ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2001年8号
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上場物流企業業績ランキング

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

AUGUST 2001 42 今回は、物流業界(特に陸運業界に 焦点を絞って)の二〇〇〇年度決算を 振り返ってみたい。
まず最初に、業界 全体の損益計算書(売上高、営業利益、 当期利益)と貸借対照表(固定資産、 有利子負債、自己資本比率)の変化点 について概括する。
その上で、決算上 で幾つか印象に残った企業群(過去最 高益企業群、リストラによる業績回復 企業群)について、それぞれの要因を 踏まえて詳述する。
売上高増も利益横這い 全体の損益計算書の変化点について は図1に要約される。
連結売上高の総 額は二〇〇〇年度上期までの景気の一 時的回復を反映したかたちで増収とな った。
ただし、連結対象企業の範囲拡 大に伴う売上高増加など特殊要因があ ったことを見逃してはならない。
九五年度以降、継続的に三月期に連 結決算を発表しているトラック、倉庫 会社六八社の単純合計売上高は六兆三 〇〇〇億円を超え、前年対比で五・ 六%増加した。
特に、国際輸送関連の 荷動きが活発だったことが大きく寄与 している。
しかし、営業利益段階では ほぼ横這いであり、売上高営業利益率 は悪化している。
また、当期利益段階 では、退職給付会計の会計基準変更に 伴う一時的な損失が計上され、総額で は八〇〇億円を超える損失となった。
貸借対照表レベルでは(図2)、当 期損失の拡大により株主資本の減額を 余儀なくされ、株主 資本比率は四〇%を 割り込む事になった。
また、有利子負債は 若干減少したものの、 固定負債は四兆円を 超え、前年比で九・ 五%も増加している。
損益計算書の増収率 と併せて考えると、こ のサンプルから得られ る推測及び結論は次 のように導かれる。
?景気拡大に伴う輸 送量拡大のペース 以上に、公開物流 第5回 《特別編》 上場物流企業業績ランキング このコーナーでは毎号、個別物流企業の業績推移、事 業戦略、株価水準などを解説しているが、今号は特別編 として五月末から六月中旬にかけて発表された物流企業 の二〇〇〇年度決算を総括する。
北見聡 野村証券金融研究所 運輸担当アナリスト 売上高総計 営業利益 当期利益 営業利益・当期利益 売上高総計 (年度) (億円) 65,000 64,000 63,000 62,000 61,000 60,000 59,000 58,000 57,000 56,000 (億円) 3000 2500 2000 1500 1000 500 0 -500 -1000 -1500 1995 1996 1997 1998 1999 2000 95年度以降、継続的に連結決算を発表している公開企業68社の合計。
ただ し、連結決算発表を継続的に行っていない企業に関しては単独決算で計算 98年度に会計規則の変更があり、従来と比べて事業税分、営業利益が多く 表示されている。
99年度以降、連結会計基準の変更で、連結対象会社数の 増減による利益の変動要因がある。
2000年度は、退職年金に関する会計基 準の変更、時価会計の導入等の影響がある 注) 図1 株式公開68社の売上高、営業利益、当期利益の推移 《二〇〇一年三月期決算》 始めている。
しかしながら、個別企業 の自助努力があってこその改善であり、 いつまでも業績悪化の要因を景気動向 に転嫁してはいられないはずである。
アナリストとしては、このことにいち 早く気付いた経営者に注目していきた い。
株価が動き出した西濃と山九 続いて、二〇〇〇年度の決算を通じ て、業績や経営の変化という観点から 幾つか印象に残った企業について取り 上げてみたい。
今回の決算発表後、株価が最も反応 した企業は西濃運輸である。
同社は連 結関係会社である東海西濃運輸、関東 西濃運輸、濃飛西濃運輸の一〇〇%子 会社化とトヨタカローラ岐阜、岐阜日 野自動車の持分引き上げによる実質子 会社化を発表した。
西濃運輸の事業改 革を一言で要約すると、連邦経営から 中央集権体制への転換、ということに なろう。
ある意味では、小泉政権が試 みている地方政治型から中央政治型へ の変革と重なるイメージともいえる。
地域子会社・関連会社に分散し、非効 率的に活用されてきた経営資源を一括 して管理することによって、グループ 企業全体の生産性を向上させることを 企業目標として掲げている。
もちろん、改革には?痛みが伴う〞 わけで、今後は経営者の強固な意志の 43 AUGUST 2001 企業の増収率が高く見えるのは、公 開物流企業の企業認知度や競争力の 高さによって、荷主企業からの業務 を受注しやすくなっているのではな いかと推測できる。
?しかしながら、そのニーズへの対応 や新たな事業領域の拡大を図るに従 って、設備投資負担も大きくなり、 固定資産の総額が拡大している。
?増収ペース以上に、固定資産が増加 しているということは、まさに供給 過剰の状況が続いていることを示唆 しており、運賃市況の下落に歯止め が掛かったとは言い難いと推測され る。
?また、収入増加以上に営業費用の増 加が避けられずに減益となった企業 が多いのは、各事業者のコスト管理 の甘さが露呈しており、依然として 過去から指摘されているコスト管理 の課題が未解決のままであることを 示している。
?さらに、連結関係会社にコストが偏 在していることが業績悪化要因にな っていると読み取ることもできるだ ろう。
?ただし、自己資本比率が悪化したと はいえ、建設・不動産業界などと 比べて、バランスシートの相対的な 健全性は保持されており、大手企 業が破綻に追い込ま れるようなリスクは 少ない。
?結論は個別企業の業 績回復は各事業者の コスト管理に依存する、 そして業界集約による 全体の需給バランスの 改善を背景にした運 賃水準の回復には各 事業者の戦略的なア ライアンスや合併(も しくは買収)の意思 決定が欠かせない、と いう二点であろう。
四五ページは、二〇 〇〇年度決算の売上高、営業利益、当 期利益のランキングを示したものであ る。
売上高のランキングトップは日本 通運、営業利益はヤマト運輸、当期利 益は上組であった。
この実績に対して、 経営者が何を感じるかは興味が尽きな いところである。
営業利益に注目すると、その額はヤ マト運輸が五二〇億円(九九年度は四 四二億円)でトップ、第二位の日本通 運が三五二億円(同三五九億円)、第三位の上組が一三八億円(同一三二億 円)だった。
以下、三菱倉庫、日立物 流、日本梱包運輸倉庫までの六社が、 営業利益で一〇〇億円を超える企業と なった。
福山通運が七〇億円台へ減益となっ て一〇〇億円を割った一方で、日立物 流と日本梱包運輸倉庫が増益となり、 一〇〇億円超えた企業は前年よりも一 社増加したことになる。
営業利益が一 〇億円以上の企業は二六社だった。
物流業界のサバイバルゲームの将来 を見据えた場合、大手企業として生き 残るためには?一〇〇億円プレイヤ ー〞の地位が、さらに、中堅事業者と してニッチな領域で生き残るにしても ?一〇億円プレイヤー〞の地位が必要 になりそうだ。
後述するように、確かに変革の兆し が出始めた企業もある。
業界全体が悲 観的な状況から脱出できる糸口も見え (%) 41 40 39 38 37 36 35 34 (億円) 45,000 40,000 35,000 30,000 25,000 20,000 15,000 10,000 5,000 0 (年度) 1995 1996 1997 1998 1999 2000 95年度以降、継続的に連結決算を発表している公開企業68社の合計。
ただ し、連結決算発表を継続的に行っていない企業に関しては単独決算で計 算。
また、3つの指標とも96年度以前には、未上場の安田倉庫・東部ネッ トワーク含まず。
同様に95年度は上記2社に加えて未上場のハマキョウレ ックス・東海西濃運輸含まず 注) 自己資本比率 固定資産 有利子負債 自己資本比率 固定資産・有利子負債 図2 株式公開68社の自己資本比率、固定資産、有利子負債の推移 AUGUST 2001 44 下に、地域子会社の再編やコア事業で はない子会社の統廃合を遂行できるか が全てを決めることになる。
その実行 力を見極めていきたい。
次に、事業改革が株価に反映されつ つある企業として山九を挙げたい。
二 〇〇〇年度の営業利益は前年比二五% 増となり、株価も一時一〇〇円台を割 り込んだ水準から徐々に回復している。
売上高ベースで業界第四位でありなが ら、一般消費者の目に触れる機会が少 ないため、比較的地味な企業として捉 えられがちであった。
しかし、二〇〇〇年三月以降、中期 経営計画の公表、及びIR活動に積極 的に取り組むことによって、社内の意 識改革が進み、ひいてはそれが業績改 善にも結びついている。
基本戦略を3 PL(サードパーティ・ロジスティク ス)と3PM(サードパーティ・メン テナンス)の二つの軸に置いて、アウ トソーシングニーズを取り込む仕組み 作りをする一方で、雇用体制の見直し などを含めたコスト構造改革に取り組 んでいる。
また、経営計画の内容が具 体的であると同時に、進捗状況につい ての検証が精緻であることが、他企業 の事業計画との大きな違いである。
また、倉庫業界では三井倉庫の業績 や経営に変化が見られた。
二〇〇〇年 度の営業利益は同二九・二%増と五期 ぶりに増益に転じた。
取扱数量の変化 に応じた雇用体制や賃金体系の導入、 有利子負債削減によるバランスシート の健全化などに取り組んだ姿勢が業績 に反映されてきたと判断している。
短 期業績の改善確度は高く、IR活動の 改善等もあり、株式市場での認知度は 上がっている。
ただし、中期的な成長 戦略についてはこれからであり、実現 可能性を判断する必要があろう。
こうした企業の共通点は、地道な企 業努力を欠かさない、経営者の意思決 定スピードが速くなった、という点に 集約されよう。
もちろん、それぞれが 抱えている課題を全て克服したわけで はないが、中長期的な視点から見れば、 ひとつのターニングポイントを通過し た、という印象を受けている。
総花的な企業は弱い さて、相変わらず堅調な企業として は、過去最高益を更新しているヤマト 運輸、ヒューテックノオリン、名糖運 輸、郵船航空サービス、近鉄エクスプ レス、サカイ引越センター、ハマキョ ウレックスなどが挙げられる。
こうし た企業の増益要因は、業態ごとの景気 に対する感応度、事業戦略、コスト管 理施策などの優劣など個別要因はある ものの、共通項はいずれも得意分野に 経営資源を集中しており、ビジネスモ デル自体は簡素化されている、という ことである。
決して、総花的な事業ポ ートフォリオではなく、それぞれの分 野に於いて、コスト競争力をマキシマ イズする努力がなされているのである。
また、現場作業の品質競争力にも定 評のある企業が多い。
簡素化されたフ ラットな組織であるが故に、現場まで 目が届くことが、サービス品質や管理 能力の水準を引き上げていると判断し ている。
特に、ヤマト運輸の業績好調の背 景は、やはりコスト管理能力の高さに起因する、といっても過言ではないだ ろう。
例えば、年間の宅配便取扱個 数と従業員数を単純比較してヤマト 運輸のコスト構造を見てみよう。
一九 九九年度に宅配便を一億個取り扱う 為にフルタイム社員が五三六八人、パ ートタイマーが四七〇七人、計一万七 五人の労働力が必要だった。
二〇〇 〇年度は同様にフルタイム社員が五一 九二人、パートタイマーが四九三八人、 計一万一三〇人の労働力を必要とし ている。
人員の絶対数は増加している ものの、パート社員への置き換えは進 んでおり、トータルで見た場合の人件 費の抑制が図られていることがわかる。
こうした細部に至るコスト管理をする ために、ベース内作業の簡素化やマニ ュアル化を進めたり、情報化投資によ るバックオフィスの費用削減に努めて いる。
また、現場作業に強い物流会社の特 徴は物流センターを見るとよくわかる。
雑多な荷物が積まれておらず整然とし ている、通路にゴミが落ちていたり梱 包資材が積まれているようなことがな い、などが挙げられる。
コスト管理の 根本は、整理整頓という誰もが納得す ることを誠実に成し遂げているかに顕 れるような気がしてならない。
事業提携から統廃合へ さて、こうした決算概況を踏まえて、 将来展望を描くとすれば、単独の企業 努力での業績改善を図ろうとするフェ ーズ1、単独企業だけではカバーでき ない事業エリアをアライアンスによっ て補完しようとするフェーズ2、突き 詰めて企業統廃合を図ろうとするフェ ーズ3、という道筋が考えられる。
また、企業価値(いわゆる時価総 額=株価×発行済株式数)は依然とし て、著しく低い水準に放置されている 企業が多い現状を見れば、第三者的な立場の資本が投入されることによって、 フェーズ2からフェーズ3への移行が 加速するケースもあり得るだろう。
企業経営者は、もう一度自らの業績 と株価水準を確かめながら、株主、従 業員、顧客といったステークホルダー (企業関係者)と深い対話を進めてい くことが必要ではないだろうか。
今上 期の決算でどのような変化が見られる か、楽しみでもあり、悩ましくもある。
45 AUGUST 2001 ●売上高●営業利益●税引後当期利益(百万円) 2001年3月期上場物流企業決算ランキング(陸運中心) AUGUST 2001 46 ●過去6年間の売上高の推移(百万円) 47 AUGUST 2001 ●過去6年間の営業利益の推移(百万円) AUGUST 2001 48 ●過去6年間の税引後当期利益の推移(百万円) 49 AUGUST 2001 ●過去6年間の有利子負債残高の推移(百万円) AUGUST 2001 50 ●過去6年間の固定資産の推移(百万円) 51 AUGUST 2001 ●過去6年間の株主資本の推移(百万円) AUGUST 2001 52 ●過去6年間の総資産の推移(百万円)

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