ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2001年8号
特集
定温ビジネスの誤算 途切れたコールドチェーン

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

途切れたコールドチェーン 17 AUGUST 2001 中間流通コスト五〇% 日本の生鮮品の小売り価格は国際的に見て極めて 高い。
日本の物価を品目別に海外と比較した時、公 共料金と家賃に次いで高いのが生鮮食料品だ。
同じ スーパーで販売される商品でも、日用雑貨品の価格が むしろ海外の主要都市と比べて安いのとは対照的だ。
全体最適とはほど遠い生鮮品の非効率な流通システ ムが、こうした事態を招く元凶となっている。
本来、大手メーカーによって大量生産された日用雑 貨品は、どこで買おうと品質は同じだ。
そこで差別化 しようとすれば、価格を下げるしかない。
しかし、こ の分野のローコスト・オペレーションは既に各社で取 り組みが進んでいる。
量販店に対して規模で劣る食品 スーパーにとっては、差別化どころか守りに精一杯と いうカテゴリーだ。
ただし、生鮮品なら調達や陳列にキメ細かな工夫を することで、地域スーパーでも量販店に対抗できる。
滋賀県の中堅スーパー、平和堂の島田恭一物流事業 部兼営業企画部部長は「今日のスーパーにとって生 鮮品は他社と差別化するための最も大事な商材となっ ている。
ところが生鮮品のロジスティクスは他の分野 に比較して格段に遅れている。
今後はそこにメスを入 れる必要がある」という。
実際、これまで日本では生鮮品のSCMが、全く 手つかずのまま放置されてきた。
青果物の場合、小売 り価格に占める中間流通コストは四五%〜五五%に も上ると推測されている。
これに対して先進国の中間 流通コストは二三%前後が中心といわれる。
倍の差が ついているわけだ。
多段階かつ硬直化した卸売市場流通がその元凶に なっている。
小売り価格を一〇〇円とした時、日本の 農家が受け取る生産者価格は二五円〜三五円に過ぎ ない。
その後、農協、経済連、卸売市場、仲卸と流通段階を経由するごとにマージンと物流費が上乗せさ れていく。
このうち卸売市場は民間企業によって運営されてい る。
その手数料率は野菜で八・五%、果物で七・五% と、卸売市場法によって規定されている。
販売価格が いくらであっても、この料率は変わらない。
ここから 出荷奨励金や完納奨励金などのバックマージンを差し 引いても、卸売市場には自動的に五・五%程度の手 数料が落ちる。
卸売市場にとって直接の顧客となるのは仲卸だ。
そ して仲卸の多くは特定の小売店のバイヤーとして機能 している。
本来なら産地と仲卸を結ぶ卸売市場は全 体の需給をコントロールする役割を担うはずだ。
しか し実際には機能していない。
産地から荷を集めさえす 日本では青果物に必要とされるサプライチェーンの温度管 理が、卸売市場を境に機能しなくなる。
同様に産地から小売 りに至る情報の共有も中間流通で分断されている。
そのしわ 寄せが末端の消費者と産地を襲っている。
多段階で硬直化し た既存のサプライチェーンに変わる新たなチャネルの登場が 待たれている。
Report 食品物流市場の生態学 特集定温ビジネスの誤算 第1部 第2部 第3部 50 0 100 100 78 66 59 52 84 東京 ニューヨーク ロンドン パリ ハンブルグ ジュネーブ 食料品の内外価格差(東京=100) 平成12年11月調査 農林水産省資料より AUGUST 2001 18 れば一定の手数料が手に入るため、量を調整しようと いうモチベーションが働かない。
全ては価格で調整さ れる。
相場が高くなればそのしわ寄せは消費者に、安 ければ生産者に影響が及ぶだけだ。
青果物価格は三割下がる 青果物の商流と物流は基本的に一体化している。
市 場の敷地と建物は各自治体の所有だ。
それを卸売市 場の運営会社が賃借している。
しかし、卸売市場自 体は物流機能を持っていない。
産地からの集荷活動は 生産者が行う。
市場から小売りへの物流は仕分けを 含めて仲卸が担っている。
青果物流通に詳しい流通システム研究センターの初 谷誠一社長は「定温流通のネックになっているのは卸 売市場だ。
そこに至る温度管理に比べると、まだまだ 体制が整っていない。
徐々に定温卸売場も広がってい るが、青果物の場合は、最も進んでいる市場でも全館 空調はない」という。
大量の補助金が投入された産地には、収穫した青 果物を冷却する予冷設備が整っている。
市場に出荷 するための大型の冷凍冷蔵車も確保されている。
ただ し、青果物の品種によっては車両の冷却装置を使わな いケースが多い。
そうすることで市場に到着するまで に徐々に常温まで温度を上げていく。
市場で急激に温 度が上がることによる結露を防ぐためだ。
市場にも一部低温機能はあるが、実態としては野ざ らしで取引が行われる。
さらに青果物を買い受けた仲 卸は、それを市場内で店舗ごとに手作業で仕分けして、 小売りへと配送する。
納品には平ボディーの二トン車 にシートを掛けた車両を使う場合が多い。
結局、市場 に入って以降、温度は管理されていない。
管轄の農林水産省も問題は認識している。
平成一 9:00 10:00 11:00 12:00 13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 23:00 0:00 1:00 2:00 3:00 4:00 5:00 6:00 7:00 8:00 9:00 10:00 11:00 12:00 13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 23:00 0:00 1:00 2:00 3:00 4:00 5:00 6:00 7:00 8:00 9:00 10:00 11:00 12:00 13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 23:00 0:00 1:00 2:00 3:00 4:00 5:00 6:00 7:00 8:00 9:00 10:00 14:00 予冷終了 輸送車両へ積載 14:00 産地出発 積載率約86% 22:00 新宿到着 22:30 新宿出発 4:28 小売人仕入れ 8:40 太田市場出発 9:30 店舗到着・荷下ろし 10:20 カードロガー回収 23:35 太田市場到着 荷下ろし 9:00 カードロガー設置 予冷開始 にんじん(北海道JA→大田→専門小売店) 平成11年9月14日9:00〜 平成11年9月17日10:20 平均  最高  最低 No1 7.6℃ 19.6℃ 3.8℃ No2 7.9℃ 17.4℃ 4.7℃ LoggerNo.1 LoggerNo.1 物流過程の内容 日時 環境条件 カードロガー回収 量販店B荷下ろし 大田市場出発 積  載 仕  入 荷下ろし 大田市場到着 新宿出発 新宿到着 出  発 予冷終了・積載 予冷開始 検査・選別・箱詰 集  荷 収  穫 9/13 10:00 9/13 14:00 9/13 9/14 9:00 9/15 14:00 9/15 15:00 9/16 22:00 9/16 22:30 9/16 23:35 9/16 23:25 9/17 4:28 9/17 8:40 9/17 7:00 9/17 9:30 9/17 10:20 ほ場 洗果場内 作業場 JA人参洗果場 輸送車輌:18t積冷凍車 荷室内設定温度2℃ 積載率・出荷時86%、 新宿出発時:64% 荷受場 2710番 大田市場 配送車輌 2t平ボディー (シート有) 店舗 予冷庫 駐車場 出荷状態:はだかでダンボール箱に詰めた状態 予冷状況:箱詰め前に10℃位の冷水で洗浄し、箱詰め後に      強制通風方式の予冷を実施→設定温度2℃ カードロガー設置 9/14/9:00 外気温 23℃ 30℃ 25℃ 20℃ 15℃ 10℃ 5℃ 0℃ ※カードロガー:カード式温度測定器 (荷台前方) (荷台中程) 出典:(社)日本農林規格協会「平成11年度食品流通安全・品質確保対策事業報告書」より 19 AUGUST 2001 特集定温ビジネスの誤算 〇年度からは 「生鮮流通ロジ スティクス構 築モデル事業」 と銘打って補 助 金 を 付 け 、 仲卸の物流共 同化を研究し ている。
しかし、その委員を務めるネットワーク研究 所の福山博之代表は「ここでは定温物流ということは あまり重要視されていない。
仲卸が多すぎることの方 が問題なので、その構造を変えようという改革だ」と いう。
ロジスティクスの管理は卸売市場で完全に分断され ている。
当然、鮮度に影響してくる。
青果物の「保 ち」が悪くなる上、流通の各段階で荷傷みが発生して、 廃棄処分となる「ロス率」が上がる。
この荷傷み分と 規格外で廃棄される分を含めると流通全体のロス率は日本の場合、三割程度に上るといわれる。
これもまた 海外先進国の倍の水準だ。
「日本の青果物流通にSCMを導入すれば、現在より も三割は価格を下げられる。
三割下がれば、日本国内 で作った青果物にも国際競争力が付いてくる。
セーフ ガードなんかしなくても、勝負できるようになる」と チェンジマネジメント・インターナショナルの吉田行 雄代表はいう。
問題はその指揮をとるリーダーがいないことだ。
長 年、卸売市場流通に頼ってきた産地にはマーケンティ ングのノウハウがない。
卸売市場は既得権の維持に 汲々としている。
仲卸は顧客を一社から数社しか持た ない小規模経営がほとんどどだ。
「しかも小売りの業 態が専門店から量販店にシフトしているのに、仲卸は 物  流 生産者(農家) 商  品 農 家 農家(33%) 農協(18%) 経済連 (10%) 仲卸(12%) 小売り(22%) 小売り 卸売市場 小売り 農協 経済連 卸売市場 仲卸 集荷団体(農協・経済連) 仲卸 卸売市場 (5%) 45% 0 100 各種資料より本誌が作成 ●青果物のサプライチェーン コスト配分 (推定) 100 200 300 100 94 84 278 100 84 119 303 生産者の取り分 中間流通の取り分 小売りの取り分 東京都区部 大阪市 「平成12年7月青果物調査」より本誌が作成 ●青果物の流通価格比(生産者価格=100) 10% 20% 30% 自社 59.5% 10.1% 外部 50.7% 自社 76.0% 13.2% 外部 29.4% 共同 24.8% 自社 58.9% 外部 32.2% 20.4% 30.8% 24.3% メーカー 卸 売 小売り 外部=センター作業を他社に委託している 共同=センター作業を共同で行っている。
または一部の作業を他社に委託している 自社=センター作業を自社で行っている ※複数のセンターを使用している企業があるため、合計値は100%を超える ●配送センターの使用状況 配送センターを使用している業者の割合 共同 共同 ネットワーク研究所の福山博之代表 AUGUST 2001 20 従来の専門店の時代に対応しているのが現状だ」とネ ットワーク研究所の福山代表は説明する。
物流プラットフォーム構想 そんな青果市場にアウトサイダーが参入を開始した。
外資系メーカーのドール、伊藤忠商事、そして医薬品 卸の協和の三社による大規模な生鮮品の物流プラッ トフォーム作りが現在、進められている。
既に全国九 カ所に青果物専用センターを設置した。
その通過額は 昨年度で約九〇〇億円。
毎年三〇%以上のペースで 拡大しており、今期は一二〇〇億円に上る見込みだ という。
拠点や車両、情報システムなどに費やした投資額も、 長期契約を保証して協力会社に投資させた分を含め ると既に七五〇億円程度に達している。
さらに今後五 年以内に三〇センターまで拠点網を拡大して、日本 全土を網羅する生鮮品の流通ネットワークを構築する 計画だ。
その中核を担うセンター運営会社として九八年に三 社が合弁で設立したケーアイ・フレッシュアクセス (KIFA)の堀内信介副社長は「青果物を定温で扱 うインフラとしては当社が間違いなく国内で最大の投 資をしている。
今後は当社のインフラを青果物のプラ ットフォームとして量販店や外食チェーンに提供して いく。
最終的には青果物の中間流通市場のうち一〇 〜二〇%を担いたい」という。
サービスメニューは全てタリフ化する。
利用者はそ のうち必要なサービスだけを購入すればいい。
しかも 「オペレーションコストも顧客に公開する。
そのうえ で当社は一%の利益を上げられればいい。
帳合いには 全く興味がない。
完全にロジスティクスに特化する」 と堀内社長は説明する。
この堀内副社長を末弟とする三兄弟が構想全体の フレームワークを描いている。
現在、長男の泰司氏は KIFAの社長、次男の達生氏はドールの日本法人 副社長を務めている。
実家となる堀内家は「浅田飴」 のオーナー一族としても知られている。
堀内副社長は大学卒業後の七年間を名古屋を地盤 とする加工食品卸のトーカンで過ごした。
その後、長 兄の経営する協和に戻り、同社の新規事業として中 国からの輸入食品を扱うことになった。
そこで初めて 生鮮品の流通と向きあった。
その経歴から「生鮮品の 流通をどうしてもグロッサリーと比較してしまう」と いう。
青果物のプラットフォームをデザインするに当たっ て、既存の中間流通の機能を全て棚卸しした。
その結 果、青果物の中間流通には一〇種類の機能が必要で あることがわかった。
サプライチェーンのトータルコ ストを分析した上で、それぞれの機能を最も効率よく 処理できるモデルを描いた。
イレギュラーを平準化 青果物に必要な機能はグロッサリーのセンターとは 全く異なっている。
画一生産された工業製品であれば、 ロジスティクス自体の計画も予め立てられる。
そのた めセンターに入荷してから店頭までのロジスティクス を構築すれば、後はそれに合わせて調達すれば全体が できあがる。
ところが青果物の場合、調達先は小規模 でかつ天候などに左右される。
毎日入荷されてくる商 品も違う。
「結局、青果物の流通はイレギュラーの連続だ。
そ のために中間機能を担うセンターにはイレギュラーを 調整する機能が必要になる。
それをこれまでは仲卸が 担ってきた。
ところが既存の仲卸は自分たちの機能の ●KIFAトータルプラン(概略図) 一次型 カット野菜 工場 総菜工場 QC機能 {検品・検質} {受発注管理・店舗窓口} 分荷確定作業 OpC機能 {統轄管理・労務管理} TC機能 {仕分} TC機能 {配送} 店舗作業減少 DC=ディストリビューションセンター   (物流拠点) DB=ディストリビューション   (需給調整) QC=クォリティチェック   (品質管理) PC=プロセスセンター   (流通加工) RS=ランニングストック   (定温保管) TC=トランスファーセンター   (店別仕分け) TR=トラックランニング   (店舗配送) IC=インフォメーションセンター   (センター業務支援) QpC=オペレーションコントロール   (現場労務管理) F&F=ディストリビューションセンター   (与信・決済) ロス減少 52週の売場企画 タイムMD クロスMD 消費者適量販売 PC機能 PC機能 IC機能 {専用センター稼働システム} F・F機能 {ファクタリング&ファイナンス} 後方集中加工 (RPC) 輸入青果の熟成 イモ玉等のパック 輸入果実 国外産地 国内産地 卸売市場 小売指定仕入先 仕入発注 入荷 納品 味 鮮度 簡便 価格 トータルの情報共有化 … タイムリーかつ正確なペーパーレス情報の流れ トータル物流コストの最小化、ローコスト化 … 消費生活の実需に合った効率的で連続的な商品の流れ 消 費 者 生 活 者 21 AUGUST 2001 特集定温ビジネスの誤算 棚卸しができていない。
そのために一所懸命努力して いるのだけれど合理化ができない。
それを当社は全部 機能別に整理して市場の外に作った」 定温輸送は全日本ラインというパートナー企業に全 て集約した。
青果物の温度帯は基本的に五℃〜一五℃ が中心だ。
この温度帯を全国規模で管理できる定温 物流業者はいなかった。
「だから育てるしかなかった」。
全日本ラインの年商は現在、約七〇億円。
大型の定 温トラック約一〇〇〇台を組織して、青果物だけを 運んでいる。
全日本ラインの他、プラットフォームを構成するK IFAのグループ会社として、各種の流通加工を処 理する「フレッシュシステム」、B to Bのeマーケッ トプレースを企画運営する「フレッシュ・リミックス」、 情報システム管理会社「eサポート」を設立している。
さらに昨年一二月、有機野菜を産地から消費者に 直販するナチュラル・コミュニケーションズを設立し、 ネットスーパー「自然王国」を立ち上げた。
もっとも 「ネットスーパーという業態自体にそれほど大きな期 待をかけているわけではない。
実際、電話やファクス の注文のほうが格段に多い。
それよりも主眼は青果物 のブランド戦略にある」という。
同社の取り組みに対し、青果物市場では現在、賛 否両論が渦巻いている。
期待が大きい一方、過大な 計画の実現性を疑問視する声もある。
流通システム研 究センターの初谷社長は「ドールがやっている、KI FAがやっているというだけで実力以上に高く評価さ れている面があることは否定できない。
米国式の重装 備のコールドチェーンが、日本にも最適かどうかは分 からない」という。
それでも硬直化した日本の青果物市場に大きな風 穴が空こうとしていることは事実だ。
実は今、青果物市場で大変なことがおきている。
中央卸売市場で二年連続、二割ずつ売上高が下が っている。
そのため卸売市場のほとんどが赤字に 陥っている。
しかも、「入荷減の単価安」という過 去になかった動きをしている。
本来なら需要と供 給で単価は決まるのだから、入荷が減れば単価は 上がらないとおかしい。
従来は生産が一〇%増え ると相場は半値になるのが通例だった。
そんな経 験則が通用しないような購買行動になっている。
それだけ価格に対する消費者の目が厳しくなっ ている。
現在の青果物の価格を消費者が許さなく なっている。
私はこの現象は一時的なものではな く今後、ずっと続いていくと考えている。
青果物 の価格は今後も下がり続ける。
しかも、今の流通 構造を変えない限り、そのしわ寄せははじめに生 産者を直撃する。
そうなることを八年ほど前に予 測して今の事業を始めた。
日本の場合、生産者の規模も小さければ、小売 りチェーンの寡占化も進んでいない。
ダイエーの ピーク時でも青果物の小売り市場におけるのシェ アは一・五%程度に過ぎなかった。
欧米の基準で 言えば小型だ。
中間流通も小さい。
国内に一五〇 〇社ぐらいある。
これでは合理化は進まない。
さらに日本の場合は南北に長い地形であるため、 産地が三カ月ごとに北に移っていく。
そのため生 産者が一年間五二週のマーケティングを行うこと ができない。
本当は営業から施設から物流機能か ら労働者から、全て季節ごとに移動していけばい い。
実際、欧米ではそうしている。
農業、とくに野菜と果実の一番の問題点は収穫 を自動化できないことだ。
全部、人間の手で収穫 するしかない。
収穫量イコール収穫労働力だ。
実は欧米の農業も一九六〇年代の後半に今の日 本と全く同 じ構造にな った。
つま り農家の高 齢化が進ん で、収穫の ための労働 力が確保で きなくなってしまった。
この問題を解消するために欧米諸国は外国人労働 者を農業分野に迎え入れた。
日本も既に同じこと を実施しなけばならないところまで追い込まれて いる。
今後一〇年で外国人労働力と青果物メジャーの 持つリスク・マネジメント、マーケティングとい った技術が日本の青果物市場に導入されることに なるはずだ。
その結果、大規模生産者や中規模生 産者の固まりが、たくさん国内に生まれてくる。
労働力が輸入された段階で、農協とは違う形の生 産者集団ができてくる。
農協の最大の機能はファイナンスだ。
これまで 日本で農業に運転資金を貸し付けることのできる 機能を持っていたのは農協だけだった。
他の日本 の金融機関には農業のリスクに対して貸し付けを する機能はなかった。
実は我々はそういったファ ンドを作ろうと思っている。
農業に運転資金を貸し出す仕組みができれば、 技術を持っている人が土地を借りて農業に新規参 入することができるようになる。
本来、農業の本 質である技術に基づいた経営が可能になる。
それ によって、はじめて日本に先進国並の農業が根付 くと考えている。
(談) 「日本の青果物の単価は下がり続ける」 ケーアイ・フレッシュアクセス 堀内信介 副社長

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