぎなかった。
これに対して、九七年に稼働したCT
Oセンターでは、メモリ増設やMOなどの
外部記憶装置の組み
付けから、顧客の望
むソフトのインストールなど、従来とは比
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ン中間流通の担い手として強気の姿勢を
崩さない。 九七年に稼働した「東京CT
Oセンター(Configuration To Order
)」
の順調な推移が、自信の裏付けの一つと
なっている。
直販拡大の逆風下で成長
一般にコンピューター業界でCTOと
いえば「注文組み立て生産」というメーカ
ーの生産方式を意味する。 これを大塚商
会の場合は、複数メーカーの?半製品〞
を組み合わせて事前にカスタマイズすると
いう意味合いで使っている。 同社のリスク
で半製品の在庫を持ち、顧客ニーズに応
じて出荷前にセッティング作業をする。
べものにならないほど広範で複雑なサービ
スを手掛けている。 それぞれのサービスを
利用するための料金体系が細かく設定さ
れており、顧客は利用サービスの内容に応
じて手数料を支払う。
出荷時にはメーカーに代わって、大塚
商会が初期不良のチェックも行う。 製品
保障などの最終リスクこそメーカーが負う
ものの、導入時の動作不良や周辺機器の
不具合に関するリスクはすべて大塚商会
が責任を持つ。 つまり、メーカー機能を代
行するだけでなく、従来であれば顧客の情
報部門が担っていたリスクまで、同社が肩
受 注
TOPS
(発注) 出荷指示
引当て
営 業
販売課
商品部
物 流
オーダーシート
作業指示
出庫リスト
京浜島
完了
納 品
顧 客
FAX
CTOセンター
受注から納品までの業務フロー
40000
35000
30000
25000
20000
15000
10000
5000
0
95年 96年 97年 98年 99年 00年
(台数)
順調に年間取扱台数を伸ばす東京CTOセンター
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代わりしているのである。
CTOセンターの稼働には、大塚商会
の現場社員を納品時のセッティング作業
から解放するという社内的な狙いもあった。
同社はそれまで、顧客ごとの細かいカスタ
マイズ作業はすべて現場で行っていた。 当
然、営業マンが一日にこなせる案件は二
〜三件に限定される。 やみくもに技術者
の数を増やすわけにもいかず、営業効率を
高めるには納品前にできる限りカスタマイ
ズを済ませる必要があった。
協力物流業者との連携
多くの狙いを併せもつCTOセンター
だが、この施設での作業効率を高めるカ
ギは物流だった。 倉庫内に保管している
半製品を効率よく集め、CTOセンター
で作業を終えたら周辺機器と同梱して顧
客に納品する。 この一連の作業に要する
リードタイムが、顧客にとっては対応の素
早さというサービスレベルに直結する。
大塚商会には苦い経験がある。 九四年
に同社がインストールサービス
を始めた当時のパソコン市場は、
「ウインドウズ
95
」の発売もあっ
て大にぎわいを見せていた。 そ
のため「かなり先を見越して用
意していたのに市川の物流セン
ターが二、三年でパンクしてし
まった」と小幡センター長は振
り返る。 やむなく大塚商会はリ
コーロジスティクスの京浜島へ
と物流拠点を移した。
この際、同社はインストール
センターの機能だけを市川市に
残し、必要に応じて京浜島との
間を横持ちする体制を組んだ。 そ
の結果、横持ち作業に要
する日
数のために、顧客の発注から納
品までのリードタイムが五日〜
七日と、従来に比べて一日〜二
日、伸びてしまった。
ちょうど当時は攻勢を強めていたパソコ
ン直販メーカーが、納期短縮の争いを激
化していた時期だ。 対抗上、大塚商会と
しても少しでもリードタイムを縮める必要
があった。 そこで九七年一〇月にインスト
ールセンターを京浜島に移管。 同じ物流
センター内の五階に入居することによって、
納品リードタイムを三〜五日に短縮させ
た。
現在、CTOセンターには物量に応じ
て二〇〜三〇人が勤務している。 スタッ
フの所属はすべて大塚商会。 四、五人の
作業グループに分かれて、いくつもの案件
を同時平行で処理している。 同一仕様の
カスタマイズを大量に手掛けるチーム、サ
ーバー一つだけながら非常に高度なカスタ
マイズをするチーム、また米コンパックと
組んだ「CCP(Channel Configuration
Program
)」と呼ぶ業務では半製品からの
組み立て販売も手掛けている。
物流パートナーであるリコーロジスティ
クスの役割は明快だ。 まず数日前に大塚
商会からCTOセンターへの製品の移動
指示がある。 主にパソコンやサーバーの本
リコーロジスティクスの今泉哲司O
Sシステムセンター長
大塚商会の物流センターの出荷風景
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体と、この中に組み入れる周辺機器やソ
フトを倉庫内から集めて納入する。 後ほ
どセンター出庫の指示があり、ここにプリ
ンターなどを同梱して出荷する。 同社の今
泉哲司OSシステムセンター長は「CT
Oセンターが稼働してからは、ほとんどの
配送がユーザー直送になっている」とその
効果を証言する。
他にも物流拠点内にCTOセンターを
置くメリットは多い。 もし出荷時の検査
で初期不良が見つかったとしても、物流
センターには代替品の在庫があるため即座
に変更できる。 結果として、昨年度のC
TOセンターでの不適合品率は一万分の
一件、クレーム率は一万分の八件と低く
抑えることができた。 しかも、大塚商会と
リコーロジスティクスとの物流契約の基本
は個建てベース。 物量の変動に応じて物
流コストを支払えばいい。
両者は毎月、「物流会議」と呼ぶテレビ
会議を開いている。 大塚商会の商品部門、
物流部門などに加えて、リコーロジスティ
クスの関係者が出席して課題を話し合う。
実は、CTOセンターが稼働した当初は
予想していたほどモノの移動はスムーズで
はなかったという。 こうした課題を月例会
の場を通じて一つずつ改善してきた。 「お
かげ
で現在は軌道に乗っている」と小幡
センター長は胸を張る。
メーカー主導サービスの限界
いまや大塚商会にとってCTOセンタ
ーは、顧客に提供するサービスレベルを高
めるための貴重な武器だ。 独立系の同社
は、二〇社以上のパソコンメーカーと取引
をするマルチベンダーという顔を持つ。
「もしコンピュータ・メーカーが同じこ
とをやろうとしても自社製品の販売に偏
らざるを得ない。 顧客の側に立ってサービ
スを提供できるのは、当社のようなマルチ
ベンダーだけ」と小幡センター長の鼻息は
荒い。
物流業者の参入についても楽観してい
る。 「一般的なソフトのインストールや周
辺機器の組み付けだけなら、物流業者に
もできるかもしれない。 しかし、例えばオ
ラクルのソフトを物流業者にインストール
しろといっても、まず無理でしょう」実は、大塚商会の物流パートナーを務
めるリコーロジスティクスも、約五年前か
らパソコン・キッティング・サービスを独
自の事業として手掛けている。 しかし小幡
センター長の言葉通り、
複雑なカスタマイ
ズ業務についてはグループ企業のリコーテ
クノシステムズに外注している。
「顧客へのアフターサービスまで考えた
ら、CTOサービスを完全に物流業者だ
けで処理するのは難しい」とリコーロジス
ティクスの宮澤聡システム支援グループリ
ーダーも認める。
それでも物流業者にとって、こうした付
加価値サービスにビジネスチャンスがある
ことは間違いない。 宮澤リーダーは、「流
通加工には必ず物流が発生する。 とくに
生産活動に近い業務は、メーカー系の物
流子会社にとっては魅力的な分野だ」と
意欲を隠そうとはしない。
(岡山宏之)
リコーロジスティクスの宮澤聡シス
テム支援グループリーダー
大塚商会が入居する京浜島の物流拠点
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